2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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後藤弘子氏(以下、後藤):伊藤さんは弁護士として(被害の)ケースもやりながら、ヒューマンライツ・ナウで報告書をまとめたという経緯の中で、これからの課題をどのように考えていらっしゃるのか。簡単にお願いいたします。
伊藤和子氏(以下、伊藤):今、お話がいろいろあったんですけれども。対策がいろいろ進んできたとは思いますが、政府で進められてきているものがどのように実施されているのか、まだ十分わからない部分があります。政府のいろんな機関と私たちやNGOや支援団体の間で、協議機関のようなものができてフィードバックを受けながら進んでいる、というわけではないので。
私たちは5月に対策ができて「進んでるのかな?」と思ってるところですけれども、どこまで進んでいるかがよくわからないという部分があります。ですので、早急に協議機関が設立できないかと思って、考えている部分があります。
AV業界のほうでも対策を考えているんですけれども、そうは言っても、被害はどんどん広がっていて。登録している業者じゃなくても誰でも撮ることができる。最近、有名なメーカーさんだけでなく個人も含めて似たようなことをやっている人たちがたくさんいますので。
そういったことも含めて考えていくとなると、やっぱり法制化をするんじゃないかと思っていますし、きちんとしたかたちで法的な整備を進めるということが大事だと思います。とくに、弁護士ですからよく刑事事件の取り調べと比較して考えるのですが、そこで自白をさせられてしまう。だけど、その自白というのは虚偽ということがあったりする。
それと同じで、出演同意のプロセスは密室の中で行われているわけですよね。同意したのか、それとも強要だったのか。すべて密室の中で行われているということで、あとから「これは強要されたものだ」といくら言っても、「いや、同意書もあります。まったく同意してやったものだ」ということで、なかなかビデオを回収してくれない状況です。
私も昨日怒ってTwitterを書いてたんですけれども。「強要されたのでビデオを止めてください」というようなことを通知書で書きます。そうするとなにが起きるかといいますと、「いや、強要されていません。同意書をもらっています」と言うんですよね。
その同意書は、どこでどんな作品を販売するかということについて書かれているんですけれども、こちらとしてはコピーをもらっていませんからまったくわからないんです。どれだけ2次使用・3次使用されるか、何年間流れるのかまったくわからないわけなんです。
だから「せめてそのコピーをください」と頼むと、「それは業務の秘密であるから、機密だからそれは自分たちとしては開示することすらできません」ということを言われてしまうんですね。
そういうかたちで、強要されたビデオがいつまで流され続けるのかまったくわからない。そして密室で起きたことについて強要ということを私たちが主張していても、それについてきちんと対応してくれる業者もいれば、そうでない業者もいます。
今この瞬間は、AV出演強要が非常に問題になっているから、「強要された」と訴えられれば販売・配信を止めるというケースはあるかもしれないですけれども、今後どうなっていくのかというのはぜんぜんわからない。
根本的な解決のためにはやはりきちんとしたかたちで、こんな契約書を双方で交わさないで、こんなに圧倒的に不利な契約というのはもともと無効なんだ、取り消せるんだというようなものが必要ではないかと思います。
最近やったケースでは、何億というような利益が得られたのにもかかわらず、本人にいった利益は1パーセントだったという事案があるんですね。1パーセント。99パーセント搾取されているという。こういう契約は本当に許していいんだろうか、と思います。
さまざまなかたちで本当に女性が不利な状況におかれて搾取されている。これをなくすような法整備をきちんと進めていく必要があるなと痛感しています。
後藤:ありがとうございます。
先ほど藤原さんの話にもありましたけれども、こういう被害は未成年者や、若年の女性たちが多い。今日会場にはいらしていないんですけれども、そういう人たちの支援をやっていらっしゃるColaboの仁藤夢乃さんからビデオメッセージをいただいていますので、それをみなさんと共有したいと思います。では、よろしくお願いいたします。
(映像が流れる)
――仁藤さん、こんにちは。
仁藤夢乃氏(以下、仁藤):こんにちは。
――今日はよろしくお願いいたします。
仁藤:お願いします。
――イベントにぜひともご招待したかったんですけれども、お忙しいということで、今日は仁藤さんがどんな活動をされているのか、まずうかがえますか?
仁藤:みなさんこんにちは。Colaboの仁藤といいます。Colaboという団体をやってまして、主に中高生世代の女の子を支える活動をしています。
とくに虐待とか性暴力を受けるなどして孤立したり、貧困状態だったりして家庭が困窮しているとか。いろんな理由で家とか学校にいたくないなと思ったときに、女の子たちが駆け込める場所を運営したり、児童相談所とか警察とか病院への同行支援などを行っています。
だいたい年間、女の子たち自身からは100件ぐらいの相談があるんですけど、そのなかにJKビジネスなどの人身取引と言われるようなところで被害に遭った女の子たちとつながることもあります。
――ありがとうございます。
――JKビジネスという言葉だったり、女子高生の貧困の問題なども含めて、仁藤さんはこれまでずっと問題提起されてきました。
最近、国や東京都もJKビジネスについて取り組んだり、いろんなことを始めたと思うんですけれども。それについてはいい面、心配な面、いろいろあると思いますが、仁藤さんはどういうふうに見ていらっしゃるんでしょうか?
仁藤:JKビジネスというのは……。もしかしたら知らない方もいるかもしれないので一応簡単に説明させていただくと、JKというのは女子高生の略で、その女子高生の性とか若さを商品化したようなものです。
例えば、「JKお散歩」と呼ばれるような、女の子の観光案内を名目にして、「観光案内のお仕事です」とSNSとかネットで募集があって。「本当に旗を持って秋葉原に行って案内する仕事なのかな?」って思ったら、実際には「おじさんとデートする仕事だよ」って言われて売春させられたという被害があったり。
あとはマッサージ店として営業しながらそこで性的なサービスをさせるような、JKリフレと言われるようなものがすごく多くあります。今年1月の時点で、東京都だけで約170何店舗あると警視庁が統計を出してますけど。
これについて、国連とかアメリカの国務省からも「日本における人身取引だ」と2014年ぐらいから指摘され続けて。ようやく東京都もこの7月からJKビジネスの禁止、規制の条例をつくったんですけれど。結局、どんな規制になっているかというと、お店の摘発はもちろんなんですけど、女の子を管理するような条例になってるなということをすごく思いました。
例えば、警察がお店に来たときに従業員名簿が見えるような状態をつくっておくとか、お店を届け出制にして警察が立ち入れるようにするとか。それって必要なことなのかもしれないけど、事実上の合法化みたいな流れなのかな、と疑問に思っています。
JKビジネスについても問題だということがだんだん認識されていくようになってから、まず最初に東京都や警察がやったのは、女の子たちの補導にとにかく力を入れてますよね。秋葉原の通りでは、女子高生が立って客引きをしてる通りがありますけど、そこに100人の警官を投入して一斉に補導するという。
補導とは、もちろん子どもの保護ということを名目に犯罪を未然に防ぐということで行われてはいるんですけど、結局補導されてもそのあとケアにつながるということがなくて。補導された子というのは、怒られて家に帰されるみたいな。親に連絡されて。
むしろそういうところに関わってる子って、親が2人いなかったり、お金が必要な理由があったり、背景にいろんなものを抱えている子が多い。せっかく補導するならケアにつながるようなことが行われればいいですけど、そうじゃない。
今もそういうことって変わらないまま、18歳以下の女の子はとにかく働いちゃダメということで。子どもの取締りみたいなことを進めていくことは必要かとは思いますけど、それだけでは不十分だと思っています。
――仁藤さんから見ますと、社会、それから国、政府になにを求めますか?
仁藤:そうですね、やっぱりJKビジネスは「子ども自身が、好きで売っているんだろう」とよく語られることがあるんですけど。実際に街に立ってる女の子たちの裏には彼女たちを管理する見張りの大人が立ってるんですね。
つまりJKビジネスの需要と供給というのは売りたい大人と買いたい人との間で成り立ってて、そこに中高生が商品化されているという現状だと思うのです。
今の条例だと、お店の摘発と女の子の補導というのはけっこうされていますけど、需要を絶つという買う側への規制という部分はぜんぜんされていないので。「子どもの性の商品化をさせない」ということと「大人にそれを買わせない」の部分の対策がぜんぜん足りていないなということを思いますね。
東京都は最近、啓発サイトのホームページをつくってアップしています。小池百合子さんは、「このサイトを通じて女の子たち自身が、性被害に遭わなくていいように、自分を守れる人になってほしい」とおっしゃってましたけど。
これを見てみると、「ほんっとに、ヤバイよ。そのバイト」「STOP JKビジネス!」「JKビジネスはハマると危険なコワイ沼」とか書いてあって。でも、その沼をつくってるのは大人じゃん、という。
そこに取り込む手口であったり、気軽な気持ちでこういうところに関わらせようとする手段があったりすることには目を向けずに、「絶対、やっちゃダメ」と啓発をする。このことによって、結局はそこにいる子どもたち、今被害に遭っている子たちがSOSをどんどん出せなくなるなと思います。
「絶対、やっちゃダメ」というパンフレットを全部の高校に配って啓発すると言っているんですけど。こういうものを見た女子高生たちは、「JKビジネスやってる子なんて、ちょっとダメな子だよね」みたいな感じで、もしかしたら女子高生同士の中でも分断が起きるかもしれない。
むしろそういうところに巻き込まれたときに「やっちゃダメ」と言うだけではなくて、「あなたは悪くないよ」「大人がちゃんと守るから、困ったときには相談して」「ここに相談すればいいよ。友達がもし困ってたらこういうふうに信頼できる大人に相談して」と。
そういうメッセージを言うべきだなと思うのに、東京都のサイトでは「商品(モノ)扱いされて嫌じゃないの?」「断らないと、友達減るより怖いことに巻き込まれるよ!」「ほんとにヤバかった子は言えないんだよ……!」とか。
それをわかっているんだったら、やっぱり子どものケアの部分をちゃんと考えていってほしいなと思います。もちろん規制は必要ですけど、それ以上にケアの部分。そこに子どもたちがこぼれ落ちないように、福祉と教育で支えていくということをもっと考えてもらいたいなと思っています。
――今日はどうもありがとうございました。
仁藤:はい、ありがとうございました。
(映像終わり)
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