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新しいお金のかたち。新しいお金で未来はどう変わるのか? 変わらないのか?(全3記事)

「お金は多いほうがいい」という価値観は崩壊する メタップス佐藤氏が語る、ベーシックインカム後の世界

2017年10月18日、一般財団法人Next Wisdom Foundationが主催するイベント「まわるケイザイ大YEN会」が、東京都千代田区のLIFULL Tableにて開催されました。ビットコインをはじめとした仮想通貨やFinTechなど、近年注目を集めている「お金」の話。ほぼ毎日と言っていいほど触れるお金ですが、その本質について改めて考える機会はあまり多くありません。そこで、お金の歴史・現在・未来の3つのテーマを設定し、ゲストとともにお金の成り立ちから今後の在り方まで、余すところなく語り尽くします。第3部「お金の未来」には、DEFTA PARTNERSグループ会長の原丈人氏、評論家の山形浩生氏、そして株式会社メタップスの佐藤航陽氏が登場。仮想通貨やトークンなど、既存の通貨の枠にとらわれない、あらたなお金の在り方を語ります。

仮想通貨とベーシックインカム

原丈人氏(以下、原):せっかくだから質問もお聞きしましょうかね。何かあります?

(会場挙手)

どうぞ。

質問者1:今夜はすごく興味深い話を聞かせていただきありがとうございました。今のお話で、これからAIに取って代わられて「働き方どうするんだ」と言われているときに、トークンをベーシックインカム的なものに使って、人々の生活を守ってさらにクリエイティブに使う、みたいな考え方とかお持ちですか?

:じゃあそのあたり佐藤さん山形さん、手短に。

山形浩生氏(以下、山形):基本的にベーシックインカムというのは、僕はそういう条件つけないで、とにかくあげる、という話だと思うので、むしろ貨幣経済に限られた話だと思いますね。

一方で僕は、あらゆるものをトークン化して貨幣の流通として乗せてしまうということは非常に危険だと思っていて。ある意味でお金の良さっていうのは、確かに誰かが1万円分働いた、という証拠ではあるんだけれども、あまりいろんなことが「わからない」と。

それは履歴があんまり完璧ではないとか、その人たちが具体的に、何を価値として見出してるのかがあまりわからないというところにあると思っていて。それがまたお金を使うときの匿名性とかプライバシーの根拠になっていると。

それを全部データ化してお金に乗せて交換すればいいことになるか、っていうと……僕はひょっとしたらそれは、あんまり良くない管理社会への道ではないかともちょっと思っているんですね。

一方で、社会の持ってるそれ以外の価値、お金ではない価値というものは、例えばフリーソフトの世界とか、完全にお金とは切り離されたところで生まれてる。そして、その価値を元にまた別の経済が回る、お金の経済が回るということもあり得るので……ちょっと離れちゃいましたけど。

ということで、僕は必ずしもベーシックインカムというものは、トークンなどに根拠づける必要はないと思ってます。ただ、お金以外のところで新しい価値が増大するに従って、ベーシックインカムをあげる根拠として、そういうものがあるんだ、という理由付けをすることは可能かもしれないと思ってます。

ベーシックインカムでお金はコモディティ化

:もうちょっと時間使ってもいい?

山形:ああそうか、もうそんな時間か!

:大丈夫ですか? じゃあ佐藤さん、お願いします。

佐藤航陽氏(以下、佐藤):はい、わかりました。そうですね、私は……ベーシックインカムが普及すると、お金が圧倒的なコモディティになるんじゃないかなと。今は、お金があることによってうらやましがられたり、あとはお金があるほうへ意思決定すると思うんですが、こういう価値観は完全に崩壊するだろうなと思ってます。

その意味では、本当にベーシックインカムが普及したあとっていうのは、働くことやお金を稼ぐこと、お金が必要っていう概念そのものが消えちゃうので。もしかしたら経済という仕組みそのものも私たちにとって必須じゃない可能性が出てくるんじゃないかなと。

お金があること、働くことっていうのはオプションであって、働かなくてもいいし、働いてもいいし、遊んでてもいいし。そこは経済の枠組みから離れちゃう、っていう気がするので、トークンとはまったく違う方向に行くんじゃないかなと思ってます。

新しいお金はどこまで安全であるべきか

:それはそのとおりでね。例えばブータンでは、1日あたりの所得って、1人あたり200円以下なんですよ。しかし住んでる家は、みんな大きな家です。なぜできるか。これはちょっと後で(笑)。じゃあ、質問。

(会場挙手)

質問者2:新しいお金の安全性の問題が出てきたと思うんですけど、今の法定通貨、とくに日本のお金というのは、安全すぎてお金が回らない、というような状況だという見方ができるかと思うんです。

この新しいお金っていうのが、その安全性をある程度棄損するかたちで回す、という発想があると思うんですね。地域通貨というのも、もともとは、ゲゼルマネー、変化するお金という観点で作られたもので。それはお金の価値を棄損することで回していこう、といったものだと思うんですけれども。安全性を追求していくか、それともお金を回るようにある程度犠牲にしていったほうがいいのか、そこら辺の考え方をおうかがいしたいと思います。

:答えられる前に。ダボス会議の2009年の発表では、いわゆる銀行間送金における、途中で盗まれる額が、3 trillion dollar。300兆円。クレジットカードはその3倍ですから。それが2009年ですよ。それ以降はもう発表もしない。

去年までアメリカンエキスプレス社は、いわゆるクレジットカードの詐欺に関して全額補償してましたけど、今年からは一部エンドユーザーに分担を求める。それくらい詐欺が多いんですね。安全じゃない。クレジットカードも銀行間取引も。だから全部、ブロックチェーンも含めて、いろんな点で問題点もあるので……まぁそれも長くなるから省きます! じゃあ今の質問に対して答えを、手短にちょっと、佐藤さん。

佐藤:はい、安全性って意味ではまさにおっしゃるとおりだと思います。個人的には、新陳代謝がない限りは経済って澱んでいくので、いかに強制的に新陳代謝を促す仕組みを通貨、もしくは経済のルールに織り込めるかどうか、そこが肝かなと思ってます。

昔、価値が減ってく「減価の貨幣」をやったりしましたけど、なにかしら強制的にお金を使うっていうモチベーションを作ってあげないと、今の日本みたいに経済が滞留しちゃうので。そこはたぶん今後トークンエコノミーやICOをする上でも、みなさん課題に思ってますよね。いかに回すか、ってところを。

山形:今おっしゃったとおりでありまして。やっぱり今の日本のお金っていうのはマイナス金利になっていて、まさに減価するお金になっているわけですね。一部の「金本位制に戻せ」とか言ってる人たちっていうのは、まさに中央銀行がいて、勝手にお金を刷れる、それが今のお金の一番危険なところだ、というような言い方をしている。

逆にほどほどに危険なほうが、お金っていうのはいいんじゃないかと。それは今言ったような新陳代謝の面でもありますし、または実物経済とお金っていうのが、どっちのほうが安全か、という話で経済の在り方も決まってくるので、それは別にガチガチに安全である必要もないし、だからって野放図に刷りまくればいいっていうわけでもないし。

そのバランスをどう取るかという部分で、完全にビットコインみたいな技術に任せるのか、黒田やイエレンだって言う人を信用するのか。そのあたりでいろんな立場があると思います。

佐藤:朝起きたら口座が半分になってた、とかのほうが楽しいですよね。

山形:(笑)。

佐藤:もしかしたら明日にはないかもしれない、今使おう、と。

山形:明日はやめてください……明日は僕ローンの支払いが(笑)。

(会場笑)

明後日なら大丈夫(笑)。

新しいお金でアフリカの経済を変える

:これはもう延々と続けたいおもしろい議論なんですけども。……まだやってもいいのかな?

司会者1:そろそろですね(笑)。

:もう終わったほうがいいね!

まず、未来のお金は、安全性と流通は関係ないですよね。だって自分のお金が盗まれたらいやでしょ。だから安全な方が絶対いいですよね。ですから、その盗まれるという点の安全性と、価値の普遍性の問題は、市場経済である限り絶対起きますよね。

投機が来れば必ずバブルが起き、バブルは必ず破裂するわけですから。ずっと上がりっぱなしのものってのは、住宅の価格にも何にも、絶対ないですよね。見てわかるように。ですから投機ということにならないような、なるべくなりにくいような仕組みを流通の中にいかに組み合わせるかというのは非常に大きな問題。これはさっき言った制度のところにビルトインする必要があります。

また技術に関しては、佐藤さんの話の、いろいろな価値をそれぞれの発行体が定義できるという点に私は非常に共感をしました。

(佐藤氏、山形氏とは)今日初めて会ったんですよ。始まる3分くらい前に。

(会場笑)

初めて会ったんだけども、初めて聞いて、「ああいいこと言っておられるな」と思いました。我々はアメリカやイスラエル、いろいろなところで技術開発やってますので、佐藤さんのおっしゃられた価値を組み込める流れを作れれば、とてもおもしろいなと感じました。

ただ、山形さんと話をしてると、ジンバブエね(笑)。これ大統領が刷れ刷れって言ったけど、刷らせるように持っていったのはイギリスですからね。よく覚えといてください(笑)。

本を読んでいくとジンバブエが悪者になるんだけど……というのは本もすべて、英国やアメリカの学者が書いたものを、ハーバードやケンブリッジやオックスフォードといった英米の大学に行った日本の人たちが翻訳してるからです。でもアフリカに行って、現場の声を聞いてで学んだ人たちは違う見解を持っています。

ですから、みなさんは途上国のことを知るときには、必ず現地に行って、現地の人たちと実際の話を聞いてから判断するようにしてください。

(会場笑)

とにかく、ジンバブエだけでいうと、プラチナ、金、ダイヤモンド。埋蔵量世界一です。でも貧しいんです。1日200円以下の所得。なぜ貧しいのか。これは英米による経済政策ですね。

いろいろなそういった資源があるので、資源を取らずにそれを担保としたコイン、これをクリプトカレンシー、暗号通貨として発行する。こういったことを、ジンバブエのみならずアフリカ全体の公益の進化のためにつかっていくことが可能になるのです。公益とは、わたくしたち及び私たちの子孫の経済的、精神的な豊かさのことを指します。

アフリカは54ヶ国ありますから、そのうち1番大きな19ヶ国からなる市場共同体、アフリカ版TPPで1番大きいものを、COMESAと呼んでいます。SADCというもう1つの南部アフリカ開発共同体と合併するのがここですね。この合計が27ヶ国。

こうした地域で、ジンバブエの資源を担保にした……実際に掘りませんから環境にはいいんですよ。でもなんらかの対価がないと投機の対象になっていきます。でも担保があると安全ですよね。そいうふうに人々は思いますので、それをほかの貧しい、資源のないアフリカの途上国に対して提供する。

日本の技術と日本で考えた制度で、そういった仕組み作りをして、アフリカが将来、世界で1番大きな経済大国になったときに、日本も恩恵を十分に受けられるように。今から連携を持っていくかたちが作れれば、大変におもしろいなと思っています。

未来のお金っていうのは本当に、今の円だとかドルだとかポンドだとかスイスフランといったものとは、まったく違うかたちになるだろうと、私の頭の中ではかなり明確になっております。今日はそのうちの氷山の一角の議論を、山形さん、そして佐藤さんのお二人が話してくださいました。

まだ言いたいことありますけど、限られた時間なので、これで第3部も終了させていただきます。本当にどうもありがとうございました。

(会場拍手)

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