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地方創生 × お金(全4記事)

お金の民主化で社会はどう変わる? CAMPFIRE家入氏が語った、1日を50円で売るホームレス小谷氏のすごさ

2017年6月10日から11日にかけて、世界遺産である和歌山県高野山にて、47都道府県がつながる地方創生イベント「地方創生会議」が開催されました。初開催となる今回は、地方創生に関わるさまざまな分野のキーパーソンを招いて、トークセッションやワークショップを行いました。トークセション「地方創生 × お金」では、株式会社CAMPFIREの家入一真氏、株式会社カタチニの齋藤健一氏を迎え、お金との向き合い方についてトークを繰り広げました。

経済合理性以外の可能性のある選択肢をどう考えるか

飛鷹全法氏(以下、飛鷹):人間が創造的に物事をつくるためには、そうした経済合理性からこぼれ落ちる余剰部分が必要だと思うんです。地域には画一化されずに残った、その地域ならではの日々の生活に潤いを与えている大事な要素があって。ただそれってやっぱりいろんな地域に実際に足を踏み入れたり生活してみないと、なかなか気づきにくいかもしれませんね。素通りしてしまったら。

実は僕も転勤族なんですよ。ずっと転校ばっかりだったんですが、実は沖縄にも住んでたことがあって。さっきの話、あれジャッキーステーキハウス(沖縄の老舗ステーキハウス)ですよね。僕もよく行きました。お坊さんがあんまり肉のことを言うのはよくないかもしれないけど(笑)。

(会場笑)

小さい頃から、いろんな地域を見て来たので、ローカル大好きなんですよね。今日みなさんの発表を拝見してて、すごく懐かしかったり、感激しながら見てたんですけど。

齋藤健一氏(以下、齋藤):個人っていうふうに考えるとすごく僕がイメージしやすいのが、僕の(住んでいる)近くの下北沢というところであるおっさんがいまして。またちょっとおっさんの話になっちゃうんですけども(笑)。

あるおっさんが毎週日曜日にジャンプコミックスを持ってくるんですよ。ある日は北斗の拳とかある日はドラゴンボール持ってくるんです。それを全力で読み上げているんですよ。「かめはめ波!」とかすごい叫んでいるんです。

それに対してお金が入るんですよ、おもしろいので100円とか。みんなで「良かったね」みたいな感じで入れるんですけど。その人がある日お金がちょっと足りなくなったんでしょうね、やめちゃったんですよ。

お金の価値って何なのかとかツールの話って何なのかというと、実は僕、その人にやめてほしくなかったんですけど、その人はお金に困っているかも知らなかったですし、お金を渡す手段も遠くにいたら渡せないので。

ここをちゃんとつないであげることが実は大事だったりするので。先ほどの個人に対してとか可能性に対してお金を払うというためのツールっていうのはとても。

飛鷹:お金が入らなかった理由が、パフォーマンスが足りなかったのか、やり過ぎだったからなのか、その人には分からないわけですよね。要は彼に自分でマーケティングをさせるのは酷だって話です。

だからある意味クラウドファンディングっていうのは、ひょっとしたらそういうある種の世間を忘却し得る才能、つまりアーティストであり続ける才能を、そのままみんなが応援できるような、そういう仕組みなのかも知れないですよね。

家入さんの言葉で言うと、それが「お金を民主化する」ってことなのでしょうか?

家入一真氏(以下、家入):はい。

お金の民主化

飛鷹:それをちょっともう少し敷衍(ふえん)して教えてもらえますか? お金の民主化について。

家入:僕がもう1つやっているBASEという会社がありまして。これはCAMPFIREと別なんですけど、BASEというのは簡単にスマホだけでショップができますよっていうサービス(を提供している会社)でして。

これを立ち上げたきっかけは、一番最初に誘われた鶴岡(裕太)君の大分の実家のお母さんが「ネットショップやりたいけどどうやっていいのかわからん、Yahoo!とか楽天とか難しいからわからない」って言っていたのを見て。

そんなお母さんでも簡単につくれるネットショップのサービスをとつくったんですけど、いざつくってみたら、本当に同じような課題を抱えてた日本中のいろんな方が使ってくださって、今すごい伸びていて。

例えば、農家の方が今とれた野菜を売ったりとか、釣れた魚とかってそういうのはイメージできるじゃないですか。つくったアクセサリー、今まで売ろうと思ったことなかったけど売ってみたら売れたので良かったよとか。

そういう小さな事例がたくさん生まれていて。これはこれでおもしろいねと思って見てたら、ある日突然頭のおかしい使い方をする人が出てくるもので。それは小谷なんですが。

飛鷹:なるほど。ホームレス小谷さんっていうちょっと最近有名な。キングコングの西野亮廣さんと一緒にいろいろ動かれている方ですけど。

家入:彼が自分の1日を50円という金額で売りはじめたんですね。1日50円で売るっていうその使い方も突飛な想定外の使われ方ではあるんですけど、1日50円ではたして生きていけるのかっていう心配もするわけじゃないですか。

でも、いざやってみたところ、もう今も数ヶ月先まで予約が埋まっていて。実際に入ってくるのは50円なんだけれど、それによっていろんな日本各地だったり、ときには海外から呼ばれたりして旅費を含め交通費とかは出してもらうみたいなので。

それで行って何かお手伝いとか1日その人のために何かをやって、寝るところまで用意してもらって終わるみたいな、そういう毎日を繰り返していて。結果的に彼、普通に考えると僕らよりもめちゃめちゃ全然いい生活しているんです。

飛鷹:確かに。ホームレスになって20キロ増えたとか!?

家入:ええ。どんどん太っているんですよ。ちょっとおかしいですよね(笑)。

(会場笑)

齋藤:この前ホームレスでスペイン行って、暇だからドイツ行ってくるわって(笑)。

(会場笑)

家入:そんなことあります?

何も持たない強さ

飛鷹:小谷さんと話していると、何も持たない強さみたいなのはすごく感じますね。実は僕も昨年彼を 1週間大人買いしまして(笑)。1週間で300円ぐらいだったんですけど、うちの宿坊を手伝ってくれたんです。

まず基本的に寝坊してくるんですね(笑)。

(会場笑)

思い切り爽快に「すいませんでした!」って言うんで、いつもはそういうことに厳しい親奥さんまでなんか許してしまうっていう。常に何も隠すものがないような状態で生きている人なので、そう言われたらこっちもどうしようもないぐらい爽快感があるというか。

だから逆に、僕らっていうのが常に何かを隠しながらじゃないけど、要は守りながら生きているんじゃないかってことに否応なく気付かされるというか。お金なんかもその1つかもしれないですよね。

全てを捨て切るっていうのは理想論であって、みんなにも家族があるし親があるし大切な社会的な立場もあるしっていうのは、それぞれ全部そのとおりだし、それが常識というものなんだと思うんですが、仏教には、ある種のラディカリズムがあって、そういうのをすべて捨ててしまうっていうのが、本来の出家するって意味なんですね。

ただ僕の場合になるとちょっとややこしくて。養子に入るなら出家しろって言われたんですよ。入るのか出るのかどっちなんだっていうことで、実は結構迷いまして。

(会場笑)

それはさておき、本当に小谷さんみたいな何も持たない人と接していると、「本来無一物」なんて仏教語もありますが、捨て切った強さってこういうことかも知れないなって、ちょっと感じることもあるんですけども。

家入:あれ、僕、何を言おうとしたんだっけ。なぜ小谷の話をしたんだっけ?

飛鷹:BASEの話じゃないですか?

家入:BASE、なんでBASEの話をしたんだっけな。

飛鷹:お金の民主化だと思いますけど。

家入:そうですね。それでちょっと次に。

(会場笑)

なんか良いこと言おうと思って……忘れました。

(会場笑)

飛鷹:僕も小谷さんの名前が出た瞬間、ちょっと危ういと思いました。

家入:本当にひどい話ですね。

人々がともに生きることを可能にする、1つの条件としてのお金

飛鷹:齋藤さんのほうで、西野さん周辺の案件をいろいろサポートされていると思いますが、何か気づいたことがあったら。

齋藤:そうですね。今、キングコングの西野さんの「しるし書店」がCAMPFIREでまさに進められていますけど、それをちょっと一緒にやらせてもらってます。

西野さんの話でとても印象深かったのは、西野さんは信用をお金に換えているだけなんだと。それなので絵本を買ってもらったり、独演会に来て写真を撮らせてくれっていうところは、やっぱり気持ちよく受けるているんだと。そういうものに対してみなさんがお金を払ってくれるだけなので、そこの信用を単純にお金に換えるために。

飛鷹:よく「恩を売る」っていう言い方をされてますよね。まさに小谷さんっていう人は、自分の1日を50円で売ってますが、その50円って自分がやることの対価とは言えない額じゃないですか。だから結果的に50円で買った人はみんな小谷さんに恩義を感じるわけです。だから、夕御飯も食べていってとか、結局翌朝まで一緒に飲んだりして、みんなが自分から進んでその恩に対して、何か返そうっていう気持ちになってくる。

だから小谷さんは自分は何も持ってないんだけど、恩を売っていることによって、それで彼はそれ以上のものをずっと得ているというか、信用だけでずっと回っていくっていうそういう話ですよね。

これまでビジネスでサービスを提供する際には、商品を売って確実に売り上げを回収するみたいなある種の収奪の連鎖みたいな発想で語られがちだったけれども、山梨の無尽や、沖縄にも模合(もあい)っていうのがあって、そういうお金をそもそも出し合っていざというときに人々を助けようっていう、今でいうセーフティネット的な考え方もあったと思うんです。

お金って一口に言っても、すべてが売り上げ、利益、収益みたいな言語だけで語られる必要はなくて、家入さんが言ったような支え合いとか人々がともに生きるっていうときに、それを可能にする1つの条件っていうものをお金の側面として考えることもできるかもしれません。

テクノロジーをどの方向に発展させるかは、テクノロジー自身が決めるのではなくて、それを使う我々自身が本来考えるべきことですよね。それと一緒で、お金もそれを使う我々の側の問題が問われなくてはならなくて、そもそもお金とは何か、そのお金を使う人間とは何かみたいな本質論と切り離せない話になるんじゃないかと思います。

お金を得る手段としての新しいサービス

家入:CAMPFIREにしろBASEにしろ、新しいお金を得る手段として僕はサービスをいろいろとつくってきたつもりなんですね。

個人が例えば何かこういうことをやりたい、例えば古民家を改装してゲストハウスをつくりたいとか、こういうイベントをやりたいとか、生きているとさまざまにやりたいことって出てきたりして。

そのときに銀行から(お金を)借りるとか投資家からお金を出してもらうとかっていうちょっとハードルが高いものではなく、もっと身近な手段としてクラウドファンディングのようなものがあったりBASEのようなものがあったり。そういうお金を得る手段としてそういったサービスをつくってきたんです。

これだけだとまだ僕は不十分だなと思っていまして。僕が個人的にやっているまた別の活動で「リバ邸」という活動があって。それは現在の「駆け込み寺」という言い方をしていて、日本中でシェアハウスをやっているんですね。

もともとのきっかけとしては、学校に通っていたけど例えばいじめられたとかでつらくなって(学校を)やめちゃったみたいなヤツとか、就職はしたものの同じように会社に行けなくなっちゃったみたいなヤツが集まって。

要はドロップアウトしようなヤツらが集まれば、1人じゃ何もできないかもしれないけど複数人集まれば何かできるかもしれないって思える場所をつくろうというのが、リバ邸の最初のきっかけだったんです。

いざ立ち上げてみて、すごいおもしろいなと思ったのが当たり前なんですけど、1つの家にみんなで住むので、みんな生活費がめちゃめちゃ下がるんですよ。

最初は東京ではじめたんですよ。東京の六本木ではじまったんですけど、そこでも1人3万円とかで生きていたんですよ、家賃とか食べ物もみんなでシェアしたりするので。結果、毎月3万とか5万とかで生きていけて。

月5万円とかで生きていけると、結構価値観が変わるんですよね。月5万円分だけ働けばいいし、空いた時間は何か自分たちの好きなことをやろうでもいいし、もしくはフルフルで働くんだけど、月5万しかかからないから残ったお金で何か活動にお金を使うとか。

さまざまに、なにか世界が広がったような感じがして。実はそこからBASEも生まれたんです。なので、起業したいみたいなヤツらがいきなり時間もお金もない中でやるより、最悪ここに戻って来ればまた生きていけるやっていう場所がたくさんあると、チャレンジもしやすいし失敗もしやすいみたいな。

そういう社会はすごくいいなみたいなのを思っていて。なので、生活費を下げるみたいな観点で要はセットで考えていかなきゃいけない問題なんですよね。そういったことをやっていきたいなと思います。

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