CLOSE

テーマ「『空き家』・・・何に使う?」について(全1記事)

全国の空き家を「準公営住宅」に 戦後日本への回帰から見える経済格差

日本には2013年時点でおよそ820万戸の空き家が存在し、その数は現在も右肩上がりで増え続けています。政府の発表によると、国土交通省は全国で増え続ける空き家を公営住宅に準じる住宅として、活用する案を検討。2017年通常国会への関連法案提出を目指しています。NPO法人社会保障経済研究所代表・石川和男氏は、こうした一連の動きから空き家問題の背景と、日本の経済格差について語りました。(TOKYO MXとの共同企画でニュース番組『モーニングCROSS』を書き起こしています)

全国で増え続ける「空き家問題」

堀潤氏(以下、堀):さぁ石川さん。テーマの発表をお願いします。

石川和男氏(以下、石川):はい、いきますよ!

(テーマ「『空き家』・・・何に使う?」について)

脊山麻理子氏(以下、脊山):国土交通省は全国で増え続けている空き家を公営住宅に準じる住宅として活用する案の検討を始めました。

:2017年の通常国会への関連法案提出を目指しているというんです。

生活費負担が大きい子育て世帯などに貸すことを認めて、家賃の補助も検討。自治体の財政が厳しくなるなかで、公営住宅の新設費用を抑えるという効果も見込んでいます。

空き家なんですが、2013年の時点で820万戸。10年前から24.4パーセント増加。一方、公営住宅は全国で216万戸あるが、10年前からは増えていないということなんですね。

都心で暮らしている方は、この空き家問題というのは、なかなかピンとこない方もいるかもしれませんが。各地域に行くと増えてますよね。

石川:数字を用意しました。皆さん、イメージだけでつかんでください。

:「空き家数および空き家率の推移と予測」1973年をスタートに、2023年の将来的な推計予測値が出てますが。右肩上がり。

石川:将来予測を野村総研が発表したんですけれども。ずいぶん高くなっちゃうねという。

空き家って、結局作って、本来は入ってもらいわけじゃないですか。家賃で回収するわけですよね。

:大家さんになってね。

石川:それが空いちゃうわけだから、そこの部分だけは不経済なことになっちゃう。これを今回、国土交通省が自分たちでまた新しく作ると、またお金がかかって。この財政難で大変だからというので、空き家を準公営みたいなかたちでやる。

2017年の通常国会ということは、今2016年なので、「これから1年間検討して来年の今頃には法律みたいな案を作って出しますから、皆さんよろしく!」という。役所というのは、こういうスケジュールで動いていくわけなんですけれども。

今、堀さんがご説明いただきましたけれども、政府は生活保護も含めた社会保障的なものに充てていこうと。

公営住宅はいつできた?

これ、公営住宅というのは、たぶん見ればわかるんですよ。「あっ、あれ公営住宅!」と。何となくそれっぽいスペックというか。

いつ頃日本でできあがったかというと、これは法律なんですけれども、なんと昭和26年なんですね。

:なるほど。

石川:戦後5、6年で。当時の日本の世情というのは、説明するまでもなく、これから追いつけ追い越せを始める直前で。まだ日本は貧乏だったので。

:繊細でね。

石川:家がなくてかわいそうだからというので、政府が税金を集めて、そういう人たちの住宅を供給しましょうということで始まったのが、この平成28年になって、また復活するというこの循環。

つまり、日本は裕福になりましたと言っておきながら、戦争直後の政策が復活しようとしているということに、まず皆さん関心を持ってもらいたい。

:それだけ、経済格差が広がったということが体現されている政策ということですよね。

広がる経済格差

石川:ちなみに、裕福な人は対象になりません。こういうのは、基本的には住民税非課税な世帯、これはだいたい人数で今ざくっと2,000万強いるんです。生活保護は、人数で言うと210万人。世帯数でいうと160万世帯。けっこう多いでしょ。ものすごい人数。

:労働人口の4分の1が、いわゆる年収200万前後ということで、非常に見えない貧困というのが広がっている。

石川:ある意味では、格差というのはもともと固定化しちゃっているような感じなんですね。国が戦争直後の政策をもう1回やるというのは、「あれ?」ってみんな思ってほしい。

あともう1つは、余るということは、作り過ぎ。だってそうでしょ? 作り過ぎちゃうから余っちゃうわけですから。

:人口減少ですからね。

石川:これは、もう1つ言うと、家を作るのは住宅メーカーなので、住宅市場ということでいうと、空き家が増えるのはいいわけがない。そうすると、当然厳しい状況になっていくので。

そうすると、どんどんコスト削減、リストラをして、安全性というか、耐久性というか、そっちのほうが心配になっちゃう。

住宅を作るというのは規制がないんですよ。何戸作らないといけないとかいう。電気、電力は供給計画があって、実は国が統制しているんですけれども。

:なるほど。住宅の建造計画は、全体的な青写真が今まで特になかったと。

石川:「このくらいあったほうがいいな」みたいなのはあるんだけれども、そういうのはない。

:これから必要になってくるということ?

石川:これは必要になるというか、みんなそこで暮らしているわけでしょ。みんなそこで産業をおこしているので、こういうところはどこかで歯止めをかけるようにしていかないと、全部がドボンとなると怖い。

:トータル設計がたぶん必要になってくるんでしょうね。さぁ、皆さんのお住まいはどちらでしょうか。アンケート取ってみましょう、せーの、どん!

「持ち家」の方、978票。多いですね。「賃貸」522票。「公営住宅」90票。「その他」63票ということで。

賃貸よりも持ち家の方が多い。

石川:全国的には6割なんです。

:なるほど。

石川:持ち家6割。

:まぁ、そういうことですよね。

石川:冷えちゃうんだよね……。

:本日のオピニオンCROSSは以上とさせていただきます。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 大企業の意思決定スピードがすごく早くなっている 今日本の経営者が変わってきている3つの要因

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!