2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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今井紀明氏(以下、今井):中川さん自身は、不登校はなかったというか、登校拒否などそのようにやたら言われた時代ですか?
中川和彦氏(以下、中川):そうだ、登校拒否という昔がありました。そういえば、不登校という言葉ではなかったな。
今井:そうですよね。
小幡和輝氏(以下、小幡):「不登校」という言葉が出て来たのはいつなんですかね?
今井:時代が変わることで(呼び名も)だいぶ変わってきた。90年代から、ずっと言葉が変わってきた。
中川:俺も、そんなに深刻ではなかったけど、高校に入ったときにちょっと辞めようかなと思ったことがある。学校とぜんぜん合わなくて「ここの学校の奴らは本当におもしろくないな」と思っていたんです。でも、中学を出てすぐ働くのは嫌だなと思ってね。
今井:大阪のどのあたりの出身なんですか?
中川:僕はもともと東大阪なので、第五学区というエリアになります。河内エリアですね。中河内エリアというのかな。
(行きたくなかった気持ちは)わからないと思うけどね。長瀬川という川が学校のそばに流れていて、それが見えてくるともう嫌になってくる。1年生のときは「あー、嫌だな」「早く帰りたいなあ」と思っていて、授業が終わったらすぐ帰ってました。2年生になっても、なんか……。当時の俺は目標がなかったからかな、特別な。
小幡:でも、なんだろう。僕も、ずっと常に行きたくなかったのかというとそうではなくて。「行ってみたい」となった時期もありました。あとは、小学校に行かなかった時期も、僕は適応指導教室で卓球をやっていたので、その授業だけは行ってました。
中川:あー。
今井:「適応指導教室」はわかりますか? 今は自治体によってある場所とない場所があるのですが、学校に通えなくなった子向けに行政や自治体が一応用意しているところがあるんですよ。学校や教育委員会としては、行かせるという場所ですね。
小幡:そこで僕は、卓球とトランプをやっていました。僕は小学4年生くらいからそこに行きはじめました。中学3年生くらいの子や小学1年生くらいの子など、10人くらいの学校に通えない子たちが集まって、みんなで遊んでいましたね。
中川:ああそうか、僕はだからあれだな。今、よく考えたら高校3年生のとき、だんだん行かなくなってきたんです。自分で勉強をしていたらいいやと思い出して。高校にはクラブというか、球技大会のハンドボールの練習だけ行っていた感じ。それはみんなで練習しなくちゃいけなかったから。
今井:でも、その感覚はすごくあった。実は今も、そういうものが不登校の生徒たちの中にいるんですよ。
中川:だから俺も、不登校と言われると不登校かどうかがわからなくなって。先生には「出席日数が足りない」と言われたんです。うちの高校は出席日数を計算してました。でも僕はそんな計算はできないから「行きたくないから行かないでおこう」みたいなところでした。
小幡:休みの回数を計算して、ここまでだったらOKみたいなものですよね。
中川:俺もそういう考えはなかったから。あるとき現代国語の先生に「お前、出席日数が足らないよ」と言われて、それで慌ててその授業だけは出るようにしていました。でも、お昼ごはんを食べて、昼の休憩でハンドボールをやったらすぐに帰っていたから。女の子と一緒にもう帰ろうか、などと。
今井:それ、うちの生徒も同じなんですよ。定時制高校の生徒たちもけっこうカウントするんですよ。
中川:けっこうカウントしている(笑)。そうなんだ。
小幡:一緒ですね。僕はけっこう真面目に出ていたのですが、確かに周りの子たちは「あと何回ぐらい休めるかな」という感じでしたね。「あと3回は休める」みたいな。
中川:だから、なんとなく僕は「おらんでもよければ行かないでいいじゃん」というような感じはあるね。「なんでそんなにおもしろくもないところにところに行かなくちゃいけないのだ」と。別に俺のせいでもないしと思う。
今井:今、不登校の率で言うとすごく高いんです。
中川:え、どういう意味?
今井:今は人口が少なくなってきていますよね。少子化のせいですが。それでいて、不登校の率が上がってきているんですね。
小幡:ものすごく増えていますね。人口が減っているのに増えている。
今井:通信制高校というものがありますよね。今年だけ少し下がったのですが、少子化なのに過去6年間くらい生徒が微増していっているんですよね。通信制高校は今18万人くらいいて、そのうち高校中退経験者が7割、あとは不登校経験者なんですよ。
学校数も増えているし、生徒数も増えているのが現状です。定時制も生徒数10万人で多少上下はありますが、横ばいなんです。だからそういった意味では、不登校などの経験をしている子たちは増えているという見方はあります。
中川:先ほどのその……なんだったっけ?
小幡:適応指導教室。
中川:そう、変な名前の。
小幡:変な名前(笑)。
中川:「適応とはなんやねん」という。
小幡:登校しているのが正しくて、そこに適応させる。適応指導教室という名前がそもそも問題があるよなという。
中川:すごい名前だな。
小幡:僕、その当時にそもそも適応指導という言葉の意味がよくわからなかったのです。だから「ちょっと今日、適応へ行ってくるわ」みたいな会話が常にあるわけですよね、小学生が。
今井:すごくおもしろい会話だよね。
小幡:すごいですよね。冷静に考えるとすごいことを言っているなと思って。小学生が「適応行ってくるわ」と親に言っているわけですよ。子どもだから意味がわからなければいいのですが、冷静に言葉の意味を考えるとかなりやばいなと思います。
今井:適応しないといけないと。
中川:「なににだよ」という話だよね。
小幡:言葉からして、学校に行けない子たちに「そのままではダメ」「学校に戻すということが正しいと」いう価値観がやはりあるのかなと。
中川:それができたら苦労しないよな。
小幡:そうですね。
小幡:あと思ったのは、当時ずっとそうだったんですが、毎朝親と喧嘩をするんです。その……学校へ行けとか。
でも僕は行きたくない。結果、毎朝喧嘩するのです。どうして行きたくないのかと言われても、あまり理由が明確にないんです。そもそも僕自身も、今でこそかなり理論的に言うわけですけど、その当時はわからないし、うまく言えないです。
中川:それは無理だよな。
小幡:別にいじめられたわけでもないんですよ。正直に言うと、なんか空気感がよくない。そもそも学校という空間が、なんとなく楽しくない。本当になんとなく楽しくないんですよ。でも、「なんとなく行きたくない」と言うと絶対に怒られるじゃないですか。
今井:親は理由を求めている。
小幡:理由を言えば、解決していくじゃないですか。でも本当になんとなくなんです。なんとなくの違和感があって、なんとなく行きたくなかった。しかも学校以外の時間、例えば従兄弟とゲームをする時間はすごく楽しい。「なんで行かなきゃいけないんだ」ということで、ずっと喧嘩をしていましたね。
中川:なるほど。
そもそも、小幡くんは中学校に2日しか行っていないんだろ?
小幡:はい。
中川:2日しか行っていなくても、一応卒業はできるわけだ。それもおもしろい仕組みだなと思うけど。卒業とか、あれってなんなの? 単位と違うよなと思っていたら単位と言っていたじゃん?
小幡:一応、単位認定です。
中川:単位認定だよなあ。
小幡:極端な話、1回も行かなくても卒業はできます。
中川:それもよくわからないよな、なんで卒業ができるのかな?
小幡:高校は違うのですが。
中川:あ、高校は違うんだ。あ、そうだよな、俺も言われているから。
小幡:結局、義務教育だからじゃないですか。だから、親が教育を受けさせるという義務がある。そうした義務教育です。逆に言うと、子どもが行きたいと言っているのに親が行かせないというのはもちろんダメです。
でも、子どもが行きたくないと言っている時点で親の義務は果たしているんじゃないかという。こっちは、その権利を放棄している感じだから。義務教育だから行かなくてはならないという理論は、子どもの方の意識がそうであれば考えられるべきところがある。
中川:それ、なんかホリエモンが言っていたな、そういうこと。
小幡:言ってました?
中川:「行かなくていいんだよ」というようなことを。
小幡:堀江さんは「学校はいらない」って言いますよね。
中川:うん、まあまあ。
小幡:これ、本の中でも考察しているのですが。極論ですが、義務教育がなくなって、みんなが自主的に学習するようになったらどうなるのか、そうした社会はどうなるのかということを書いているんですね。
ただ、これはたぶんダメだなという僕なりの結論があります。やはり、世界的に見たときに、最低レベルの教育が一定基準で充実している方が、国として成功していると思うんですね。最低レベルの知識をみんなが持っている状態があるから、経済が発展していくと思っています。やはり、これは軸としてありえるなと。
ただ、これが基準としてはあるけれども、ここはあくまでも権利のような感じで。ここに、ちょっと学校と合わない、行きたくない子たちは家で勉強してもいい。逆に学校の勉強以外、例えば「音楽、イラストなど別の分野でがんばるぞ俺は」みたいになるといい。
中川:それ、小中学校の話だな?
小幡:そうですね。
中川:それくらいのレベルの。
小幡:僕の中では、義務教育は小学6年生くらいまででいいのではないかと。内容的に小学6年生くらいまでは最低限みんなが持っておいて。中学に入ってから、改めているものもあると思いますが、大体こうセンター試験の部分を意識した問題が多いなと思っています。
改めて振り返って「社会で生き抜く力」と言われたときには、小学6年くらいまでやっていればいいのかなと思いました。
中川:でも、なんかそれってさあ、社会で生き抜く力だけを身につけるということでもないような気がするけどな。
小幡:学校がですか?
中川:社会で生き抜くための力とはなんだろう? それはだから、学校の勉強……?
小幡:僕の定義なんですが、学校が持っている役割を分解すると2つであると思いました。1つは勉強する場所。もう1つはコミュニケーションの場です。勉強する場と友だちを作る場所という、2つの役割があると思っています。
でも、それはインターネットという大きなものが大前提で含まれていないと思っているんです。
例えば、家で勉強をしようと思ったときに、ネットで検索をすれば基本的にいろんな答えが出て来ます。いろんな動画も上がっています。家で勉強をする仕組みも揃っています。友だちもその地域の学校だけではなくて、インターネットのSNSを使って地域を超えた友だちも作れます。
そうなったときに、今の学校教育は、この選択肢を容認しない設計図だと思うのですよね。こうした状況がある中で、今の時代の学校教育はどのように、いかによくブレンドしていくか。そうしたことをたぶん考えなければいけないのではないかと。
中川:なるほどなるほど。
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