2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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森富美氏(以下、森):みなさん、グローバル教育の話を聞くと「魅力的だな」「やらせてみたいな」と思うと同時に、「でも別にうちの子をグローバルエリートにしたいわけでもないし、いいのではないかな」「東大が全世界的で認められていなくても、日本の中で認められていたらじゅうぶんじゃないの」と思われる方も、いらっしゃると思いますが。
尾木直樹氏(以下、尾木):そこがものすごく大事なところですよね。「うちの子は日本でずっと育てていくし、関係ないわ」と思われる。僕もそういった考えの時期もありましたが、現実の日本の社会をみていると、電車に乗っていても外国人の方がいっぱいいるでしょ。つまり、こちらが出ていかなくても海外から日本に入ってきているわけですよ。
とくにアジア諸国からたくさん入ってきていますよね。僕もこの間、行きつけのラーメン屋さんに行ったら、ベトナム人の女性の方が上手に日本語をしゃべっていてね。店長さんも「いやー先生、この子よく働いてくれてね、勉強も一生懸命やってすごいんですよ」と自慢されたのですよ。
政府も30万人の留学生構想を持っているのです。僕も法政大学で、この3月までずっと教えてきました。僕の講義を聞いている中国の留学生たちは講義が終わったら、毎時間のように僕の教卓へ3〜4人押しよせてくるのです。そして「尾木先生、なんで日本の学生はこんなに勉強しないんですか」と言うわけ。
「僕の授業をとっている子は法政の中でももっともクリアな子ばっかりだ」と言うのですが。「日本の子どもは勉強しない、学生なのにもったいない、なにをやっているんですか」とガンガン怒られて、そんなことはないのだろうと思っていたけど、やっぱり留学生から見れば日本人は大学に入ったら勉強しないのです。入るまでは大変だけど、入っちゃったらもう遊んでいる。
もちろん遊んでいる学生ばかりじゃないのよ。僕が見ていてもよくやっているなと思う子もいるのですが。でも、海外に比べて気合がまったく違うのですよ。
他の国は、大学は入ってからが大変なのです。ちゃんと卒業するためには、厳しい条件をクリアしなくちゃいけない。また、特にアジアの学生は成功したいというハングリー精神もあって、本当に熱心です。
そこで外国人の方が、優秀な成績や働き方をもって、日本人の働き口を奪っていく。といったら変ですが、ヨーロッパやアメリカで起きている現象じゃありませんが、日本は別に移民で受け入れているわけじゃなくても、看護師さんなども海外の方がいっぱい入ってきていますよね。海外からの留学生がいっぱい働いている。彼らはものすごく優秀なのですよ。
仕事を取られるという言い方はあれですが、私たち日本人はその人たちの下働き、命令で動くような単純労働の世界に入っていくのではないかという懸念をおぼえる方もいるでしょう。だからといって排外主義に走るのではなく、彼らと対等に今後の社会を生き抜く力が必要です。
尾木:それからもう1つがAI人工知能の技術がものすごく進んできたことですよね。これによって、例えば今から10年から20年後の日本では、今ある職業の約半分がAIやロボットで代替されると言われているのです。とくにサービス業のところ。
みなさんもニュースなどでよくご存じの通り、例えば東京オリンピックの時にはどんどん無人バスや無人タクシーを使おうということで、今もうすでに実験をあちこちでいっぱいやっていますよね。
将来的にはすべて整備されて、無人タクシーをアプリで呼んで、家の前からパッと乗っていって、日本テレビまでスッと来て、支払いもカードかなにかでピッとやるような時代がもうすぐやってきますよ。
AI化というのは、もちろん介護ロボットもそうですが、それから学習ロボットですね。うちにこの前「Musio」というのが来たのですよ。Musioはご存じない? 4月に発売された、会社名は言ったらまずいかな……ソフトバンクから発売されたんです(笑)。
(会場笑)
なんだか宣伝をしているみたい。ソフトバンクから売り出された、アメリカで開発された英会話ロボットです。おもしろいのは、何回も繰り返してリピートするだけではなく、対話能力を持っているのです。
「おはよう」と言ったら「おはよう、機嫌よさそうな顔してるね」などと、全部返ってくるのですよ。相互関係の中で英会話ができる。そうしたら子どもが1人増えたのとまったく同じですね。発音だって、英語の発音ははっきりしていますよね。お口もはっきり開けますし、だから家全体が朝からにぎやか(笑)。
Musio君が教室に一台あれば、日本の英語力が相当変わりますよ。
これは一例ですが、これからいろんな領域でロボットが大活躍するのです。今すでに九州ではホテルで全部ロボットが対応しています。
森:ハウステンボスのあたり。
尾木:そうです。ハウステンボスのあたり。これ、言っちゃいけないかな?(笑)。
(会場笑)
でも、できているのですよ。そういう時代に刻々となってきているし、ネイルなんかもね。
森:きれいな爪ですね(笑)。
尾木:はい。2週間に1回は行くのですが、これも今あと10年後には90パーセント以上の確率でネイリストという職業はなくなると言われていますよね。
森:ちょっとどうしますか、ネイリストさんがいらしていたら。
尾木:ごめんなさい。今から転職を考えたほうがいい。悪いけど10分でパッとできるようになる。
森:プリクラみたいな感じ
尾木:そう、プリクラ的な感じでできちゃうし。すべてがそうやって変わってきた時に、なんの力が必要かということが見えてくるのです。ここのところは大前提です。実際に、世の中が変わってきてしまっている。それもグローバルの中で変わっていく、日本の国内ではないのです。日本にいても外から押しよせてくる。
尾木:それからネットで、どこにいても世界中とつながることができるわけでしょ。日本の子どもたち、LINEでよくいじめっこしてますが、とんでもない。もっと世界に発信したり、世界を知るために有効活用しなきゃいけない。
森:わが子を外に送り出していこうと積極的に思っていなくても、外からいらっしゃる方々くさんいるから、日本の中にいてもグローバルであらざるを得なくなる。
尾木:そうなりますね。
森:しかもぼんやりしていたら、機械に仕事をとられる。
尾木:うん。ただ日本は島国で、陸続きではないから本当にそのあたりの認識が遅れがちですよね。
例えば中国なんかこれからグローバルな世界に入るからって、2010年から小学校の1年生から英語教育が必修なんですよ。週に4時間必修ですよ、私立は6時間やっています。日本は来年から移行期間で2020年には正式に小学校3年生から外国語活動に入るわけでしょ。
とんでもない遅れ方です。もう勝負は終わっちゃっているのです。中国の教育改革は2020年に完成させるというのです。だから中国に行けば、もちろん地域などにもよりますが、小学生が英語をペラペラしゃべります。
森:英語教育というと相馬さんご専門ですが、どのように感じられていますか?
相馬:英語はみなさん「話せたらかっこいい」と思われるでしょうが。やはり言語なので、まずは内容が理解できるように、聞ける・読める・書ける・話せるというステップをしっかりと踏んでいくいことが大事だと思います。
日本語もそうですが、まずはお父さんお母さんの話していることを吸収して、それが文字という抽象的なものになって、自分の頭の中で静かに読めるようになる。そして自ら発信伝達する手段として、話す・文字を書くと発展していき、情報処理ができるようになるという段階が踏みます。
英語はまず、みなさんが周りで話す環境がないので、理解するために言語を習得するという目的意識が希薄となり、なかなか日本においてはそこが難しい。
島国なので同じ言語を話す、人と違うことを言わなきゃいけないというシチュエーションがなかなかない。でも、地続きの大陸だと違うのですね。宗教も違う、国も違う、考え方も違うという人がいるので、自分と隣の人が違う言語を持っているのが当たり前。
ですから、英語を話さなければそもそも通じないという第一歩があり、次に自分が発信しなければ自分のことがわかってもらえない。日本にはこうした2つぐらいのハンデがあります。
では、グローバルな時代が迫ってくるのですが、日本の場合はどうしたらいいか。英語が身近になるように、できるだけご家庭の中で意識してほしいのです。
例えば日本の新聞と外国の新聞では、その見出しの出方が違っているのですね。外国の新聞は、世界の情勢がどうなっているのか、今世の中がどうなっているのかということが一面に出ています。一方日本では、国内のことしか出ていない。紙面1つとっても入っている情報が違います。
お子さんはこれからインターネットを繋ぎますが、医療というものがフォーカスされる時代において、「医療」という日本語を検索した検索数と、「medical」と英語で検索して出てくる検索数とでは、その情報量がまったく違うのです。
そもそも入ってくる情報も違います。読み解けるかどうかというのも語学です。読み解ければもっと素晴らしい。それを最後に組み合わせて人に伝えることができれば独自性であり、それを自分で自在に使えるところへ持っていけることが理想的だと思います。
森:例えば、小学校の宿題でチューリップについて調べなさい。と言われた時に、Wkipediaでチューリップを調べました。Wkipediaの日本語ページで見ることができる情報と、英語ページで見ることができる情報と、その内容にも量にもだいぶ差があるのですか。
相馬:まったく違いますし、背景としての使い方も違いますが。外国には教育ページといって、まず動画があったり、教え方そのものが違いますね、動画が豊富なのも特徴的です。
森:尾木さんも英語を学ぶ理由や良さ、というのはどんなふうに?
尾木:僕は国語の教師なの。だから英語は超苦手なのですよ、断っておきますが。
ところがうちのお孫ちゃんたち、6歳と5歳と1歳半がいるのですが、3人ともインターナショナルスクールに行っているのですね。1番下は1歳2ヶ月くらいから行き始めているのです。だから日常的な昼間の生活は全部英語なのですが、そうするといわゆるバイリンガルと言いますか、それで育っていっているのが目に見えてわかるのです。
ただ英語がしゃべれるのではなくて、僕がしゃべっても発音が悪いもんだから「じいじは通じない」ときょとんとしているのですよ。それで、大学を出たてのうちのスタッフが、この間もお孫ちゃんたちに英語でしゃべったのね。そうすると、いちいち全部の単語の発音を直されちゃってしょげていました。
しかし、ポイントはそこではありません。「英語を話せる」ということ以上に、「すべて自分の意志を言う点」での影響がすごく大きい。
英語の文というのは、「私は」「好きか・嫌いか」。トランプさんも"I hope"と言ったそうですね。つまり最初に主語がきて、なにをしたいという動詞がすぐに来るから、主張がはっきりしているのです。
これが日本語では、「僕は今朝は眠くてなんやらかんやら、だからご飯は食べたくない」。したいかしたくないかが最後なのですね。それで、顔つきから判断して、空気を読まないといけない。ここがぜんぜん違う。僕はお孫ちゃんたちと同居しているのですが、外国人と住んでいるような感じがします。やたらはっきりいうなぁといった感じです。
つまり、それはグローバルな育ち方をしちゃうからです。それ自体は良いことなのですが、日本の現状とは合わないということもあって、けっこう悩んでいます。
そんなふうにして、言語というものは人格形成に影響を与えるものなのです。
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