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AV出演強要・性被害。私たちの取り組みとこれから(全5記事)

性犯罪厳罰化への刑法改正を受け、当事者らが語った新たなる決意「これで終わりじゃない」

今、AV出演強要問題も含め、性暴力被害に関する刑法などが見直されています。そのための活動を続けてきた認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウが、AV出演強要問題の解決へ向けた取り組みを伝えるトークイベント「AV出演強要・性被害。私たちの取り組みとこれから」を開催しました。ヒューマンライツ・ナウがAV出演強要被害調査報告書を公表したのは2016年3月ですが、それから状況はどのように変わったのでしょうか。性暴力被害問題に取り組む当事者らとともにこれまでの活動を振り返り、残された課題などを語り合いました。

刑法が改正されて変わったこと、変わっていないこと

後藤弘子氏(以下、後藤):今の仁藤さんのお話というのはJKビジネスだったんですが、今回のテーマに共通するものがあります。それはなにかというと、「権力がある人」が「権力がない人」に対して、同意というものがあるかのように見せかけて性的な搾取をする。それがとても問題だという意味で、みんな共通しているわけです。

あとで、私たちがそれぞれ個別にやってきた活動をどうやってみんなで協力的にやっていけるかというお話もしたいと思うんですけれども。その前に潤さんのほうから新しい団体についてお話をしていただければと思います。

山本潤氏(以下、山本):(参加者らに向かって)お手元に「性被害当事者が生きやすい社会へ 一般社団法人Spring」という資料があると思います。本当に立ち上げたばっかりなので、こういうちょっとしたリーフレットしかないんですけれども。

6月16日に刑法が改正されまして、「うれしいですか?」「どんな実感を持っていますか?」と聞かれるんですけど、まったく実感を持てないんです。「本当に変わったのかな?」という気持ちと一緒に、「これで変わったと言っても、ぜんぜん変わってないよ」と私は思っているんですね。

こちらの冊子には4つの裁判例を掲載していますが、今回の改正では2つの裁判例しか救われません。あとの2つはまったく関係ない、なにも救われるような状況になっていないということがあります。

でも今回すごかったのは、「3年後に刑法がこれでいいか見直しましょう」という、見直しの規定がついたことです。

本当に見直しが必要かどうかということはまだぜんぜん決まっていません。見直しの議論をして、必要だったらその改正の議論がまた始まる。もし議論したけれども必要ないとなったら、このままこの状態が100年続いてしまうかもしれない、というような状況なんですね。

Springという団体を立ち上げた思い

私自身は、今回のビリーブ・キャンペーンを通じて自分自身がすごく変わったなと思っています。それは、先ほどくるみんさんが「人間不信で本当に人を信じられない」と言っていたように、私自身も「私を救ってくれなかった日本の社会を信じられない」という気持ちがすごく残っていたんですよね。

だけど今回、訴えることによっていろんな人たちが熱心に関わってくれましたし、こういうふうに大きなものが変わったという結果、成果を得ることができた。

もしかしたらこういう状況を知らなかったり、本当に気がついていないだけで、知れば動いて変わってくれるのではないか。そういう希望を持つことができました。なので、続く人たちのために、このような被害を続けて出さないために、この状況を変える力になりたいと思っています。

改正はされたけれども、いろいろな論点があって、実情に追いついていない。先ほども言われたように、日本では諸外国のように「明示的な同意がなければ、それは性犯罪なんだ」とは、しっかり認識されていないことが非常に多いと思うんです。それがJKビジネスの問題やAVへの出演強要の問題にすごく関わってくると思っています。

困難な道のりではありますけれども、Springとしては、明示的な同意がなければそれは性犯罪なんだという基準をしっかりと日本の刑法の中に落とし込んでほしいし、そのように働きかけていきたいと考えています。

さっそく昨日、法務省に適切な法の運用を求める要望書を出して、懇談をさせてもらいました。

やはり役所は役所ですし、言われたことしかしないというか、そのように動いていくものなので、市民の力で「これ本当にいいのか? これやばくないのか?」みたいな。ふざけてやばいとかじゃなくて、「本当にこれでいいのか?」をみなさんと一緒に考えながら動いていきたいと思っています。

立ち上がったばかりの団体で、いろんな説明書はないですけれども。これからイベントなども開催していきますので、ぜひ応援していただければと思っています。

後藤:ありがとうございました。

被害者たちが顔を上げて歩けるようにするために

性犯罪について、私も専門なのでいろんな言いたいことがすごくあるんですが、1つだけ。実は見直し以外に附帯決議というのが衆議院でついていて。これ6項目の附帯決議があって、2ページにわたる多岐なものです。

そこでなにを言ってるかというと、「行政だけじゃなくて最高裁判所もちゃんと考えろ」ということをきちんと言っているんですね。それだけ今回の改正が、あまり……どこまで本当にリアリティを反映してるのか、衆議院でも疑問が出されているということになると思います。

ということで、(イベントの終了時間が)8時までと最初に申し上げましたが、あと7分になってしまいました。みなさんにもっともっとお話を聞きたいと思いますけれども、最後にそれぞれのお立場から。

アダルトビデオであったり、人身取引であったり、JKビジネスであったり、性犯罪であったり。共通することは、すべての場面で同意がない性行為が行われているということ。

じゃあ、どういうふうにすればなくしていけるのかと考えるときに、やっぱり協力すること……さっき潤さんがおっしゃったように明るい運動がいいと。くるみんアロマさんもYouTubeでずっと泣いてる映像じゃないと思うんですよね。さっきのライトハウスさんもそうだし、あと私たちがつくったビデオもそうですけれども。

やっぱり顔をちゃんとあげて、私たちは恥じることはない。性犯罪の被害者は、アダルトビデオ強要の被害者は、人身取引の被害者は顔を上げて歩いていけるんだ、ということをやっていくために、それぞれどうしたらいいのか。最後に一言ずつお願いしたいと思います。

日本に住む一人ひとりが「自分ゴト」にしていってほしい

まず藤原さんからお願いしてもいいですか? 順番として、藤原さん、くるみんアロマさん、潤さん、伊藤さんにお話しいただければと思います。

藤原志帆子氏(以下、藤原氏):私の活動のはじめは、日本に連れて来られた外国籍女性たちの人身取引被害の相談を受けていたことでした。そこでは人種差別だとか、外国籍女性の性的搾取被害に対する行政の対応に、本当に苦しんだことがあります。

今まさに起こっているのは、国籍も変わって、年代も変わって、私たちの目の前に住んでるかもしれないいろんな子どもたちが人身取引の被害に遭っている。そんなときでさえも、仁藤さんのビデオのように、また売買する側ではなく、被害者側の人たちの問題にさせられていることにずっと怒りを感じています。私よりも若い世代の仁藤さんが同じように怒ってくれていて心強いです。

そこをどう変えて自分ゴトにしていくか。日本人一人ひとり、日本に住んでいる人たち一人ひとりにとって自分ゴトにしていくためにはどうしたらいいのかずっと考えていて、今日来てくださったみなさんに教えていただけたらなと思っています。

(会場拍手)

くるみんアロマ氏(以下、くるみんアロマ):今、けっこう海外の方でもこういう被害があるみたいで、いろんなところで取材を受けたりしています。フランスとか、オランダとか、この前もオーストラリアのテレビのほうにも出させていただいたりしてるんですけど。

あと、伊藤和子先生とプロモーションビデオの撮影をしたり。いろんなところでこういった被害を受けている方が、ちょっとでも目に留めて考えてくれたらいいなと思っています。

私もけっこうバカな動画とか、くだらない動画ばかり出してるんですけれども。なんかこう、私みたいに被害を受けてもあっけらかんとしてやっていくことはすごく大事なことだと思っていて。

本当に悩んでいる方がいたら、注意してほしいという気持ちがあったんですけど。注意してほしいし、やってしまった方は、もうそのあと自殺してしまう女性がいるというのを聞いた時に私はけっこうショックだったので、そういう人が1人でも減るように、本当に前を向いてがんばってほしいなというふうに思ったので、今はこの活動を続けたいと思っています。

(会場拍手)

ビジョンが大事

山本:私はビジョンが大事だと思っています。アカデミー賞でレディー・ガガさんがパフォーマンスをされた時に、背後にたくさんの性被害当事者たち、男性も女性も、ほかの性の方たちも出てきて、全員が手を繋いで頭上に挙げるというアクションをわーっとやったんです。それが力強くて印象に残っています。

けっこう妄想的なのですが、5年後には、レディー・ガガさんがさいたまアリーナに来て、そういうふうなパフォーマンスをしてくれたらいいなと。日本の被害者がわーっと出たり、日本のアーティストがそういうふうに話をしたりとか。あるいは渋谷で、渋谷の108……9? ちょっと私あんまり知らないので(笑)。

(会場笑)

109とか渋谷の大画面のようなところでですね。そうそう、今人気の俳優の高橋一生さんとか。ああいう人たちが、「性暴力は被害者の責任ではないんだ。これをとめるのは私たちみんながやることなんだ」と言ったりする。そんなプロモーションビデオをつくれたらすごくいいなと思っています。

それはやっぱり、私だけ、もうみなさんと、当事者も、支援者も、団体も、いろいろがんばってますけれども、私たちの問題じゃなくて。この社会みんなの問題として一緒にがんばろうという感じになるとすごくいいなと思っています。

(会場拍手)

「刑法は未来永劫に変わらないのでは、と思っていた」

伊藤和子氏(以下、伊藤):刑法って100年変わっていなかった。もう二度と、未来永劫変わらないんじゃないかと思ってたんですけれども。それを山本さんたちが変えて、本当にすごいなって、私は本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

最近、刑法改正についてブログで解説をして、「次の課題は同意なき性行為をどうするかだ」と指摘したところ大きな反響があり、読んだ方が「本当に同意がないのに性行為をして犯罪にならないなんておかしい」となり、みんなもようやく言い始めたんですね。

ずっと昔から起こっていたことなんだけれども、ようやく女性たちが言い始めた。しかも、この運動の過程で、女性たちが明るく協調することができたということがすごくよかったなと思うんです。

それと同時にJKビジネスもAV出演強要も、まったく知られていなかったのは問題です。それをすごく叩かれつつも一生懸命がんばってここまできて、なんとか成果があがりつつある。なんか最近すごいよねって私たち思っています。

女性たちは今でも苦しんでるじゃないですか。苦しみ続けている。それを変えていくために、できればこれからも一緒に明るく連携していければなと思います。

私たちはいろいろキャンペーンをやっていても、ずいぶん攻撃されたことがあったんですけど。本当に応援してくださる方たちがたくさんいたからこそ、今日まで来ることができたと思います。

だから、これからもみなさん、自分ゴトとして応援していってほしいです。これで終わりじゃないので、ぜひこれからも、一緒に続けていってほしいなと思います。ぜひよろしくお願いします。

(会場拍手)

カミングアウトした人と支える、明るく前へ進めていく

後藤:今日は短い時間でしたけれども、なにが問題なのかが明らかになりました。

そして、私たちが必要なことは被害者……はっきり言って女性は、全員被害者だと思っています。なので「私たち」という言葉を使いたいと思いますけれども。

私たちが顔を上げて、そしてカミングアウトした人たちを支えながら、明るく前に進めていく、そのような出発点に今日の会合がなればと思います。

私たちヒューマンライツ・ナウも、今後もこの問題についてフォローアップをしながら、より前に進めるようにしていきたいと思いますので、みなさんもどうぞご協力よろしくお願いいたします。

今日はすてきなゲスト3人に来ていただいて、本当にありがとうございました。最後にみなさんに大きな拍手をいただいて終わりたいと思います。本当にありがとうございました。

(会場拍手)

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