2024.10.01
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西村:一方、みなさんが非常に心配された農水関係の品目なんですけれども。
これを見ていただくとほかの国々は99パーセント関税をゼロにする、関税撤廃ということで合意をしました。日本は95パーセントです。農水産品に限ってみても、他の国はほとんど90パーセント後半。カナダは若干モントリオールとか、畜産関係の保護しているものがありますので94パーセント台ですが、ほかの国はほとんど99パーセント100パーセント自由化をするというなかで日本は81パーセントの自由化にとどまったという点でして。
実はここにありますように、関税を残すライン、9000の品目数があるんですけど、農水産物2328のうち443残すということにしましたので、いわゆる重要品目、これは国会の決議のなかでも重要品目は聖域を守るようにということで、米とか小麦牛肉豚肉乳製品砂糖、こういった品目と、それ以外のいくつかの品目については日本としては非常に厳しいということで、関税をゼロにしないということで約束をしました。
実はTPPはすべての関税をゼロにしようというところから始まったんですけれども、我々が交渉に入る段階で、事前に全部ゼロにするという約束はしなくていいということで安倍総理がオバマ大統領と交渉して、その前提で我々は入りましたので、最初に全部約束させられるとしたらそれは入れなかったわけですけども、安倍総理がオバマ大統領から最初の段階ですべて約束しなくていいよということで言質を取りましたので。
元榮:素朴な疑問なんですけれども、これだけ各国が関税撤廃率が100パーセントが並んでいるなか、なぜ日本だけがこのようなパーセンテージにとどまることができたのか。
西村:そうですね、いくつか理由がありますけども、1つは日本の交渉団、甘利大臣を先頭に粘り強い交渉を行った結果だと思いますね。とくにアメリカのフローマン代表と夜を徹して何度も議論をして、それこそ机を叩いてやったということが何回かありましたし、そういう意味で1つは粘り強い交渉をやったという点と、それからやっぱりアメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドと比べて、日本の農業の規模が小さいですから、対等な条件で貿易できない、競争できないという点でかなり理解もされたんだと思いますので、もちろん守りましたけれども関税を下げる。
例えば牛肉にしても、38.5パーセントと今出ていますが、9パーセントまで下げるということで約束もしましたし、ゼロにはしませんけれども、これはかなり厳しいものですから、その分農業体制をしっかり予算をつけて対応していくということだと思います。
日本の品質は非常にいいですから、ある程度守れればあとは工夫、努力によってしっかりと競争できる条件は整えられると思いますので、そこはしっかりがんばらなければいけないと思います。
宮崎:今のご説明でもあったとおり、実は衆議院の特別委員会の審議でも野党のほうから指摘がありましたけれども、我々は聖域なき関税撤廃ということであれば参加できません。TPP交渉への聖域なき関税撤廃に参加は反対だというふうに主張してきました。西村さんがご説明なったように「聖域なきではない」ということをしっかりとまず確認してから交渉に入っていき、それを1つひとつかたちにしていった、こういう経緯ですよね。
西村:まったくです。繰り返しになりますけれど、基本はTPPというのは関税100パーセントゼロにして自由化しようということで始まったんですけども、しかしほかの国も実はいろいろなセンシティブな、どうしても守らなければならない少数民族対応とか含めていくつかありますので、交渉の中でこれは結果こうなったわけです。
日本も入るときにはもちろん自由貿易を目指すけれども、最初の段階で全部100パーセント関税撤廃すると約束せずに入りましたので、我々としては最低条件で入りあとは交渉中で勝ち取ったということです。
宮崎:例えば、米・麦、牛肉、豚肉、乳製品、紙資源作物の重要5品目は必ず守り、国会決議を裏打ちにして、西村さんも内閣の副大臣として交渉された。国会決議の重みもあったんじゃないんですか。
西村:これは、国会で最後承認してもらわないとTPPは日本としても批准できませんので、そういう意味で国会決議は我々にとってもギリギリの守らないといけないラインだし、そのことも相手側、私はフローマン代表と直接交渉したときも言いました。日本としても国会決議があるからこれは守らないと、いくら合意性あってもこれは通らない、日本としてできるもはここまでだ、ということで、最後そこは1ミリも譲れないということは言いましたので、そういう意味でこれは勝ち取った結果だと思いますね。
それで、農業については次回以降に詳しい説明もあると思いますので、今日は多くを申し上げませんけども、1つISDSというみなさんが心配な項目について補足します。
これは、なにか投資をした企業が差別的な取り扱いを受け、損害を被ったというときに、その国を訴えることができる制度なんです。これがアメリカの企業から日本がどんどん訴えられて困るんじゃないかと言われていたんですけども。
宮崎:これデメリットとしてよく指摘されるところですよね。
西村:まず、1点目で申し上げますと日本の国はこれまで1回も訴えられたことがないということで、アメリカとISDSを含んだ協定がないからだといわれているんですけれども、実はアメリカの企業は全世界に展開していますから、どこにでも子会社がありますので、その子会社がある国と日本の協定に基づいて、彼らは訴えることができるんです。
実は、フィリップモリスというタバコ会社も、オーストラリアの政府を訴えたんですが、アメリカとオーストラリアはISDSを含めた協定がないので、アメリカ本社はオーストラリア政府を訴えることができないんです。これでも、香港にあるフィリップモリスの子会社がオーストラリア政府を訴えたわけです。これは、オーストラリアと香港の間でISDSを含む投資協定があったからなんですね。
日本は世界中の二十何ヶ国と投資協定を結んでいますから、アメリカの企業はなにか日本で差別的に取り扱いを受けたと思ったら、いろんな国の子会社を通じてその国と日本の協定を通じて訴えることができるんですけれども、一切これまで日本は訴えられたことがありません。よく言われるように、医療制度とか食の安全とかいろいろ訴えるんじゃないかとか、今でも訴えることはできるんです。
でも日本はまったく訴えられませんし、むしろ日本企業のほうが、こらから各国に展開しますので、なにか差別的に取り扱ったら訴えることができるという意味で、日本にといってはぜひ必要な制度だというのが1つですので。
ただ念のために、今回この規定をいれまして、要は公共目的のために入れらる社会的なサービスについては権利を留保するということですけれども、これは例外とするという意味です。
例えば保険の社会保障制度、医療などはよく心配され株式会社にしないと訴えられるという誤解されるんですけど、ここはちゃんと保護してますし、職業訓練、保険、保育、公営住宅、こういった公営目的の社会事業は例外として留保していますので、なにかアメリカ企業が訴えるということはできません。
そもそも日本は差別的にやったりはしてませんから、今までも訴えられていませんし、大丈夫ということはぜひご理解いただきたいと思います。
元榮:ちなみにこれは訴えられると裁判所なんですか。
西村:国際的な仲裁機関が3つあり選べますので、かつ裁判官も両方の国と中立的な人が選びますので、基本的には中立的な立場で行われますので、そういう仕組みで担保されて、そういう意味でなにかISDSで日本政府がこの仕組みで訴えられることはないとぜひご理解いただきたいと思います。
宮崎:我々は、ここで一切の紛争がないと約束しているがないというわけじゃないと入っているが、我々はルールも守ってしっかりやっていくなかで国益を守れるようなものを合意の中で作っていたわけですよね。
西村:したがって、食の安全でなにか日本の表示、日本は輸入品だとか輸入品でないとか遺伝子組み換えのものを使っているとか、いろんな表示の仕組みがありますが、それを帰るように訴えられると食の安全で心配される方がおられると思いますが、TPP協定でなにか日本が制度を変えないといけないことは一切ありません。
これまでも訴えられていませんし、今後訴えられることもまずありませんので、日本としてはなににも差別的に扱っているわけでなく、輸入品か国産品かの表示義務ということですから、しっかりこれは大丈夫ですのでこれは誤解のないようにしていただきたいなと思います。
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