2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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後藤弘子氏(以下、後藤):藤原さんはずっとアダルトビデオの出演強要被害の相談に乗っていらっしゃいます。
今日来ていらっしゃる方は、それについてよく知っていらっしゃる方もいらっしゃいますが、そうじゃない方もいらっしゃると思います。なので、アダルトビデオの出演強要被害というものの現状について教えていただけますでしょうか?
藤原志帆子氏(以下、藤原):私の後ろに流れているのはライトハウスがつくった啓発ビデオです。ヒューマンライツ・ナウさんも今日、新しいビデオのお披露目をされるということですが、私たちも昨年、相談窓口を啓発するために3分のビデオをつくりました。これを後ろで流しますので、こちらを見ながら私の話を聞いていただけたらなと思います。
このビデオは、多くのAVプロダクションが被害者をリクルートしたり撮影したりしている渋谷にあるオーロラビジョンでも流していただいていました。
私たちライトハウスは活動を始めて13年目になるNPO法人です。もともと人身取引の中でも、性風俗産業での従事の強要や、児童買春・児童ポルノなど、性的搾取を目的とした人身取引被害者を性別・年齢・国籍問わず支援している団体です。
約3年半前に初めて、AV出演被害に関する相談を受けました。「アダルトビデオに出演させられそうです」「撮影された映像がもうすぐビデオになり販売されてしまう」という相談を受け始めたのが2014年頃でした。
それが2016年までにどんどん相談が増え、去年1年間だけでも「出演を強要させられた」「不本意なかたちで出させられた」という男性・女性からの相談が100件ありました。今年もどんどん増えています。
藤原:どんな方たちからの相談が多いかというと、ほとんどの方たちは被害に遭った時が18歳から25歳ぐらいの若い人たちです。女性が9割以上で、男性も20人に1人ぐらいの割合でいます。女性だけの問題ではないんです。
そしてちょっと興味深いのが、これまで数百人の相談を受けてきたなかで東京出身の人は10人もいないんですね。ほとんどの方たちが関東も含めて地方の方です。東京に来たときに被害に遭ったり、進学や就職で東京に越して来たときに被害に遭っているということもわかってきました。
どのような被害に遭っているかといいますと、私が初めて会った子は進学のため関西から東京に来たんです。その時に渋谷の有名なショッピング通りでスカウトされました。もともとはAVという話ではなくて、「モデルや芸能界に太いパイプがあるプロダクションだから入ってみたらどう?」とスカウトから熱心に説得され、事務所に向かったんです。
彼女は仕送りだけでは暮らしていけなくてアルバイトも探していたし、お金も必要だった。芸能界にも少し興味があり、高収入ということで、グラビアをやろうと思いました。彼女が実際に撮影に行くと、郊外の離れたどこかもわからない撮影場所に車で連れて行かれました。そこは一軒家のスタジオでした。
彼女は撮影現場に着いてから初めて、AVの撮影だと知らされました。最初は断りましたが、約3時間半窓が一切ない部屋に閉じ込められて、ずっと軟禁状態にされ説得されて、「今、このドアを開けたら、メイクさんもカメラマンも男優さんもみんな待ってるんだから。出るしかない」と言われました。もうほぼ脅迫ですよね。それで3時間半もそこに閉じ込められて泣く泣く、無理やり出演させられてしまった。
撮影されたものがが1週間でWebサイトに公表され、1ヶ月後には販売されてしまうという状況の中でライトハウスに相談が来たのです。それが最初のケースでした。
その頃は、私たちもどう対応していいかわからなかったんです。しかし、私たちはすぐに弁護士さんのところに行き、メーカーやプロダクションを突き止め交渉しビデオを止めたんですね。また、その子は2本目、3本目のスケジュールがすでに入っていたので、それを止めるための交渉もしました。
経済的な理由で出てしまった方も多い中で犯罪被害に遭ったにもかかわらず、被害に遭った若い女性・男性が自分のお金で弁護士さんを雇って動画や画像を消していかなければいけないのは、本当にひどい状況だと思います。
私たちがこれまで受けてきた、「売春や性風俗産業の仕事をやめさせてもらえない」「借金の関係でそういうところで働かされている」という相談と比べて、アダルトビデオの被害に遭った若い女性・男性たちが一番なにをしたいかというと、「今ネットに出てる動画や画像を消したい。今すぐウェブサイト上のストリーミングを止めたい」です。止めたい、消したい、そんな相談が多いです。
それを叶えるためには、本当に大変な力が必要です。被害に遭った画像・動画の再生産、被害の再生産をどうやって止めればいいのか。私たちも苦しんでいるし、弁護士さんもすごく苦しんでいらっしゃるところなんじゃないかなと思います。そこを解決するための法律もつくってもらいたいなと思うんですけれども。
くるみんさんのように強い力を持って前に出て発言できる方はとても稀です。みなさん本当にそれぞれ苦しんでいらっしゃって。私たちの東京にある小さなNPOの相談窓口だけでは対応できなくなっています。全国から相談が入ってくるので、その相談に応じる相談窓口をこれから全国に増やしていってもらいたいなと思います。まずは被害に遭わない仕組みを作らなければならないと思います。
それから、私たちのところにやってくる子たちの話を聞くと、本当に深刻なケースばかりなんですよね。AV業界は、このようなかたちで女性たちを連れてこないと成り立たないのかなと不思議になるぐらいです。
この現状を変えていくためには、業界のみなさんとも協力し合って、問題を解決していく時期にきてるのではないかなと思います。
後藤:ありがとうございました。現状だけではなくて、今抱えていらっしゃる課題、そしてこれからなにをすべきかということもお話をいただきました。
くるみんアロマさんにまたお話をうかがいます。カミングアウトされて、YouTubeでもいろんな動画を公開されていて、いろんな反響があったと思います。その反響がどういうものだったかのでしょうか。
あとは、これからどういうことがあれば、くるみんアロマさんが受けた被害を1人でも多くの人が受けないようにすることができるとお考えでしょうか?
くるみんアロマ氏(以下、くるみんアロマ):そうですね、自分がこのことを発信して今1年ぐらい経つんですけど。やっぱり最初はもう本当に毎日批判コメントとかが来て。罵り言葉として「AV女優」みたいな感じだったり、「自業自得だろ」「お前が悪いんだろ」とか。
AV愛好家をやってる方は、もう本当に「お前、業界潰す気かよ」みたいな感じで。Twitterでもけっこう批判されたり。今でもそういうのは続いているんですけれども。
それはすごくつらいけれども、やっぱりこういうことを発信しないと(被害に遭った人たちは)たぶん絶対知らないことだと思うし。このことを話すことによってそう言われるのは覚悟の上だったんですね。
でも精神的に普通の女性だったらやられてしまうので、やっぱり言えない。言わなくてもいいことだと思うんですけど、どこかでこの言葉を聞いてくれていたらいいなと思って、このことをずっと発信させていただいています。
今後の課題としては、自分がその当時相談できなかったのは一番大きくて。ライトハウスさんのことを教えていただいた時も、最初はちょっと怖かったんですよ。人間不信になってる状態で、もうあちこち「どんなところなんだろう?」となるし、いろんな意味で不安はありました。でも、行ったらすごく丁寧に対応してくださったし、本当に行ってよかったと思っています。
今そういうことで悩んでる方って、絶対1人で塞ぎ込んでたりすると思うんです。誰に相談したらいいか……身内にも相談できない状況がこういう人たちの現状だと思うので。私でもいいし、こういう支援団体の方でも、いろんな方が相談に乗ってくれるというのをもっとたくさんの方が知って、それで改善できればなと思っています。
話すことによって心も救われたりすると思うので、不安に思ってる方は早めに相談してほしいなと思いました。
後藤:ありがとうございます。
先ほど今後の課題について藤原さんにお話をいただいたんですけれども。さらに付け加えて、相談するいうことに関して。くるみんアロマさんも「ライトハウスさんでもちょっと怖かった」と。そういうハードルをどうやって下げていったらいいのか。
さっきもおっしゃったように、増やしていくということも必要なんですけれども、そのあたりについてはどういうふうにしたらいいとお考えでしょうか?
藤原:私たちがこれまで相談を受けてきた人身取引の相談者とちょっと違うのは、AV出演被害の相談者には若い方たちが多く、普通の学生さんを含めいろんな方が相談に来ます。
しかも、夜中に相談が来たりするんです。例えばライトハウスではLINEでの相談窓口を設けたところ、相談の敷居は下がったんじゃないかなと思います。それと、電話よりもLINEで1ヶ月ぐらい話をして信頼関係を築き、実際に相談者と会うと、いろいろ話してくれます。マスクをしながら、メガネで隠しながら、帽子を深くかぶりながら来てくださる方もいます。バスや電車を乗り継いで東京まで来てくださった方もいました。
一度会ってお話することができても、そこからがまた大変です。
AV出演強要被害の相談については多くの場合、弁護士さんにつなぎます。しかし、次につなげるところも、本人にとってはハードルが高いです。まだAV会社の人たちにマインドコントロールされている状況にある方もいて、「会社の人に迷惑をかけられない」「もう1本出演したらやめさせてくれるから、それ出てからにしようかな」と迷ったりされる方もいます。
そこを本人の気持ちに寄り添って、話を聞いて、人員とお金が続くかぎり継続的に支援をしています。今、助成金をもらっているので、地方でも必要に応じて、飛行機や新幹線に乗って相談者さんに会いに行ったりしています。
今、相談窓口がパンクしそうなほど相談が来ています。今すぐ販売を停止したい、明後日ネットに出てしまうのを止めたいという方たちと同時に、例えば5年前、10年前、20年前のものを止めたいという方たちもいて。
「あの時自分の意に反して出演させられてしまって、今まで誰にも相談できなかった。夫にも言っていない。子どもはもちろん知らない。でもまだネットで販売されている。家族に知られたらどうしよう」と最近思い始めた方もいます。かなり長期の被害の方もいらっしゃって、そこを掘り起こしていくとすごい被害者数になるんじゃないかなと思います。
そういった被害者の方たちをどうしていけるんだろうという、そういう課題もあります。強要の証拠が残っていないけれども、本人はそれによって心身にもいろんな症状が出てきながらずっと生きてこられた方たちですね。
あと先ほどの動画や画像が「消えない」というところを解決するためにも、伊藤先生方と一緒にこれから政府の方と相談しながら消していく仕組みをつくっていきたいなと思います。
後藤:ありがとうございます。
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