2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
Eight Fireside Chat Vol.3(全1記事)
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(会場拍手)
石川善樹氏(以下、石川):こんにちは。よろしくお願いします。
丸山:さっそくですが石川さん、今日のテーマを見ると違和感があるんですよ。予防医学研究者という肩書きなのに、「ビジネスネットワークを語る」とは、どういうことだと。ここに来ている人たちは、そこに疑問を持っていると思うんですけど。
石川:たしかにそうですね(笑)。じゃあまず最初に、どうして私がビジネスネットワークの研究をするようになったのか、少しお話させてください。
丸山:はい、お願いします!
石川:まず、いきなりですが私、腹が立つことがありまして。ちょうど今、35歳なんですが、数年前に人付き合いの狭さを反省し、「これじゃいかんな」と、いろんな人と知り合おうと思ったんです。
そこからビジネスパーソンや、アーティストや政治家など、いろんな方とお会いするようになりました。いろんな人と会うとなにが起こるかというと、メールがたくさん来るようになるんですね。
すると、毎日メールに返信するのが忙しくなって、あるとき、無性に腹が立ってきたんです。「俺はメールの返事をするために生きてんじゃねぇ!」と(笑)。
丸山:(笑)。
石川:それで自分を振り返ったんですね。そもそも、なんでこんなにメールが来るんだと!
丸山:ほう、すると?
石川:すぐにわかったんですけど、メールが来るのは、名刺を配っているからなんです。
丸山:そこに連絡先が書いてあるからだと。
石川:そうなんです。また気づきもありました。
丸山:なんですか?
石川:こんなにたくさん名刺をいただいたのに、全然深くお付き合いできてないじゃないかと。
丸山:あー、ありがちですよね。
丸山:そうなんですね!
石川:はい。おもしろいですよね。
丸山:量が増えるに従って、質が下がる?
石川:そう! つながりの質が下がるんです。
丸山:今はFacebookなどがあり、どんどん繋がりが増えていくようになってきてると思うんですが……。
石川:量はどんどん増える分、質が低くなってるはずなんですよ。
丸山:たしかに。
石川:丸山さんが言ったことは超正しくて、Facebookみたいに、つながりの量を増やしてくれるテクノロジーはあるんです。でも、質を上げるテクノロジーはまだないんですよ。
丸山:なるほど。
石川:ここで本題に戻りますが、「ちょっと待てよ」と思って、これをテクノロジーでどうにかできないかと考えたんです。
テクノロジー、もしくはアルゴリズムを作れば、少し人類に貢献するんじゃないかと。
例えば、トランプ氏が次期大統領になったじゃないですか。トランプ氏が大統領になって「よっしゃー! ばんざい!」と喜んでいた人は、みなさんの周りにどれだけいます? いないのであれば、それは多様性がないか、この質が偏っているということですよね?
丸山:アメリカで言えば、ヒラリーさん支持の人と綺麗に二分されているから……。
石川:「くそーっ!」という人と、「よっしゃー!」という人が、半々くらいいてもいいはずなんですよ。でも、今のテクノロジーは、量を増やすときにどんなバイアスが働くかというと、自分と似た人ばかり集まるようになるんですよ。
丸山:じゃあ、「世界狭いね」と思った時点で危ないかもしれない?
石川:あー、確かに。世界を狭いと感じる時点で危ないかもしれませんね。共通の友人が1人もいない人に出会っておかないと、多様性は保てないです。
こんな時代だからこそ、トレードオフ構造をテクノロジーで打破できないかということを考えたんです。
丸山:なるほどー。
石川:そんなことを考えていた時に出会ったのが、Sansanの社長である寺田(親弘)さんだったんですね。プレゼンしていたんですよ。「うちの会社では、その名刺交換のデータを集めているんですよ」と。
「あー、そうか!」と思いました。日本は名刺交換をする文化があるので、「ソーシャルネットワークで、誰と誰が出会ったのか」のデータがあるんです。
丸山:出会いの履歴が全部……。
石川:すべて残っているんです。これは研究上、めちゃくちゃアドバンテージなんじゃないかと思ったんです。
海外の研究者にも聞いてみました。「日本では名刺交換する文化があって、ほぼ例外なく全員交換する。その完全なデータセットがあるんだけれど、これに似たものをどこかで見たことあるか?」と。
そうすると「ない」「それはスーパーエキサイティングなデータだ」と言われました。
丸山:それ、やばくないですか?(笑)
石川:やばいですね(笑)。すぐ寺田さんに提案して、共同研究することになったのが、ちょうど昨年でした。
最初に研究したのが「質」と「量」。質は、クラスター係数で測ることができます。だいたい、きれいにこうなったんですね。量が増えるほど、トレードオフ構造があることを発見しました。すごい人たちは、みんなこういう構造のなかにとらわれているんですけど、一部では、こういった人たちもいたんです。
量が増えるほど、こういうトレードオフ構造があるってことを発見したんですけど。すごい人たちって、みんなこういう構図の中に囚われているんですけど、一部にこういう人がいたんですよ。すごい人数で繋がっているのに、ちゃんとクオリティを担保できている人たちです。なんというか、「スーパービジネスネットワーカー」ですか(笑)。
研究してみて「こういう人たちがいるんだな」と思ったことと、そうであれば、テクノロジーでこういうスーパーな人になれるよう支援できるはずだと。
丸山:ちなみに、それはどういうデータでわかるんですか?
石川:Eightのデータで。
丸山:名刺のつながり?
石川:そうです。
石川:ナイスすぎる質問ですね!例えばですけど、シンプルに考えて、3人いたとします。
Aさん・Bさん・Cさんと、Xさん・Yさん・Zさんがいて、みんな繋がっているじゃないですか。繋がっていることがわかりやすいよう、線を引くことにしましょう。ここでは、つながりが非常に強いですね。でも、こっちのYさんとZさんは繋がっていないですねよ? でもこれは、繋げたほうがいいんですよ。
丸山:ちなみに、つながりはどうやって作るんですか?
石川:原始的には、毛づくろいですね。
丸山:動物がよくやるやつですか?
石川:そうです。ただし人間の場合は、つながるための方法論がいくつもあり、毛づくろいの次に生み出されたイノベーションが「笑い」だと言われているんですね。
丸山:そうか、動物は笑いあっていないですもんね。
石川:キーとなる脳内物質として、エンドルフィンというものがあるんです。エンドルフィンだけ、覚えて帰ってください。ランナーズハイになるあれですね。脳を気持ちよくする、エンドルフィン。
丸山:なんか、名前だけは聞いたことありますね。
石川:エンドルフィンは一緒に笑うと、出ます。で、次に人類が生み出したのが「酒と歌と踊り」です。
丸山:3つあるうちの、2つ目?
石川:そうです。この「酒と歌と踊り」も、エンドルフィンがすごく出るんですよ。アフリカの原住民族なども、飲んで歌って踊っていますよね。
丸山:確かに。
石川:歓迎の踊りするをじゃないですか。あれは、エンドルフィンが出るからなんですよ。一緒に歌って踊ると、エンドルフィンが出て、繋がりがわーっとできるんです。
だから、ミュージシャンのコンサートなどに行くと、みんな楽しそうにつながりを感じるんだと思います。
丸山:コンサートでは、歌って踊りますからね。
石川:そして最後に人が作り出したのは、「物語」と「宗教」です。「物語」と「宗教」はもう大発明ですよね。同時にたくさんの人とつながれる。
ということで、人間と動物の違いは、「毛づくろい」の壁を突破したということですね。エンドルフィンを出すために「笑い」を作り、「酒と歌と踊り」を作り、そして「物語」と「宗教」を作った。「次のイノベーションはなんだ?」という話ですね。
そこに、このSansanのデータを使って、なにかすごいものが作れるんじゃないかというアイデアが登場します。
丸山:なんか、未来っぽくなってきましたね。
石川:絶対、みなさんのなかにもいらっしゃいますよ。「あ、この2人、まだ繋がってなかったんだ」と。結局、繋がりなんてものは、身近なご縁を増やしていくしかない。
こことここが繋がることによって、この人とこの人が繋がるとかあるじゃないですか。今この繋がりの質を担保してくれるようなテクノロジーがないんですね。もう、なんて言うんですかね、繋がり散らしてるんですよ現代は。
丸山:名刺、配りまくっているから(笑)。
石川:名刺、配り散らかしているから。それがまさに僕だったんですね。僕、知りたかったんですよ。「誰と会えばいいですか?」「誰と誰を繋げたらいいですか?」と。
丸山:その質のこと?
石川:そうです。例えばYoshiki=僕としましょう。Zさんのアイデアは、繋がってないんで、Xさん経由で聞くしかないんですよ。
でも、繋がったら、ダイレクトにいくじゃないですか。それをまず可視化する。誰と誰が意外と繋がっていなかったかなど。この人と会いたい場合は、自分は誰に仲介を頼めばいいんだろうと。3人寄れば、「笑い」が起こるので。
丸山:なるほど、「わっはっは」という最初のイノベーションの……。
石川:それの繋げる、繋がるのイノベーションをまずは自分のネットワークで知りたいと思って、僕もすぐにEightに登録しましたよ。
自分のネットワークっていうのを可視化して、閉じられていない三角形を見つけて、「ああ、これか!」をまず自分でやって。「これを世のなかに出せないかな」と、研究しています。
丸山:なるほど。「毛づくろい」からそこまできましたか。
石川:もしかしたら、人類の歴史に残るかもしれないですよ。「毛づくろい」「笑い」「酒と歌と踊り」「物語」「宗教」、そして「Eight」と!
丸山:(笑)。
質問者1:今日は、ありがとうございます。質というのは数値として評価できるんですか?
石川:はい。例えば、100点満点としたときに、「この人とのつながりの質を何点と数値化する」はできます。
質問者1:それが前におっしゃられていた、スーパービジネスマンですか? ぜんぜん違うんですか? 数は一般的な人よりも、数倍、数十倍変わってくるものなんですか?
石川:ぜんぜん違いますね。例えば、スーパービジネスマンみたいな人には特徴があります。会いすぎてもダメなんですよ。会い散らかして終わっちゃうんで。
ひと月に新規何人くらいと出会うのが、どのくらいの「量」「質」のいいバランスになっているのかを調べたんですけど、1ヶ月で50人でした。スーパービジネスパーソンはそれができていますね。
それに対して一般的なビジネスパーソンは、新規の人に月に何人くらい出会っているか? 平均で10人です。平均化すると「量」も5倍で、メンテナンスはややこしいんですけど、そこに力を注いでいるんですね。
ただ、その人たちがビジネスパフォーマンスが高い人なのかどうかは、僕は知りません。結局、つながりに時間を割くことは、他の部分に割く時間が減っているので。
丸山:先ほどの話でいくと、「メールをたくさんしている」でもあるんですか? 逆に言えば、そういう人たちとメールばっかりしていて、考える時間を割けないとも言えるんですね?
石川:まぁ、そうですね。僕、腹が立って、まず名刺にメールアドレスを書かなくなったんですよ。そうしたら案の定、メールは来なくなってしめしめと思っていたら、代わりに電話がかかってくるようになったんですよ。
電話とったときに「これはもう名刺を配るからいけないんじゃないか」と思って、しばらく名刺を渡さないようにしていたんですね。
丸山:名刺交換のときに「名刺を切らしちゃいました」みたいな?
石川:「名刺はない」と言っていました。刷ってない。気づいたのは、みんな名刺を交換したいんでしょうね。会った証として。しょうがないので、なにも連絡先を書いてない名刺を作って今に至るという感じなんですけど。
丸山:その名刺交換はアイデアの交換だというお話をちょっとうかがいたいんですけど。
石川:名刺交換は、僕が研究者のころはほとんどしなかったんです。研究者は、周りの人のことを知っているんで、もはや名刺を交換する必要性なかったんですよ。
そうでない世界に出るようになって、改めて「名刺交換とは一体なんぞや」「名刺交換では、一体なにを交換しているのか」と思ったんですよ。
丸山:深い問いですね。
石川:半年くらい考えたんですが、結論としては、「名刺交換とは、アイデアの交換である」と思ったんです。
出会って、いろいろしゃべって、お互いのアイデアを交換している。名刺は自分のアイデアそのもので、名刺交換にはアイデア交換の軌跡があると思ったんですね。
それを思いついたとき、もっとおもしろいだろうと考えたのは、Eightのデータから、日本社会のなかで、アイデアがどこからどこにどう流れているのかが見えることです。アイデアの軌跡のデータベースなんですよ。これを見ると、「この人のアイデアがもう2ヶ月後にはこの人にいく」などを予測できるんです。
その例がわかった瞬間に、また興奮度がもう一段上がりました。「ミーム」という概念があるんですね。「アイデアそのものが遺伝する」というものです。ミームの研究に使えるなと思ったんですね。
結局、「自分は新しいアイデアと接しているのか」も数値化して出すことができるわけです。例えば、丸山さんと出会うって、名刺交換をEightでするとしましょう。
そうすると、Eight上で丸山さんがパーンと上がって、「この人が持っているアイデアが、自分とどれだけ近いのか遠いのか」が出るんです。
例えば、丸山さんが持っているアイデアがゼロだったりすると「こいつとは会わなくていいな」となるわけです。
丸山:わかりやすくいうと、さっきの「ヒラリーとトランプどっち派?」みたいな。
石川:そうです。出会った人、出会った人が自分とどれだけ近いアイデアを持っている人なのか、どうなのか。それを計算できることは、もう研究として出ているんですね。あとはそれをいつ実装するか。それが今、楽しみなんです。
丸山:今日のイベントのテーマの1つが「もっとも優れたアイデアの法則」なんですけど、今の話でそれに近づいた?
石川:そうですね。すごい単位では「優れたアイデアとはなにか?」という話になりますね。優れたアイデアとはなにか。それは「自分と異なるアイデア」ということですね。
自分と異なるアイデアを組み合わせると「ポン!」といいアイデアが浮かんでくるのは、みなさんご経験があると思います。
丸山:ただ、普通に生活していると、似たような人と出会ってしまうと。
石川:そうですね。それはある意味、居心地がいいものですが、たとえ少しつらくても、異質な人と出会っていくことが、まさに今求められていると思います。
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