2024.10.10
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テーマ「給与振込が4ヶ月に1回だったら、あなたはやっていける?」について(全1記事)
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堀潤氏(以下、堀):それでは、早速ですが駒崎さん。テーマの発表をお願いします。
駒崎弘樹氏(以下、駒崎):はい、今日はこのテーマです。
(テーマ「給与振込が4ヶ月に1回だったら、あなたはやっていける?」について)
堀:やっていけない......。
脊山麻理子氏(以下、脊山):子供の貧困対策として、ひとり親の家庭に支給される「児童扶養手当」が引き上げられることになりました。2人目の支給額引き上げは35年8ヶ月ぶり、3人目以降は21年半ぶりとなります。
堀:これは、いわゆるひとり親世帯の子供たちを支援する公的枠組みなんですが。1人目のお子さんに対して2人目の子供になると、減額の振れ幅が非常に大きいということで、「上げてね!」というお願いを駒崎さんはじめ、いろいろな関係者で行ってきた結果、引き上げが決まったというところまできました。
さて、児童扶養手当。改めてお伝えすると、1962年に始まった制度なんですね。一定所得を下回る、低所得のひとり親世帯の生活が安定するように支給されます。
支給期間は原則、子供が18歳になった年度末まで。児童扶養手当は、1年に3回(4・8・12月)に4ヶ月分まとめて支給されるというんです。使う親御さんは、計画を立てて使うことになるんですよね。
子供1人の場合は、世帯の所得などに応じて最大月額4万2千円を支給してきました。ただ、2人目以降は支給額が大きく減って5千円だったんです、これまでは。(それで)見直しを求めてきました。
最終的に現在、2人目以降の支給額月5千円を1万円に。3人目以降支給額月3千円を6千円にという方向で厚労省と財務省が財源について最終調整をしているということです。さぁ、駒崎さん。
駒崎:これをご覧の皆さまも、オンライン署名キャンペーンに協力していただいた方々が多いかなと思うので、本当に感謝の念を改めてお伝えしたいと思います。
堀:ちゃんと声を上げれば制度が動くということを実感する瞬間ではありました。
駒崎:そうですね。
そういう意味では、額は倍増したので良かったんですけど、まだ問題はあって。頻度がやばいというところなんですね。
堀:頻度。
駒崎:つまり、振込が毎月じゃなくて、4ヶ月に1回なんですよ。生活保護は1ヶ月に1回。年金は2ヶ月に1回振り込まれるにもかかわらず、児童扶養手当は4ヶ月に1回なんですよ。
堀:季節ごとって感じですね。
駒崎:これが何をもたらすかというと、かなりシビアな状況をもたらします。
例えばなんですけども。これ皆さん、ご記憶にありますでしょうか。銚子市で我が子を殺めてしまったひとり親のお母さんがいらっしゃいました。
県営住宅に入っていたんだけども、家賃が払えないので立ち退きの日に、自分の娘を絞め殺してしまったお母さんの生活実態がここに示されているんですけれども。
見ていただければおわかりの通り、4ヶ月に1回児童扶養手当が支払われていて、振り込まれた月は収入が安定するんだけど、どんどん窮乏していって、振り込まれてまた大丈夫になって、また窮乏していく。
最後のほうはカツカツになるので、ヤミ金から借りて何とかしのごうと。そして、また振り込まれて一安心して、また返すんだけども、利子分がどんどん積み上がっていくので、結局窮乏していってしまって、追い込まれていって、我が娘を殺すしかなくなるという状況になってしまっているんです。
堀:やはりあれですかね、まとまって入って均等に使うというのは、理論上はできても実際の生活になるとなかなか難しいんですよね。
駒崎:そうなんです。よくこういうことを言われる人がいるんです。「毎月ちゃんと積み立てて切り分けておけばいいじゃないか」という話があるんですけど。皆さん、給料が4ヶ月に1回だったら本当にやっていけますか?
僕は自信を持って言うんですけど、やっていけないんですよね。それは、毎月毎月ちゃんと切り分けてっていうのはできないし、できたとしても窮乏状況にある人というのは、それだけのことを理知的に理性的にするということが、なかなか難しいんですよね。
実はそれは、所得の低い人だけがそうなのではなく、実験で所得の高い人に、同じような窮乏状態での意思決定をさせたら、所得の低い人同様にカツカツになるということがわかっています。
堀:相当心の余裕がないと、計画って立てられないですよね。目の前のことをこなすので精一杯のときに、長期ビジョンとか、そこまではなかなか至らない。
駒崎:よくよく考えてみると、4ヶ月に1回にすることによって、こういう窮乏状況になって、生活保護が増えていってとなると、全体的に見た社会的コストは上がっているんですよ。
1ヶ月に1回にするというのも、今はコンピュータで管理しているものなので、それによって4倍になるという話ではなくて。なので、毎月にしていくことによって、窮乏状態を防げるんじゃないかと思っていて。
実は、まとめ払いは良くないというのは、行動経済学の分野でも非常に研究が盛んになっていて。低所得者向けのものというのは、できる限りスパンを短くしろっていうのが鉄則になっているんですね。
堀:なるほど。
駒崎:しかし、日本ではそういうことがまったく理解されていなくて。「いいんじゃないの、手数料も削減できるし、4ヶ月に1回で。何だったら半年に1回でもいいじゃない」ぐらいの感じになっているという。
堀:行政側は、こういう分野にこそ早くITの活用を。今、金融とITを結合させてフィンテックという技術が話題を呼び始めているけれども、こういうところで行政効率も円滑にしながら、きちんと再分配ができる仕組みを作るという工夫が必要ですよね。
駒崎:わざわざ窮乏させているんですよ。人を助けるための制度にしているのに、スパンを長くすることによって、わざわざ窮乏状況に追いやるような制度を作ってしまっているので。ここは絶対直してほしいと思っているんです。
堀:皆さん、公務員の負担もイメージということで、行政側の負担についてパッと思い浮かぶ方もけっこういらっしゃるんですよね。
ステップさん(からのコメント)、「次から次へと請求が来たら計画的には取り崩せないだろうな」。そうですよね。光熱費がある、教育費がある、そしてこれまでの積み重ねてきた借金の支払いがあるなどあったら、「入ってきて良かった、これでまず返して」って。
駒崎:「返さなきゃ」ってなって。
堀:ぜひ皆さん、着目してみてください。ありがとうございました。
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