2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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岸上光克氏(以下、岸上):ありがとうございます。すみません、お待たせしました。アトキンソンさん。
デービッド・アトキンソン氏:もともとエコノミストだったので、そっちの今の話で違う観点から考えていきたいと思うんですけれども。
「日本の戦後経済の発展」というのが私の卒業論文だったんですけど、それを見るとほとんどきれいに、元号の時代に沿って日本経済の発展が変わっていっています。
戦争が終わってからちょうど昭和の時代の終わりまで、日本の経済の発展の特徴というのは人口激増ということでした。当時としては、例えば戦争が終わったところで日本人がだいたい8,200万人ぐらいでした。ドイツは7,900万人ぐらいでした。
ドイツが当時7,900万人ぐらい、今は8,300万人までしか増えていないんですけども、その時代に8,200万人の日本人が1億2,700万人まで増加をしたんです。アメリカが移民を迎えることによって、ほぼ同じような伸び率だったんですけども。
自国民でそのぐらいの人口激増を果たした先進国は、日本以外に確認されていないです。その人口激増時代では今までの話のとおり、とりあえず商品を作れば店に並べるだけでもっていうのはあの時代の特徴なんです。
その時代にできてるのは日本型資本主義だとか日本的経営という、そう言えば日本は海外と違うんだと、そういうものができていた。なぜできたのかというと、日本の特徴はそれ以外に構造的、文化的云々ではなくて、ただ単に日本の最大の特徴であった人口激増がその支えになっていたと。
平成の時代に入ると人口がほとんど横ばいで、日本のGDPが横ばいになります。いろいろなものが同時に規制緩和をすることで競争が激化してきてますので、伸びる業界と衰退していく業界で、だいたい2つにわかれています。
次の時代は再来年から始まります。次の時代というのは、みなさんの時代なんです。みなさんの時代ってどういう時代なのかはみなさんご存じのように、人口激減時代なんです。これからお客さんがどんどんいなくなります。
いろんなマイナスの要素ばかりになります。その時代では、先ほどの昭和の時代っていうのはいい商品を作って、それを並べるだけで安くても売れるという時代だったんですけど、これからの時代はそういうわけにいきません。どんどん減っていきます。
自分の収入を守るために、当然ながら単価を上げていかないとどうにもならない。要するに、付加価値の時代なんです。この付加価値の時代というのは、今私が経営してる小西美術と、あと私が今関わってる観光産業も、まさにそのとおりなんですけども。
全部同じような課題や問題を抱えています。簡単に言えば、みなさんの時代ってどういう時代なのかっていうところの3つなんです。「稼ぐべし、もらうべし、払うべし」という、この3つになります。小西美術が駄目になってしまった最大の理由は、3つあります。
お客さまのことを聞いてない、営業してない、意見を聞いてない。自分の自己満足の世界をつくってしまったことが、小西美術の最大の問題となります。いろんなテレビを見ると、消費税を上げることをお客さんに転嫁ができませんとか、商品の値段を上げることはできませんということですね。
私は政府委員会でいつも、「それは誰に聞いたんですか? 何人のアンケート調査ですか?」ということを必ず聞いてます。「いや、日本人だからわかりますよ」って。わかるよって、根拠がないじゃない。根拠がないんです。
テレビに出てる話の99パーセントは、根拠がないと考えたほうが私はいいと思います。いきなりですけど、私は3年前に、「もっと高級なホテルをつくるべきだ」ってことを指摘したんですね。
(そうしたら)「日本には絶対に、10万円以上の代金を払う日本人はいない」と。(でも)伊勢志摩のサミットのために、1日、それ以上にかかる1泊のホテルの部屋ができたら、なんと日本人で何年先まで埋まっちゃってる。「売れないというのは誰に聞いたんですか?」「それは日本人だからわかりますよ」って。
結局、その人が嘘をついてます。根拠がない。たぶん感覚的な話。そうすると、そういうふうに高いものは日本で売れないって言うんですけども、売れないということを言っても、じゃあ伊勢志摩とか7つ星はどうなんですか? (電車のツアーの)四季島はどうなんですか? と。たった数日で100万円するということで、小西美術もそうなんです。お客さんのことを聞いてない。
私は、社長になったときに外国人ということもあって、まったく知らない伝統技術の世界ということもあってなにをしたかというと、主な取引先のところに行って、「あなたが社長であれば何を期待するんですか? 何をやってほしいんですか?」と徹底的に聞きに行ったんです。
そこで言われましたのは、380年間、17代続いてる会社で、17代ともずっと付き合ってるお客さまもいらっしゃる。神社がほとんどですから、その神社の日記が残ってます。「そういう話をされたのは初めてです」ということを言う神社さんがほとんどです。
幸い、ほとんど他社さんは誰も営業に来ないし、お客さんの意見を聞かない。なにを言うかというと、最近はどうだとか自慢話をするだけで、お客さんの意見を聞いてない。それが1つ。
2つ目。自分の世界に入っちゃう。職人だから自分の技術を磨きたいということで、私からするとどうでもいいようなところに、ものすごい時間と能力を使っていて。一番その能力をつけてもらいたいところに、まったくそこに働かないということは多々ありました。
この辺の下のほうに3日も4日も5日も漆を塗っていたりして、真正面のところを台なしにしてしまう。みなさんこっちを見ていて、向こうは見てないという、こういうことが多々ありました。
ですから、なにが一番ポイントになるのかっていうことをきちんと押えて、自分がどうしたいのかっていうことは二の次なんです。そんなときに必ず言われるのが、「あなたは外国人だからわからないでしょうけども、日本人は侍のどうのこうの」とか、「お金じゃない」って言われたりします。
(私は)日本史のこともかなり勉強してます。明治になったとき、日本人の侍の比率は9パーセントぐらいです。私が必ず言ってるのは、「91パーセントの確率であなたは侍じゃない」って言うんです。どうでもいいです、そんな話。
(会場笑)
2つ目の話で、金じゃないということを言われる。金じゃないと言われたときに、「わかりました」と。必ず携帯でうちの経理部長に電話して、「オオキさんが金じゃないって言っている以上、今月から給料なし」ということで。
金じゃないと言っている人は、実はああいう人たちに限って自分の生産性に対して責任を一切持たないんだけども、金だけはものすごい細かいという特徴があります。
(会場笑)
ただ、みなさんのこれからの世界を見ると、医療費、年金、介護、子供の教育費、国の借金。どんどん減ってくる中で、お金に興味のない人っていうのは、その人たちのおかげでどうなるかっていうのは、この国は途上国に戻るんです。
払うべきっていうのは、今、一杯65円でみそ汁が買えるというのは、これはみなさん、罪なんです。いいことはなにもないです。ただの罪なんです。今の話で20円云々というのは、罪なんです。物価が低いということは途上国です。
そういうことを考えてください。みなさんのこれからというのは、経済っていうのは、人間の数かける1人の生産性。1人の生産性というのは、1人の所得なんです。1人の所得の裏にあるのは、一個一個の商品の価格なんです。
経営の方針を言うのであれば、人間の数が減るのであれば、その生産性、単価、所得を上げていかない限りにおいては、これがAかけるBですから。Aが減るならBを上げるしかない。ですから、みなさんのこれからの世代の時代では、そんなむずかしい話でなく、日本の普遍的なああだこうだ、日本的な経営のとかそういうことを言われるんですが。
そういうのは全部、昔の時代の人口激増の時代が可能にした今の時代という屁理屈にすぎません。これから一番ポイントになるのは、稼ぐこと、お給料をもらうことと、商品に対してきちんとした対価を払うこと。この3つが一番のポイントだと思います。
あとの話は具体的な話で、大きな話としてはこれがみなさんの時代のメインポイントだと思います。
(会場拍手)
岸上:ありがとうございます。拍手の音で、「じゃあ終わります」と言いかけましたけれども、今、日本全体のお話がありました。
47都道府県からそれぞれ来ているということなんで、そんなかたちで確率的には考えられないというようなことかなと思うんですけれども、申しわけありません、私の能力のなさで時間が迫っておりまして。
今のお話を受けて、和歌山で商売をしているお三方に、今後の自分の反省と和歌山県の可能性という辺りを短くいただければと思うんですけれども。お願いします。
伊藤彰浩氏:デービッド・アトキンソンさんの先ほどのお話は、本当に共感しました。僕たちのやってきたことがその成立事項だなと思ってます。
和歌山県のこんなド田舎で、インフラの整ってないそういうところでも、ぜんぜんやっていけるんだと信じてやってきましたけども、それがこっちに繋がった日だと思います。
岸上:山本さん。
山本典正氏:アトキンソンさんのお話を聞きまして、僕もアトさんとはよく寿司を食べながら日本酒を飲むんですけど、超日本ラブな方ですので。そのプロのご指摘だからよけい、本当に好きだから厳しい提言をされているということだと思うんですね。
地方でということで考えると、まさにアトさんのおっしゃっている、いかに稼ぐかっていうことだと思います。地方創生って、たぶん各地方でみんながいかに稼ぐか、ここだと思うんですね。
僕も酒造りをやっていてすごく体感するんですけど、戦後の人口増の間の大量生産大量消費だった時代から産業が少子高齢化していく中で、いかに付加価値産業に切り替わっていくかというのが、我々の持っている課題だと思います。
これはもう、各地方の課題でもあると思うんです。人口が減っていくと、うちの会社で起きているのはどういうことかと言うと、和歌山でも地方にありますので、そんな地方にあるうちの会社でいうと、人が雇えないんですよ。
なので今、和歌山市よりうちの時給は高いんです。ちょっと遠くからでも人を集めないと、来てくれないので。そうなると地方で大量生産大量消費型の、これまで地方がやってたことできなくて、逆に地方だからこそ付加価値のあることをしなくちゃいけない時代を迎えつつあると思うんです。
おそらく急成長してる日本だった時と、下がっていく日本だと見え方が変わってくると思うんです。さっき宇城さんが、てんとう虫の話をしてたじゃないですか。ひょっとしたらそのてんとう虫って、日本酒産業かもしれないです。
急成長していくときは見えなかったけども、実は人口が下がっていくときに、「あれ、なんかてんとう虫いるじゃん」みたいな。47都道府県のみなさんに来ていただいたんであれば、ぜひそのてんとう虫を探してみてください。その付加価値の息吹みたいなもの、卵。そんなものがあると思うので、ぜひ探してください。
岸上:ありがとうございます。宇城さん。
宇城哲志氏:今、和歌山の山の中でやってて一番思うのは、先ほどアトキンソンさんがおっしゃっていた経済構造が変わっていってる中で、紀美野町は和歌山では2番目に高齢化比率と人口減少がきつい地域になりまして。
1位が高野町なんですけど、一昨年か何年か前に出た人口減少率のランキングでも、全国で37位とかってすごい数字をたたき出してるエリアなんです。それをもう、客観的に見てもひどい状態なんですけど、見方を変えると、その状況の悪化っていうのはすでに止まってるエリアになるわけです。
現状まだ力があるところというのは、ここから人口減少になってどんどん状況が変化していって、悪化する方向に落ちていくけど、地方の良さ、和歌山の山のよさっていうのは、その状況の変化がもう落ち着いてきてるんで。
要は負債が発生してる状態なんで、今なにをすべきかとか、なにかをすれば変わっていくっていうのが、もう見える状況になってるんだと思うんです。そこが僕が今一番田舎にいて感じるところで。
そうすると、排除しないといけない問題がはっきりしていれば、うちに用があるというか、じゃあこのターゲットのお客さんを呼び込むようなことをしようとか、そういうのが全部やらないといけないことが決まってるんで、ポジティブな面で打ち続けることができるっていうのがすごく感じてて。
なので、ここからの時代はそういう下手にいろいろやってきたところよりかは、なにもできてなくて資源がいろいろ残ってて、それを利用してこれからのニーズとかに対してダイレクトにアプローチできるっていう環境のほうが、ものすごい可能性があるんじゃないかなと思ってまして。
なので、僕的にはすごく紀美野町とか、こういう山の一般的な過疎地って言われてるエリアのほうが魅力的に感じるんです。再起を打っていく上でも、すごく楽しめる場所じゃないかなと思いまして。
そういうところでみなさんと一緒に、また新しいことに取り組んで対象を絞ることで、より遠くの人のお客さんに対してもアプローチすることも可能になると思うんで、そういう循環ができてきたらいいんじゃないかなと思っております。
岸上:どうもありがとうございました。
すいません、私の能力不足でうまくまとめられませんけれども、それぞれの47都道府県でこれからなにかをしていくための、ちょっとしたヒントにはなったんじゃないかというように思います。
そろそろお時間が来ましたので、第1部のトークセッションはこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
(会場拍手)
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