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2025.02.18
AIが「嘘のデータ」を返してしまう アルペンが生成AI導入で味わった失敗と、その教訓
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司会者:続きまして、公益財団法人日本生産性本部参与、日本テレワーク協会副会長、北浦正行様より、調査結果について解説いただきます。
北浦様は労使関係を基軸として、テレワーク、ダイバーシティ、ワークライフバランス推進に向けて活動するとともに、内閣府・仕事と生活の調和推進評価部会委員などの政務関係職も歴任されており、精力的に活動されています。
それでは北浦様、よろしくお願いいたします。
北浦正行氏(以下、北浦):ご紹介いただきました北浦と申します。よろしくお願いいたします。
日本生産性本部というところと、日本テレワーク協会というところ、2つに関わっておりまして、どちらも今日のお話に密接に関わるのではないかと思っております。
私からは、今日発表されました日本とノルウェーの大変素晴らしい調査に触れながら、日本の生産性の問題を簡単にレビューしてみたいと思います。
最初に、これはもう何回も話に出ていますし、みなさま方もご覧になったかと思いますが、日本の生産性は先進7カ国の中で最下位にあるということは、ご案内の通りであるわけです。
全体で見れば21位、これが表になっておりまして、真ん中より下。そういう位置に書かれています。
それゆえに、今、政府も国をあげて労働生産性を向上させるためにどうすべきか、こういう議論をしているわけであります。そのときに問題になりますのが、どこが低いのか。
この表だけではわかりにくいんですが、これは前年度との対比、落ち込みです。この2015年というのはちょうど落ち込んでるわけです。どこが一番落ち込んでしまったかと、見ていただきますと、少し見にくいんですが、製造業はあまり変わっておりません。
しかしながら、サービス業は従業員数や労働者数が少しでも増えますと、生産性がどんどん落ちてしまう。もともと、生産性があまり高くない。サービス業、こういった部門の生産性が低い。それゆえに、サービス業の生産性向上というのが政府の課題でもあります。
私どもも、来週、「日本サービス大賞」というものを今回創設いたしまして、サービスの生産性を向上させる運動をやっているところでございます(注:第1回日本サービス大賞の受賞結果が2016年6月13日に発表された)。
そういったなかで、産業というよりも、実は製造業のなかでも、工場よりも間接部門あるいは営業というホワイトカラー、そこの生産性が低いという問題点があるわけです。そういう意味では、産業の問題というよりは、ホワイトカラーないし、そういうサービスの生産性、これをどう向上させるかという問題が大きいわけであります。
ここは細かいところではありますが、生産性が低い理由としては、後ほどディスカッションでお話したいと思います。一般に言われているところは、キーワードとしては労働時間。時間の管理。日本の場合は、非常に長い時間働くことが、むしろ評価されてしまった。その理由は、ここにも書いてありますが、後ほどディスカッションでもそういったことが出てくると思います。
もう1つは、これはもう一方の見方をすれば、時間というものに対してのマネジメントの意識の薄さがあると思います。工場ですと、かなり厳格に管理されますけれど、サービス業の業務に関しましては、一体どれだけ働いたのか。なんの仕事にどれだけ費やしたのか。そういうことが個人個人でも測定しにくいし、マネジメントの立場でもなかなか見えにくい。これが今日の議論でもありますような、ICTの利用でどこまで進められるのか、このポイントが1つあると思います。
そして、スライドには書いていないんですが、私はもう1つ大きな理由があると思っています。それはなにかというと、日本の集団主義。集団で働くというこの呪縛からなんとか解いていかないと、これから生産性は上がらない。
昔は、集団で働くことによって生産性が上がった。生産業の世界はまさにそうですね。そのときのキーワードは「一律」です。一律。みんな一緒ということです。だから、規制がいる。だけども、これから製造業以外、もっともっと幅広く生産性を上げていくためには、もうそのスタイルというのは、馴染まない。
そこにあるもののキーワードは、「フレックス」であると思います。このことが、今日発表されました調査のなかにも出ているわけであります。調査結果は先ほどご説明がございましたし、プリントに大変手際よくまとめられていますので、繰り返すこともないんですが。
ポイントとしていくつかありますのは、やはり、日本とノルウェーの違いにおいて、仕事の組み立て方、ここからの発想が違うんだなということがあります。自己判断でできる余地っていうのが大きいです。
自分自身で裁量できる。自分自身でできないときの裏返しとしては、他人に指図される。他人に聞かないとできない。そういうような部分が時間としてかかってくる。あるいは手間暇としてかかるわけですね。
それだけ自分に裁量性が与えられているのか。それが自由度を持った働き方という言い方をしてよいかもしれませんが、それが実現できるかというのが、一点だと思います。
もう1つは、かたちの問題。これは、働き方の柔軟性と言われています。フレキシビリティ、先ほどのキーワードです。これは大きく、時間、場所の問題になります。もう1つ言えば契約形態というのがあるんですが、今日は、調査との関係で言いますと、時間と場所。
時間については言うまでもなく、やっぱりフレックスな働き方。これが、圧倒的にノルウェーのほうがフレックスタイムの提供が多い。それから、場所についてもリモートワーク、これも焦点だと思いますが、これもやはりノルウェーとかだと非常に多い。このフレキシビリティを作り上げていくことが、大きなポイントだと思います。
もちろん、これを支えるものが大事でありまして、ここには書いてありませんけれども、それはやはりシステムであるわけです。それはICTを含めての環境整備が社会的にも整い、また1つの企業のなかでも整うという。この条件整備が日本もだんだん進んできておりますが、かなりノルウェーのほうが進んでいるのだと思います。
それから、もう1つ、決定的に日本とノルウェーの違いが出てきたなというのが、日本の場合は社内システムの改善というところが出ています。
ノルウェーにも同じような問題があるんですが、日本は実はここのところ、ヒューマンリレーションのなかの仕事の仕組みというところに、まだまだ問題を抱えている。先ほど言いましたように、対集団で働くなかでのかたちと個人で働くかたち、どうも今はまだうまくスイッチングしてない。そこのところがやはり、問題点なのかなと思います。
そういった意味では決済手続きの問題であるとか、意思決定、報告連絡、これはノルウェーの場合であっても会議時間が長いという不満が出ているわけですが。これは万国共通であるにせよ、日本の場合はとくにこういった部分の改善が遅れている。
その部分と、先ほどのフレキシビリティと一緒にやっていかなければいけないというのが、日本の解決の仕方ですが、それらは無関係でなく、同時並行的にやっていけると考えています。
今後の課題については、後ほどのディスカッションのほうで触れていきたいと思っておりますけれども、時間の使い方、業務の流れをどのように管理するのか。あるいは仕事の上での無駄をなくすのかというのは、これは今、言われている働き方改革の最大の課題であります。
こういったときに1つ考えないといけないのが、1人でする仕事と、会議など1人ではできない仕事があるという、先ほどちょっと申し上げましたけど、時間を測るときに、自分の時間を自分だけで使えている時間なのか、そうではないのか。このことを意識するということが、非常に大事な点になっています。
問題は、自分の時間であればセルフマネジメント、セルフコントロール。自分でしっかりと管理することが大切です。それに対して阻害要因なのは、1人でできないこと。日本は先ほど申し上げましたように集団主義ですから、どうしてもここのところにウェイティングが置かれる。
そのなかにおいて、会議という時間が、これが生産性が上がっていけばよろしいですが、なかなか逆効果で。むしろその会議によってその時間がとまってしまう。そのようなこともあるわけです。
そういった面を含めた仕事の仕組み、先ほど申し上げたようなICT業務も当然必要であるわけですが、それと並行しながらこの仕事の仕組み、流れというものをいかに変えていくか。これが大変大きな事項ではないかと思います。
そのきっかけを与えるのが、ICTツールだと思います。ICTツールを使うということが、こういったものにきっかけを与えていく。そういうようなことに、テレワークが、今日の1つの結論のなかにも関係してまいりますが、そういったものも推進することも、大事なのではないかと思っております。
いずれにしましても、この日本とノルウェーの調査は、あまり今までなかったものではないかと思います。諸外国との間で働き方を調査することはいろいろありました。ただ、それは働き方の意識調査みたいなものが多い。
そういったなかで、オフィスワーカーの働き方の違いというところに着目をして、そういうところで進めてらっしゃる。そういう調査は、非常に価値が高いのではないかなと、私自身も思っております。
そういったなかで今回の調査を見ていますと、やはり、今、言ったような点が明らかになっているわけでありますが、これもこれからのパネルディスカッションのなかで、その点がもう少し深掘りされるのではなかろうかと思います。
そんなわけで前置き的な発言で大変恐縮ではございますが、私の簡単なプレゼンテーションを終わらせていただきます。どうも、ご静聴ありがとうございました。
(会場拍手)
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