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しなやかさの作り方 ~らしく生きる女性たちのストーリー~(全4記事)

「ふんぞり返ってるワンマン社長は嫌」女性経営者が目指す理想のリーダー像

Webメディア「TABI LABO」が、各界で活躍している女性たちが登場するトークイベント「しなやかさの作り方 ~らしく生きる女性たちのストーリー~」を開催。仕事もプライベートも充実させる女性らしい生き方とはどのようなものなのか。株式会社HASUNA 代表白木夏子氏、株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング取締役坊垣佳奈氏、アクセンチュア株式会社執行役員堀江章子氏が、それぞれ考える“しなやかさ”について語ります。

中腰の人は美しくない

谷本有香氏(以下、谷本):坊垣さんにしても白木さんにしても、リーダーとして押し通さなければいけないときは必ずあると。しかし、折れなければいけないという局面もあると思うんですが、そのせめぎあいはどうやってバランスをとっていらっしゃるんですか?

坊垣佳奈氏(以下、坊垣):私、4つの会社を立ち上げてきて、ずっと取締役というポジションで2番目なんですよ。2番目っておもしろいんですけど、すごい難しいです。基本的には、社長、代表のここぞというときには意思を通してもらうんですが、できるだけ経営陣みんなが納得できるものであるべきです。それが正解だと思ってみんなが突き進めるべきものなので、その裏ではかなり意見を言っています。

ここぞという決定の裏で「私はこう思う、ここはこうだよね」と。実際に、ワーっと走って、ここをやったら結果が出るとか、かなり動いています。ゴールや正解に対して突き進むうえで、「ここは絶対に守らなければならない」というところは、いろんな手段を使って、ちゃんと自分の意見と意思を伝えるようにしています。

谷本:白木さんは、社長として揺らがない部分を見せなければいけないし、かといって石のように固かったら誰もついてこないし。そこはどういうふうにバランスをとっていらっしゃいますか?

白木夏子氏(以下、白木):私の場合は「こうありたくないな、こういう社長は嫌だな」という姿が明確にあって。それは大企業でふんぞり返ってるワンマン社長のおじさん(笑)。そういうつっぱりがあって、私のなかでダメ社長の姿がたんまりあるんです。それには「絶対にならない」と思っています。とにかく人の意見を聞かない、自分の意見だけを押し通していつも威張り散らしているのは本当に嫌です。

できる限り「社内にいる一人ひとりが輝くように」と思っています。私も意見を言うけれども、(意見を)言ってほしいです。社内では意見を言いやすいような環境にずっとしてきたんですが、それもすごく難しいです。創業社長なので、「私に言われることをやります」というスタンスのスタッフが昔はすごく多かったんです。それは私にも悪いところはあるんですけど。

あるときから、「私は会議に出ないし、決めごともしない。1年とか3年とか中期長期的な目標は決めるけれども、一切、口出しはしません」と、変えたんです。それはすごく怖いことでもありました。ふんぞり返ってはいないんですけど、いつまでも私が社内にいると私以上のことをみんながやれないんです。

私を超えないよう超えないようにかがんで、ちらっと中腰でみんな見てるような。そういうことしかできなくて、とてもじゃないけど中腰の人って美しくないし、輝いていない。そうじゃなくて、「一人ひとりが、オン・ステージしてほしい」ということを言って、今はほとんど会社にも行かないようにしてるんです。

それは、社長たるものこうあるべき、いつも会社にいなきゃいけない、リーダーシップを発揮しなきゃいけないのかというモヤモヤ感を終えさせる、払拭する作業だったんですけど。自分が、なにかに折れて退くということはやれないところにいたんだけれども、みんながオン・ステージできるように変えていきました。

恐れを受け入れること

谷本:おもしろい話がいっぱいございましたけれども、残り5分から10分弱ぐらいになりました。みなさん、質問してみたい、もしくは「こんなに私はしなやかに生きてきた」、なんでもいいですけれども、ぜひ。あると思いますよ、たくさんの人に聞きたいと思います、いかがですか?

みなさん本当のリーダーの方ですから、「私のほうがしなやかに生きてきた」「こんな秘訣がある」「こんなふうにやってきた」とか、なにかあると思うんですよね。ぜひシェアしていただけますか。

参加者1:お話をありがとうございます。1つのことを目指すがゆえに、恐れとか怖さみたいなものがあるのかなと想像するんですが、どのように向き合ってるのかうかがってみたいです。

白木:私はジュエリー業界のなかでかなり一石を投じるようなことをやってるので、今まで見えていなかったブラックボックスになっているところをちゃんと見えるようにしていくとか。ジュエリー業界の人からしたら、イライラすることばかりやってるんですよ、私って。言わなくてもいいことを言ったりとか。邪魔をするようなこともたぶんやってるので。

それに対してバッシングや嫌がらせがあるんじゃないかとすごく怖かったんですよ。海外に行ったら、射殺されるんじゃないかとか、嫌になるほど考えました。でもある時、とある人から聞いてハッとしたんですけど、恐れというのはどう頑張っても消すことができない、生物が本能的に持っているものなので。例えば、アフリカのサバンナで走っているチーターは、食料がなくなることの恐れと毎日戦いながら生きていると。

人間もそれ(恐怖)は消すことはできないからまずは受け入れること。「恐れはある」と受け入れることが重要なんだよということを言われて、「確かにそうだ」と思いました。私の今の状況を友達が同じようなことをやり始めたら、「大丈夫、大丈夫。誰も殺さないって」と言います。恐れを受け入れ、そして客観視する。客観視して「大丈夫だな」と思う。そのあとは未来の自分を想像する。成功している姿を想像する。

この3ステップを考えるようにしています。恐れを受け入れ、客観視して「大丈夫だ」と思う。それで、例えば1ヵ月後、3ヵ月後、うまくいく自分を想像します。これをずっと繰り返しています。

人生はうまく設計できない

坊垣:恐れとか不安が歳とともに少なくなってきていませんか? 肝っ玉がすわってきたみたいに。肝っ玉母さんのような気持ちに段々なってるんですけど。怖かったことを1つずつクリアするじゃないですか。そうすると次はもう怖くないじゃないですか。それを繰り返しているうちに、怖いものがすごい減ってきた、というのがまず1つ。

それから、不安とか恐れを目の前にはあんまり感じません。将来のこととか。ちょっと遠い未来を不安に思うことが、女性はより、「ライフイベントがいつ来てどういう影響を与えるかわからない」というところが大きいと思うんですけど、それって時間の無駄だなと思っています。見えない未来を不安に思うことが無駄だと思うようになってきたんですよ。

なので、足元にある楽しむこと、やるべきことをやる積み重ねが明日だし、明後日だし、10年後です。小さいころに「こんな大人になりたい」と思っていた大人に、もうなってるなと思ったりして。そうすると、未来のことを不安がったり心配したりする前に、その時間が無駄だから、足元を頑張ろうと思えるようになりました。

堀江章子氏(以下、堀江):そういう意味では前のほうが失敗が多かったなという気がします。まず心配の質も変わっていて、単純に不安とか、ちょっと怖そうなときは、「これをどうやって乗り越えようかな?」と、逆の気持ちが勝るのが最近の傾向です。

ただ、よくわからないものは不安を必ず感じるので、わからなかったら聞くとか、そういうところから始めます。「ぼんやりしてるから心配で、心配だからグズグズしてる時間はもうないぞ」という感覚でいるのが実態かなと思います。そういうことをしていると大きいことができないかもよ、っていう心配を持つかもしれないんですけど。でも、全部わかってるうえで……。

このあいだ映画の作り方の話をしていて、宮﨑駿が最初に『千と千尋の神隠し』の女の子の髪型から決めたらしいんですよ。そこからこの子はどんなことをしようとしているみたいな。

ハリウッドの映画って、最初に、バーン「ワ~オ」みたいなシーンがあって、ちょっと状況がわかって、途中でアクション、恋愛のシーン、落ち込むところがあって。最後のパートで尻上がりに盛り上がって、ドーンってエンディング。ストーリーが時間単位で決まっていて、それに合わせて組むらしいんですよ。ちょっとずつ「女の子がどんな動きをするのかな?」という感じです。

人生はうまく設計できないので、「それはどうするかな?」ということを、「自分はちょっとおもしろいところにいる」って思うぐらいの感じでいたほうが、仕事が楽しい、おもしろいと思います。すいません。長く話しちゃいましたね。

谷本:深い質問でしたもんね。そのほかにどなたかいらっしゃいますか? はい、どうぞ。

徹底的になにも決めない

参加者2:貴重なお話をありがとうございました。今日は「しなやかさ」というテーマで、いろんな経験をされてしなやかな自分を手に入れたと思うんですけれども。逆に「私はこうありたい」というポリシーとかこだわりとか。そのうえで残ったものがなにかあったら、ぜひ教えていただきたいです。

白木:去年、いろんな怒りや感情と徹底的に見つめ合って思ったことがあります。毎年、年末年始に「今年の目標」をずっと決めてたんです。「来年の年末にはこういう自分でいる」と、ぶわーっと書き出して。あれやって、これやって、これを自分でやるみたいな。

でも、今年は徹底的になにも決めないことにしました。「今年、1年後にどうなってるかわからないな」「じゃあ、流れに任せてみよう」と思ったんですね。ワクワクすることだけをやっていこうと思って。それは社内でも社外でもです。

今、HASUNA以外にもいくつか会社をやってるんですけど。ご縁もあって、どの会社がどのタイミングでうまくいくかとか、いろんなプロジェクトが回ってるなかで、自分がどうなるかわからないので、「とにかく流されてみよう。川の流れに流されて、行き着いた先がきっと楽園なんだろう」と。そういう気持ちでいることが、今のポリシーで状況です。

坊垣:「こうありたい」というイメージってあまり持ててないんですけど。私は、もともと、やりたいことが決まっていなくて、インターネット業界に入っているんです。先ほどもお話したように「環境」で選んだところが大きくて。

いろんな経験をさせてもらっているなかで、インターネットはいろんな役割を果たしていると思うんですけど。そのインターネットがインターネットの世界にとどまらず、世のなかを前に進めるというよりは、よい方向に進めるツールになる事業をやりたいなと思っています。

今クラウドファンディングという事業に出会って「Makuake」というサイトを運営しています。今までのなかで一番、素直に事業に向き合っています。それまではどこか引っかかりがあったんですよ。ゲームや広告の領域にいったときもそうですが、これが本当に自分がやりたいことでやるべきことなのか。性格的にはその場のものをいいもの、天職と思えるような危ないタイプなんですけど(笑)。

それはそれでよかったんですけど、「これが本当にやりたいことなのか?」ということが引っかかっていました。今はすごくしっくりきて仕事をしています。「自分がこうありたい」というより、「この事業をこうしていきたい。それをできる自分でありたい」という感覚が強いですね。

堀江:コンサルの仕事は「お客様」への思いがあります。お仕事をしながらもテクノロジーとかコンサルの質というようなところです。とはいえ、お付き合いも考えないといけなかったり、儲からなきゃいけないということがあるなかで。お互いに、とくにお客さまには無理をさせて儲けようとはしないとか、ごまかしたり嘘があるような仕事はしたくないとか。自分が「嫌だな」と思うようなことを強いるのはやめようとか。

好きなことにはこだわりたいとか、小学生のようなことしか言ってなんですよね。ベーシックなことが保たれていることが大事。例えばメンバー同士が妬み合ってたり、幼稚園のクラスみたいな話をしていますけど、それが保たれていると、この仕事は楽しい。そこにいていろんな成長をしたりいいことができていること、日々ベターな状況を作れていることが、今こだわっていることです。

「なにが大好きなの?」って言われるとそういう状況です。人の笑顔が多いとか、苦しんでる人が少ないとか、嫌なことがないことです。日本語にすると本当に馬鹿っぽくてすいません。そういうことを「大事にしたほうがいいな」と思って仕事はしてます。

やっているテーマが「ビジネス○○」となっていても、その現場がそうじゃないと、結果としてうちが大金をいっぱいもらっても。そこは大事にするというふうにやってます。

谷本:ありがとうございました。まだまだお話されたい方もいらっしゃると思うんですけれども、お時間になりましたので、このあとの懇親会でお話をしていただけたらと思います。

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