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UN Climate Summit Poem "Dear Matafele Peinem"(全1記事)

一遍の詩で世界を動かした、女性活動家のポエトリー・リーディング「Dear Matafele Peinem」

マーシャル諸島の気候変動活動家であり、詩人でもあるキャシー・ジェトニル=キジナー氏。現在ではNGO Jo-Jikum代表としてマーシャル諸島の環境リーダー育成に努める彼女ですが、一躍脚光を浴びるきっかけとなったのが、2014年に開かれた国連気候変動サミットでした。その開会式で披露し、世界中から称賛された詩「Dear Matafele Peinem」の全文です。(訳:詩人・管啓次郎)

国連気候変動サミットで披露された詩「Dear Matafele Peinem」

キャシー・ジェトニル=キジナー氏:ねえ、マタフェレ・ペイナム

きみは生後七か月 歯がなくて 朝日のように笑う

卵のような、仏陀のような つるつる頭

きみは雷のような太もも 稲妻のような泣き声

バナナが好き、抱きしめられるのが好き、

ラグーンに沿ってあるく毎朝の散歩が好き


ねえ、マタフェレ・ペイナム

朝日を浴びてのんびり輝く、

あの眠たげなラグーンのことを 

きみに話してあげる


いつかあのラグーンは私たちを

呑み込んでしまうって かれらはいうの


海岸線をかじりパンノキの根っこを噛み

防波堤を呑み込み 島の骨までもぐもぐと食べ進む


かれらはいう、きみも、きみの娘も、その娘だって


根無し草になってさまよい、故国と呼べるのはただパスポートだけ



ねえ、マタファレ・ペイナム

泣かないで

ママが約束する

誰かがやってきてきみを食べちゃうなんて 許さない


政治の海を鮫みたいに泳ぎまわる 

がめつい鯨みたいな会社とか 

モラルの壊れたビジネスによる淀んだ水でのいじめとか

目隠ししたままのお役所なんかに 

この母なる海を台無しにさせない


誰も溺れないし 引っ越していくこともない

ふるさとを失うこともない


地球温暖化による難民になんて 

誰もならなくていい


少なくとも すでにそうなってしまった人を除けば、というべきかな


パプアニューギニアのカートレット島のみなさん、

ソロモン諸島のタロ島のみなさん、

いまここでみなさんに謝っておきたいと思います


はっきりさせておかなくてはいけない


 きみのママもパパも、おじいちゃんおばあちゃんも、

きみの国そして大統領も、私たちはみんなで戦う


たとえこっそりと プラチナ製の名札の陰に隠れた人たちが 

私たちなんか存在しないふりをしても 


マーシャル諸島、ツバル、キリバス、モルジブ、

あるいはフィリピンを襲ったハイヤン台風 

パキスタン、アルジェリア 

コロンビアの洪水や すべてのハリケーン、地震、津波が

存在しないふりをしても


それでも私たちが手をさしのべ拳を突き上げているのを

ちゃんと見てくれる人たちがいる

幟を掲げ メガフォンで叫び


私たちはカヌーの群れで石炭船を通せんぼ 

私たちは太陽光発電パネルの輝き

私たちは昔ながらの農民の新鮮できれいな土 

私たちはティーンエイジャーの指先から花咲く署名活動

私たちは自転車に乗り、リサイクルし、

大切に使う家族、夢を見て、デザインし、建築するデザイナー、絵を描き、踊り、書くアーティストたち


私たちは言葉をひろめてゆく


何千人もの人々が街路に出てプラカードをもって行進 手に手をとって歌っている たったいまの変化を求めて


みんなの行進はきみのためなのよ 私たちのために歩いてくれる 


なぜなら 私たちには ただ生き延びる以上の価値があるから

努力し 道を切り拓く 価値があるから


ねえ、マタフェレ・ペイナム

すっかりまぶたが重くなったのね 

さあ目を閉じて 私の赤ちゃん、ぐっすり眠ってちょうだい


きみをがっかりさせることはしない 見ていてね

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