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ブラック求人問題を考える座談会(全5記事)

求人票は嘘だらけ 給与19万、実態は残業代込み「ブラック求人」に騙されるな

近年、話題の「ブラック求人」問題。虚偽の求人票や求人広告によって意図しなかった条件での就労を余儀なくされている人が後を絶ちません。10月6日、日本労働組合総連合会(連合)が、ブラック企業対策に取り組んでいる学識者や弁護士を招き、ブラック求人座談会を開催。ブラック求人のトラブルの事例や問題点などを挙げながら、法政大学キャリアデザイン学部の上西充子氏、ブラック企業対策プロジェクト事務局長である弁護士嶋崎量氏、連合の総合労働局長の村上陽子氏が語り合いました。

ブラック求人問題を考える座談会

司会者:本日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。ただ今より、連合主催「ブラック求人問題を考える座談会」を始めさせていただきます。

ご案内状にも書かせていただきましたが、まさにこの秋、この問題についてみなさんに知っていただき、より多く世の中の方にこの問題に関心を持っていただいて、お声を上げていただく1つのきっかけになればと、この会の開催を決めております。ぜひ後段の質疑応答を含め、いろいろと見聞き、お感じいただければと思います。

ではさっそく、連合の総合労働局長の村上さんからご挨拶、よろしくお願いいたします。

村上陽子氏(以下、村上):本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。労働組合連合で雇用労働政策担当をしております、村上です。

私から、まず連合とはなにかをご説明させていただきます。本日は、労働関係にお詳しい記者さんもいらっしゃいますが、そうではない方もいらっしゃいますので、連合とはなにか、なぜ今こういった座談会を企画したのかといったことの背景について、ご説明させていただければと思います。

その後、みなさまのお手元に「登壇者プロフィール」をお配りしておりますが、本日はお忙しいところ、法政大学の上西(充子)先生、弁護士の嶋﨑(量)先生にもおいでいただいております。

私の説明のあと、お二人から、今、ブラック求人に関してどんな相談が寄せられているのかや、その背景にどんなことがあるのかをお話をいただきます。

その後、今回のテーマについて私ども3人で意見交換をさせていただき、最後にみなさま方と質疑応答・意見交換をさせていただきたいと思っております。どうぞ最後までよろしくお願いいたします。

司会者:ありがとうございます。では、さっそく、村上さんから「連合とは?」についてご説明いただきます。

連合の役割とは?

村上:よろしくお願いします。

まず、連合とはなにかということです。

連合は労働組合の集まりのナショナル・センター、全国中央組織であります。51の構成組織が加盟しておりまして、現在、組合員686万人です。

労働組合というと、賃上げや労働条件の改善とかいうことが一番におかれるかと思いますが、私たち連合は労働組合が集まった組織でして、賃上げだけではなく、私たちの労働者の視点、働く人の視点から政策、国に「こんな政策をとってもらいたいな」という要求をまとめて、それを政府の審議会などで意見反映を行っています。

主に厚生労働省の下に置かれている労働政策審議会という審議会があります。そこに私たちが委員として参加して労働者側からの意見を述べて、また使用者側、経営者側の方々の代表も参加して意見を述べて、そのなかで労働関係のルールづくりをしていっている状況です。

その審議会で報告をまとめて、それを法律にし、国会に出していく。国会に出して、そのあと国会で審議をして、法律が制定されたり改正されたりという流れがあります。

(資料の)順序が逆になりますけれど、今、職業安定法という法律の改正の議論をスタートしています。これがいわゆるブラック求人問題に関わる法律ですけれど、こちらについて9月から審議会をスタートいたしました。

年内に報告をまとめて、おそらく来年の通常国会に改正案、法案を出していくスケジュールになっています。今、まさにここで審議会を開いて、労働者側からの意見主張をしていくということになっています。

このなかで、「ブラック求人問題で困っている人はこんないるんだ」ということや、「こんなふうな制度改正が必要なんじゃないか」といったことを報道していただくことで、私たちの主張がより説得力を持ってきます。

そういった意味で、本日はみなさま方にお集まりいただきまして、こうした動き、問題があることを知っていただきたいということで開催しております。

ブラック求人の具体的内容

今、「ブラック求人」、あるいは「求人詐欺」などと言われている問題があります。これは「募集時に示していた労働条件と、実際に働いてみたら労働条件が違った」というトラブルのことを言います。

ここに出しているのは国の機関、ハローワークです。そこで全国で求職者から寄せられた苦情の件数は、2014年度が12,000件、そして2015年度は10,937件と、1万件を超える苦情が寄せられています。

具体的な内容としては、賃金や労働時間・就業時間に関する苦情が多いです。あとでもご紹介いたしますが、「9時〜17時と書いてあったんだけれど実際残業がとても多い」「週休2日となっていたけれど休みがない」など、そんなトラブルが寄せられています。

具体的な内容としては、「求人票の内容と実際が異なる」「求人者がきちんと説明してくれていない」といった中身が多いということです。

今度はハローワークではなく、民間の求人情報や求人広告などを掲載している媒体に対して「寄せられている苦情はどんなものですか?」と聞いたものです。

苦情の内容として最も多いのが、「掲載された求人情報の内容が実際と異なっていた」という調査データが出ています。

月給19万円、実態は残業代も全部込み

私ども労働組合・連合は、地方連合会、全国の地方連合会、都道府県に1つの地方組織を持っており、そこで無料の労働相談を行っています。そこに寄せられている相談事例を(資料の)5ページ6ページに出しております。

全部はこちらでご紹介できないので6ページをご覧ください。

6ページの2つ目の丸ですね。ハローワークの求人票には「月給19万円」となっていたが、はじめての給与明細を確認したところ、「基本給は12万5,000円。固定残業、他手当を含む19万円」となっていた、と。残業代も込みで19万円だったということが、働いてみてはじめてわかったというようなことです。

「月給19万円」だと、これは基本給19万円だと思うことが普通じゃないかと思うのですが、そういうふうに残業代も含めてしまっていて、あとからわかるという相談が寄せられています。

これは、(資料の)次の丸ですね。求人票と違っていることを指摘したら、「求人票が間違っている」と言われ、それより低い労働契約書に捺印するように迫られた。「これで働け」というふうに、あとから迫られたという相談です。

こういった相談がたくさん来ています。残業代の問題、あとで先生方から説明があると思いますが、残業代の問題やあるいは正社員求人。「正社員募集」となっていたんだけれど、「行ってみたら契約社員だった」「非常勤だった」という相談も寄せられています。

労働条件の明示が、(資料の)8ページです。働くときには労働条件というのはわかっているのが普通なのですが、実は労働条件がきちんと明示されていないという問題もあります。広告の問題、求人票の問題もありますし、労働条件がちゃんと明示されていないという問題もあります。

労働条件の明示と離職率の関係

こちらは、連合が今年の春に若い人たちを対象に実施した調査(内定・入社前後のトラブルに関する調査)です。労働条件について、法律では書面、紙で明示しなくてはいけないとなっているんですが、書面で明示されたということは3人に2人に留まっています。

そして、(資料の)9ページになりますが、労働条件を紙でもらわなかった人たちのほうが離職率が高い。きちんと労働条件をわかって納得した上で入った人なのかどうかということが、後々の職場への定着に関わっているという実態があります。

こうした求人票や労働条件明示をめぐる問題があることから、厚生労働省でも有識者による検討会が行われました。こちらが今年の6月に報告を取りまとめています。

ポイントは、求人企業が明示する労働条件は適正化しなくてはいけないということです。とくに「固定残業代を明示しなくてはいけない」ということをもう少し広く行き渡らせなくてはいけないという報告です。

また、嘘の条件を提示した求人企業に対しても罰則をかけなくてはいけないのではないか、といった報告がなされています。

また、職業安定法では、職業紹介を行う人たちに対する規制はあるのですが、求人広告や求人情報を提供する人たちに対してはほとんど規制がない状態です。これについても、雇用を仲介しているのだから、きちんとしたルールが必要ではないかという報告が出されています。

「詐欺求人」をなくすために

これを受けて、冒頭に申し上げた審議会が行われることになっています。

それで、私たち連合は、いわゆる「詐欺求人」をなくしていくために、やはり事実と異なる労働条件を明示してはいけないということをきちんと法律に書くとか、何度も違反行為をしているような、行政指導を受けた企業に対しては、その企業名を公表していくことも必要ではないかと考えています。

また、雇用仲介事業の適正化のためには、求人広告などの求人情報提供事業者にもきちんと規制をかけていくことが必要ではないかと考えているところです。

このような主張を私どもとして行っていきたいと思っておりますが、ぜひみなさま方の媒体のなかでもこういった動きがあるのだということを、ぜひお書きいただければと思っております。以上、私から冒頭の提議とさせていただきます。

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