2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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平野隆則氏(以下、平野):おじさんの話になりましたけども、おじさん以外のネタも、もちろんありますよね。
徳谷柿次郎氏(以下、徳谷):はい。あります。
平野:そういうものをまんべんなく見ていくときに、やっぱりおもしろくなりそうなものって、初めて見たときに、どんな印象として見つかるんですか? 見つけていくときに、ジモコロさんにはたくさんネタが来ますよね。
徳谷:ネタ、来たものを取材したことはほとんどなくて。
平野:そうなんですか。
徳谷:だいたい、そういう飲みの場で僕がこういうのをやっていると、最近行ったのは、例えば「大分で海賊を退治してたおじさんがペンションを始めてるよ」とか。
(会場笑)
徳谷:「海賊を退治したおじさん、いるんですか」みたいな。めちゃくちゃ気になるじゃないですか。
平野:気になりますね。
徳谷:熊本で、イスラエルの十字軍でずっと世界を転々としてた人が地元に戻ってきて、材木屋さんをやってるおじさんとか。もう、やめたほうがいいですか?
(会場笑)
平野:ちょっと飲みこめない感じがしますね。
徳谷:そうですね。だから、僕はインターネット上に違和感とか異物を。
平野:違和感とか異物。
徳谷:そういうものをおもしろく編集して、みんなに楽しく届けたい。それが僕の一番興味があるところなんですね。
平野:逆に私なんかは、仮にも新聞と名のつくニュースサイトをしているので、違和感、異物には触れにくいときがあるんですね。
徳谷:はい。
平野:ニュースにしにくい。ニュースにしちゃうと、それは事実になってしまうわけじゃないですか。だから、本当にそれはそうなのかなって裏取りまでちゃんとしないといけないって考えると、憶測とか「この人がこう言ってます」って、おもしろいって話になって、書けないときがあるんですね。
徳谷:なるほど。
平野:今の話を聞いてると柿次郎さんは、その違和感、異物を見つけたときに、そこに突っ込んでいく感じがすごいしまして。そのメディアの特性というのがすごく気になって。
徳谷:そうですね。そういうおじさんは、ふとした瞬間に出会うんですよ。
平野:ふとした瞬間。
徳谷:その一期一会の瞬間につかんで、すぐ取材するんですよ。勝手にテープレコーダーを回して、勝手に写真を撮り始めるんですよ。すると、そういうおじさんって、まったく気にしないですね。
(会場笑)
徳谷:「もっと俺の話を聞いてくれ!」みたいな状態になるんで、乗せて乗せて、「最高っすね!」って言って。そのときに、おじさんの話はいっぱい集めて捨ててますね。
(会場笑)
徳谷:たぶん、自分の興味のあるものしか反応してないので。ちょっと話が長くなっちゃってあれなんですけど、たぶん来週ぐらいに出るジモコロで、「マッドサイエンティスト農家」って名前を付けた。
平野:マッドサイエンティスト農家。
徳谷:はい。山形の鶴岡の、アル・ケッチァーノっていう有名なレストランの師匠の、日本の原種の植物を育てたりしてるおじさんなんですけど。見た目もめちゃくちゃパンチが効いてておもしろいんですけども、足元に2キロの重りをつけてるんですよ。
(会場笑)
徳谷:むちゃくちゃおもしろいじゃないですか。「なんで重りをつけてるんですか?」って聞いたら、「足が軽過ぎるんだよ」って。
(会場笑)
徳谷:やばいじゃないですか。
平野:やばいですね。
徳谷:「やべえ!」と思って、すぐ足元の写真を撮って、これは絶対記事のメリハリがつくところに入れようみたいな。そういう即興でどんだけ見つけられるかっていうのが、僕の好きな編集のやり方かもしれないですね。
平野:最初におっしゃってた、地元に自信をなくしちゃってる人がいっぱいいるって話をしたときに、今回こういうおもしろいおじさんがいるってことを知って、地元の人はそれを見て、勇気が出るんですかね。
徳谷:おじさんですか? どうなんですかね。おじさんが、そこからまたテレビに出たりするので。それこそ静岡で見つけた、タケノコとクワガタでフェラーリを2台買った、「たけのこ王」っておじさんは、僕が取材した記事がきっかけでゴールデンの番組に10回出て、最終的に武井壮とタイマンでバトルするみたいな。
(会場笑)
平野:本当にあった話ですか?
徳谷:本当です(笑)。別に、嘘をついてるわけじゃないんですけど。
平野:ぜひ、ジモコロで見てもらって。タケノコで検索したら出てきます?
徳谷:はい、出ます。
平野:なるほど。じゃあそういうふうにメディアミックスで、要はWebメディアがきっかけになって、テレビとか雑誌とか新聞とか、そういういろんなメディアが来てくれることによって、また地元が盛り上がってくる感じっていう。
徳谷:そうですね。
平野:そういうところを掘り起こしてると。すごくジモコロらしいというか、柿次郎さんらしい編集術の話。すごい、おもしろい話がいっぱい出てくる。
徳谷(笑)。
平野:ぜんぜん時間が足りないんですけど。さっき話し始める前はね、「45分でいいんじゃないか?」みたいな話を軽くしてましたけど。
徳谷:そうですね。
平野:もう時間が終わりですね。
指出一正氏(以下、指出):終わりですね。
徳谷:あ、あと5分あります?
平野:はい。今日お話を聞いてて、僕のほうも和歌山経済新聞の話で、ボランティアベースでどうやって情報発信をしていくかっていうのを話そうって最初に言ってしまったんで、一応お話しますと、お二人がおっしゃってたこと全部、そのままだなと思って聞いていて。
どんな人に届けようとしているのかを意識しましょうって話があったと思うんですけど、まさにそれかなと。漠然とネットに慣れてると、誰が読んでいるかもわかんなくなってきちゃうんですけど、これはどんな人に届けたいんだろう、県内の人に知ってほしいという視点で書いてるなら、そういう書き方があると思うし。
地元の人に読んでほしい、地元の人に見てほしいニュースだったら、そういうふうに書くというのは、やっぱりあるかなと思いまして。それはまさに、ジモコロさんであったりソトコトさんだったり、そういう先行してるメディアを見ながら、日々勉強している感じかなと思いまして。
なんで僕たちが和歌山経済新聞をやってるかというと、みんなの経済新聞のニュースって、「Yahoo!ニュース」に載るんですよね。書いてることはほとんど地元ネタなんです。そうすると県外の人に読まれるんですけど、実はこれはブーメランのように返って来て、地元の人に読んでほしいという思いがあって。
平野:もっとみんなに和歌山のことを見てほしいんだけど、地元のことを見てもらおうにも、意外とみんなネットを見てても、県外のニュースばかり見てるんですよね。結局、中央発信のニュースが多いじゃないですか。そうすると地元のニュースを意外と知らなくて、地元のお祭りがいつあるかも知らないとか、この商店街でこんなことが起きてるのを知らないってことになってくるんで。だったら、中央のみんなが一番見ているニュースサイトに、和歌山のニュースを届けてやろうっていうモチベーションで始めたんですね。
だから、県外の人に読んでもらう視点と、時に地元の人に伝える視点と両方持ちながら、それぞれどんな読者が読んでるのかなと、顔は見えないですけど想像しながらやってます。
それを一致させることが、さっき編集部の話でもありましたよね。そういうメディアとしてのポリシーというか、進め方というのをしっかり一致させておくことが大事かなと思って。ボランティアでも、個人個人でみんながやるんで、ちょっとバラバラになってしまうときがあると思うんですけど、そういうときは、そういうポリシーをみんなで共有できるといいかなと、今日は思いました。
徳谷:素晴らしいです。
指出:素晴らしいです。
(会場笑)
平野:なにか、フォローしてくださいよ。
徳谷:(笑)。いや、僕ね、やっぱりそういう活動をしてる人がいて初めて、そういう……僕は全国を対象にしているので、ある程度掘り起こしてもらったものに、僕は食いついていって、たまたまおじさんと出会う。
平野:また、おじさんに戻すのね(笑)。
徳谷:起点なので、絶対に。
平野:はい。
徳谷:ここは本当に僕の力ではどうしようもないので、これからみなさんが、そういう土壌づくりといいますか、そういう情報発信に興味を持ってもらえたらうれしいですよね。
平野:今夜も柿次郎さんの周りには、おじさんの話をする人がいっぱい集まってくる。
徳谷:待ってます。
(会場笑)
徳谷:ただ、ちょっとやそっとじゃ、なかなか興奮しなくなってきてるんで。
(会場笑)
平野:じゃ、興奮するおじさんの話とか。
徳谷:そうですね、とびきりの。
平野:ぜひ、とびきりのおじさんを。
平野:指出さんは、今日お話してみていかがですか? みなさん真剣に聞いてますけど。
指出:うれしいですよね。僕はもう1つ、実は奇跡のような町の盛り上がりを実体験したことがあるので、それをお伝えしていこうと思うんですけど。1日1回、自分が盛り上げたい町の名前を口に出すといいんですよ。ぜんぜん僕はスピリチュアル系じゃないんですけど、そうやって口に出すと出さないとで、ぜんぜん違うんですね。みんなが口に出した結果、神奈川の真鶴って町はものすごく盛り上がってるんですよ。
真鶴は、もともとリゾート法ができたときに「美の条例」という、すごいカッコいいパタン・ランゲージをお手本にした条例を作ったんですね。これはおもしろいんですけれども、「家に木を植えるときは実のなる木を植えましょう」とか、「人が集まる場所にはベンチを置きましょう」というのが、イラスト入りで条例になってるんです。
徳谷:いいっすね。
指出:これをみなさんの世代、20代30代の人たちは発見したんですね。「真鶴、いけてるじゃん」って。なにが起きたかというと、木造の平屋の、要はくみ取り式のトイレがついているような古い建物、住居が飛ぶように借りられてるんです。もうなくなっちゃって。
それは、みんな若い人たちが「カッコいい」、「美の条例のときの建物だ」って借りるようになってる。そこからピザ屋さんができたり、ちっちゃな出版社さんが生まれたりして、東京とはまた違う文化圏を作ったんですよね。
これは大きい声で発信したわけでもまったくなくて、みんなが「真鶴っていいよね」って2年3年言った結果、その言葉を耳にした人たちが少しずつ伝播していって、こういうふうになったので。
だからWebを立ち上げるとか、リトルプレスを作るとかって大変かもしれないんですけど、自分が関わってる場所のことを口にするだけでも、けっこう変化があるんだなっていうのは感じています。
だからみなさんの地域のことを誰かに必ず話すっていうのを、毎日したりするといいかもしれないですね。
徳谷:そこはもう、自信を持っていいところを言ってほしいですよね。
指出:そうですね。
平野:今日からできることを最後にいただきましたね。というところで、時間ぴったりです。
徳谷:さすが。
指出:一応、キャラの積み上げが成功しましたね。
徳谷:よかったです。
平野:(笑)。成功したと思います。というところでお時間になりましたので、いつまでも聞いていたいお二人の話だったんですけども、以上となりました。はい、以上となりましたので、これでおしまいにしたいと思います。どうもありがとうございました。
指出:ありがとうございます。
徳谷:ありがとうございます。
(会場拍手)
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