2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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佐々木紀彦氏(以下、佐々木):それでは「経済ジャーナリズム・イノベーション」というセッションを始めさせていただきます。本日はお忙しい中、お越しいただきありがとうございます。まずこちらがフィナンシャル・タイムズの東京支局長のジョナサン・ソーブルさんです。みなさん拍手でお迎えください。そして、日本経済新聞社の編集部員の大西康之さんです。
大西康之氏(以下、大西):よろしくお願いします。
佐々木:まず最初に簡単な自己紹介から。1、2分とかで構わないんですけれども、簡単に自己紹介から始めていただいてもいいですか。
ジョナサン・ソーブル氏(以下、ソーブル):はい。よろしくお願いします。フィナンシャル・タイムズのソーブルです。支局長というポジションですけれども、私はフィナンシャル・タイムズに入所したのが2007年で、支局長は去年の初めから勤めさせていただいています。
日本には合計すると16、7年くらいなんですけど、学生時代の留学の頃も含めてですね。ジャーナリストとしては2002年から東京にいます。最初はロイターを通してフィナンシャルタイムズに入りました。出身はカナダです。イギリスの新聞社ですけれども出身はカナダです。よろしくお願いします。
佐々木:大西さんどうぞ。
大西:私は1988年に日本経済新聞に入りまして、そのまま26年ずっといます。主にビジネスニュースの担当をしておりまして、自動車とか商社とか鉄鋼とか情報通信とか、エレクトロニクスとかをやってきました。98年から2002年までロンドン。ここでもミクロなニュースをカバーしてきました。
日経ビジネスで3年間編集員をやって、日本経済新聞でデスクを4年やって、その後今の編集員ということで、最近は『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』という本などを書いております。
佐々木:ありがとうございます。
佐々木:今回そもそもこの「経済ジャーナリズム・イノベーション」っていうコーナーを設けようと思ったのはWebメディアであるとか、キュレーションメディアでイベントをやると、どっちかっていうと同じようなキュレーションメディアの仲間の人たちが集まって話すことが多いんですね。
けれども私はジャーナリズムとか実際コンテンツを作ってきた方々の話がすごく重要だと思っていまして、ですので私がすごいジャーナリストだと思っている2人に来ていただきました。
まず、最初に聞きたいのが今プレゼンしたのですけれども、感想、批評をしていただいてもいいですか。どこが良かったとか、どこが甘かったとかですね。本当にこいつら世界中の経済メディアでやれると思うかということで、率直な感想を聞かせて頂きたいんですけれども。本音でいいです。
ソーブル:まず、既にWebメディアと我々トラディショナルメディアの違いが、例えばデジタルなのかアナログなのかじゃなくなっていると思うんですね。ですからフィナンシャル・タイムズで言うと、紙で読んでいる人の数がもうすでにデジタルで読んでいる数の半分以下になってるんです。
紙媒体の発行部数も10年前ぐらいのピークから半分まで減っているんです。そういう場合、いいことか悪いことかでいうとそれだけでみると悪いことなんですけれども、その分いろんな資源をデジタルに注入して、読者総数でいうと今過去最高なんです。
ソーブル:1人の読者について、デジタルの読者と紙の読者の経済価値をどう見るかっていうのはあるんですが。もうすでにデジタルフューチャーという作戦で、デジタルオンリーはいつになるかはそこまでは具体的に見ていないんですけれども、主にデジタル媒体としてこれから生きていこうというふうに、実際に読者数とか社内の資源の分配のやり方とかを見るとそうなるんですよね。
だから、トラディショナルメディアとニューメディアはどこが違うのかというと、要は(ニューメディアは)統合型のキューレーションと、今日の記事は何を書こうというプロダクションが全部社内になっているんですよね。
他から契約などで社外のプロデューサーの記事などを載せることがないんですよね。なので、これから編集部を増やして、どんどん我々はニューメディア化していく。ニューメディアの方もある意味トラディショナルメディア化しているんですね。その交差点の部分になるのかなと。それによってビジネスモデルはどっちが有利なのか、どこに強みがあるのかっていうのがこれから気になるところですね。
佐々木:日経はデジタル戦略に1番成功していると思うんですけれども。有料会員も37、8万人くらいまでいって、しかも4000円という高値で売っているわけですよね。そういう意味じゃ勝ち組といいますか、成功している新聞社だと思うんですけれども、その辺りは大西さんはどういうふうにお考えですか?
大西:よくそう言われるんですけれども。コストで考えると、今1600人の記者がいて、それを世界60ヶ国、国内そこら中に輪転機を置き、紙新聞を配るロジスティクスを維持するということをやって300万人へのサーキュレーションを支えているというビジネスモデルなんですね。
30万、40万を4000円ではとても支えられないんですよ。そこにすごくギャップがあって、ゼロからスタートアップするときに40万のサーキュレーションがあって、月々4000円とれれば、それはモバイルビジネスでしょうねと。そのビジネスを支えているベースにあるのが、レガシーを背負っているからコンテンツが生まれているという部分。
大西:すごく今のプレゼンテーションかっこいいです。そういう時代に行くんだろうなと思うんですけれども、ただ世界中で起きている経済ニュースをカバレッジし、それを的確に編集して届けるという作業というのは実はものすごくお金のかかるモデルなんですね。
今のところキュレーションを使われているから、我々がのろまにゆっくりゆっくりと大勢の人間を使ってやったものの美味しいところをうまくアソートして出されている。だけどそれを全部実費でやるのかと言ったらすごく大変。ある意味で共存していかなければいけない。
その重たい部分をやっている我々が消えてしまったら、ロイターみたいに世界中にどこ行っても通用する、そういうカバレッジをニューメディアが今すぐできますか、と言ったらそれは無理なんですね。
だから共存のところを、我々も自転車で毎朝玄関まで配ってっていうのをいつまでも続けられるとは思っていないので、新しいデジタルの時代にシフトしていかなければいけない。どうやって共存していくかっていうところが今の課題かなと僕は感じますね。
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