
2025.02.18
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佐々木紀彦氏(以下、佐々木):いろんな方に来て頂いているので、質疑応答をしたいと思います。
質問者:経済メディアの読者やユーザーの性別の問題なんですけれども、全体的に経済メディアの女性の読者が少ないと思います。
なので、今はどんな割合になっているかということ、フィナンシャル・タイムズに関しては少し前に支局長が女性だったこともあって、だいぶ差があるとは思うんですけれども、その辺りが伺いたいです。
あと、もうちょっと突っ込んで、なぜ女性が経済メディアを読まないかというところで、ちょっといじわるな質問をさせていただくと、メディア側もジェンダーバイアスがあるということなのか、それとも読者のリテラシーが低いのか、メディアが問題なのか、女が馬鹿なのかどっちかお聞きしたいです。
佐々木:お二方どうですか?
ジョナサン・ソーブル氏(以下、ソーブル):読者でいうと、私にはフィナンシャル・タイムズの読者の圧倒的過半数が男性だと言い切れると思うんですが、その正確な数字を今日は持っていません。
記者や編集の方で言うと、確かに私の前々々任者の東京支局長が女性で、彼女はそのあとアメリカのトップエディターになって、次の編集長候補の1人になっています。
ついこないだ発表になったのが、ワシントン支局長に女性が就任することになって、確かにフィナンシャル・タイムズのスタッフの顔をみると男性が多いんだけれども、会社に昔からある社風というか、考え方を変えようという動きはある。
基本的に経済メディアというのを楽しく読んでいる人って少ないかもしれないですよね。単に、自分が世の中の出来事についてひと通り知りたいだとか、読むのが楽しいというモチベーションだけで経済メディアを読む人って相当マニアックじゃないといないわけですよね。
これを知らないと自分のビジネスが危ないとか、読者の男女のブレイクダウンは実際に会社、特に会社の意思決定層における男女のブレイクダウンをある意味で反映してると思うんですよね。
佐々木:大西さんいかがでしょうか。
大西康之氏(以下、大西):それも時間の問題じゃないですか? ほっといたら上がってくると思いますよ。会社で採用担当をやらされるんですけど、面接をすると今圧倒的に女性の方が優秀なんですよ。
素で判定しちゃうと採用が女性ばっかりになっちゃうんでまずかろうと言って、男に下駄履かせてバランスとってるっていうのが本当のところ。今ジャーナリストを目指している若者の比率でいうと、女性の比率がものすごく上がってきていて、今新卒の3割くらいは女性じゃないかな?
僕らの時は1割もいなかった。あと、ビジネスの世界を見ても、IBMもHPもYahooも女性がCEOでしょ? おそらくそれが当たり前になってくるわけですよ。日本は相当時間がかかると思いますけど、だんだん実力勝負で女性が上がってくるでしょう。
そうすると、自ずとメディアの方も変わらざるを得なくなってくる。今日本のメディアが男子校状態になっているというのが、遅れているというだけの話ですよね。
ソーブル:ちなみにフィナンシャル・タイムズの本当のトップ……親会社の社長ですね、その人も女性だったんですよね。去年引退しましたけど。フィナンシャル・タイムズをずっとかわいがっていたので、いなくなるのがすごい寂しかったんですけどね。
佐々木:ありがとうございます。他に質問あるかたいらっしゃいますか?
質問者:8月にフィナンシャル・タイムズの方で、日経の業績報道に対して疑問を呈する記事が上がったと思うんですけど、それについて海外メディアの視点から見て、日本の経済報道に対するこの辺がおかしいんじゃないかとか、こうした方がいいんじゃないかとか疑問があればお伺いしたいです。
逆に日経の大西さんには、そういう海外の日本に対する経済報道について、いろいろと疑問な点があると思うので、それについて聞ければと思います。
佐々木:いい質問ですね。
ソーブル:日本のビジネスメディアの経営者だったら、ビジネスモデルに対する1つの大きな脅威になるのは、会社の情報開示の変化ですよね。
特に、規制が厳しくなって、そういう日本でよく見る発表前日の報道が決まっているけれど、まだ発表していないタイミングのスクープが取りにくくなることが怖いと思いますね。特に起業の財政、決算などのスクープが。
すごくおいしいスクープなんだけれども、イギリスやアメリカを見ると、結構取りにくくなっているというのが事実ですね。会社側からはこれしゃべっちゃったら、当局から厳しい扱いをされるっていうことでね。
佐々木:どうですか、大西さん。
大西:今のは日本の経済についての質問……?
佐々木:ただソーブルさんの話に反論して頂ければいいんですよ。質問の内容ってあれですよね? 業績予想とかの話が日経でいつも早めに出てると。そういうのってありなのかっていうことを、フィナンシャル・タイムズが書いたっていう話ですよね?
大西:それは、僕の口からは言えないですよね。多くの記者はそこに命をかけてやっているわけで……。
ソーブル:だから、それができなくなったら怖いんですよね。会社の口が固くなったら……。
大西:一時期、インサイダー取引が厳しく言われた時に、企業側が開示とはなんぞやという定義の話になって一紙単独でのスクープは開示のうちに入らないということなって、必ずそのリークの時になぜか横にNHKがいるだとか、なんだこれは、みたいな時期があって、それは最近やっと無くなったんですけどね。
それは、海外から見れば変なのかな。でも、フィナンシャル・タイムズにもM&Aでそういう記者いますよね。
ソーブル:M&Aに関しては、四半期の決算とか新株発行とか、そういうマーケット方面だけじゃなくて、財務的な数字などが発表前にバレるとか、ああいうのについては、海外では特に厳しくなっていますね。
僕はフィナンシャル・タイムズやら、もっと人がいるウォール・ストリート・ジャーナルとかがアップルの決算を発表日の2日前にすっぱ抜いたとか見たこと無いですね。
大西:そこはどんどん厳しくなっていて、昔は日経の業績報道っていうのは、先取りってあって結構甘かったんですよね。営業利益3000億から5000億とか、そんなんじゃ意味ねーだろぐらいの話だったんですね。
じゃあ、どこまで絞るのみたいな取材をしてきてるんだけど、だんだんそれも許されなくなってきてるんですよね。もしも、それが翌日発表になって500億ずれてたら、それは誤差と言い逃れられるのかというところで、昔は誤差と言えたけど、正確に言えば500億は違うわけですよ。
そうすると、だいたいのレンジでは感触を掴んでいるんだけど、それをその時点で打つかどうかというところはだいぶ大雑把になってきていますよ。
ただそれを半日早く読むことに読者がどのくらい価値を見出してくれるかというところもこれから考えなくてはいけない。半日早くても500億ずれてるっていう報道に本当に価値があるのか。
それだったら、当日でいいからドンピシャな数字がいいというのか、多少ぶれても早いほうが価値があるのかっていうのがね。そこはでも、正確なものにふれてきている感じがするので、「えいやっ」ていくのは難しくなってきていますね。
佐々木:ありがとうございました。
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