2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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飛鷹全法氏(以下、飛鷹):確かにそういったこと(日本のカード決済率が低いこと)は本当によく言われるし、私も日本はもっと決済環境が整ったほうがいいと思って自分も導入したわけですね。例えば、中国なんか最近一気にすごい勢いで決済がオンライン化して、もうホームレスとかが「恵んでください」ってスマホ決済の札をかけてますよね。
齋藤健一氏(以下、齋藤):中国だとQRコードですね。
飛鷹:QRコードで恵んでくれと。もはや、そこも現金じゃなくなってしまっている。向こうは進んでいるから日本もそれに合わせましょうっていうのは議論としては非常に単純で明快で分かりやすいですが、そんなシンプルな話でもないのかなと、ちょっと思うところがあって。
というのは、高野山ってちょっと独特な商い習慣がまだ残っているんですね。例えば高野山の山内にいろんなお店があって、雑貨屋から、花屋、八百屋、電気屋まで、一通りなんでも揃うようになってるんです。
そういったところに、私たち塔頭寺院の人間は「ちょっとあれお客さんに使うから持って来てください」って言うと持って来てくれるんですよ。それで基本的にそこでお金払わないんですよ。というのは基本的に「ツケ」なんです。
みんな基本的に顔見知りで、これだけ小さなコミュニティですから、ある種の信用で成り立っている部分があるのです。だから商品を渡した瞬間にお金を回収しなくてもいいわけですね。基本的にはもうツケで成り立っているのがずっと続いているわけです。
そして振り込みではなく、わざわざ集金に来たり、いまだにうちの人とか小切手なんか使ったりもしていたりするんですが、経済効率性は非常に悪いんだけど、そういうところにある種の地域ならではのコミュニケーションの作法として残っている部分があると思うんですね。
そこで今「信用」という言葉が出たと思うんですが、そもそもクレジットカードのクレジットって信用っていう意味ですよね。とすると、お金と信用って、本来切り離せない関係にあるんじゃないかと思うんですが、家入さん、特にクラウドファンディングって、そこがキーな気がするんですが。
家入一真氏(以下、家入):そうですね。ツケ払いが実現するっていうのは、きっとそこに信用というものがコミュニティの中に存在するからであって、キャッシュオンデリバリーって信用がなくて済む支払いというか決済の手段なので、やっぱりまだ「ツケがきく」っていうのはそういう世界で回ってると。
「VALU」ってさわりました、みなさん? 「valu.is」って、知っている人?
(会場挙手)
おお、すごい。
飛鷹:これ小幡(和輝)君がもう宣伝部長みたいになっているから。
家入:ああ、そうだ、そうだ。あれは賛否両論ありますけど、すごくおもしろい実験だったと思うんですよね。自分という人間をある種の評価経済の中にさらして、自分という人間の信用をある種の貨幣と換えるっていう仕組みとしてはすごくおもしろいなと。
実際に僕もあれでいろいろと実験して売ったり買ったりしてみましたけど、そのままビットコインにつながっているので、自分が得た信用をある種切り売りして、売ったものの対価としてもらったビットコインを今度は使って、例えば小幡君のバリューを買ってみたりとか。
余ったビットコインは、今日ちょうど「別のイベントに交通費を会社に申請しているけど、出してもらえなかったから行けなくて悲しい」って言っている人がいたので、今日土曜日じゃないですか。普通に銀行に振り込んでも無理なので「ビットコインで送るよ」って言って送って、彼はそのビットコインでデビット(カード)にそのままビットコインが入るようなカードを使って決済して、そのまま行くみたいな。
決済の領域ってかなり変わってきていて、正直もう信用みたいなものが実際の貨幣から切り離されていっているというか。だから極端なことを言うと、カードすらなくなる世界がもうすぐやってこようとしていて。
例えば、スマホ1つにここにもう僕の信用情報が入っていて、これを使って支払いをしたり仕事をお願いしたりといったことができるようになるんじゃないかなっていう感じで、ちょっとテンション上がってるんですけど。話変わっちゃいましたね。
飛鷹:大丈夫です。さっきのシェアリングエコノミーの議論とつながると思いますので。つまり最後に上田さん(株式会社ガイアックス代表執行役社長の上田裕司氏)も言われていたように、シェアリングエコノミーって、他者と何かを分かち合うっていう人間の本質みたいなものに触れているということが、実はもっと大事なところだと思うんですね。
だからお互いの信用の交換のために貨幣っていうものを介在させてきたっていうのは、ひょっとしたらある種の必要悪だったかもしれないですね。
突き詰めて考えると、人間の根源的な幸福って何なのかって問いにつながるような気がしています。人は本来的に他人を助けたほうがハッピーなんじゃないかとか、自分より先に他人を川の向こうに渡したほうが結果的に自分がその人を置いていくより良かったんじゃないか、みたいな話ってあるじゃないですか。そういう点は仏教の根本の思想だったりするわけですね。
私が冒頭に般若心経を唱えましたけど、あのなかの「ぎゃーてい(掲諦掲諦)ぎゃーてい(掲諦掲諦)はーらーぎゃーてい(波羅掲諦)」というのは、「彼岸に行こう」っていうことなんです。彼岸っていうのは「悟り」のことですね。もう動かない知恵みたいな。
私たちが奉じている密教は大乗仏教っていう流れに属するのですが、大乗っていうのは、大きな乗り物という意味。悟りに至るために乗る船のことなんですよ。そして大乗仏教の基本の考え方とは、自分より先に他の人を乗せようという考え方なんですよね。ある意味、自己犠牲でもあるのかも知れませんが、ここに人間性に対する深い洞察があるような気がしているんです。
さっきの話で言うと、自分が好きな物は自分で食べちゃったほうがその時は満足するんだけど、他の人とシェアする方がよりハッピーになるっていうのが本質なのではないかってことですね。仏教っていうのは、そうした人間性の本質を非常に早い段階で見抜いた教えなんじゃないかなと思っているんです。
家入:僕、大乗仏教ってすごいインターネット的だと思っていて。でもこれ語り出すと止まんなくなっちゃう。
(会場笑)
本当そこら辺すごい大好きで、止まんなくなっちゃうのでやめときますけど。
先ほどのセッションでもシェアリングエコノミーって話は出たと思うんですけど、僕はあれって要は日本語で言うと「支え合い」ってことだと思っているんですよね。これだけ豊かさが実ってしまったその先に、僕らはどこに行けばいいのかっていうのが見えなくなってきていて。
ものがある、食べ物もある。道歩いて、最近だと物騒なこともあるかもしれないですけど、いきなり刺されたりもまあまあしない。すごい安全で豊かさが実って。でもなんかこれから先どうしていいか、わからないみたいな。
そういった中で、寄り添って生きていくみたいなものの1つとして、きっとシェアリングエコノミーっていうものがここに出てきているのだろうなとすごく思いますね。
飛鷹:僕らは、とにかくずっと我々の前の世代から向こうに何らかのゴールがあって、それに向かって一生懸命走るっていうのが1つの大きな価値だったと思うんですけども、今は気づいてみたらもう先にはロールモデルが見当たらなくなってしまった時代だと思うんですね。
ただ日本って国は、これだけ多くの人々がある種の伝統というか歴史の中にいて、いろんな経験をして来ている。伝統というのは、過去に生きた人間の経験の総体とも言えるので、そこには今日からみてもロールモデルになり得るものが、たくさんあるはずなんですね。冒頭にもお話しましたが、それは今の我々が新たに発見しなければならないわけですが。
ローカルでものを考えるということもそれと一緒で、決して単に首都としてのキャピタルに対するローカルって意味だけではないですよね。教科書的な常識ではないようなところに、ひょっとしたらある種の知的可能性が眠っていたり、物事の創造的なヒントがあるみたいなことに気づくための精神の移動、フットワークのようなものではないかと思うんですね。
そういったある種のマインドセットのずらし方、視点の移動によって見えてくる可能性に気づくってことも、地方創生の意義の1つなのかも知れません。地方創生会議は、その意味で多様な着眼点を他の人からいただくチャンスでもあるのかなと思ったりもします。
ところで齋藤さんは、地方っていう意味ではどういう地域と縁があるんでしたっけ?
齋藤:出身というと僕は父親が銀行員だったので、通算10回ぐらい転校してるんです。
飛鷹:転校生ですね。
齋藤:1番長かったのは神奈川と北海道なので、そこの2つは覚えあるんですが。そこの地方とか人とかいうときに、僕は先ほどのCoineyというサービスを使ってほしいので全国をずっと行脚してたんですけども。やっぱり実は思うように入らなくて、みなさんに使っていただけなかったです。
僕としてはどう考えても便利なツールなので、みなさん使ってくれるだろうと思っていたんですが、やっぱりどうしてもツールだけだと(使っていただけない)。
ともするとツールを置き換えるとかそういう議論にすぐなってしまうので、あまり浸透しない中で気づいたのが、日本の場合はもうちょっと「お金に対して感情をつける」というほうが、日本向きなんだろうなと思っていました。
特に家入さんもそうですし、飛鷹さんなんかすごくおもしろい方だと思うんですけども、こういった方が信用をお金にどう換えていくのかとか、そのために何のツールが必要なんだっていうところを考えていかないと。まずツールから入ってしまうと、どれだけ便利なんだとか、どうしても規模を目指さないといけないとかそういった議論にすぐなってしまいますし。
はっきり言うと例えば決済手数料3.24パーセントの払いでやっているんですが、100万円使っていただいてようやく3万2,400円入ってくると。
そのうちにカード会社さんにいくらかお支払いするので、手もとに残るのは実はほとんどなくて。その中から出張やら全国行脚をしていくとお金がかかってくるので、もうやめようかって話にすぐなるじゃないですか。
となると、せっかくみなさんが、おもしろい方々にたくさん会う機会があるんですけども、そういった企業ってそういったことを考え出すと、すぐ引っ込んでしまうので、地方創生とそういったものの闘いって、実はここに集約されてるのかなと思うのです。
ここをどう打開していくかっていうのは、すごく僕はテーマとして持っていて、人の持つ可能性をいかにお金が支援するのかという部分に今後は着眼していかないとと思います。
飛鷹:そうすると、ローカルを考えるっていうのは単なる距離的な問題や首都に対する地方っていう位置づけの問題なのではなくて、今の社会において経済合理性だけに縛られない新たな選択肢をどう構想し得るか、という問いでなければならないはずですね。
そこにひょっとしたら人間のクリエイティビティの新たな可能性があるかもしれないとか、そういう話。だから全然非効率だとか意味がないと思われるようなことの中に、意外と大事だったりするものが、たくさん残っていたりもするわけで。
例えば私たちでいうとお布施みたいなものがあるじゃないですか。やっぱりお布施の決済をスマホでやるのには、正直まだ心理的に抵抗があるんですね。それはお布施をする側も受け取る側も。
お金なんてそもそも記号なんだから構わないじゃないかって議論もあるんですが、でもやっぱりお布施って、ちゃんと丁寧に熨斗袋に入れて、それを仏さんにお供えしてからいただくっていうような、ある種の儀礼的な要素がすごく残っているんですよね。
お坊さんは、他のお寺さんへ行くたびにその本尊さんに御宝前というのをお布施としてお供えする習いになってますが、それは挨拶の1つになっていて、また先方がこちらに来られたら、同じようにするわけなんです。同じことをやり取りするんなら省けばいいじゃないかって言われるかも知れませんが、やはりこれも交換儀礼というか、コミュニケーションの作法なんですね。それをすべて経済合理性という観点だけで無駄だとは言いきれないものがあったりするわけですね。
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