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トークセッション:小倉崇氏(全2記事)

「渋谷×農業には可能性がいっぱいある」 都心のど真ん中で仕掛ける“屋上経済”の未来

毎月第3木曜日に開催している「これからのシブヤ」を語り合うトークイベント「green drinks Shibuya」に、渋谷・道玄坂のライブハウス「TSUTAYA O-EAST」の屋上に畑を作り、農薬や化学肥料を一切使わずに野菜や米を育てている小倉崇氏が登壇しました。そもそも、ふだんは編集者をしているという小倉氏が渋谷のど真ん中で農業を始めたきっかけとはなんだったのでしょうか。また、そこから見えてきたこれからの渋谷の経済活動とは?

「生産すること」から生まれる経済効果

小倉崇氏(以下、小倉):あともう1つ。やっぱりこうやって屋上で農業をやるとですね、「渋谷でできるんだから、じゃあ僕とか私が住んでいる家やマンションでも、野菜やお米ができるんじゃないか」と思ってくださる方がけっこう増えてですね。そうすると、みんな「ここでできる?」とやり方を全部聞いてくださって、家に持ち帰ってやってくれるんです。

この都市型農業というものがどんどん広がっていくと、本当にメリットがいくつもあります。

セッションの冒頭で話したように、東日本大震災のときに物流が止まっちゃったら、なにも食べる物がないような都会だったんです。もし、マンションやいろんなビルで、こういったかたちで野菜やお米を作っている。もちろん、本当に東日本大震災みたいなのはあってほしくないですけど。

ああいう災害があったときも、「屋上でできるお米が食べられる」「どこどこでできる野菜は食べられるよ」っていうような一応のライフラインになるんじゃないかな、と思っています。なので、今まで都市というとどうしても、消費するということから経済が始まっていると思うんですけど、もしかすると生産することで生まれる経済的な効果もあるんじゃないかな、と。そして、今言ったようなライフラインというのは、当然目に見えないものなんですけど。

もし、こうやって都会の屋上やマンションで、野菜やお米を作ろうと共感してくださる方がどんどん増えると、マンション全部でみんなで野菜を持ち寄って、みんなで役割分担をして「じゃあ、田中さんとこニンジンね」「私んちジャガイモよ」なんて回していく。そうすると、もしかすると月1万円になるか1万5,000円になるかわかんないですけど全員で持ち回れば、これまでの野菜代を使わなくてすむようになるんですよね。

そうすると、自分たちが作った野菜をただ回すだけでお金は生み出してないですけど、月々必ず家計の中から支払われていたであろう野菜代はなくなる。なので、いろんな人たちの意識によって、ちょっとおもしろがりながらやるだけで、お金は生み出してないけれど、それに近い部分を生み出すことができるんじゃないかなあ、なんて最近思っています。

よく、あやしいお金は「アングラ経済」「地下経済」って言いますけど、せっかくなんで屋上で野菜を育てて「屋上経済」ができたらいいのにな、と思ってます。そんな感じで、今日はよろしくお願いします(笑)。

司会者:ありがとうございます(笑)。

(会場拍手)

東京がオーガニック養蜂に最適な理由

司会者:僕も、先々週ぐらいに屋上にお邪魔させていただいて。本当に、ラブホ街のライブハウスの屋上で農業をされていました。集合場所はね、ビルの下でのなんか、いろいろとね(笑)。

でも屋上にあがるとめちゃくちゃ気持ちいい風が吹いていて。高い建物もないので見晴らしも良くて、空も広くて。「本当にここは渋谷のど真ん中なのか?」とわかんなかったぐらいです。しかも、地域の循環みたいなことって、地方の話だと思いきや、建物ごとに野菜を作れば意外と渋谷でやれるというのはすごくおもしろい話でした。

小倉:ですよね。あと、今日来てくださっていますけれど、東京で養蜂をされてる方にとっては、実は東京ってオーガニックにはすごく最適な場所なんです。地方でハチミツをやるとどうしても農薬がかかっている部分があるので、なかなか蜜源に困るんです。でも、東京って農薬はまかれていなかったりする。渋谷で本当に栄養価の高い、おいしいものがとれるんですね。

司会者:なるほど。それは本当に、その、観葉植物とか?

小倉:明治神宮とか代々木公園とか。だから都会って、けっこうできないと思ってるだけで、意外と逆から考えると、けっこう可能性がいっぱいあるんです。

司会者:しかも屋上なんかは手つかずですもんね。

小倉:そうそう。

司会者:じゃあみなさん、使える屋上があれば小倉さんまで。

屋上の畑づくりで気をつけるべきこと

司会者:ここから、Q&Aタイムに移ります。会場から2つほど質問を受け付けたいと思います。どなたか……。

質問者1:私もマンションの1階に住んでいて、すごく狭い庭でプチトマトとか作っているんですけども。屋上緑化みたいなことやるときって、屋上の作り方の規制みたいなものがあると聞いたことあるんですけれども。それってとくにないのかな? というのを聞きたいです。

あとは、あまりないと思うんですけど、砂が飛んだり。そういうときのフォローみたいなことをされてるのかな? ということです。

あとごめんなさい(笑)。先ほどの障がいがあるうえで、逆に屋上じゃなくてもできるんじゃないの? ということがあって。そういうことを考えられてるのかなというのを聞きたいです。すいません、たくさんあって。

小倉:まず、屋上の重さ、構造計算みたいなものは当然、始める前にお願いをしています。ただ、本当にライブハウスが広くて、全体の面積の3分の1にもならないくらいなので重量的にはぜんぜん問題ないということがありました。

砂については、クレームみたいなものは一切ないんですけれども。都会ならではで困ったことというと、ネズミとカラスがくることです。普通の畑だとイノシシとかシカがくるんですけど、こっちは水道管をつたってこんなでっかいネズミとか、カラスがバンバンバンバンくるんです。まあそれもネットを張ったりすれば、なんとか大丈夫かな、と。そういった被害はないですね。

あと、屋上以外? 屋上以外ももちろんぜんぜんできるんですけど、でも更地がないんですよね。 

質問者1:いや、例えば、キットとして売り出すとか、そういう構想っていうのはないのかな、と。アスファルトの駐車場につくるとか……。

小倉:今、いろいろい考えてやっているところなので、もう少ししたら。お米をつくるのと、野菜をつくるのと、そのキッドみたいなものも。当然、土も必要だと思うんで土も含めて、なにかこう販売というか、年明けてからなにかかたちにできないかな、とは思ってやっております。

質問者1:ありがとうございます。

土の組成を変えるなど、実験的な試みも

司会者:じゃあ、次の質問。

質問者2:今日は小倉さんがいるので来たようなもんなんで……。私は生まれも育ちも品川で、品川の街づくりを5年くらいやってるんです。品川区は区民農園というのもやってて、国道と、けっこう高いマンションなんかの間にあるあまり使われてない公園を、区のほうで土を入れてやっているんですね。畳2畳ぐらいで1人。33区画ぐらいあるんですけど。

私ももともと農業に興味があったのと、3年くらい前から同じように、最終的にやっぱり農業は最大の防災であり、福利厚生に使っていけるんじゃないかなというのがあって。どうにか都市のほうでも農業を自分たちでやれたらいいなという中で今、都心農園というものを考えながらやっています。

1つは質問というよりは、お願いとして。品川区は高度成長期のときに都営アパートというのがすごく作られていて。都営アパートって、昔は屋上を子どもたちが遊ぶ場所としてけっこう開いていたんです。しかし現状、すべて閉鎖しちゃって。結局、年寄りや障がい者の方や低所得の方とかして住んでないので。屋上がどうしても、犯罪などの温床になってしまう。それで閉ざしてしまっている状況もあってですね。

けっこう暗澹とした場所になっているところを使えないものか。民間の企業さんだったり、使ってないマンションの屋上にもけっこうお話に行くんですけど、まあ……なかなか。現状がどういうものかわからないので、なかなか縦に首をふってくれない、ということがあって。一度、一緒にまわっていただきたいな、と。

(会場笑)

司会:質問じゃなくて、お願いでした(笑)。

質問者2:あともう1つ。私の中で、市民農園をやっていて今は食べるがゴールになってたんですけど、今度は種になってきて。自分たちの土で作り、この先で種を作って、それを子どもたちに食べさせていくと本当に1回転してくるな、と思っているんですけど。今現状、種づくりはされてるんですか?

小倉:してるものもありますね、はい。してないものももちろんありますけど。毎年育つものを変えたりとかですね。

あと、土の組成を3つ変えて、わざと同じ作物を育てて「このバランスだとちょっとよくない」とか、そういう実験的なこともやっております。両方やってます。

質問者2:わかりました。あとでじゃあ、ゆっくり聞きます。

小倉:品川は、じゃあまわりましょう(笑)。

司会者:品川から呼んだほうがいいんじゃないかなって、こっちにね。これやりましょうよ、みたいな。はい、では渋谷農家の小倉さんでした。ありがとうございました。

(会場拍手)

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