2024.10.01
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テーマ「高齢者の地方移住」について(全1記事)
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堀潤氏(以下、堀):さぁ、若新さん。テーマの発表をお願いします。
(テーマ「高齢者の地方移住」について)
脊山麻理子氏(以下、脊山):石破茂・地方創生担当大臣は12日、地方に移住する高齢者の生活拠点となる「生涯活躍のまち」構想を進めるため、地域再生法改正案を、今国会に提出する方針を明らかにしました。
堀:「生涯活躍のまち」とは、ですが。大都市から移住するお年寄りが、健康を維持して、地域住民や若い世代と交流できるよう働きかける試みです。企業や社会福祉法人、大学などが主体になって、自治体と連携して行うということです。
意識調査の結果を見てみましょう。皆さんは、将来どこに住みたいですか? せーの、どん!
「都会」、便利だからでしょうか。いろいろ皆さんご意見あるんでしょう。「田舎」285票。「海外」111票ということで。
実際、現実問題として地域よりも地方都市の中でも中心都市。病院もあれば、交通インフラも整っている。そういうところに。マンション、集合住宅にという動きはあるわけですが。若新さん、この結果も受けていかがですか。
若新雄純氏(以下、若新):今回の高齢者の移住というのは、「生涯活躍」と出てました。内閣官房の資料をそのまま。字が小さいんですけど。ここだけズームしてもらうと。一番上、まとめているんですけど。
目的は、健康云々というのもあるんですけど、一番は「多世代と交流しながら」と書いてますよね。いろいろな人と交流を持って、老後も仕事が終わった後も関わりがあって、役割があって、活躍できるような人生を作るためにという。いわゆる、都会で働いて仕事が終わったから家にいるんじゃなくて。
堀:孤立してしまう。
若新:ところが。僕は信号も自販機もない山奥で生まれて、都会に来て。しかも、ちょうど仕事で毎月行ったり来たりしているので。
堀:福井県。
若新:行き来して感じることとしては、一見地方の田舎の町に行くと、お年寄りの人って充実した、しかも友だちもいて、いい暮らしができていて、健康な生活ができていると思われがちじゃないですか。
堀:地域コミュニティーがあるんだ。
若新:これは条件があって。それは、元々その地域で生まれ育ってお年寄りになった人が。そうなんですよ。
堀:なるほど。
若新:今回、「活躍」という言葉がキーワードになっていますよね。たぶん都会から移住されても、今地方で生活している元々いた人が体験できている活躍の場というのは与えられないと思うんですよ。
一番わかりやすい事例。これが、地方の町でおじいちゃん、おばあちゃんの活躍の場がいっぱいあって。一番はこれなんですよね。わかりやすいのはこれです。孫の送迎が、毎日の活躍の場なんです。
というのは、最近は大家族じゃなくなった場合も、ある程度近くに住んでるケースが多いんです。結婚しておじいちゃん、おばあちゃんと別の家でも、敷地が近かったりして。
地方に行くほど共働きなんで、小さい頃の保育園から塾・学校・習い事、全部。だんだん両親が送迎するのが難しくなってきているし。電車も5分に1回走っているわけじゃないんで。朝とか間に合うか間に合わないか必死なわけですね。
交通網も発達していないから。そこで登場しているのが、自分のおじいちゃん、おばあちゃんが、だいたい迎えにくるんですよ。逆に朝忙しいときも、夜忙しいときも、仕事がないからおじいちゃん、おばあちゃんは、孫なんてめちゃくちゃかわいいわけなんで。これは、是が非でも自分が行きたいという。
堀:まずここですね。
若新:これはすごく大きくて。
堀:孫だからなぁ。
若新:そうなんです。じゃあそれを、都会の人が行ってやればいいじゃないかと言うけど、これは、自分のおじいちゃん、おばあちゃんだからお願いできることであって、なかなか血の繋がりがない人にこの役割ができるかというと……。
堀:お金を払ってるわけじゃない。
若新:しかも、お金が欲しくてやっているわけじゃなくて。これは、楽しみになっているんです。こういう場がたくさんあって。
元々、そういう生まれ育った環境があるからこそ、コミュニティーの中で必要とされるようなものなり、脈々と続くいろいろなものがあって。歳をめされてから食べ物がおいしいからとか、空気がきれいだからと言って移住するとなると。
堀:環境を楽しみに行く場として行っちゃうと。
若新:観光の延長ではいかないと思うんですよ。僕は、むしろそれをやるんだったら、人口の偏りだったり、都会の集中の問題とかがあるんですけど。僕が一番いいと思っているのは、時間をかけて地方都市に住まないとそういう環境ができないわけだから、若い人が行くべきだと思っているんですね。
堀:若いときから行く。そうか。
若新:そこで言われるのは、若い人が行くには、「若い人には仕事が必要だ」と言われるんですけど。僕は、今ちょうど福井県鯖江市で、「ゆるい移住」といって。おかげさまでうまくいっていて。
簡単に言うと、「仕事を紹介しない」という移住プロジェクトなんですよ。仕事なんて用意しないから、とりあえず来てと。
堀:普通は「林業が弱っているから林業分野に3人職員の枠を用意しました、臨時職員です、ぜひ若い方来てください」「家族のために家も用意します」というのが、今まであったんですけど。
若新:僕はむしろ、「半年間だけ町が住宅を貸して」ってことで。十何人が体験に来てくれていて。うまくいって、春以降も何人かが福井に移り住むかもしれない。
どんな人が来ているかというと、仕事を用意せずに来てくれと言って集まったのが、今回でいうと、ざっと言うとこんな感じの人たちが集まっているんですね。東大卒から元プロ野球選手まで。
堀:いろいろ職を持っているんですね。
若新:どういうことかというと、どんな場所に行っても自分の力で生きていけるような人たちが来ていると。彼らが年収アップを目指して福井に来ているかというと、違うんですよ。全員年収ダウンなんですよ。激しく。ところが、めちゃくちゃ楽しいらしいんですね。
堀:なんで?
若新:IT会社の社長だった人もいるんですけど、仕事を減らしてやってきて。それは、今までなかった人との交流とか、それが年収が上がるとか経験がアップするんじゃなくて、今までになかった新しい体験、変化がたくさんあるらしくて。
堀:変化が価値になる。
若新:その人たちは当然地方のコミュニティーに入っていくのは難しいので、すぐに友達とかできないですけど、彼らは若いのがメリットで、環境に合わせて自分たちのことを変化させるのが得意なんですよ。これを、専門用語で「自己変容」と言うんですけど。
環境が変わったときに変化できる自己変容って、年齢とともに難しくなると言われているんですね。だから、年取ってからの転職って、けっこう厳しくて。それは、能力の問題よりも違う環境に馴染むのが難しくなり。
堀:なるほどね。
若新:退職した後にまったく違うコミュニティーに行くのは難しくて。自己変容の問題というのは、若いときほど可能と言われているので。
むしろ、これから地方の魅力はあると思うんですけど、それは若いうちから自分で食べていける力がある人ほど移り住んで、新しい社会システムができればなと思っています。
堀:老後のことを考えるなら、実を言うと今から動いておいたほうがいいよということですよね。
若新:東京のほうがバスもすぐ乗れるし、インフラとしてはすぐパッと行けて。誰の力を借りなくても生活できるというのは、もしかしたらこっちのほうがいいのかもしれない。単純にお年寄りが地方に行けばいいということではないんじゃないかなと思います。
堀:よくわかりました。本日のオピニオンCROSSは以上とさせていただきます。
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