2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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伊藤博之氏:ネットで活躍する方々の中から、すごく支持されるスターが生まれてくる。楽曲を作っている方だけじゃなくて、イラストを書く方の中にもスターが生まれている。それをGoogleがCMにしたんですけども、ちょっと見てみます。
(GoogleのCM動画が流れる)
最後に初音ミクが登場して、コンサートをバーンとやるというオチです。実際、映像の中のコンサート会場はロサンゼルスだったんですけどね。世界中にファンがいて、そういうファン向けに、SNSを使って情報を発信しています。英語圏、中国語圏、それぞれ得意なSNSがありますので、そこは使い分けて。
そうすると、ファンがたくさん広がっていくと同時に、クリエイターも広がっていくと。最初はネット上の情報の交換だけだったんですけど、だんだんとファンの間に「このクリエイターさんのこの作品をCDとして欲しい」とか、「Tシャツにしてほしい」とか、そういう願望が出てきます。
クリエイターさんもそういったかたちでマネタイズができると、別にビジネスを目標として創作活動をスタートしたわけではなくても、結果としてたくさんの方に支持されるプロになるのがうれしいわけですね。なので、商品化にも取り組んでいます。
これは日本ではあんまり馴染みがないですけど、中国では多くの方が使っているシャオミーという携帯電話です。これは中国限定なんですけど、そういうところとコラボしたりとか、変わったところでは、『VOGUE』という雑誌に載せていただいたりとか。意外かもしれないですけど、LUXというシャンプーのメーカーとコラボしたと思えば、ドンキホーテとやったり、いろんなかたちでコラボレーションをしています。
アートの分野でもコラボレーションがいろいろあって、「LOVE展」という、東京の六本木ヒルズの上にある森美術館が10周年記念で開催した展示の中にも、現代を象徴するLOVEとして、初音ミクが出展しました。ネットを介した存在しない者への愛といったコンセプトで、やっぱり初音ミクはLOVEだよということで登場させていただいたり。あとは、人が登場しない「ボーカロイド・オペラ『THE END』」という、ピアニストの渋谷慶一郎さんが手がけている作品に出てきたりとか。
冨田勲さんという大作曲家が、宮沢賢治の世界観を表現した「イーハトーヴ交響曲」という作品を作り上げて。これは宮沢賢治との、ある種のコラボレーションなわけですけど、そのプリマドンナとして初音ミクが登場する。人間の演奏者、コーラスに混じって、主旋律を歌うボーカリストとして初音ミクを登場させていました。
その中にもありました、「初音ミク×手塚治虫展」が、今宝塚の手塚治虫記念館で開催されています。冨田勲さんって、手塚治虫のアニメのいくつかの音楽を手がけていたんですね。コラボレーションとしてこんなこともやっています。
初音ミクは歌声を合成するソフト、コンピュータグラフィックスとしての存在というイメージがあると思うんですけれども、初音ミクのモチーフを使っていろんな方が研究開発をされています。CGを作る方もいれば、バーチャルリアリティ、VRの研究開発に初音ミクを登場させたり、ロボットを作っている方もいます。
技術というかコンピュータグラフィックスを使ったゲームも登場したり。ゲームの中で初音ミクが歌って踊っていて、じゃあ、その歌って踊っている初音ミクを舞台に登場させればコンサートできるよね、というふうに、バーチャルなんですけどもコンサートもする。ちょっと映像見てみますね。
(コンサートの映像が流れる)
今のコンサートはニューヨークでやったもので、日本だけじゃなく、世界のいくつかの都市でもコンサートをやっています。
去年は北米ツアーを10都市やりまして、これは「北米ツアーやるよ」ということをアナウンスした時に、NBCニュースというメディアが取り上げてくれて、その日のバズワードで初音ミクが選ばれたというスクリーンショットです。下のほうにドナルド・トランプとかもあったりとかして、それぐらい注目度が高かったということなんです。
いろんなコラボレーション、これは「鼓童」という和太鼓のグループとやったりとか、歌舞伎の中村獅童さんとコラボレーションしたりとか。
こんな初音ミクなんですけど、結局初音ミクって何なの? ソフトウェアなの? キャラクターなの? バーチャルシンガーなの? 何なの? という。
初音ミクの紹介をする時に、けっこうな枚数で、作っている人たちの風景を僕は使うんです。そこが初音ミクの象徴的なシーンなんですね。「作る」というか「手を動かす」というところが。初音ミクの活動を通じて、僕が思ったのは、人っていうのは、創作をすることが好きですね。何かを作ることが好き。かつ、創作をした人とか、物を尊ぶ生き物なんだと感じました。
(図を指しながら)これは、YouTubeの何千件かの動画をトラッキングしてるんですけど。北米でクレディした結果です。右側のパイグラフはオレンジが女性、青が男性の割合を示します。左側にはいくつか棒グラフがありますけども、これは世代を表します。いちばん左が13歳から17歳、次が18歳から24歳、右にいくに従って世代が上がっていきます。
パッと見てわかるとおりですね、10代の女子がいちばんでかいわけですね。女性というか、10代の女の子が動画をよく見ているのが初音ミクのファンベースの姿かなと。
(スライドを指して)これはラスコー洞窟の壁画ですけども、人間は自己表現が大好きですね。これは最近始まったわけじゃなくて、昔からそうなんです。初音ミクによってクリエイターが増えたんじゃなくて、初音ミクは、こういった人間のクリエイティビティを顕在化したに過ぎない。それがインターネットという媒介を通って、世界中に共感を連鎖させているっていうのが初音ミク現象の実態なのかなと思います。
あと、初音ミクにとって幸いだったのが、音楽を奏でる存在だということ。歌を歌う、音楽を奏でる存在。イギリスの文人のウォルター・ペイターさんという方の言葉に、「すべての芸術は絶えず音楽の状態に憧れる」というものがあります。
これ、どういうことかというと、芸術ってペインティングもあれば彫刻もあったり、体を動かすパフォーミングもあれば、音楽もあったり。いろんな芸術があるんですけれど、音楽って、いちばんピュアな芸術だと言われているんです。つまり、悲しい音楽は、黒人、白人、アジア人、みんな悲しく聞こえるし、楽しい音楽はみんな楽しく聞こえるんですね。
そういったすごくピュアな芸術を、歌声を通して奏でる存在としての初音ミクは、国境を越えても、楽しいとか悲しいという感情をストレートに伝えることができる存在だった。だからこそ初音ミクが歌っている世界が国境を越えて伝わりやすかったんじゃないかと思います。
あと、日本の文化的背景もバックグラウンドにあるのかなと。(スライドを指して)これは文楽の人形浄瑠璃なんですけども、人でないものに、人として魂を吹き込むという文化が昔からあったんです。それが日本の文化のオリジナリティとしてあって、その文化がゆえに、初音ミクがドライブしやすかったところもあると思います。
そういった要因もあって、初音ミクが今支持されているのかなと思います。とりあえず前段の講義はこんな感じです。
いよいよ本題に入って、初音ミクのことをいつどういうきっかけで知ったかということに。ニコニコ動画とかYouTubeで知ったという方がYesで、それ以外のもので知ったという方がNoということでちょっとカードを上げていただいていいですか?
(参加者がカードを上げる)
ぱっと見半々ですね。真っ二つぐらいですね。意外とみなさん動画じゃなくてほかのことで知ったんですね。
アーティストさんともコラボレーションすることがありまして、先ほどちょっと飛ばしましたけれども、歌舞伎の演者さんとコラボさせていただいたり。あとアーティストだと、この間引退を表明された安室奈美恵さんとか、BUMP OF CHICKENさんとか。そういうコラボレーション系で知ったという方はいらっしゃいますか?
今年の8月で、初音ミクが登場して10周年を迎えたんです。つまり僕も10歳年取った。初音ミクが出てきた時には、知っていたか知らなかったかはともかく、みなさんも10歳若かったわけですね。
僕の姪っ子とかもですけれども、小学校高学年ぐらいになるといったんボカロにすごくハマるという時期があるっぽいんですよね。それが小学校高学年から中学生ぐらいかけてみたいな感じなんですけれども。そこからもうずっとファンになってる方、そういう時期に私もハマったみたいな方ってどれだけいますか? これは挙手で。
(会場挙手)
まぁ、今の学生さんぐらいだったら小学校高学年、中学生ぐらいの時期にちょうどかぶさるんですかね?
なるほど。じゃあちょっと次の質問に行きましょうか。「人形浄瑠璃も初音ミクも、人ならぬものに魂を吹き込む日本人の思想が背後にあると言われています。日本文化は人工知能時代にどう変わっていくと思いますか?」。
日本文化と人工知能の関係という、まったく距離がある2つをどう結びつけるのかってあまり考えが及ばない部分もあると思いますが。
八百万の神ってあるじゃないですか。思想的に。そのへんにある、万物に神が宿っているという思想って、日本人は意識をせずとも自然に感じてますよね。「山とか川が怒ってるじゃないか」みたいな。自然だけじゃなくて、家にあるぬいぐるみみたいなものもその対象になっていたり。
いろんなものに神様が宿っているというのが人類共通の考え方なのかなと思いがちで、ああいうのがあるから漫画カルチャーとかポップカルチャーとか、あとフィギュアのキャラクターがついたお菓子みたいな、そういうものに発展していったのかなって僕は思っていて。だから、日本のポップカルチャー的なものが好きな外国人は、日本人と同じ感じの考え方を持っているのかなと思っていたんです。
あるガチな、もうガチオタのブルガリア人がいて。彼は日本のポップカルチャーというかオタク系のコアな文化を雑誌にしてるんですね。2ヶ月か3ヶ月に1回ぐらいのペースですごく細かい非常に研究熱心な雑誌を出していて、ものすごい詳しいんですよ。
彼が札幌に来て、一緒に中華料理を食っていたときに、「そのへんにあるものに神が宿っているんだよね」という話をしたら、急に怒りだしたことがあって。「神は1つだ!」みたいな感じで。「あ、そこは違うんだ」みたいな。
いろんなフィギュアとか漫画とかそういうのが大好きで集めたりとかして、コスプレの雑誌とかも作っている方なので、同じなのかと思ったら、そこは違うんですね。一神教といいますか、「神は唯一だ」みたいな世界観、宗教観は持っていて。
日本人はそういう意味ではちょっと異質な存在なのかなと思ったりとかもするんです。そういうところで日本人というか、日本文化と人工知能的なものの関係性がけっこう見えてくるのかなと思うんですね。
例えば『鉄腕アトム』的なものとか。まぁ古典ですけどね。ロボットと仲良く生活をして、なんだったら悪いやつが来たらそのロボットに助けてもらったりとか。そういう世界観ってありますよね。日本人というか、僕らの世代だけなのかな。ロボットが合体してでっかい1個になって地球を守るみたいな、ありますよね。
ああいうロボットが身近で僕らのヒーローという感覚って、実は日本人独特のもので。欧米人だとすごく怖がっちゃうというか、ロボットとか人間以外のものに対する恐れみたいなものは、日本人が思っている以上に強い感覚なんだとたまに感じることがあって。
だから、我々の世代がおばあちゃんとかおじいちゃんになったとき、ロボットに介護してもらったりとかして、ロボットに「すいませんね」みたいなことを言いながら生活する。そういうのが日本人だとすごく平気というか、抵抗感がない。
というふうに僕はなんとなく妄想していますが、いかがですか? 「いかがですか」という振り方もけっこう乱暴ですけれども(笑)。
自分のロボット体験……ロボット体験というと変ですね。人工知能とか、どうですか、積極的に使ってみたいと思います? というか、むしろ使っているという方っています? こういう用途で私は、人工知能でもいいですし、ロボットでもいいですし、そういうのを活用して生活してるよって方っていたりとかします?(笑)。
いないよね。さすがに。だけど、前に後援会でちょっと知り合いになった、Pepper君と生活をしてる太田智美さんという方がいらっしゃるんですけれども。
その方が言っていたんですけど、「Pepper君がバージョンアップかなんかをします。ついてはPepper君の頭を返送してください」みたいな、そういったお手紙がソフトバンク社から届いて、憤慨したという(笑)。
それって、例えばソフトウェアのWindowsとかOfficeについて、「新しくなってバージョンアップをするので……」というふうにどこかの会社から連絡が来たときって、別に「はい、そうします」みたいな感じで、なんのためらいもないのかなと思うんですけど。ロボットの頭を送ってくださいとなると、「なにごとか!」っていう感覚ってなんかわかりますよね。
猫ちゃんでもいいですよ。「猫が病気なので、猫を送ってください」と言われると「なに言ってんの?」と思ったり。そういう受け入れ難いという感覚ってあると思うんですけれども。
太田さんがその講演の時に「私は、古いバージョンのPepper君と一緒に生きていこうと誓いました」みたいなことをおっしゃられていて。「ああ、そうなんだ」と思って。たとえそれが欠陥だとしても、一緒に暮らしていく中では個性になってしまう。
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