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カフェスタトーク★ゲスト:サラ・アドリエンヌさん 出演:平将明NM局長、生田よしかつさん、大澤咲希さん(2018.1.15)(全3記事)

サラ金を零細企業が利用する背景「日本は個人事業主がビジネスチャンスを逃しやすい」

平将明衆議院議員による、月曜カフェスタトーク・エピソードⅡしーずんⅠ。今回のゲストは、リヨン大学東アジア研究所 助教授・サラ・アドリエンヌ氏ら。「海外から見た『日本の貸金業制度」」をテーマとして語ります。

まじめな事業者が損をする時代

平将明氏(以下、平):じゃあちょっと先へ進んでいきましょう。

サラ・アドリエンヌ氏(以下、サラ):個人向け無担保ローン市場大きく変化しました。消費者金融会社の消費者ローン貸付高が大きく減少し、廃業した貸金業者も多い一方、銀行のカードローンの貸付高が増加してきました。

また、こうした規制の影響で零細個人事業の資金繰りが難しくなった面もあります。個人事業主の倒産件数も増加しました。ということですね。

:だから、こういうのを規制して、多重債務が増えて破産する人がいて、中にはそれから闇金に行っちゃって取り立てが厳しくて自殺に追い込まれるという悲惨なこともあった。「これはなんとかしなければいけない」ということもあったんだけど、一方で零細個人事業主ね。魚屋さんとか。

生田よしかつ氏(以下、生田):まじめにやってる、こういう人ね。

:個人経営の塾とか植木屋さんとか。そういう人たちって、なかなか銀行から資金を借りられなかったので、こういう金融を利用してお金を借りて、仕事をしてお金を短期間で回収する。というところが、お金を借りられなかったので資金繰りは困ったということですね。

だから事業者も困ったんだよ。事業者も規制が厳しくなったし、過払い請求でどんどんお金が出ていっちゃうから廃業を余儀なくされたし、どんどん潰れていったんだけど、こういう零細の個人事業主の資金繰りも厳しくなったという側面がある。

サラ:そういうことですね。

大澤咲希氏(以下、大澤):うまいことできなかったんですね。

生田:(笑)。

サラ:そうですね。

アメリカとの比較

サラ:日本の消費者金融規制の特徴と問題点を理解するために、ほかの先進国と比較したいと思っておりまして。

はじめはアメリカの場合ですね。アメリカは貸金業に関する連邦法はなく、それぞれの州による法律で定められています。例えば、ニューヨーク州の州法では上限金利は25パーセントなんですが、ニュージャージー州では上限金利は30パーセント。

ちなみに、借りる人の住んでいるところではなく、その貸金業者の本社の所在地がある州の法律の定めることですね。

生田:なるほど。じゃあ、ニューヨーク州に本社があるところがニュージャージーに支店を出して安い金利で貸すってこともやるわけだ?

サラ:そ、そうですね……。

生田:そうだよね。上限金利。

サラ:逆、逆です。

:いや、だから安い金利で貸すのはいくらでも貸せるわけよ。

生田:ああ、そうかそうか。上限だからね。

:ただ問題は、上限が高いほうがいいので、ニュージャージーでは上限金利が30パーセントということは、ニュージャージーに本社を置いた金融会社のほうが経営の自由度は増すわけ。ニューヨークに本社を定めると経営の自由度は低くなるわけ。

だからリスクを取れるのはニュージャージーの会社だけど、別にニューヨークに住んでてもニュージャージーに本社のある金融会社からお金を借りれば、上限金利30パーセントまでのリスクの高いお金も引っ張り出せるという。

生田:いや、おもしろいね。アメリカってやっぱりね。

サラ:サブプライム層をターゲットしたペイデイローンの場合のことを見るとよくわかるかもしれない。そのペイデイローンは給与を担保に高い金利で少額を貸し付けるシステムなんですね。

でも、州によってこうしたペイデイローンは禁止されています。例えばニューヨークでペイデイローンは禁止されていますが、違う州でペイデイローンが提供されています。

:州によって違うということですね。

サラ:そうですね。日本と同じような総量規制はないんですね。

:これ大事ですよ。総量規制はない。

生田:総量規制がないんだ。

:だから金利なんだけど、州によって違うので実質かなり高いところまで許容されているということ。で、アメリカは総量規制はないんですよ。じゃあ次いきましょうか。

イギリスの貸金システムはわかりやすい

サラ:はい。すみません。次はイギリス……。

大澤:けっこう借りようと思えばいくらでも借りられちゃうということですか?

:いやだから、高い金利でも借りられる。だから自由度が高いってこと。その代わり総量規制もない。

大澤:理解しました。

:はい、どうぞ。

サラ:イギリスも同じです。

:イギリスはもっとわかりやすい。

サラ:そうです。上限金利、貸付限度額、総量規制もありません。まったくないんですね。貸付限度額については2006年に撤廃されました。上限金利を導入する動きもありましたが、業界団体や専門家のほか消費者団体が反対して実現されませんでした。

:日本だと消費者保護団体とか弁護士とかマスコミがわーって騒ぐんだけど、なぜイギリスは消費者保護団体までが反対したんですか? この上限金利の規制に対して。

サラ:そうですね、経済がもうちょっともともと自由を求めているし、債務率は74パーセントですごく高いですね。いくら困ってるときお金を返すことが大事にして、金利が高くても短期のクレジットなので、1週間2週間ですぐお金を返すからそんなに金利が高くなくて。そういう考え方、歴史的にみるとそのやり方が伝統的な。

生田:イギリスいいねぇ。

:短期だったら金利が高くても大した話じゃないね。

生田:いやだって俺らなんてさ、本当に月末になって100万円とか足らねえとかってあるじゃん。50万足らないこともあるんだよ。そんなのだって2日借りられればいいんだけど、これでやってもらったらえらい楽だべ。

:そうだよね。だから金利を厳しく規制すると短期ローンができないんですよ。だから金利って年利でしょ。年利で考えること自体まったくナンセンスで。年利に規制すること自体がもう私はナンセンスだと思ってて。

だって、別に1年借りる人は年利で計算すればいいけどさ、1日借りる人は実額でいいと思います。ちょっとこの下を教えてください。

サラ:そうですね。その平均的な金利は1日1パーセントで、年利で計算すると2689パーセントにかかわらず、多くの利用者に支持され成長し続けました。

生田:いや、これ利用するよ。

大澤:これ1日1パーセントって、私たちの考えだとすごい高い。

サラ:うん。だから本当に短期。高い金利。

大澤:めっちゃ取られるじゃんって思うけど、1日で返しちゃうから。

サラ:そうですね。

日本だと上限金利規制に引っかかる

:例えばね、生田さんが年末に100万円でマグロを仕入れると。

生田:100万円が足んなくなっちゃった。

:100万円ね。こういうところからお金を借りてきます。でも正月だから、切って小分けにして売れば、もとは100万円だけど150万円で売れると。そのときにかかってくる金利が例えば6,000円だと。そうすると日本の法律だとアウトなのよ。日本の法律だと上限金利規制にひっかかるわけ。

でも、100万円で商売して150万円になるので6,000円の金利なんて屁でもないわけよ。それをなにも年利で考えることはまったくなくてさ。

生田:そうそう。

:借りるか借りないかは生ちゃんが考えればいいわけ。100万借りて儲かるんだったら借りればいいし、金利が返せないんだったら借りなきゃいいだけの話だよね。だからそういうビジネスチャンスを潰しちゃうんだよね。上限かぶせると。

生田:いやだからね、俺らサラ金利用するのけっこう平気なんだよ。だからサラ金利用して50万なら50万円引っ張ってさ。だって2〜3日で入金なんだもん。そしたらそれそっくり返しちゃえばおしまいだよ。1,000円とかそんなもんだもん。

:そうそう。ということだ。だからそういう意味ではイギリスというのは合理的で、だからこの金利1日1パーセントというのはそもそも年で考える必要はないじゃないかと思ってるわけ。イギリスの人たちは。

生田:まったくだ。

イギリスでは自己責任によるコントロール

大澤:確かに。でも、逆に「あと1日。あと1日」いって返せなくてずるずるしていくと、大変なことになる?

サラ:問題になります。そうですね。

:それはそうですよ。だからそこはイギリス人はやっぱり自分で判断。だから、規制されるよりも自由のほうがいいし、そのほうが経済が発展すると。あとは自己責任でコントロールをすると。

生田:いや、そう思うね。俺も。

:だいたい生ちゃんが魚屋で、マグロをこの時期買って儲かるか儲からないかというのは生ちゃんが判断すべきであって、金融庁や銀行が判断する話じゃないんだよな。そういうことなのよ。

生田:そうだよ。銀行につべこべ言われたかねぇんだよ。俺は。ばかやろう!

:すいませんねぇ。荒っぽい人が今日来てますけど。大丈夫。安全ですから大丈夫。

大澤:(笑)。

生田:危害は加えません(笑)。

:危害は加えませんので。じゃあ今度は……。

サラ:フランス。

金利規制が厳しいフランス

:金利規制が厳しいというフランスの事例を。

生田:おお、フランス。お地元ですか。

:そう。お地元ですね。

サラ:そうです。

:はい。

サラ:フランスは日本と同じように、銀行と消費者金融を専門とするノンバンクがあります。ノンバンクの貸金業については、銀行と同様に信用機関として免許が必要です。法律によって暴利的利率は禁止されており、違反すると金利は無効になります。

その暴利的な利率とは、フランス銀行が算出する利率です。例えば、額により、2017年の第4期で、貸付元本が約20万円の場合は20.60パーセント、でも元本が20万〜50万円の場合は13.12パーセント、元本が50万円以上の場合は6.40パーセントになりました。

:これ厳しいですよね。

サラ:厳しいです。

生田:厳しねえ。

:これ日本はどうなっているかというと、ちょっと日本の説明を少ししようと思うんですが、これが日本ですね。日本は10万円までが20パーセントなので、フランスは20万円まで20パーセントですから、ここはほぼ一緒ですよね。

それで20~50万円ということは、ここまでか、ここまでが13.12なのでもっと低いわけです。こんへんになるわけ。それで50万円以上が6.40ですから、ここからこうなんだよね。だからそういう意味では、イメージ的には、こんなかな、こんな感じになっていると。低いんです。

それでただこれはね、実はフランスは純粋に金利を見てるんだけど、日本の規制というのはこの中に手数料とか保証料とか全部入れてここの規制というのになってるので、フランスは低くてもこのほかに手数料が取れたり保証料が取れたりという仕組みになっている。ただ、まぁ厳しいですねと。

注目点はここですね。総量規制は、それでも総量規制は設けられていません。というのがフランスですね。

生田:いや、だけどやっぱり自由度が高いね。海外はね。

:総量規制って、まぁあれなんだよ。

総量規制がないドイツの事例

:まぁまぁ、ドイツいってみましょう。

サラ:ドイツは、日本やフランスと違ってノンバンクはありません。

:ない。

サラ:そうです。信用機関として免許が必要です。その大半が銀行や証券などを扱う総合金融機関ですね。これらの信用機関・金融機関が融資業務を行っているのですが、上限金利は判例法で決まっています。毎月ドイツ連邦銀行から発表される市場金利の2倍、あるいは市場金利プラス12パーセントのいずれか低いほうを超えると金利は無効です。

生田:へえ。

大澤:難しい。

サラ:どちらかというと、フランスと同じレベルの金利ですね。

大澤:じゃあけっこう金利は……。

サラ:低いです。総量規制はないです。

大澤:設けられていないんだ。

サラ:はい。

:これを見ると、アメリカ・イギリスは英米法、フランス・ドイツは大陸法のなかで、アメリカ・イギリスは極めて自由度が高い。ドイツ・フランスはやっぱり金利はけっこう厳しく制限されています。一方で総量規制を設けてる国はどこもありませんということなんですね。

生田:借りるほうからするとけっこう手軽だよね。このほうがね。両方ともさ。

:うん。だからあとはね、さっきも言ったように、例えば小口の短期ってなると、初回の手数料とか入れると、実質負担額が、金利プラスアルファのところをいくと、イギリスのシンクタンクの試算によると、全部入れると30パーセントぐらいになったりするので、ですからそうすると日本の昔の出資法と同じぐらい。

だから言葉はね、ドイツもフランスものすごい厳しいとかね。あとこの「暴利的利率」とかね。こういう厳しい言葉があって、だから日本はもっと下げなきゃ下げなきゃという議論だったんだけど、小口の短期とかいうところでいくと、実質の借りてる側の負担は同じぐらいだということになります。はい、じゃぁどうぞ。

日本は個人事業主がビジネスチャンスを逃しやすい

サラ:ほかの先進国と比較した場合は、貸金業規制、金利規制、総量規制は日本の消費者金融制度の特徴であり、消費者保護に配慮した制度といえますね。ただ、この規制によりさまざまな問題点が現れてきました。

まず、総量規制により低所得の借り手が貸金市場にアクセスできなくなっており、経済的な理論から考えると非効率で不平等的な制度といえます。また、金利規制で小口ローンを提供する貸金業者が廃業したため、供給と需要がマッチせず、市場が非効率な状況になっております。

:ちょっと規制しすぎて歪んでいるということですよね。それで例えば信用がなくても、ビジネスチャンスを掴んでどんどん大きくなっていくとか儲かる好循環にいくための最初の資金が調達できないという話。

生田:そうだね。

大澤:あれですか。『陸王』とかも。『陸王』見てました?

:あ、見てない。ごめんね。

大澤:『陸王』もお金が借りられなくてすごい大変みたいな話だったんですね。

:まぁまぁ、だからそういうことで。もっというと、陸王ってけっこうメーカーだから相手銀行かもしれないけど、個人事業主だよね。個人事業主がやっぱりビジネスチャンスを逃しやすい。

生田:そうだよね。

:例えば庭師さんって庭つくる人いるでしょ。庭師さんって「庭つくってね」って言われると、職人さんを集めて、それで先に植木とか石とかを仕入れして庭をつくるのね。

そのときに銀行がお金貸してくれないから、こういうノンバンクを使ってお金を調達をして、それで人を集めて、その人たちのお給金先に払って、それでできあがったらその注文主からお金をもらうわけ。

だからプロジェクトファイナンスなんだけど、そういうすごい小口のプロジェクトファイナンスみたいなのがまったく機能しなくなった。

生田:建設の孫請けなんかもそうだろうな。

:という問題があったりするということですよね。

生田:でもさ、総量規制というのってさ、これ機能してるの? 日本では。

:総量規制はだから、要は収入の証明を出さなければいけないので。

生田:ああ、それか。

:だから、これもおもしろいのが、専業主婦はお金借りられないんですよ。だから「旦那さんのサインをもらってきてください」ってなるんだけど。

でもさ、実はいわゆるマイクロファイナンスみたいなノーベル賞取ったやつなんかもそうなんだけど、女性のほうがお金の感覚しっかりしてて家計を握ってたりするから、だからそういう歪みも出てきていますよね。

生田:総量規制撤廃。どうだい?

(一同笑)

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