2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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谷本有香氏(以下、谷本):ではこれより、また40分間にわたりましてセッション2を進めていきたいと思います。今、堀江様からもありましたとおり、今日お越しになっているみなさま、本当に素晴らしい方だらけです。リーダー、部長さん、一線で活躍されている方だらけなんですけれども。ぜひみなさまからもご意見をちょうだいしながら、ディスカッション形式で進めさせていただきたいと思っております。
その口火を切っていただくために、お三方からお話をおうかがいしていきたいと思うんですけれども。前半のトークセッション1で、「しなやかさ」がどういったものなのかと。自分をさらけ出すこと、もしくは素直になること、自分自身に向き合うことによって結果もついてきた、周りも変わってきたというお話もありました。
女性のリーダーや女性が輝いていくために必要な要素などを聞きながら進めていきたいと思っております。本当にみなさん素敵すぎてしなやかに生きてこられたのがよくわかるんですけれども、すごい挫折感とか、こんな嫌なことがあってこんなことをしたとか、そういった人間らしいところをうかがっていきたいなと思います。
男性的なところでもいいかもしれませんし、そういう生々しさや、こんなに苦労してあがいて、ここから立ち上がったというようなところ、共有していただけるところがありましたら教えてください。
白木夏子氏(以下、白木):起業は0から1を作るのが最も大変で、最も楽しいところでもあるんです。私はリーマンショックのころ金融業界で働いていたので、二足のわらじで会社に勤めながら起業を準備して、リーマン・ショックのあとに辞めて起業したんですけれども。
ジュエリーでフェアトレード、現地と取引をするということ自体、まずジュエリー業界では非常識極まりないという、「そんなことできるわけないじゃん」ということなんです。
パキスタンとかペルーにある鉱山と日本の問屋さんの間はブラックボックス化しちゃっていて、間にいろんな仲介業者やらいろんな人たちが絡んでいるんですけど。そこをまず透明化して現地と直接やりとりをしたいと言い出したのは、日本で初めてぐらいの勢いだったんです。
そんななかで、最初は「誰に相談したらいいかな?」ということで、ジュエリー業界の人に相談をするんですけど。口を揃えて「そんなのできるわけないじゃないか」と、みんなに鼻で笑われるんですよね。
銀行に融資を受けに行っても、「リーマンショックのあとにジュエリーの会社を立ち上げるなんて、何を考えてるんですか?」みたいな。ジュエリーの会社がバタバタ潰れていってるときに収益が低そうなビジネスモデルで、「身の丈が合ってないんじゃないですか?」と、イライラするようなことをすごい言われて。
全員、揃いも揃っておじさんなんですけど、私は「おじさんが大嫌いだ!」とすごい思って、「あの人たちは凝り固まってて、しなやかじゃないし、もう嫌だ!」と思っていたんです。そうじゃないおじさんももちろんたくさんいるので、今のは極端な例なんですけど。
そういう悔しさがあり、いつか見返してやる、いつか目にもの見せてやるというか。いいものを作って、「絶対に私はできるんだ」と。この私が考えたビジネスモデルでちゃんと会社は回って拡大して、たくさんの女性や男性たちに選んでもらえるような、本当にいいジュエリーを作るんだという、そのエネルギーがわーっと湧いてきました。
こういう怒りのエネルギーをうまく変換してやっていくことってすごい大事なんだなって思いましたね。そのエネルギーをしなやかに変えていくというか。そういう経験がありました。
谷本:怒りをエネルギーに変えて、その怒りはいつの間にか消化できるものなんですか? ステージが上がったら、怒りのエネルギーを使わずにもっと違ったエネルギーを使っていくべきなんですか?
白木:ずっとそういう気持ちがありつつも、やたらめったら怒ることとか、怒りを見せることとか、やたら泣くとか、そういうのはみっともないから嫌だなと思っていました。人にもそういうのを見せなかったし、自分のなかで感じないようにしてたんですよ。抑圧してたというか。でも、ふつふつとした情熱はありました。その怒りから出たものもあります。
それから、学生時代にいろんな国をバックパッカーで回って、鉱山で働いている子供たちの姿とか女性たちの姿を見て、ボロボロになっている人たちをなんとかしたいというか。そんな思いとも相まっていました。怒りだけで動いていたわけではなく、情熱が強くなったり、怒りが情熱にさらに拍車をかけていったり。いろんなことがブレンドして成り立っていったという感じです。だから、(怒りを)うまく使いました。
谷本:誰しも、夢や目標、志があると思うんですけれども。そんなに嫌な目にあったり、「絶対ありえない」と、叩かれ続けても大きな野望や志を描ける力というのはどこから湧いてくるんですか?
白木:私の場合は原体験です。21歳の大学生のときに、インドへ貧困問題の調査に行きました。そのときに滞在していた村で、子供たちがぼろぼろになりながら鉱山で働いているのを見て、それに対してなにかを絶対にしなきゃいけない、したい、自分の力を使いたいと思いました。そのことがすごくお腹のなかにありまって、やらざる得ないというか。あれを見たのはきっと偶然ではなく、私の生き方を決めるなにかだったんだなと思って。それがすごい大きいですね。
実際に触れた、一緒に過ごしたわけなので、本当に家族をなんとかしたいという。同じ地球に住んでいる家族として見過ごしてはおけないなという思いがあったので、そこかなと思いますね。
谷本:原体験ということですね。今度は坊垣さん、ここまで踏みにじられたとかこんな挫折があったっていうところはありましたか?
坊垣佳奈氏 (以下、坊垣):挫折しそうになったところで言うと、10年前にサイバーエージェントという会社に入社したんですが。当時はサイバーエージェントという会社はあまり知られておらず、Amebaブログも赤字を垂れ流してた頃なんですよ。広告事業でなんとか生計を立てていて。
社長が、最近再々婚された奥菜恵さんと離婚された頃で、会社の名前はある一部にだけ知られていたんですよ。今がそうだったら大変なことなんですけど、会社の人数も少なかったですし、今よりもベンチャー感が強くてなんでもありだったんです。当時のぶっちゃけ話をすると、毎朝4時まで仕事をして。事業の立ち上げの1年目だったので、わからないなかであれもこれもやらなきゃいけなくて。
4人で会社の立ち上げをしていました。3年目の先輩が社長で、2年目の先輩が上司で、私ともう1人が同期、という環境だったので、みんななにもわかってないなかで新しい事業をとりあえずかたちにしないといけない状況下でした。寝ずに4時まで仕事をして、8時に会社に行くという。それを1年半よくやったなと思います。
金曜日の夜を越して土曜の昼まで働いたりしていて、もう自分がないというか、ぼろぼろでしたし自分がなくなるんじゃないかと思うぐらい体も壊しかけました。ただ、すごく負けず嫌いでした。せっかく生を授かったので、自分の人生でなにができるか。使命みたいなものが一人ひとりにある気がしていて、それを一生懸命探そうとしてた時期だったんです。
自分が納得できるまで一通りやってみて、それを見つけようという思いが強くてなんとか頑張れたと思うんですけど。その経験が今となってはすごくよかったです、やりきったというか。自分が自分を褒めてあげられる瞬間って、人生のなかでそんなにないと思うんです。あのときの自分は今でも尊敬できますし、そういう経験をしたのが1つ大きかったかなと思います。
でも、そうなってくると気持ちがちょっと落ちてくるんですよね。あまりにも自分がなくなる状態までやっていくと、ちょっと落ちていくんですけど。実は、そこからちょっとはい上がるというか、家族に救われました。体を壊しかけていたときに、父に相談したんです。今思うと、母じゃなくて父、異性がよかったと思うんです。
父がすごく客観的に冷静に「お前を27年間見てきて育ててきて、中途半端な気持ちで『辛い』って言わないのは、お父さんはよくわかっている。よくわかっているから、仕事はいつでも辞めたらいい」って言われたんですよ。
そのときに、「辞めていいんだ」「自分のそのままでいいんだな」ってすごい感じさせてもらいました。その経験が逆に開き直りみたいな気持ちにつながって、そこでもう1歩踏ん張ってステップアップになって、そのあとの自分ができてきたという、経験をしています。
谷本:今でこそサイバーエージェントって「キラキラ女子」なんて言われていて、すごく人気の高い企業ですけれども、10年前、奥菜恵さんの名前によって有名になった時代に、あえてチャレンジの道を選んだという性格や思考はどこから生まれたんですか?
坊垣:就職活動はかなり幅広くやっていました。なにかを自分で始めるということも含めて広く考えていたなかで、女性ってライフイベントが与える影響がどうしても大きいじゃないですか。キャリアを積んでいくうえで、結婚して旦那さんが海外赴任とか、子供が生まれてキャリアに影響するって考えたときに、「いかに自分のためだけに使える時間を充実させて、早くステップアップするか?」ということをすごく考えたんです。
ステップアップするのに一番必要なことは、意思決定の回数と、成功や失敗をする回数だなと思っています。下積みの長い業界の会社よりは早くいろんな経験と意思決定をさせてもらえる場所が環境として必要です。なにがやりたいとかも決まっていなかったので、「環境」で選んだという感じなんですけど。
最終的に行き着いたのが当時のサイバーエージェントで、本当にその意思どおり、そのまま事業の立ち上げに携わりました。
谷本:ありがとうございます。では、どうでしょう、堀江さん。
堀江章子氏(以下、堀江):仕事の結果という意味では挫折にはならなかったんですけれども。アクセンチュア全体で、今、女性社員が20パーセント以上いるという状況です。日本はグローバルと比較すると少ないところから始まっています。とくに女性のマネジング・ディレクターを増やす、というのは重要なテーマになっていました。
あるとき「絶対にお仕事をいただけないだろう」というお客様の取引プロジェクトをやらせていただき、幸運にもそのプロジェクトがうまくいったりしました。同じくらいリスクが大きい仕事もしていたのですが、社内では「こういうビジネスの成長に貢献できる女性が出てきたから、プロモーションをさせよう」みたいな話になりました。
通常、あるクラスへの昇進が決まる、決まらないという時期に、同じように昇進の機会ってみんなにあるんですけど、みんなが同じ機会を得ることができるかかどうかわからなくて。でも、仕事は同じような立場でみんなやってるんです。
そうしたとき、ある男性の社員が、私が昇進するって決まったというようなことを聞いてすごく頭にきたんだと思うんですけど、会議をしていたらいきなり「一緒にプロジェクトをやりたくない」と、言われました。
周囲も「なにが始まったんだろう」という感じになって。こっちは突然言われたんだけど、落ち込んでいる場合ではないというのは自分でもわかっていながらも、感情的に言い返すような状況でした。
そうした発言をした人は、あとでお叱りを当然受けました。一方の私はそんなことがあったけれども昇進をさせていただき、その場であったことはリーダーの判断で不問に付すことになったんです。
だけど、不思議に思いました。なにがそんなに気に障ったのかと。それで仕事がうまくいったなんて思っていないけど、「なんなんだろう?」と悶々と悩んでいました。
落ち込んでるところに上司が来て「交通事故に遭ったと思って忘れろ」と言ったんです(笑)。「忘れていいんですか?」みたいな。でも、「もう二度とないと思って忘れろ」と。「忘れますけど、あの人とは私こそ二度と仕事をしません」という捨て台詞をあえて言っちゃったりして。
でも、自分にいいことがあったときに浮かれてなにかをやったり、言ったのかもしれないんですよ、今考えるとね。「うまく仕事が進んで調子に乗っている」と、言わせるなにかが私にあったのかもしれません。そのときのことがあるので、自分が発言したときに同僚や関係の人がどう思うか、ちゃんと考えるようになりました。
そのときはびっくりしましたが、それが「傷になっちゃって、自分が萎縮しちゃう」という状況にならずにすんだのはよかったです。「人生の1ページの中の衝撃シーン」にはなりましたけど(笑)。
自分と相手の感情がぶつかっちゃうと、どうにもなんないときはあります。「このフラストレーションをどうやって越えるのかさっぱりわからん」みたいな。だから、越えなくていいから「忘れていい」と言われたのは本当によかったですね。
谷本:それからキャリアも積まれて、心もさらに強くなった堀江さんは、今同じ状況で怒鳴られたら、どうやってお返ししますか?
堀江:「何があったんですか?」って聞き返す。「どうしたんですか、今日は?」って聞くと思いますよ。たぶん。
谷本:冷静に、泣きわめくわけではなく。
堀江:売り言葉に買い言葉みたいな状況にならないような作戦を、あのあと経験値的に見つけたとは思いますね。感情的な言い合いになると周りはなにも言えないんですよ。泣きわめくわけではなく、黙るわけでもなく、周りが対処しやすい程度に抑えて、議論しなきゃいけなかったなと今だったら思います。
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