2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
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江端浩人氏(以下、江端):本田さんからコトラー先生への質問は?
本田哲也氏(以下、本田):そうですね。コトラー先生の『ソーシャル・マーケティング』という本があるんですよね。
1989年だったと思います。マーケティング3.0、4.0と来たんですけれど、今日話したことの一部も『ソーシャル・マーケティング』という本の中に書いてあることがかなり含まれています。
そっちのほうのアップデートで、本当にコトラーさんに聞けるんだったら、今、現在こういう世界環境、社会環境になって、コトラーさんご自身が、あそこで提唱されたソーシャル・マーケティングを考えたら……、もう2016年バージョンで。
江端:27年後のソーシャル・マーケティング。
本田:どうなのかな、と。
江端:そう考えるとすごいですよね。その時にすると。
本田:余談ですけど、PR業界に入りたいなと思った時に、いろいろとPRの本を読んだんですけれど、コトラー先生の『ソーシャル・マーケティング』には、けっこう影響受けました。モノを売るだけがマーケティングじゃないと。
社会的プロダクトという言葉があるんですけれど、それが今もやっている仕事にもつながっているので、それを聞いてみたいですよね。
庭山一郎氏(以下、庭山):僕も、若い頃に、ハウトゥーがほしいじゃないですか。ハウトゥーセルみたいなことがほしいと思っている時に、その『ソーシャル・マーケティング』を読んで、「なんだよ。なんかかっこいいほうに逃げたな」と思ったのが、まさにその本なんです。
(会場笑)
本田:かっこいいほうに逃げた(笑)。
庭山:そんなこと思ったんですけど。
徳力基彦氏(以下、徳力):なんか恨みでもあるんですかコトラーさんに(笑)。
山口有希子氏(以下、山口):おもしろい(笑)。
江端:山口さんは、なにかありますか。
山口:私が以前、コトラー教授のインタビュー記事かなにかを見ていた時に、「日本はまだまだマーケティング1.0じゃないか」ということをコメントされていたんですね。
「すばらしい製品を作って、売ればそれでよいと思っている」という感じのことを言ってらっしゃっていて。私、マーケターとして海外の会社に勤めているので、アメリカとかでのマーケティング組織のやり方と、日本のマーケティングの状況とかギャップというのはすごく意識するわけですよね。
そうした時に、コトラーさん自身が数年前、「マーケティング1.0だよ、日本は」っておっしゃっていたところが、今はどのように見てらっしゃるのかというところと、あとはそれをどのようにして……。
やはりマーケティングは世界的にすごく重要になっている機能だと思うんですね。でも、それをどのようにして、日本という、ある1つの文化で構成されている社会の中で、エレベートしていくのか、変えていくのかというところを、今の教授はどのように見ていらっしゃるのかは聞きたいと思います。
江端:確かに、それは本当聞きたいですし、2年前も、「日本のマーケティングはもっと進化できるところがある」「逆によいものを作りすぎていたために、そこに行っていない」みたいなこともおっしゃっていたような気がします。徳力さんは?
徳力:いや、庭山さんに影響されて、そっち側の質問しか思い浮かばなくなってしまったんですけど(笑)。
個人的に、コトラーさんが、跡継ぎというと変ですけど、この人が自分に一番近いなって思っている人が誰なのかというのと。
逆に、さっきの庭山さんに影響されてあれなんですけど、マーケティングの概念を毒してしまったやつは誰だと思っているのかというのは聞いてみたいですね。こいつのせいで、俺のマーケティングがねじ曲がっちまったというのは誰なのかと(笑)。
本田:本当に最期の瞬間じゃないとね……。
(会場笑)
山口:なかなかね(笑)。
徳力:いや、案外酔っ払ってたら、ポロッと言ってくれそうな気はするんですけどね。
江端:カクテルパーティもありますけどね。
(会場笑)
徳力:江端さんにすべて託しました(笑)。
山口:ぜひ託されて。託しました(笑)。
徳力:「お前、すごいこと聞くな」と言われて下さい(笑)。
江端:私、それを聞く勇気はないと思いますけれど。すみません、いろいろ脱線しちゃいました。平和のマーケティングのことでもけっこうですし、マーケティング4.0でもけっこうです。なにか会場の方から、質問を1つ、2つお受けしたいと思っております。いかがでございましょうか?
江端:もしくは、藤井さんにコメントを。いただきましょうか。
藤井宏一郎氏(以下、藤井):僕がコトラー先生に聞いてみたいなと、平和とはぜんぜん関係ないんですけどいいんですか?
私もフライシュマン(フライシュマン・ヒラード・ジャパン株式会社)で本田さんの後輩で、PR業界の端くれにいると思っているんですけれど。
PRを経営学のなかでちゃんと位置付けてほしいなと思っていて、ビジネススクールでPRって教えないんですよね。なぜかと話をしたんですけど……、例えば、ノースウェスタン大学にはケロッグというコトラー先生がいるビジネススクールがあって、その隣に、メディルというジャーナリズムスクールがあるんですよね。
ケロッグで、なぜうちはPR教えないのかって言ったら、「いや、ジャーナリズムスクール、メディルで教えているから」って言われて。
「一体にしてやらないと、インテグレイティッド(統合型)マーケティングコミュニケーションにならないでしょ」って言ったら、「インテグレイティッドマーケティングコミュニケーション、あれはメディルで教えているんだ」という話があって。
そういった、単にコンシューマーだけじゃなくって、株主から、地域コミュニティから、いろんな国から、行政から、NGOから、そういった多数のステークホルダー全員との関係を構築するというのは、MBAに必要ないのかというと、それはまた別に、最近流行の非市場戦略みたいな領域というのは、ノンマーケットストラテジーみたいなものがあって、それは別のクラスで教えていたりするんですけどね。
パブリッカーフェアーズ、パブリックリレイションズと、いわゆるノンマーケットストラテジーみたいな領域という「非市場戦略」、そこらへんを早く、学会のなかで統合してほしいなというのが僕の希望ですね。
江端:ありがとうございます。去年のワールドマーケティングサミットでそういう論点の話がけっこうありましたよね。平和学とマーケティングをどうやって融合していくかみたいな。だから、今まさに議論されようとしているところなのかもしれませんね。
会場の方で、これを聞いて見たいという方はいらっしゃいます? はい、よろしくお願いします。
質問者1:今日はいろいろとお話していただいてありがとうございます。1つ質問があります。平和の反対で、戦争ってあると思うんですが、どちらかというと、戦争をマーケティングして稼いでいるというか、ビジネスとしてやっている人たちもいるのかなと思うんです。
戦争をすることが金儲けにならないマーケティングというか、そういうことができるかわからないですけど、なんとなく平和の反対側のところをなくす、無力化するためにはなにができるといいのかな、と。なんとなくお話を聞いていて思いました。そのヒント、こうしたら、ひょっとしたらというようなお話を。
江端:どうやったら戦争をなくせるのか?
質問者1:そうですね。ひと言いただけたら。
江端:徳力さんから。
徳力:さっきの話にもつながるんですけど、今、世界はけっこうISISのPRに負けていると思うんですよね。結局、その国で職がなくて鬱屈している人が、ISISのPRビデオとかを見て、「ここに俺の生き場所がある」と言って、わざわざヨーロッパからシリアの戦地とかに行くわけじゃないですか。それで、現地に入れないと、母国でテロを起こしてしまうという展開になっているわけです。
あれを見ていると、僕はどうしてもオウム真理教を思い出しちゃうんですよね。ある意味、若い有能な人たちをどう洗脳して戦争に誘導するかというほうの勢力に、今、僕らは負けているんだと思うんです。“僕ら”という表現がいいのかどうかわからないですけど。
結局それに対して、トランプみたいなのが出てきちゃって、またヘイトを煽るんですよね。そうすると僕、黒人に対する警官による発砲事件とかトランプの発言がすごく影響していると思いますけど、憎しみを煽る人が出てくれば出てくるほど、そういうことって増えてしまうと思うんです。
やっぱり、ヨーロッパの若者が戦地に行ってしまうのは、たぶんその国のなかで彼らが活躍の場所が見い出せてないからじゃないかなと。やはり彼らが行かないように、もっと彼らが本来活躍してほしいところにうまく誘導するという戦いをしなくちゃいけないんじゃないかと、個人的にはけっこう本気で思っています。
江端:ほかになにかありますか? 実際、マーケティングプラットフォーム研究会をやっていまして、何回かそれに直接つながるテーマじゃないですけれど、例えば、コンシューマプラットフォームというテーマを2回ほど前にやったんですが……。
消費者がどういう情報を受け取って、どういう情報を受け取らないというのを選別できるようなことだったり、自分がどういう人間になりたいということで、自分が理想としている人たちはどういう情報を受け取って、どう消化しているのかをAIで分析して、それを優先的に受け取れるようにするようなプラットフォームができるんじゃないかみたいな話がありました。
これも自己実現だと思うんですけど、なりたい自分にテクノロジーとかマーケティングを使って、どういう人がそういうふうになっているのかを勉強して、ディープラーニングでそういう情報を受け取れるような環境を自ら作っていく。そのためには、自分の個人情報も出すし、というような好循環が生まれる可能性があるなと、思っています。
そういう意味では、私は戦争は起こしたくないので、そういうムーブメントを作るためには、どういうことを知っておいたらいいんだみたいなことを受けとれる仕組みというものが、そのうちできてくるんじゃないのかなと。
Watsonとかでもできてくるんじゃないかと思っています。
そういったことは1つ、いろいろ貢献できることじゃないかなと、この研究会を通じて、学びを得たかなと思っているところです。
そういうテクノロジーって、徳力さんが言ったように、影響されちゃうんですけれど、逆にテクノロジーを使って、自分を影響させる、しかもプラスのほうにという、そういうことができるんじゃないかなと思っています。
そこがすごく人間ならではの可能性じゃないかなと思うところなんです。
それで、逆になっちゃうと非常に大変なので、ちゃんと見てなきゃいけないですし、今回みたいな会話ができるのも、すごくいいことだなと個人的に思っています。どうでしょうか?
庭山:これは実際に体験したことなんですけれど、アメリカのマーケティング友達と飲んだりしていた時に、仲間内ではすごく平和を愛している倫理観の強い男みたいなイメージで見られていた人間がいて、競合だったのかな、その人間のことを面と向かってディスったんですね。
それはなぜかといったら、「お前の会社のメインクライアントは、軍需産業じゃないか」と。「軍需産業にマーケティングサービスを提供しているお前がなにを偉そうに」ということを面と向かって言ったんですね。
それで喧嘩になるのかなと思ってみていたら、彼はすごく冷静に言ったんですね。「第二次世界大戦以降、最も世界平和に貢献したのは核だ」と。
つまり歴史上、核保有国同士の戦争は一度も起こってない。すべての戦争紛争は、片方が核兵器を持っている。もしくは、両方が持っていないのであって。つまり、核を持つことによって、核戦争は世界中の誰もしたくないわけで、結果的には悲しい現実だけど、「核というものは、最大の平和を作り出しているんだ」というような言い方をして、「だから俺は正しい」と。
それまではやはり僕も、武器産業、兵器産業は死の商人で、彼らのマッチポンプで紛争の種まいている、そういうプロパガンダってあるじゃないですか。だけど、本当にそうかなと思いますね。
だから、幸い僕は日本でビジネスをしているので、日本でそんなに大きな防衛産業ってないのであれなんですけど、そういう考え方があるのかなと思います。1つの考え方ですけど。
江端:本田さんなにかありますか?
本田:そうですね。とくに『戦争広告代理店』って本に詳しいですけれど、藤井さんも紹介されていましたけれど、戦争を止めるコミュニケーションというのもあります。
平たく言いすぎになっちゃうかもしれないけど、金の力と武力の力って、もうどうしようもないときに最終的に人間同士が喧嘩するわけですけれど、もう一歩か、もう二歩、あるいは違うアングルからコミュニケーションを図ることで、なにかが抑止されることはあるわけですよね。
普通の人間としてもある話で、それが手を尽くしきって、もう武力でいくしかないのか、本当にそうかという時に、3つ目の力としてコミュニケーションの力があるわけですよ。
だから、コミュニケーションのプロフェッショナルとか、専門知識を持っている人は、もしかしたら最後の砦かもしれない。それでもって、抑制されたり、抑止されたり、回避できるってことはあると思うんですよね。そういうところが、日本はまだ弱いなと思うんですけど、もっと必要ですよね。
江端:本田さん、今年のカンヌに行かれてましたけど、そのときの議論として、日本ってそんなに紛争もないし、差別もないし、だから、カンヌで言われているようなアジェンダというものがあまり形成されていない。世界に出ると、そういうアジェンダがいっぱいあって、それを解決しようとするマーケティングみたいなものがあるんですね。
本田:日本人はピンとこないんですよね。対岸の火事というと言い過ぎですけど。
江端:そういう観点も少しはありますよね。非常に深い話になって。いい質問をありがとうございました。
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