2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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平山景子氏(以下、平山):次、3点目です。なかなか熱い話題になってきました。ダイバーシティ、昨今、女性を対象にした企業動画は非常に称賛もあり、批判もあるという状況があります。これも実は働き方改革というところにも一部起因していないのかなというところで、お話をうかがいたいと思います。
白河桃子氏(以下、白河):はい。実は東大でこういうイベントをやっていたんですね、小島慶子さんや研究者の方たちと。タイトルとしては「メディアと表現を考える、あのCMなんで炎上したの? これって笑っていいの?」っていうタイトルだったんですね。
かなりストレートにいろんな議論をやったんですけれども、やっぱりこの時の結論としては、「対話って重要だよね」っていう話になったんですね。炎上、削除、それで謝って終わりじゃなくて、「じゃあ、なんで炎上したの?」ということをもっとちゃんと考えなきゃいけないのかな、っていう話になりました。
私も、実は炎上防止アドバイザーを求められてるのかなというようなものが、やっぱりテレビとか、そういった動画作成などのところからお仕事をいただくことが多くてですね。
やっぱり今、炎上ってすごくリスクなのでみなさん気にしてるんですけど、地方自治体の動画とか、何気なく作って、すごくウケるだろうって思って作ったら炎上しちゃったりとか。あと、婚活ブックとかいろいろ出てるんですけど、とんでもない時代遅れな記述があったりとかですね(笑)。
平山:(笑)。
白河:そういうことで、海外でも日本は「こんな動画を地方自治体が作ってるんだよ」みたいな感じでけっこう報道されたりとかですね。とくに、ちょっと有名になった「スクール水着の若い女の子がプールの中で飼われていて」って、「実はこれウナギのことだったんです。養殖ウナギのアピールです!」って言われても、「えー……」みたいな感じのことがあったりですね(笑)。
あと最近では、「オムツのCMがワンオペ育児を賛美してるんじゃないか」「一番つらい時の育児を思い出して、私は吐きそうになりました」みたいなことで炎上してしまった、みたいなこともありました。
こういったことが、1週間に1本ぐらいあるので、いったいなぜなのかということを東大のイベントで話し合って。やっぱり1つは、これってたぶんこう話していると、「表現の自由を邪魔するうるさい人たちだよ」って思われると思うんですけど、やっぱりこれだけの反論を受けるっていうことは、作り手が受け手の変化に気が付いてないんじゃないか、と。
作り手はなぜ変化してないのかというと、例えば、このような事例があるんですね。子育てということで、母子だけのイメージの写真をパッと普通に使ってきちゃうじゃないですか。あと、ライフデザインとかの話も、働くというと男性のイメージがものすごく強かったり、イクメンブックとか作ったのに、「あれ? 女性が働いてるっていう設定はどこですか?」みたいなところもあったり、本当にいろんなことが起きています。
これを作成してる広告代理店、新聞、ラジオ、テレビなどのメディアのほうで、性別役割分担を助長しすぎると炎上したり、性的なイメージが強すぎると海外で批判されたりとか。
あと、グローバルにもTwitterとかYouTubeで世界に出ちゃうので、そういったことでも(炎上のきっかけになる)。そういったことって、「日本以外の人も見ますよ」っていう意識があるのかとか、そういったことも重要なんですけれども。
やっぱり重要なのは、ダイバーシティ&インクルージョンっていうことだと思うんですね。作り手がなぜ受け手の変化に気が付いていないのか?
やっぱり作り手の人たちのいる環境というのが、男性中心の働き方。つまり、女性で子育てをしながらとか、介護をしながらとか、働いてる女性の方とか、それから例えば、病気でなかなか長時間働けなくなったっていう人が強い意見が言えなくなったりする。そういうダイバーシティのない場所。
そして、もし女性がいたとしても、チームですからもちろん試写とかもしてるんですよ。でも、そのダイバーシティがある場所で、「女性もいたんです」「女性もいた場所で作ったんですよ」って言われても、その女性自体もけっこう多様だし。
そしてさらに、その女性がその会議の中で声が出せるか、これがインクルージョンなんですね。みんなが「これいいよね」って言ってるものを、1人だけ「なんかちょっと違うんじゃないですか」って言うのすごく勇気がいるじゃないですか。でも、イノベーションってやっぱりそういうところからしか起きないんですよね。
このダイバーシティ&インクルージョンが、作り手の働き方の硬直化によって作動してないんじゃないかっていうことが1つあります。
それで、作り手が受け手の意識の変化や場の変化に追いついていないというので、「じゃあ、対話の場をどこに持ってくればいいのかな?」っていうお話もあるんですね。
ネット空間で今すごく、すぐいろんな議論がわき起こりますよね。ネット空間っていうのは重要な意見表明の場で、こういったことを不愉快に思ってるとか、気付いてる人がいるってことが可視化された。それは悪くない。しかし、瞬時にガーッて燃え上がって、そうすると企業さんはあわてて「削除します」とか言って謝罪して、もう終わってしまう。それで、また同じことが繰り返される。
そうじゃなくて、瞬時に燃え上がって忘却されて、消費されるのではなくて、もっと受け手と作り手が、「じゃあ、なんでこれがいけなかったのかな?」って対話して考えていく場があって、それで初めてみんなで変わっていけるんじゃないかな、そういう議論をしたんですね。
この対話のことに関して、オムツの動画なんですけれども、すぐに削除しなかったんです。ちゃんと取材にも応じて、「いったい何が私たちはこれがいけなかったのか?」「すごくいいCMだと思って作ったのに、女性を応援するために作ったのに何が悪かったのか?」っていうことを、しっかり企業さんが意見聴取をして受け止めるという姿勢を見せてくれたのがすばらしいな、と。
平山:そうですね。削除されないって、なかなかいませんね。
白河:そう。削除して、謝罪して、もう触れないでください、じゃないんですよね。ちゃんとその後に対話があった。それで、同じ頃に同じ……、今度はほめるのではっきり名前を言いますけど(笑)、P&Gさんのパンパースというオムツも同じように広告を出したんですね。そちらはネット上で大絶賛。
どういう内容だったかというと、お母さん1人で孤軍奮闘するのではなくて、ちっちゃいお子さんのいる親子をみんなが見守る。例えば、お母さんはもちろん出てくる。お父さんももちろん出てくる。おばあちゃん、それも発展途上国のおばあちゃん、「子供に絵本読むために私は字を覚えたわ」とか、それからいろんな国の人が出てくるんですね。
工事現場のおじさんは赤ちゃんがベビーカーで前を通る間、寝てるからちょっと工事の手を止めて3人こうやって待ってるとか。あと、博物館のおじさん……博物館じゃないのかな、いかめしいガードマンのおじさんが立ってるんですけど、赤ちゃんが通った時だけ、その子を笑わせようと思ってこんな顔をして見せて、お母さんがハッと振り向いたらフッて真面目な顔に戻るとか。
これはもうみんながこの子供を応援してるんだよっていうような、すごくあったかいメッセージが。しかも、多様性のある人たち全員が、赤の他人まで赤ちゃんを応援してるんだよっていうような、すばらしいCMに仕上がった。
私はP&Gのべセラ社長と対談をさせていただいたことがあって、P&Gは世界企業ですけれども、とにかく必ずダイバーシティのチームで取り組んでいるし、しかもそのダイバーシティ&インクルージョンをとても大切にしている。それを今、日本の企業にも広めるような活動までしてるんですね。
インクルージョンというのはなにかというと、その場にいる人が誰もがこの場に受け入れられていて、安心して発言できる、こういう空気を作ることを言うんだとか。これのための研修とかもあって。こういう研修って、けっこう企業で意図的にやってるんですけど、例えば、女性ばっかりいる中に男性の管理職を1人ポツンと入れてみる。で、「この商品は何色にしたらいいですか?」って聞いてみる。
それで、女性がみんな「ピンク」とか言うんですね。そうすると、その管理職は最初「青」って言おうと思ってたんですね。ところが、周りの人がみんな違う「ピンク」と言うので、結局彼は困っちゃって、最終的に「黄色」って言ったらしいんですね(笑)。
平山:(笑)。
白河:なんで黄色になったのかわからないんですけど、そして、その場を体験して初めて彼は、「自分がマイノリティだと発言ができないし、発言が歪められる、っていうことがよくわかりました」っていう。そのための研修だったんですけどね。
そういう研修を意図的にでもしないと、日本の場合、やっぱり場にダイバーシティが欠如してるので気が付かないということもあるのかなと思うんですね。例えばオムツでも、生理用品でも、それから髭剃りの商品でも、P&Gは必ずダイバーシティのある、人種も国も違う、サービスも違う、すべての人たちで取り組むようにしてる。そのほうがいい商品ができるしリスクも少ないとおっしゃってました。
平山:なるほど。今のお話をうかがっていて、ちょうどGoogleでも、いかにみんなが、ダイバースな人間が発言できるかというところに非常に着目をしています。
もともと始まりは「どうしたらチームの生産性を高められるか?」というところで、うちのHRってものすごくいろんな実験をするんですけども、その中から出てきた1つのロジックがこれなんです。この5つの要素があるチームは、ないチームに比べて生産性が極めて高いんですね。
その5つというのは、心理的な安心感。それから、信頼性、チームに信頼されているというところ。それから、組織構造と透明性ですね。自分の役割やチームの役割、そしてなにがゴールかが明確であること。そして、自分にとって仕事の意味を実感できる。そして最後は、自分の仕事がインパクトある仕事だと思う、という。
この5つの要素があるかないかが大事なんですけども、この5個を調べていく中で、この5個が並列でないということもわかったんですね。この心理的な安心感っていうのは、すべての要素においてこれを通底するものである、と。この心理的な安心感っていうのが根底にあって、その上にこの4つの要素があることで、そのチームは非常に生産性が上がり、そしてイノベーティブなチームになれるっていうことなんですね。
だから、本当にさっき白河さんがおっしゃったみたいに、心理的な安心感がないと、ダイバースなチームであっても、まったくダイバースな意見を言えないというところがあるので、そもそも安心感って非常に大事ですよというところが、ここのポイントであるのかな、と。
実際にもデータとして、この安心感があるかないかによって、チーム全体のパフォーマンスが変わってくるというところまでが、もうすでにわかっていますので、ぜひみなさんも自分のチーム、自分の部署の心理的な安心感をどう高めていくかというところについても少し考えていただければというふうに思います。
白河:そうですね。「イノベーションってなに?」って考えている人のなかに、「実現可能であること」それから「今までなかったものであること」、だけど「全員が反対じゃなくて1人か2人が賛成するぐらいがちょうどいい」って書いてあったんですね。
だから、やっぱりイノベーションなるものを作ろうと思ったら、1人か2人が「え、ちょっとそれ違いませんか?」って意見を言えないと、絶対イノベーションって発動しないんですね。
平山:そうですね。
白河:だから、生産性の高いチーム=付加価値の高いものができるわけじゃないですか。やっぱりイノベーションが発動するようなチームや環境を整備することこそが、私は働き方改革だと思っていて。まさに私が主催した働き方改革に成功したチームは、ただの時短とかそんなことじゃなくて、これをまさにやってるんですね。
ダイバースなメンバーがそれぞれの立場で、それぞれの実力を発揮できるような場を設計する。結果的にそうすると、「労働時間は長くないほうがいいよね、労働時間に制約のある人も活躍できるから」とか、「いろんな所、地方とかの人も参加できるし、場所にも制約がないほうがいいよね」とか、いろんなことが起きてくるんですよね。だから、本当にこの心理的な安心感っていうキーワードは、すごい大きなことだと思います。
あと、ワーキングマザーが復職後に活躍できる職場っていうのは、まさにこの安心感のある職場なんですね。「自分が受け入れられていて、ここで働いて、意見を言っていいんだ」ってワーキングマザーの人たちが思えるような職場。そういう職場をうまく設計すれば、それは必然的に生産性が高いチームになるんだなっていうのを、これを見ていてすごく思いました。
平山:まさに今日のまとめをしていただいた感じになりますけれども(笑)。
白河:ありがとうございます(笑)。
平山:働き方改革って、フレームばかりの議論というのもありますけど、まさに今おっしゃっていただいたようなところが、本当に働く人たち一人ひとりの幸せ度もアップさせるというところで、目的とゴールを取り違えないということが非常に大事なのかな、というふうに思います。
白河:うん、ね。
平山:じゃあ、最後、私のほうから一言、この言葉で締めさせていただければと思うんですけども。働き方改革、いろいろ人事の方と話しますと、「これから整備します」「社長を含めて検討会議します」っていろいろ話ありますけれども、もうThink big, start smallなんですね。
先ほど、4週間の実証実験でもあれだけ効果が出るっていう話をしましたけども、本当にまず一歩踏み出す、食わず嫌いを一歩やめるっていうところから、いろんなイノベーションとか改革が始まるのかな、というふうに思います。
ちょうど時間になりました。今日は本当にありがとうございました。
白河:どうもありがとうございました。
(会場拍手)
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