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ロバート・ウォルター氏講演(全4記事)

神話に学ぶ、次世代のヒーローの条件「自分1人だけではなく、コミュニティを豊かにすること」

各界で活躍しているヒーローたちが講演した「HERO'S JOURNEY CONFERENCE JAPAN(ヒーローズ・ジャーニー・カンファレンス・ジャパン)」。ジョーゼフ・キャンベル財団の創設者であるロバート・ウォルター氏は、名著『千の顔をもつ英雄』などで知られるキャンベルの神話学について語りました。

ヒーローとは目標達成のために挑戦し続ける存在

ロバート・ウォルター氏:もう1つ、ネイティブアメリカンの人から旅立ちに関してのアドバイスがあります。

「人生を進んでいくと、とても巨大な穴がある。それは飛び越えろ。思うほど大きくはないかもしれないから」。崖のところまで歩いていった時、その深さが全くわからないほどの暗闇だった場合には、何か足場があるかを確認するか、もしくは飛ぶかの2択しかないんです。

どんなステップであったとしても、その穴を飛び越えれば素晴らしい土地に行くことができるんです。ジョーゼフ・キャンベルは、「ニューヨークの真ん中を歩いているときに、すべてがいろいろなエネルギーに満ち溢れていてすごいと思った」と言っています。「ああ、こういうことなのか、これこそが、私のマヤの経験だ」と。

そして、もしそういうものが存在して、その突破口を見つけたとします。そして魔法がある土地に行きます。そこには神様がいて、そこからが始まりの時間です。ここからが最も楽しい時間で、自分の人生はここから始まるんです。いろいろなトライアルがあるし、いろいろな試練が訪れます。でも、あなたが克服することができない困難なんてないのです。これこそが、イニシエーションなんです。

それで、そこには通過儀礼があるのですが、必ず戦ってほしいんです。予期せぬことがあったとしても、戦ってほしいんです。いろいろな困難があると思うけれども、戦い抜いてほしいんです。

全部失ったと思うかもしれない、もう戦えないと思うかもしれない、つまづくかもしれない。でもつまづいた時こそ、そこにあなただけの宝があるんだと気が付いてほしいんです。そしてあなたはそれに手をのばす。

ヒーローとは常に、目標達成のために自分自身に対して挑戦をし続ける存在なのです。目標達成のためには、絶対に屈しないということなんです。さっきも少し触れたように、扉があきます。そしてドアが開いたら、ドラゴンがいる。これは比喩なので、実際にドラゴンや、それに似たような怪物がいると仮定してください。そうするとドラゴンに食われるか、どうかの瀬戸際に立つのです。

宝とは、1人で豊かになることではなく、コミュニティを豊かにすること

そして、ここでしなければいけないことは、そのドラゴンを殺さなければいけないということなんです。そこから逃げ出してはいけない。人に決めてもらうのではなく、自分自身で決めなければいけない、ことです。そのドラゴンを殺すと、自分自身をも殺すということにもなるんです。つまり自身と向き合い、自分を解放することです。今までの過去から、自分を解放することを意味します。

そういうふうにすると、人はどうなるのでしょう。そのドラゴンを倒して宝石を取り戻すと自分の探検は終わります。するとその後に素晴らしい発見があるのです。じゃあその宝石とは何のことなのでしょうか。素晴らしい、至福ということです。タイミングがよくて、本当に素晴らしい宝ということです。

時代によってその宝が何か、違うかもしれませんが、例えば、ギルガメッシュの場合。さっき映画で観たと思いますけれども、ヘビが食べちゃいましたよね。でも、物語の中での宝というのは、自分と自分自身のコミュニティを癒すものなんです。つまり自分のコミュニティを増やすこと、自分自身が勝手に1人で豊かになることではなく、コミュニティそのものを豊かにするということなんです。

これは、昔のヒーローズジャーニーですが、今は次世代のヒーローズジャーニー、つまり自分の地球、それから地球という宇宙船全体を救っていくものだということです。宝の正体が何であれ、その宝というのは、常にその1日を豊かにしていくものなのです。

そして戻ってくる。これが一番難しいところかもしれません。お宝を、全部家に持って帰ってください。もちろん持ち帰ることを拒んでもいいんですよ。まあちょっと天国が素敵すぎるから、まだ生き返りたくないないなとか、まだ家に戻りたくないなとか。自分の人生の残りは天国や素敵な居場所で生きるんだとか。ここで生きていたいんだと、言ってもいいですよ。もしくは、神様と事前取引しても良いかもしれません。「私は戻ります。でも必ず天国に戻ってくる権利を与えてくださいね」とか、「もし何でもやりたい放題してもいいという権利をくれたら戻りますよ」と言う人もいるかもしれません。

でもそうやって交渉しようとすると、状況は全然自分の思うようには進まなくなってしまうんです。冒険のゴールというのは、みんなで一緒に集まって、そして魂も一緒になって、みんなで前に進むということなのですから。

だからそこは、我慢して戻らないといけないんです。戻ってきてください。褒めてもらえるかもしれない、もしかしたら違うかもしれない。でもとにかく戻ることが重要です。そして、価値あるものは何も失わずにそのまま戻ってこられるのが嬉しいですね。戻ってきてそれをみんなに分け与えるんです。もし、全部が欲しかったら神様は与えてくれます。でも、そのためには、準備が必要なのです。

地球が私たちに与えてくれるものはすばらしいもの

「グローバルに考えてローカルに生きろ」という言葉は的を射ています。もし、みなさんがヒーローズジャーニーから戻ったら、自分はグローバルにならないといけない。でも、ローカルで小さな活動もしていかなければいけないんです。つまり、この世界でどっちの生き方にしろ、生きていかなければいけないんです。人生をそのように生きるというのは、まるで芸術のようだと思います。

だから、片方の足を別々の場所に突っ込んでいたら、そう、いろいろなところに突っ込んでいたら、すごくリスクはあるかもしれません。でも必ず信念を持って、続けてほしいんです。そうすることで報酬も得られるでしょう。そのような現実を知った上で冒険を続ければ、そして目的を持たずに生きることをしなければ、他の人にずっと幸運を与え、社会に継続して貢献し続けることができるのです。そうすることで、自分自身も永遠に変わることができるだろう、ということです。

そのような変化によって、あなたの人生は本当に満足したものになるでしょう。自分自身に力を与えることができ、本当に素晴らしい魔法のような、ミステリアスな世界の中で最高のパワーをもって、自分の想像するすべてを表現できるようになるんです。そして、あなたも私も、私たち全員が素晴らしい贈り物をもらっているのです。

ではそれは何か。では私から提案したいと思います。一番最後に「ザ・ギフト」という詩をご紹介したいと思います。

「最初に気付いたときは、ブルースをうたっていたんだ。幸せだったかなんてわからない。だってブルースだから。私は、ただ生きている喜びを、うたっているんだろう。この歌はずっと、自分たちに困難なことも優しいことも考えてくれる。真の友達のことも、愛してくれる人のことも。そして僕は気付くんだ。僕自身が変わることで、いろんなことが叶うだろう、と。そしてたくさんあげるんだ。どんどん与える。そうすると最後には、与える人がいなくなるんだ。受け取ってくれる人もいなくなる。そしてみんながその源になっていく。そうすると、ギフトしか残らない。贈り物しか残らない。それをまた創って、摘み取るというのは、一からまた立ち上がろうということ。それは季節が変わるように。そして年月が過ぎ去っていくように。そして、それこそが地球、それ自体なんだ」。

この地球が私たちに与えてくれるものは、想像もできないほど素晴らしいものなのです。私たちが考える以上に。1つだけ、想像してみてください。この部屋にいる全員が、自分自身がヒーローであるということに気付き、そしていっしょに手を取り合うことで、この世界を動かすことができるという事実に。私は、それができると信じています。今日は来てくれて、ありがとうございました。

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