2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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馬渕邦美氏(以下、馬渕):みなさん、本日はよろしくお願いします。今回は大変な豪華メンバーで、コンテンツマーケティングについてのセッションを進めさせていただきます。
コンテンツマーケティングというと、色々なイメージを持たれていると思います。非常に広い言葉ですので、まずはスピーカーのみなさんに「それぞれの立場におけるコンテンツマーケティングとはなんですか?」という質問で5分ずつお話をいただこうと思います。
最初に自己紹介だけさせていただきます。馬渕と申します。1月までオグルヴィ・ワンという会社の代表を、2月からはフライシュマン・ヒラード・ジャパンという外資のPRエージェンシーで副社長をやっております。
フライシュマン・ヒラードはオムニコムグループのグローバルなPRエージェンシーで、世界中にオフィスがあります。最近ですとコンテンツマーケティングというか、「ブランドジャーナリズム」という言葉のもとに活動を展開しています。
「コンテンツマーケティングとブランドジャーナリズムのなにが違うんだ」という話もありますが、ブランドジャーナリズムは、海外では普及してきている定義です。意味は、「客観的、社会的な立ち位置からからブランドのストーリーを語る」というものです。
ミーイズム(注:meism=自己中心主義)とは違い、ジャーナリスティックな視点から、企業やブランド、プロダクトを語りプラットフォームを提供する総合的なコンテンツ・マーケティング・サービスです。
では、順番にお話をしていただこうと思います。トップバッターとして小林さんから、よろしくお願いします。
小林弘人氏(以下、小林):どうも、こんばんは。株式会社インフォバーン代表の小林と申します。
自己紹介を簡単にさせていただきます。1994年、『WIRED』という雑誌を日本で立ち上げました。今はコンデナスト・ジャパンから出ていますが、テクノロジーがどのように社会を変えていくのかということにフォーカスしてきました。
1998年に株式会社インフォバーングループを立ち上げ、みなさんがご存知だと思うのは、グループ会社のメディアジーンが運営するオンラインメディア「GIZMODO JAPAN」「lifehacker japan」でしょうか。同社は今年の1月に全世界で1億人以上が読んでいる「BUSINESS INSIDER」の日本版を立ち上げました。
僕はもともと出版社に勤めていました。ただ、デジタルマーケティングという言葉が生まれる以前、つまりインターネット誕生以前の1980年代のニューメディア時代から、テクノロジーとユーザーのコミュニケーションを考える立場に従事していました。おそらく最古参かと。オウンドメディアという言葉がまだ普及する以前に『メディア化する企業は、なぜ強いのか?』という本で、「なぜ、自社メディアが有望なのか?」という話を書いたりもしています。あと、『フリー』『シェア』などの翻訳書の監修・解説をやらせていただきました。
最近では、企業のイノベーションを支援しています。コーポレートアクセラレーションという領域ですね。
もう1つ、海外カンファレンスの日本パートナーとしても活動しています。ここ数年でヨーロッパでスタートアップの投資額が一番多いのがベルリンです。そこですごく話題になっている「Tech Open Air」(TOA)というカンファレンスがあります。そのTOAとパートナーとなり、日本での開催準備と、ベルリンへの出展支援を行っています。
さて、「コンテンツとはなにか」という話なんですけど、ざっくりした言葉でいうと……ウイルスだと私は呼んでいます。ソフトウェアでもない、ハードウェアでもないもの、マインドウェアというんですが、心に忍びこませる細菌のようなものであると思っていますね。これはプログラムは可能なんですけど、実際にどういうかたちでそれが繁殖し、人を変えていくかは、予測不可能です。
このマインドウェアは、あなた自身をハッキングするウイルスである。あるときは、あなたを拡張していきます。もしくは鍛えていく。トレーニングしたり、支援もします。そうやってあなたをドンドン変えていく。
マインドウェアが用いるコンテンツはそれがモジュール(注:規格化された構成要素)化されていて。(スクリーンを差して)このリポジトリから引き出して使われます。
ここ(リポジトリ)から引き出して、言葉で読める情報は人の認識の浅い部分で展開します。もう一方、深い部分で動くと感情を揺さぶったり、認識や体験を変えてしまう。マーケティング的にいえば、態度変容を促すようなこと。あるいは、ライフスタイルを変えてしまう力があるということですね。
最近だと、脳に直接疑似体験を埋め込むような方法。とくに、VRを体験された方もいらっしゃると思うんですが、これはかなり究極のOne to Oneマーケティングになりえるでしょう。態度変容を容易に引き起こす飛び道具になっていると思います。
日本ではゲーム分野で語られることが多いんですけど、非ゲーム領域では非常に新しいコンテンツマーケティングがVRを筆頭とするイマーシブ(没入型)コンテンツだと思います。他にもコンテンツにどういうことができるかというと、コミュニティの組成にすごく適している。
これ「openNASA」というサービスなんですけど、NASAが自分のやっていることのリソースを公開して、ハッカソンを奨励したり、ほかの企業とプロジェクトを組んだりする。そういうこともコンテンツの力によって引き出されるわけです。
これはLocal Motorsという、自分たちで自動車を作ってしまう自動車メーカーです(注:Local Motorsは3Dプリンタによる自動車開発で話題になったメーカー)。Local MotorsのForgeというサイト上では、「俺はこんなアイデアがあるぜ」と提案でき、投票が行われ、うまくいくと、それがプロジェクト化され、最終的にプロダクトを作ってしまうんですね。
そういった生産ラインのエコシステムにコンテンツが取り入れられているのは、もはやマーケティングも兼ねたプロダクションであり、コマースでもあります。もはやすべてのサイクルは融和し、そこでは、コンテンツが接着剤となっています。
僕は、形のないものもコンテンツになりうると思っています。これも1つのコンテンツマーケティングだと思うんですけど、サンフランシスコの「BRAIN WASH」というコインランドリー。「洗脳」という意味です。おもしろいことに、このBRAIN WASHは地元のバンドとかに、時間割で場所を開放しているんですね。だから演奏が聴けるんですよ、この中で。
おいしいコーヒーやお酒も置いていたりするんで、もはや、演奏を聴きに行ったり、コーヒー飲みに行ったりしているんですよね。これも一種のコンテンツマーケティングによって、体験とビジネスを変容させてしまった例かと思います。
これは、ハワイのWhole Foods Market。ご存知かと思うんですけど、野菜やシリアルの陳列とかいちいち素晴らしい。僕、これもコンテンツマーケティングだと思っているんですね。
つまり、シリアルを売る時、日本だとそのままメーカーから送られたものを陳列するんですが、これは種類別にどういう効能があるかを記載し、それぞれ中身の比較ができる容器に入っている。当然オーガニックがウリですから、いろいろ書いてある。ただし、このコーナーだけでなく、全体がそうなんですね。この店舗内におけるUXも、UIも完全にデザインされてるわけなんですね。これも、コンテンツマーケティングだと思っています。
ということで、僕が考える“コンテンツ”は「情報とあなたの体験を全部結合してしまう、それくらい強いものである」と。テキストや動画だけのことを指すわけではありません。
馬渕:ありがとうございました。どんどんいきたいと思います。宮脇さんお願い致します。
宮脇淳氏(以下、宮脇):有限会社ノオトの宮脇と申します。どうぞよろしくお願いします。今、小林さんがすごくためになることをいろいろおっしゃっていたんで、めちゃめちゃ喋りづらいんですけども(笑)。
実は私、このキャリアのスタートは、小林さんのもとで働いてたんですね。小林さんは当時、『WIRED』の編集長で、面接を受けてアルバイトで編集部に入れていただきまして。わずか1年半くらいしかご一緒していませんが、その時の教えをベースに編集者として今も仕事をしております。ノオトは11人しかいない小さな会社で、日々コンテンツを作る仕事をしております。
いろいろやってきたんですけど、一番思い出深いのはリクルートの友人に声をかけてもらって、フリーマガジン『R25』の立ち上げを一緒にやらせていただいたことでしょうか。プレ創刊からスタメンとして参加できた経験は本当に大きかったなと思っています。
自社メディアとしては、「品川経済新聞」という地域情報サイトを10年近く運営しております。〇〇経済新聞、シブヤ経済新聞とか、いまでは全国+海外で130以上あるんですけど、そのうちの1つですね。
コンテンツを作るノオトという会社。名前の由来はノートブックから来ています。フリーランス時代は音楽ライターもやっていて、多様な音楽ジャンルから「〇〇ノ音」に引っ掛けています。そして2004年、初めて自分の会社の名刺を作ったときに、編集プロダクションじゃなくて、コンテンツメーカーという肩書で印刷をしたんですね。
WIRED JAPANのときもそうなんですが、これからコンテンツがすごく重要視されるだろうと体感したというか。例えば、どんなことをやっているのかということですね。クライアントでいうと、トヨタ自動車さんのオウンドメディア「GAZOO」こちらは再春館製薬所の「ドモホルンリンクル」という化粧品なんですけど、そのオウンドメディアの記事も弊社が作っておりまして。ネット経由でサンプルの申し込みを増やしたいという大きな目的があります。ネットで美容情報を調べる人たちに、肌のお手入れとか健康を軸に置いたコンテンツを読んでもらうことで、生活者との接点を作る取り組みをしております。
あとは、アディダス・ジャパンさんのお仕事。アディダスさんは、「TwitterとかFacebookがあるんだから、そこに出ていっていろんな人にダイレクトに伝えればいいじゃん」「別にオウンドメディアなんて持たなくていいじゃん」というような感じといいますか、かなりアクティブに情報発信しています。
このように、伝えたい相手をきちんと探して、役に立ったり勉強になったり楽しい気分になったりする情報を伝えていく。そして、企業側のブランドを意識しながら、少しでもファンが増えていくようなコンテンツを日々作っています。
あとはうちの会社の方針なんですけども。コンテンツを作ってる会社のなかでも、わりと「戦うコンテンツメーカー」だと思ってまして。
例えばこちら。2014年に「BUZZNEWS」というバイラルメディアがブイブイ言わせていまして、いろんなコンテンツをパクって、さも自分たちが作ったかのように見せてアクセスを稼いでいたんですね。
でも、コンテンツをパクられた側としてはたまったもんじゃない。そこで、ライターのヨッピーさんがこれを糾弾して徹底的に懲らしめることにしたんです。当時、ノオトが編集担当で連載を持っていたので、その問題点の一部始終を記事にして公開したところ、最後は先方が賠償金を支払うことで和解に至りました。
それから数ヶ月後、BUZZNEWSは閉鎖したので、その顛末を記事にまとめることでパクリ問題を広く世に知ってもらうことができたんじゃないかな、と思っています。結果的に、ノオトはわりと武闘派な会社だと周囲に誤解されてしまうことになってしまったといいますか(笑)。
あとは昨年、WELQ問題がありましたよね。それも最初、うちの朽木(誠一郎)という社員がいまして、彼がその問題を「Yahoo個人」の記事で指摘したんです。
朽木はわりと常識人といいますか、ちゃんとした男なので、事前に「こういうこと、書いてもいいですかね? ちょっと原稿、見てもらえますか?」と聞いてきたので、きちんとチェックして「正しいことをいうんだったらいいんじゃないの?」とOKを出したら急激にネットで盛り上がってしまい、朽木の記事をきっかけにBuzzfeedさんが追撃して、結果的にDeNAパレットが大炎上したんですよね。いまとなってはこれ、あまり笑い事ではないんですけど(苦笑)。
(会場笑)
あと、弊社は先ほど申し上げたとおりコンテンツメーカーの看板を掲げているんですけど、自社でコワーキングスペースを運営しています。
実はこれも私はコンテンツだと思っていまして、名称も「CONTENTZ」にしたんですね。SをZにしたのは「デイリーポータルZ」の林(雄司)さんと一緒に飲んだ次の日に思い浮かんだんですけどね(笑)。ノオトとの同じく、馴染みのある単語を1文字だけ変えるのが好きでして。
このコワーキングスペースは、ライターや編集者が集まようなる、自分たちの会社と一緒に協業できるような人たちを中心に使ってもらいたいと思って、もうかれこれ2年半ちょっと運営しています。
さらにですね、去年の7月1日、会社12周年を記念して、今度はスナックを作りました。これは「コワーキングスナック」と名付けたんですね。コワーキングスペースのスナック版で、CONTENTZ分室です。
電源とWi-Fi完備なので、ノートパソコンを開いて仕事もできるんですよ。この場所は真面目に黙々と仕事するオンの場というよりかは、酒飲みながら仕事の相談をしたり、おもしろい人が来たら誰かに紹介したりするオフの場といいますか、それをネット上じゃなくてリアルな場で作ったんです。
このスナックもまた、コンテンツなのかなということで、会社の事業として取り組んでいます。うーん、先ほどの小林さんの話と比べたら、めちゃくちゃ頭悪そうな感じで恐縮しちゃうんですけど……(笑)。
コンテンツマーケティングとはなにか? あまり難しい横文字をなかなか大上段に構えて語るほど頭良くないんですが、私はもうこれだと思っています。
固定客を作ること、ファンを作ること。これがコンテンツマーケティングの最終着地点ではないでしょうか。先ほどのコワーキングスナックにしてもそうですが、酒好きって飲みに行くこと自体が楽しかったりするじゃないですか。
お店そのものが気に入っているというのもあるし、料理やお酒が美味しいというのもあるけど、そこに誰がいるのか、誰と一緒に飲むから楽しいのか。そこがしっかりしていたら、お客さんはまた何度でも足を運んで来てくれるんですよね。
これはリピーターを増やすという意味合いもあるんですが、とても濃いファンを作ることが究極的にマーケティングにおいてとても大事だと考えているんです。そして、そういうファンがさらにファンをを呼ぶ仕掛けを常にあれこれ思案しています。
そういうコンテンツを作るうえで意識してるのが、この3つの疑問なんですね。「ファンって誰だろう?」「読者はどう思うだろう?」「どう伝わっていくのかな?」。
「結局、誰に伝えたいのか、誰にファンになってもらいたいのか」をまず考えなきゃいけないと思っています。同時に、「じゃあ、読者はこの記事を読んでどんな気分になるだろう? どういうふうに思うだろう?」という疑問がやっぱり湧くんですね。とくに、読者からの反応がダイレクトに見えるWebの記事を書くときは。
基本的に私は、炎上させるような記事だとか、煽ったりするような記事は絶対出すなと社員にキツく言っています。人を不快にさせて負の感情を煽ってPVを稼いでも、なんの意味もありませんから。まずはファンをきちんと見る。それから読者の気持ちに寄り添う。これが大事だと思ってます。
あとはもう1つ、「どうやって伝わっていくのか?」。これは、例えばFacebookで「いいね!」がよくつく記事、TwitterでRTされる記事、はてブされる記事など、伝わり方にもいろいろあると思うんですね。人々はどんな心理でその記事をシェアしたのか、友人知人に知ってもらいたいと思ったのか。
一方、ソーシャルな数字ばかりにとらわれることなく、ごく一部の人に「すごくいい記事だね」と褒めてもらえるようなコンテンツも大事です。「どういう人たちに、どう伝わっていくか」。これがコンテンツマーケティングを考える上で、コンテンツを作る上で、すごく意識しながら作っている。
コンテンツマーケティング全般を語るのは難しいと思うんですけども、制作者、編集者の立場から見て「こういうふうに考えています」という話でした。ありがとうございます。
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