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BrewDog Punk Night(全3記事)

日本の“ビール民度”が上がったのはいつ? 『ビジネス・フォー・パンクス』刊行トークイベントが開幕

2016年9月16日、世界中に熱狂的なファンを持つクラフトビール会社「BrewDog」の創業記を記した『ビジネス・フォー・パンクス』の刊行トークイベントが行われました。会場は、最大1万冊の新刊が揃い、コーヒースタンドも併設する渋谷BOOK LAB TOKYO。同施設の発起人でもある、起業家の鶴田浩之氏と、著述家・編集者の石黒謙吾氏が、創業者ジェームズ・ワット氏の型破りな半生や日本と世界におけるビールの歴史を語り合いました。

『ビジネス・フォー・パンクス』刊行トークイベント

司会者:それではさっそく、トークイベントを始めさせていただきます。石黒さまと鶴田さま、よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

石黒謙吾氏(以下、石黒):こんばんは! 私、石黒謙吾と申します。よろしくお願いします。

鶴田浩之氏(以下、鶴田):「BOOK LAB TOKYO」の発起人をやっています。鶴田浩之と申します。よろしくお願いします。

今日は『ビジネス・フォー・パンクス』という本の刊行トークイベントということで、創業者で著者の方に来てほしかったですけど、海の向こう側ということで。

ビジネス・フォー・パンクス

石黒:スコットランドでしたっけ?

鶴田:はい。

石黒:スコットランドの方です。さて、「そもそも、お前は何者だ?」っていう感じですけど(笑)。 私は本を書いたり、プロデュースや編集をしたりしてまして、なんだかんだ23年ぐらい前から書籍をやっていて、その前は雑誌を10年ぐらいやっていました。

ビールを仕事にしたのは、『ベルギービール大全』という黒い本がありまして、これの続編を出したのが10年くらい前かな? ビールを仕事にしているのは十何年です。

ベルギービール大全

「ベルギービールウィークエンド」には、ちょこちょこ関わったりはしてるんですけど。今は「@DIME」というWebのほうでビールの連載をやっていて、それは広くベルギーもメジャー系のビールも、いろんな話を書いて、もちろん世界のビールのことも書いたりしています。ビールの専門家ではありませんけど、まあすごく好きです。

鶴田:専門家じゃないんですか?

石黒:専門家じゃなくて、自分の仕事の一部です。僕はビールについては、ある程度わかってますけど、逆にこういう(ビジネス系のような)ことはよくわからないんです。

25歳の若き起業家の経歴

鶴田:(『ビジネス・フォー・パンクス』は)ブリュワリーの起業家の創業記という。僕は起業家でして、もともとエンジニアというかクリエイターで、作ることが好きで、それをライフワークにしていました。それで、友達と一緒に会社を作ったのが2011年の4月。震災の翌月です。

石黒:まだ5年ってことでしょ?

鶴田:そうですね、5年前で、6期目になります。スタートアップ企業としてなんとか生き残って頑張っているという状況です。

このお店のプロデュースも、ちょっとした縁があって、やらせていただくことになりました。会社はLabitという会社で、実はオフィスでうさぎも飼っています。

石黒:あっ、それでつけたの?

鶴田:違います(笑)。Lab(ラボ)とbit(ビット)でLaboratory bit。bitの世界、ゼロイチのデジタルの世界でも、会社が大きくなったりしても常にLaboratory精神を、「新しいものを発明しようということを忘れない」という企業理念が社名です。

石黒:なるほど。実は僕、今日初めて会って年齢を聞いて、あまりの若さにびっくりしたんですけど。だって30歳違うってことですよね?

鶴田:僕は25歳です。

石黒:すごいですよ、僕55歳だから。

鶴田:2倍以上ですよね(笑)。

石黒:すごいですよ。それで社長だもんね。

鶴田:こうやって対談ができるってすごいおもしろくて、光栄です。ありがとうございます。

石黒:いえいえ、とんでもない。とはいえ僕も社長なんですけど、僕が会社を作ったのは36歳ぐらいですね。それでも当時は、「えっ、(その若さで)社長ですか?」って言われた時代ですよ。今はまあ……。

鶴田:いっぱいいますね。

石黒:それこそ学生とか。

「読む人を選ぶ」BrewDog(ブリュードッグ)の創業記

鶴田:このビルの上の階は、投資を受けている学生起業家が何十組かいて、そういうコワーキングなスペースがあって、18歳とか19歳の子たちがここにコーヒーを飲みに来ていただいてたりします。

みなさん、まだこの本を読んでない方がいらっしゃるかもしれませんが、おすすめです。自分でこのお店の本のポップを書くことは少ないんですけど、この本を読んで、自分でポップ書きまして。それで「正直なところ、読む人を選びます」と書いたんですね。読んだ方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

鶴田:ぜひ興味を持ったら、ぜひ立ち読みしたうえで買ってください。これはオフィスに置いていても、カッコいい本だと思いません? 装丁のデザインもそうですし、ブックデザインもそうですし、中身の話はこれからじっくり話していくわけなんですけど。

僕は創業記を読むのが好きで、起業家人生で土台になったのは、本当に創業記を20社分ぐらい読んでいた中学校の頃です。

石黒:中学校? おー、すごいな。

日本の第一次ビールブーム

鶴田:だからBrewDog(ブリュードッグ)ができた年が2007年で、今からまだ9年前。僕が高校1年生の時です。石黒さんは2007年頃、どういう活動をされてましたか?

石黒:9年ぐらい前……2007年ってどういう時代でしたっけ? 世の中では何が起こってました? 要するに、この方は2007年に創業したんでしょ?

鶴田:2007年に創業された。

石黒:2007年って、日本のビールはけっこう沈んでた時期ですよ。

鶴田:そうなんですね。

石黒:クラフトというか、そもそも今、「クラフト」って言ってるけど、その頃はまだ、「地ビール」という言い方しかなかったんですよ。

クラフトって言われ始めたのは、僕の体感では、リアルになんとなく広まって5年ぐらいですね。30年ぐらい前には、まだ地ビールすらなくて、メジャーなメーカーのビールしかなかったんですよ。

鶴田:はい。

石黒:僕が講談社の『Hot-Dog PRESS』の編集者を辞めて、自分で書籍を作ろうと思ったのが93年ぐらいだったかな。

その頃にちょうど岡山の地ビールで、独歩というのができたりして、「お、地ビールというものができたんだ」と。それで独立してすぐぐらいに地ビール協会でライセンスを取って、「じゃあ、地ビールの本を作ろう」と思って企画を通しました。

それで全国を回って、地場の料理に合うビールの本を作りたいなと思って、ライターも決めて、担当も決めて、進むぞと言ってたんだけど、ちょっとなし崩し的になくなっちゃったんです。それがたぶん第1次地ビールブームですね。

池袋のサンシャイン60の広い所で地ビールフェアをやってたんだけど、今みたいにかっこよくなくて。本当にノボリを出して、事務机みたいなのでやってるわけですよ。それが、なんでそのノボリでダサいかというと、全部日本酒のメーカーなんですよ。

鶴田:あー。

石黒:あの時は、ほぼ全部と言っていいかな。なぜなら、釜がないと。ビールって、煮沸釜というのがいるんですけど、麦を入れて煮立てて、麦汁を出すわけです。それをホップを入れるだの、発酵させるだのってなっていくんだけど。

とにかく麦を煮込んで汁を出して、「ここから発酵させるぞ」というのを、朝から晩までやるのね。それで、その行程をやれるような莫大なお金のかかる機械は持ってないわけですよ。なので、基本は日本酒メーカー。今でも、いわゆる日本のクラフトメーカーのけっこう多くは……。

鶴田:多角化というかたちでやってるんですね。

石黒:そうですね。というのは、たぶん日本酒の人、やっぱりお酒好きじゃないですか。「待てよ、そんな地ビールできるんだったらうちでも……」というふうに地ビールが第1次ブーム的にバーって伸びたんです。

それでやってみたら、流通が無理だと。結局、当時の日本人には「そんな高いビール買わねーぞ」という刷り込みがあるわけですよ。メジャーメーカーのビールは安くていつでも買える。(地ビールは)高くてどこにも売ってないビールだと。

日本人の“ビール民度”が上がったのはいつ頃?

鶴田:あとはブランドですよね。やっぱり、一消費者として、「なんだこれ?」みたいな。まだそういうところで、消費者の中で調整されてなかったということですかね?

石黒:そうですね。僕はよく「ビール民度」という言い方をしてるんですけど、ここまでビール民度が上がってくるまで、例えば、今話したことは20年ちょっと前なんですね。22、23年前の日本のビール民度というのは、喉で飲むものだと思われてたんです。

鶴田:あー。

石黒:舌で飲むものだとは思われてなかったと。

鶴田:ビールとの初めての出会いでいうと、やっぱり多くの人が、普通の大量生産されたビールを飲むから、「苦手……」みたいに思う人は増えますよね。

石黒:そうそう。僕はあんまり作り方の話をしないようにしてるんですけど。上面発酵、下面発酵とよく言われるんだけど。

鶴田:難しすぎると、たぶんついていけなくなりますね。

石黒:そう。それはもうわざとしゃべらないようにしていて。味だけでインプレッションするようにしてるんですけど、苦味、酸味、甘味、旨味とか。僕は別に「麦味」というオリジナルな言葉を作ってるんですけど、麦っぽい感じとか。

あとは味と香りって別じゃないですか。あとは、発泡感というのも別で。そういうことを自分の舌というか脳で感じていくというのが、日本人のビール民度を上げることだと思っています。メジャー系の、いわゆるラガービール、ちょっとピルスナーと言っておこうか。

鶴田:ピルスナーですね。

石黒:ピルスナーを飲む分には振り幅的にそんなに変わらないわけですよ。メジャーメーカーもやっと違うものを出してるけど。

鶴田:はい。

石黒:メジャーメーカーは今、クラフトにどんどん寄っていっている状況がありますよね。そういう状況の中で、このエール系が「おいしいな」と思うのは、たぶん日本のビール民度がだいぶ上がってるんですよ。

鶴田:そうですよね。まさにここ数年ですよね。

石黒:本当に6〜7年ぐらいの。

鶴田:僕が成人してちょうどぐらいじゃないですか?

石黒:そうですよ。その頃は、ビールがおもしろくなってきた時期。

ベルギービールにはまったきっかけ

鶴田:なんか変わってきたなという。パーソナルな話ですけど、ビールがうますぎて僕がしばらく通ってたのが、(この建物の)ちょうど向かいの……。

石黒:ヘイメル?

鶴田:ヘイメルです。ヘイメルというベルギービールのお店がありまして、僕はたまたまなにかで行って、雰囲気もいいし。ベルギービールがすごいそろってるんですね。80種類とか。

石黒:それぐらいありますね。

鶴田:20歳の頃は、「高いな」という印象を受けてましたけど、おいしかったので。1杯でいい感じに酔えるので。よかったら覚えてください。

石黒:カレーの「パク森」の地下にあるんですね。

鶴田:最近行けてないんですけど、最近は生でもいっぱい提供してくれるみたいで。

石黒:最近はすごい混んでて、入れなくなった。

鶴田:予約してないと。

石黒:昔、できた頃はスカスカだったのにね(笑)。

鶴田:よく2軒目で行ってたんですけど、それが自分の中でのビール革命というか、普通の大衆ビールしか知らなかった僕が、お店でベルギービールというものに触れて。

「こんなのあるんだ!」とか、「ギロチンっていうビールは何だ?」みたいな。友達と飲み比べたりして遊んで、そこからちょっとずつビールに興味を持って。

石黒:うんうん。

鶴田:家に買うビールもちょっと変えてみたり。僕はずっとシェアハウスをしていたので、友達と買ったり。このお店を作る時も、ビールの本もいっぱい置いています。

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