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東京・渋谷の街から考える エンターテインメント×地方創生(全11記事)

コギャル、竹の子族、アメカジ… 日本のメインカルチャーを生み出してきた、渋谷の次なる道を区長が示す

2017年6月28日、地域ブランディング協会が主催となったセミナー「東京・渋谷の街から考える エンターテインメント×地方創生」が行われました。同会にはエンターテインメント、音楽業界を牽引し、地域活性化にも積極的なヤマハとポニーキャニオンの事業者も登場。基調講演となる本パートでは、渋谷区区長の長谷部健氏が登場し、渋谷区の今後のヴィジョンを語りました。渋谷区基本構想、渋谷特区とはどのようなものなのか、渋谷区はこれからなにを目指すのかを説いています。

「渋谷区基本構想」とは

長谷部健氏:もしかしたらお配りになったお手元の資料の中に、渋谷区の基本構想を抜粋したものがプリントされているんじゃないかと思うんですが、実は渋谷区は基本構想を昨年の10月に、20年ぶりに改定しました。

ちょっと説明しますと、この「基本構想」を初めてお耳にする方もいるかと思うんですが、地方自治体がそれぞれオリジナルで持っておりまして、自治体によっては「基本計画」とかそういった呼び方をするところもあります。

これはどういうものかと言うと、その自治体にとっての政策の最上位概念にくるものになっていて、それに紐づくかたちで、僕らは10ヶ年の計画を作ったり、3ヶ年とか、単年度の計画を作ったりします。ですので、区の政策の傘になってくるものになります。

20年前の渋谷の基本構想も非常にいい基本構想ではあったんですけれども、やはり20年前ということで、今の時代とだいぶズレが出てきました。

例えばですけども、20年前の基本構想を作った時は、人口が減ってくるっていう想定のもとに作っていました。ただ、渋谷区は、一時20万人を割って19万人台に落ち込んだ時期があるんですけど、ここ数年はずっと微増していて、今は22万を超えていて、23万が視野に入ってきています。

リーマンショック以降、土地も、今空き地だったところが開発されれ、駐車場だったところにマンションが、っていう話も出てきているので、たぶんこのまま増えていくと思います。

東京都の予測でいっても、都心に人が集まってくる、日本の人口は減りますけれども(都心に)人が集まってくることで、人口は増えてくるだろう、まだ微増するというのはもう少し続くんだろうと思います。

そういった点でまずちょっと大きな設計が、人口のはベースとして大きいですから、それがずれてきていることと、あとは2020年のオリンピック・パラリンピックが来ることも当然想定されていませんでした。ですので、これだけ今、大きな社会インフラの整備も始まっています。そういったことも想定されていなかった。

で、3番目に大きかったのが、ITの進化ですね。IoT、ICTと言いますけれども、やはりそれだけ目に見えない革命が今起きている時だと思います。それをどう活用していくかということも、当然20年前は織りこまれていませんでした。

それを踏まえて、新しく作った基本構想は、いちばん上に来る言葉として「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」を設定しております。これは就任以来ずっと申し上げていた「ダイバーシティ&インクルージョン」「多様性」を多分に意識した言葉になっております。

この「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」を実現するために、7つのカテゴリが下に用意されていまして、教育、福祉、健康・スポーツ、防災とか、あらゆる7つのジャンルがあります。

そこにそれぞれ、またテーマがあって、文章がついているかたちになっています。ホームページや携帯でもすぐ検索できますので、「渋谷区基本構想」と見ていただくとわかるかと思います。

この基本構想は、多くの人に知ってもらいたいと思っています。というのは、それに紐づいて政策を作っているわけですから、そこに紐づいたご提案をいただければ、行政としても非常に受けやすいと思っています。

渋谷区は巨大な運動場?

例えば、エンタテイメントもありますけれども、たぶんスポーツとか健康みたいなところでいうと、「思わず体を動かしたくなる街へ。」とに規定してあります。下の文章を読んでいくと、渋谷区を15平方キロメートルの運動場と見立てて、これから政策を考えていこう、ということが含まれています。

渋谷区の場合、例えば「大きな体育館を作りましょう」とか「グラウンドを作りましょう」とか、行政のスポーツ振興となるとそういうハード面が注目されますが、やはりこの渋谷区で大きな土地はもうないですし、あった場合でも保育園とか特別養護老人ホームとか、やっぱり今、喫緊の課題としてポイントが高いものが優先されるので、なかなかグラウンドを作るみたいなことはできません。

ただ、発想を変えて、渋谷区を15平方キロメートルの運動場として捉えるならば、例えばですけれども、大きな通りを通行止めにするのは難しいですけど、住宅街で住人たちがみんないいといえば、日曜日のお昼1~5時は「ここの道はキャッチボールしていい道にしましょう」とか。そうやって道でできること、そういうことを追求していくとまたいいんじゃないかとか。

あとは代々木公園という大きな都立公園なんですけど、あれは区の公園じゃなくて都の持ち物ですけど、渋谷区の真ん中にあります。あそこがエンタメや健康増進のために、どういう使われ方をしたら区民にとっていいのか、みたいな提案を、例えばしようと思っているんですね。

僕は朝、走りに行くんですけれども、あそこが仮に24時間女性が走れるようなランニングコースが整備されたとしたら、この街で働いている人、遊びに来る人、女性も安心して夜走ったりすると、そこにはもしかしたらランニングステーションとか、もしかしたら走った後に食べるちょっとヘルシーな食事とか、飲んでみたりとか、また新しいビジネスも生まれるんじゃないかと思います。

なので、その基本構想を読んでいただいて、多くのみなさんに、区民に関わらず、渋谷に思いを持っている多くのみなさんに提案をしていただきたい意味で作っております。ですので、みなさんにはぜひ一度見ていただいてですね、ご提案とかをいろいろいただけるとありがたいと思っております。

クリエイティビティが渋谷区の魅力

エンタメ系の話でいくと、やっぱりこの街の武器っていうのは、クリエイティビティとか、新しい価値・文化を今まで発信してきたことだと思います。僕自身、原宿で生まれ育って、今45年いるんですけれども。今思うと、この街のストリートカルチャーにずーっと揉まれて育ってきたなぁと思います。

小学校の時は……これは学生に話すとぜんぜんわかってもらえないんですけれども、「竹の子族」とか「ロカビリー族」というのが僕が小学校の時にはいて。

(会場笑)

笑ってる人はわりと同年輩の人かもしれません(笑)。中学校の時はDCブランドブームっていうのがあって、高校はアメカジ、渋カジ。音楽もバンドブームがあって、イカ天ブームがあって。その後、「渋谷系」という音楽が生まれてきました。

その後、ギャル文化や、コギャル文化へ行ったり。今思うと、いくつかのカルチャーって、ストリートでいろんな人たちが交わって生み出してきたカルチャーだと思うんです。ですので、その部分を強くしたいと思っています。

新しいビル、大きなビルはどんどんできます。街の景色は変わっていきます。もちろんそこから生まれるカルチャーもありますけれども。

やっぱりこの街が優位に立っていた「ストリート」を大切にしたいので、できたら歩行者天国は復活させたいと思って今取り組んでいますし、もっと歩道が広がったり、土日だったら通行止めにして歩く道を増やしたいみたいなことも考えています。

やっぱり行政が文化を作り出すことはなかなか難しいですけれども、「場」を作り、機会を作ることによって、そこでみんなが混じり合うことでまた新しい価値・文化が生まれることが期待できると思っています。

やっぱり渋谷がエンタメ含めてクリエイティビティで立っていかないと、僕はやはりこの街が東京、日本のカルチャーを引っ張っている自負がありますので、そこを突き詰めていきたいと思っているんです。

例えば、僕らの世代がクリエイティブを海外で学ぼうと思うと、「ロンドン、パリ、ニューヨーク」っていうのが、やはり留学先だったと思うんです。僕の場合は「ロンドン、パリ、ニューヨーク、渋谷区」って言ってますけど、そこに東京・渋谷区が入ってきてほしいなと思うんです。

例えば今ダンサーで優秀な人たちって、日本を通り越して、東京を通り越して、すぐ海外に行きますよね、マドンナの後ろで踊ってる、ビヨンセとやっているのがステータスになっています。

だけど、渋谷にもっとそういう披露する場ができたり、イベントスペースがあったり、ホールがあったり、もっとそういうことが活性化してくれば、やはり「渋谷を目指そう」となると思うんですね。

そうなれば、僕らがロンドン、パリ、ニューヨークなどの海外でクリエイティブを学ぶ時に、東アジア、または東南アジア含めてアジアの人たちが「東京・渋谷」とに言ってくれるような、そんな街づくりをしたいと思っています。

渋谷特区構想の要諦

これもやっぱり、行政が作ろうと思ってもなかなかできなくて、今、特区構想を考えています。「クリエイティブ・エンタテイメント特区」って、どういう名前にするかはまだ決定していませんが。

例えば、新しいビルを作る際に、小さくてもいいからホールを作ったり、クラブスペースを作ったり、ギャラリーを作ったり。

最上階には、都心である程度、人に住んでほしい思いがあって、人が住む施設、マンションのような部屋でもいいし、サービスアパートメントでもいいと思います。そういったものを付帯してもらえれば、ビルの容積が20パーセントがさらにプラスされる構想です。

そうしていくと、どんどんこの渋谷の決められたエリアにはそういったエンタメが集積してくることも期待しています。

ぜひこの基本構想を読んでいただいてですね、そこまで基本構想には書いてないですが、そういうアイデアが浮かぶ、発想となるキーワードをたくさん散りばめてありますので、そういったところをみなさんにちょっと見ていただけるとありがたいかなぁと思います。

「渋谷ズンチャカ!」ってどんなイベント?

最近の中でやはりおもしろいのは、「ズンチャカ」(「渋谷ズンチャカ!」)っていうイベントが4年前からスタートしました。第0回から始まって、4回やったと思います。

これも渋谷の中で、みんなが集まって、好きな人が集まって音楽を奏でるイベントですけれども、この場所でやってるからいろんな人が集まってきてくれるし、そこで交わって新しいカルチャーが生まれたりする。

去年はちょっととんでもないこと……僕が言っちゃいけないんだけど(笑)、センター街にピアノを置いたんですよね。グランドピアノを置いて。そうすると、道行く人が立ち止まってチャレンジしていく。めちゃめちゃ上手い人がいたりとか、そこにまた人が集まって。やっぱりそういうのって、街の景色として、エンタメ感としては非常にいいと思うんです。

これ別に大した高額なお金がかかってるわけじゃないですけれども、やりたい人の気持ちが、「場」を作ることで……。

区は許可を出すだけですけど、ヤマハさんとかNPOと渋谷区とが力を発揮してですね、そういった場を活用して、みんなが交わる場をエンタメで作っていくなんてことも、どんどん背中を押したいと思っておりますので。

いいアイデアがあれば、もちろん「ズンチャカと一緒にやりたい」というのもあれば、ズンチャカじゃなくて「こういうタイミングでこういうことやりたいんです」とかもしあれば、またご提案いただけると、渋谷区としては大変ありがたいかなと思います。

区役所の本来の役割

基本構想実現のための掛け声としてですね、「YOU MAKE SHIBUYA」というのを渋谷区は使っています。「YOU MAKE SHIBUYA、あなたが渋谷区を作る、あなたたちが渋谷区を作る」。僕ら行政がサボろうということではないので、ご安心いただければと思います(笑)。ユー・メイク・シブヤ。これを英語ができる人のように言うと、「「YOU MAKE SHIBUYA」(いい発音で)。

(会場笑)

……となるんですけど、「夢、行く、渋谷」っていうふうに聞こえません? 「夢を持って行こう」っていう2つの意味をあわせ持った言葉として使っていこうかなと思います。ぜひそういったことも、細かいですけれども、どこか心の片隅に置いていただいて、この街に思いを寄せていただければと思います。

決して区は、住んでいる人だけに向いてるつもりじゃないんです。この街で働いている人もいますし、好きで遊びに来る方もいますし、学生で学んでいる人もいます。

もっと言うと、昔この町で学んだり、住んでいたけど、今違うとこにいる。でも第2の故郷として渋谷区に対して想いを寄せている、そういう人はみんな渋谷区のステークホルダーだと思います。

シティクライアントがたくさん集まる街がやはりいい街だと思いますので、ぜひそういった人をね、「渋谷民」とか「渋谷人」とか、そういった名前が自然発生的にまた生まれてくるといいなぁと思っていますが、ぜひみなさん「渋谷人」になっていただいてですね、一緒に「YOU MAKE SHIBUYA」でこの街を盛り上げていただけたらと思います。

ざっと簡単ではございますが、ちょっとお話しさせていただきました。ご清聴ありがとうございます。

(会場拍手)

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