2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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北浦正行氏(以下、北浦):ありがとうございました。だんだんとノルウェーの生産性が高い秘密がわかってきたような気がします。さらに議論を深めていきたいと思います。
先ほどの調査結果で、「なぜノルウェーは休日出勤があるんだろう?」と思ったんですが、それは結局リモートワークをしているので、休日に仕事をやっているだけで、ふだんの仕事に加えてオーバーワークのために休日出勤をしているわけではないということですね。そこはよく注意して、調査結果を見ないといけないなということはわかりました。
もう1つは、ミーティングの問題。ノルウェーでもやはりミーティングの時間が長すぎるというような声も出ています。
1人でやる仕事というのはかなり効率的にできますよね。1人でできない仕事、その典型には会議などがありますが、これはノルウェーでも議題になることがあるのでしょうか?
ミカール・ルイス・ベルグ氏(以下、ベルグ):そうですね。私も今日話す前にいろんな人にインタビューをしたんですけれど、日本とノルウェー両方で働いた人は、「ノルウェーでも思ったよりミーティングが多かった」と言っていたんです。それは社内ミーティングです。
ノルウェーではマネジメントの少ないやり方で1週間働くので、ある程度ミーティングでコンセンサスを取って、今週やることを決めないといけないということもあるんですよね。
そういうミーティングはノルウェーでもありますけれど、社外、営業先とのミーティングは、ノルウェーの場合は電話とかメールとか、ビデオ会議で済ませることが多いです。
日本から学べることは、営業先にちゃんと顔を出すということ。それをすると時間がかかるんですけどね。
ノルウェーの場合は、仕事はAからBまででこれで終わりです、となりますけれど、日本のすごくいいところは、質の高いもの・サービスを、AからBだけではなくCまで入れるのが当たり前なところですね。ノルウェーだとこれがオプションのサービスということになるんですよね。
例えばコンビニでも、ノルウェーでは、「はい、いくらになります」とお金を渡して終わりです。丁寧な接客はあまりないんですけれど、それが逆にノルウェー人にとっては合うんです。生産性と、クオリティ、サービスのバランスを取ることが日本には必要だと思います。
日本のやり方もいいところがすごくたくさんあると思いますけれど、たしかに取引先とのミーティングに、日本ではけっこう時間がかかっていると思いますね。
北浦:ありがとうございました。牧野さん、今のお二方のお話を聞いて、日本はやっぱり労働法制が厳しいので、そうは言ってもそう簡単には進まないだろうとおっしゃっていましたが、どうでしょうか?
牧野正幸氏(以下、牧野):弊社では本当にフルフレックスでいっさい時間管理をしないやり方でやっていたんですけど、徐々に徐々に、それなりの規制がかかってくる部分があって。結果的にはしょうがないので、ある程度、どれぐらい働いているのか勤務時間を調査して、長時間になっている場合には注意するみたいなことをやらざるを得なくなったんです。
これがリモートになっちゃうと、もはやパソコンの接続の時間ぐらいしか見られないわけですよ。パソコンの接続時間なんて、さっきみたいな働き方で、朝メールで仕事して、昼は家のことをやって、夜にまた仕事を……となったら、一体どこからどこまで働いているのかというのは申告制になるんですよね。
このあたり、リクルートさんはどうやって問題解決してるのか、というのは聞いてみたいと思いました。
林宏昌氏(以下、林):まさにそれは悩ましいポイントで、今、僕たちは自己申告制ということでやっているんですね。「今から仕事を始めます」「今、終わります」、あるいは「何時から何時まで抜けます」ということを上長にメール、あるいはチャットで伝えるというふうにしています。
PCのログがあるので、ある程度本人が言っていることとPCのログの整合性は見れるんですけれど、PCを使わないような仕事をしていたり、本を読んだりって場合はわかりにくいので、そこは引き続き難しいです。
この後、PCの接続の時間とかが見れるみたいなことは法律で簡便にして、日々上長がわかるようなかたちにしていきたいと思っているんですけれど、悩ましいですよね。どこまで1分1秒を管理するんだ、という。
国側からの要請に対して、我々もなるべくそこに沿っていこうとは思うものの、ある程度任せていきながら、時間が長くなってしまう人たちをどうするか。「時間が長くなる」ということがポイントなんです。
僕らは「サボる」ということについては別にどちらでもいいと思ってるんですけど、長く働くのをいかに減らすのかということで働き方改革をやっているので、結果的に長くならないようにすることを、とくにケアをしながら進めていきたいなと思っていますね。
牧野:今一番の問題は、現実的に労働法制で決まっている考えですと、長時間働いた人の賃金を必ず上げなければいけないという法律があるんですね。
例えば、私と林さんがいて一緒の仕事をしていて、僕はものすごくダラダラ仕事をして、生産量はすごく少ない、と。ダラダラして生産量が少ないとなった場合でも、一時的に見たら僕のほうが給料をいっぱいもらえるんですね。
林さんがテキパキやって毎日定時に帰っちゃって、いい成果が出ていても、次の評価が決まるまでの1年間は、ひたすら林さんは僕より給料が少ないという状態が生まれてしまうというのが大きな問題です。
アメリカなどで言うところの「レイバー」と「ワーカー」という分かれ方で、ワーカーは向こうでは年棒制なので、はっきり言って残業手当もへったくれもなくて、死ぬまで働いて評価を得て、ボーナスなり褒賞をもらうか、もらわないかということなので。それはもう効率の問題だけで、短い時間で働こうが長い時間働こうが、成果主義でずっとやっていたわけですよ。
逆に今度は決まった時間に働かないと成果が出ないような、そこにいなければいけないような仕事の場合は、アメリカの場合はすごく厳しいので、1分1秒でも働いた分はちゃんと払いなさい、となってるんです。
その辺りが日本の場合はごちゃまぜになっているので、例えば開発エンジニアなんて、実はものすごい波があるんですね。集中力がないときに、いくらスタートしても成果は出ない。
本当はリモートワークで家で仕事をして、煮詰まったら散歩に行ったり、遊びに行ったりして、夜になって気分がすっきりした、集中して仕事しようみたいなほうがベターなんですけど、これが今の日本の労働法制だと、どうやって賃金を払えばいいかということが非常に難しくなってしまうんですね。
我々の会社はフルフレックスなので、自己申告で何時間働いたということに基づいて報酬が払われる。この範囲以内は裁量労働なので賃金は一緒です。ここを超えたら申告しなさい、としてなんとかしているんですけれど、この辺りが変わっていかないといけないですね。
長時間労働をしている人間のなかには、その分給料がもらえるから働いているという人がけっこういるんですよ。ひどいパターンだと、前の会社の時ですが、「なんでこんなに長時間労働なんだ?」と聞くと、「エアコンが効いてて涼しいし、家に帰ってもやることないので」と。
「24時を越えたらタクシー代が出るので、24時まで働いてます」なんて言うヤツもけっこういたりして、もうありえない、ナンセンスな働き方をしている。
会社にダラダラといる人がいっぱい給料をもらえる、そういうところをなくしていかないといけない。長時間労働がなくならない温床になってる部分は、そういった賃金制度、法制度というところがあるとは思っています。
北浦:賃金とか人事評価がネックになっているという問題ですね。賃金とか人事評価についてはかなり成果主義的な傾向も高まっているんじゃないかと思うんですけれども、まだまだ不十分ですか?
牧野:報酬体系を決めるときに、当然基本給を決めるので、そこはかなりみんなドラスティックに、よく成果を出している人は基本給を一気に上げたり、一気にボーナスを払うということをやっているんですけど。
そこにプラス労働時間でお金も払わなければいけないという法律の決まりが原則的にある。管理職の場合は除外されてますけど。
よくある話で、わりと激務系の会社だと、課長になったら給料がすごく下がるという会社があったりする(笑)。課長のほうがもっと激務なのに、そういう不思議な現象が起こったりもするので、そのあたりも少し考えていかないといけないと思いますね。
一方で労働時間が長いことを国が規制するのは正しいと思うんですね。もちろん会社としても労働時間を短くするように努力するのは正しいと思うんですけど、どんなにダラダラ働いてもいっぱい賃金を払いなさい。逆にこんなに短く働いて成果を出していても、払いようがありませんというのは、私は問題だと思いますね。
北浦:ありがとうございました。ノルウェーだとどうなんでしょうか? 賃金もだいたい成果で払っているでしょうし、時間の申告もそんなにいちいち言う必要がないとか。
ベルグ:管理とフレックスは一緒に使えるのか、というのはわからないところなんです。管理フレックスは、もしかしたらフレックスを導入するということに管理の面は少し引き下げることもあるんですけども。ノルウェーの場合、国の問題と、企業さんの問題と、あと社会の問題もあるんですよね。
社会でどういう働き方が評価されるのかというと、長い時間働いたから評価されるというわけではないですね。どれだけパッパッと仕事を終わらせて帰るのかというのが評価だと思います。あと、やはり労働時間と残業時間の上限が法律で決まっています。サービス残業がないから、ちゃんとすることができると思うんですね。
もう1つは、ノルウェーでは転職活動することがふつうになっています。一生同じ仕事をするのではなくて、職務経歴を充実させるために、どんなプロジェクトに参加したかとか、評価されたできごとを積んでいくことが大事なんですよね。ほとんどの人がLinkedInとかのアカウントを持ってるんですよ。
転職しようとしたときに、「私はこの企業に5年間勤めていました」ということよりも、「なにをしていました」のほうが大事で、その時にはリファレンスが必要なんですね。その人が以前勤めていた企業のマネージャーか社長に、新しい就職先が電話するんです。
「この方の事業の内容はこれだったんですか?」「言ってることは合ってますか?」とちゃんと聞くんですよ。なので、実績を残さないと進めなくなるんですよね。自分のプロフィールのためにも実績はちゃんとしておかないと、転職ができないということがあるんです。転職が企業としていいことなのか悪いことなのかというと、それは人それぞれですけれどもね。
北浦:バックグラウンドにまず労働市場の柔軟性があるんですね。単に企業だけではなくて、マーケット全体が成果主義。そういうなかでこういうのが生まれていくっていうことですね。そういった意味では、働いている人たちっていうのは、自由度だけなんでしょうか。もっと縛られた人、そうでない方はいらっしゃらないですか? どうですか?
ベルグ:ノルウェーでは、やりたい仕事をするためのハードルは低いかもしれないです。なぜかと言うと、勉強して取得をした学位をみんな活かしたいんですよね。ノルウェーでは、1回大学に入って卒業してから、社会人になる平均年齢は26歳か27歳なんです。
卒業してから、例えば1年間どこかでワーホリとか、旅行をしたりする。それで、「私は経理じゃなくて建築業界に入りたい」と考え直したりするんですが、それは評価されることなんですよね。自分のバックグラウンドに合った就職先を見つけることが、ノルウェーではより可能かもしれないですね。とりあえずどこかで経験を積んで、もっとやりたい仕事があったら転職するというケースもよくあります。
やりたい仕事であればやりがいもあるし、仕事に行きたいという気持ちも上がって、効率性が上がるのではないでしょうか。
北浦:ありがとうございます。今、大事な点をご指摘いただいたと思うんです。1回会社に入っても、辞めて学校へ行き直したり、教育の自己啓発というか、自分自身で勉強なさるという傾向が非常に強いんだと思います。
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