2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
Stanford Graduate School of Business Advancing Women's Leadership: Blocking Bias at Work(全4記事)
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シェリー・コレル氏:ここで少しギアを変え、人種の文脈において行なわれたよく似た別の実験をお見せします。我々はジェンダーの問題についてクレイマン・ジェンダー研究所で多くの研究をしてきました。
これからお話するのは人種の話ですが、より包括的な職場を作ろうと思ったら、持って帰っていただくメッセージは同じになります。
この研究は2014年に行なわれました。研究者は法的なメモを作成しました。表向きはトーマス・メイヤーというNYUの法学部3年生によって書かれたものです。
このメモの中にいくつかの間違いを埋め込みました。スペルや事実の間違い、分析の間違いなどです。これを法学関係者に送り評価してもらい、フィードバックをもらいました。
先ほどの実験とかなり似ていますが、違うのは半分がトーマス・メイヤーが白人で、半分が黒人だとされていた点です。
結果は、黒人のトーマス・メイヤーには白人の場合と比べて、3倍も訂正とコメントがあったのです。
また間違いを指摘する数も2倍になりました。ここでも、そこまで期待していなかった人物に対して余分な調査(extra scrutiny)が発生しているのです。
この場合は間違いを見つけるようにと言われていたはずです。しかし、白人のトーマス・メイヤーの場合は、寛容なバイアスがかかっています。
これも我々の研究ではよく見られることで、これが女性や有色人種に対する余分な調査(extra scrutiny)です。正統な基準がより厳しく適用されてしまうんです。
これはメモを評価するのに影響を及ぼしました。特に驚くべきことでもなく、白人のトーマス・メイヤーの方が明らかに高い評価を得ました。
定性的な評価にも影響が出ました。白人のトーマス・メイヤーは「全般的に良いライターだ」「ポテンシャルがある」と評価され、黒人のトーマス・メイヤーは「多大な努力が必要」「NYUに通っていたとは考えられない」という評価をされたのです。
このように、同じパフォーマンスに対して、かなり大きな差が出ました。これがリーダーシップに対してどのように影響するかは想像がつくと思います。
最後の例は、私が以前行なった実験です。女性の職場での経験を考える時、関係するのは彼女たちが女性であるということだけではありません。誰もただの女ではないからです。
みなさんは女性であり、人種があり、性的志向があり、子供がいるかもしれないし、障害があるかもしれません。これらすべてのことがまとまって、判断に影響を与えるんです。
私は職場において、母親であることがどのような不利益に繋がるかを調べました。賃金の差を示す資料によれば、母親たちは子供のいない女性に比べて、子供1人あたり5〜7パーセントのペナルティを受けているんです。
これは子供のいない女性と子供のいる女性とを、同様の職種で比べたのです。このようなバイアスのプロセスが、母親に対しても影響を与えるのかどうかを調べました。
実験では、2人の女性と2人の男性を評価しました。1人は子持ちで、1人は子供がいません。2人のペアのうち1人は小学校のPTAメンバーだということが履歴書からわかります。これは、暗にこの人が親であることを示しています。
小学校のPTAメンバーになるには必ずしも親である必要はありませんが、親でないPTAのメンバーなど聞いたことがありませんからね。
これは親のステータスを効果的に伝えてくれるんです。研究を始める前に、ジェンダーや 親としてのステータスがわからないことを確かめるために、すべての要素を仮テストしました。公正な判断を下すためですね。
ですから、履歴書とパフォーマンスの評価に基づいたものだけで、違いはありません。ファイルの1つを親だとわかるようにしたのです。
何が起こったと思いますか? 母親は突如として雇われる確率が明らかに低くなったのです。子供のいない女性を勧める割合は84パーセントでしたが、母親の場合はたったの47パーセントでした。
さらに、この人物を雇おうとした場合の賃金も、明らかに母親の方が少なかったのです。ここにバイアスの根拠を確認することが出来ます。
父親の場合はそのようなバイアスはありませんでした。それどころか、子供のいる男性の方が子供のいない男性より好まれたのです。もし雇われることになった場合の賃金も、子供のいない男性より明らかに高かったのです。
これによって、親であることが父親と母親に異なる影響を与えることがおわかりいただけたと思います。
さらにもう一段階掘り下げて、ここで何が起きているのかを明らかにしてみましょう。
母親は仕事に対する能力が低く、会社への貢献度が低いというステレオタイプを持たれますが、父親は能力も貢献度も高いとみなされるのです。
この結果が出たとき、コミットメントに違いが出ると思っていました。なぜなら、母親は仕事への貢献度が低いというかなり強いステレオタイプが出ていたからです。それをサポートするデータはそんなに多くないことがわかりましたが、このようなステレオタイプがあったのです。
でも能力に関するところはちょっと変ですよね。子供が出来た途端に能力が落ちるなんてことがあるんでしょうか?
そこでロースクールの友人デボラ・ローディに会い、これを伝えました。デボラは産休から戻ったばかりの同僚との面談を終わらせたところでした。
彼女たちは「産休から戻ったら、もう仕事が面白くなくなった」と不満を言っていました。アシスタントレベルの仕事だったり、以前していたような仕事ではなくなったりしたからです。
デボラは面談をしたうちの1人が、「私には赤ちゃんがいるの。ロボトミーじゃないのよ」と言ったそうですが、核心を突いていますね。
ここまで見てきたのは、ステレオタイプが余分な調査(extra scrutiny)を引き起こすということでしたね。女性やアフリカ系アメリカ人、母親に対するステレオタイプです。
女性が能力に対する疑いやステレオタイプの効果を乗り越えられるかどうか、気になりますよね。我々はステレオタイプによって、より能力が低いと考えてしまいます。
このバリアは、女性に自己PRや才能をひけらかすことで乗り越えることができるでしょうか? たとえば「みんなあなたの言葉に耳を傾けますよ」と確信を持たせることで、このバリアを乗り越えることができるでしょうか?
ロリ・レドモンドはこの点について、興味深い研究を行なってきました。一連の実験で、就職の面接をしている人々を評価するものです。みなさんがその実験に参加していたら、面接をしている人を観察して、その人にフィードバックを与えることになっていたんです。
半分は女性を面接、つまり評価し、もう半分は男性を評価しました。評価をされる人の半分は謙虚で、面接中に自分が成し遂げたことを語りはしましたが、それはチームメイトのおかげだとか、ラッキーだったからという感じでした。
もう半分は自己PRをしました。想像がつくと思いますが、私が売上を生んだんです、私がこれをやったんです、と「私」という単語を非常によく使ったのです。
問題は、これが上手くいったのかということですね。女性はよく「自己PRが必要だ」と言います。「もし自分でアピールしなければ、誰もしてくれませんよ」と。
みなさんが聞いたことがあるかはわかりませんが、ある西洋のことわざがあります。西洋の国々では、「最もうるさいアヒルが撃たれる」と言われます。これは必然的なことですね。
これは自己PRとはちょっと意味合いが異なります。少なくともアメリカや多くの西洋諸国では、そうなんです。
これはうまくいくんでしょうか? 実は男性にも女性にも効果があるということがわかりました。自己PRをした男性も女性も、謙虚な人々よりも能力があると判断されたんです。つまり感知される能力を引き上げたのです。これはいい事ですね。
ところが、女性に関しては同時に好感度が下がってしまいました。自己PRをした女性は能力があると見られつつも、好かれはしなかったのです。
何が起きたのでしょうか? 人は「女性は謙虚であるべきで、独占的でアサーティブではあるべきではない」というステレオタイプを持っています。つまりこれはステレオタイプに反したことで起こった反応で、学者は「好感度ペナルティ」と呼んでいます。
男性にはこのようなペナルティは発生しません。自己PRを行なった男性の好感度は、謙虚な男性とそう変わりませんでした。
だから何だとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんね。もし私が就職面接を受けたら、能力があると思われたいです。これは好感度よりも重要ですよね? これはトレードオフの関係なんです。好感度よりは能力を取ります。
ここにいる経営学部卒の同僚マギー・ニールは、「好かれたければ犬を買いなさい。これは仕事よ」と言いました。こういう問題なんです。
男性にとっては、自己PRをする方が雇われやすくなります。面接者は彼を好み、能力があると思います。勝ちですね。
しかし自己PRをする女性は、もはや雇われません。嫌われるから雇われないんです。また謙虚な女性も、能力があるとは思われないので雇われません。これは悪いトレードオフですよね。
この好感度ペナルティは、特にリーダーシップを必要とする立場の女性にとって重要です。なぜならリーダー役は、ある程度自己PRのための行動が必要だからです。
だから女性のリーダーシップを推進しようと思ったら、この好感度ペナルティをなんとかしないといけません。
ステレオタイプが働くもう1つの例をお見せして、その解決法に移っていきます。ステレオタイプが、我々が人に対して下す判断の基準にも影響を与えることを示す研究です。
設定は警察のチーフの採用場面。リーダーのポジションで、部署のトップとなります。男性的な仕事でもありますね。
この実験の研究者は、2人の候補者の履歴書を作成しました。ほとんど同等の質で作りましたが、一方は警察のチーフと関連のある、より高い教育を受けたという点だけが異なりました。もう1人の方は、より経験豊富でした。
ここでは2つの基準に気を配らなければなりません。1人はこちらに強くて、1人はあちらに強いと。これは採用や昇進の判断をする場面ではよく起こることですね。
この実験の最初の段階では、ファイルには名前がありませんでした。男性か女性かもわからず、わかるのはそれまでの仕事でやってきたことだけです。
この実験からわかったのは、学歴がある人の方が圧倒的に好まれるということです。
その選択を正当化するように言われると、採用感は「彼がより高い教育を受けていたからだ」と答えました。ここからわかるのは、人は経験よりも学歴という基準を重視するということです。
次の段階では、ファイルに名前が記載されました。2人の候補者には異なる評価者があてがわれました。今度は学歴のある候補者に男性の名前を、より経験のある候補者に女性の名前を付けました。
ここで予想できるのは、この実験の最初の段階であったように、学歴があるから男性が好まれるということですよね。学歴という基準により重点が置かれると考えられます。
そうです、まさに男性が好まれました。選択の正当化を求められると、彼がより高い教育を受けているからだと答えました。
興味深いのは3つ目の条件です。また異なる評価者を用意しました。先ほどと同じ履歴書を与え、名前を入れ替えました。女性の名前が学歴がある方に書いてあります。
何人か笑っておられますが、どうなるかおわかりなんでしょう。もし学歴が基準となるなら、女性の方がこの仕事に選ばれると予想できます。頭を横に振っているみなさんはそうではないと。
そうでなければ、このスライドショーは理にかなっていないことになりますね。やはりこの場合は男性の方が好まれ、正当化の理由は、「彼が経験豊富だから」ということでした。
つまり、基準が学歴から経験に変化したということです。「この人の方が仕事に適している」という自分の感覚を正当化するために。
ここまで、ずいぶんとがっかりさせられるものを見てきました。ステレオタイプがいかに基準を変化させるか、好感度に影響を与えるか、などです。
ポジティブな内容で終わりにしましょう。どうやってこの効果を乗り越えることができるのでしょうか? 私が提案したいのは、我々の解決法は1つのことを共通で持っているということです。
それは、ショートカットとして使われがちなステレオタイプを壊すことです。これが厄介なんです。仕事に関するすべての情報を処理しようとして、とても忙しい善意的な人々の判断に、ステレオタイプは無意識的に働きかけるんです。
これをどうやって乗り越えられるのでしょうか? 我々はクレイマン・ジェンダー研究所で多くの研究をしてきました。See Bias やBlock Biasと呼んでいるものです。
シリコンバレーの企業の社員が、職場におけるバイアスを見るための手助けをしてきました。なぜならこれらのバイアスは無意識的で暗示的なものなので、目にするのが難しいんです。
そこで彼らがバイアスを目にするために我々には何ができるのでしょうか? また、どんなツールでバイアスをブロックすることができるのでしょうか?
バイアスを見るうえで非常に助けとなるのが、人々にステレオタイプがどう働くかを教えることです。一旦ステレオタイプがどう働くかを理解してもらうと、意思決定により慎重になる傾向があります。これは良いファーストステップなんです。
しかしながら、そううまくはいきません。我々はみんななぜそうなるかは知っているんです。みなさんがこれまでに受けてきたどんな教育やトレーニングも、たとえそれがとても影響力があったとしても、翌週、また次の週になるかもしれません。1月には良くて、2月にはまだ大丈夫でも、3月になると、どこかに行ってしまうものです。
スタンフォードで学んだすべてのことを、どうやって記憶しておくことができるのでしょうか? どんなに賢くても、これらの記憶はどこかにいってしまうのです。
だから、単に教育するだけではダメなんです。働き方を変える必要があります。そろそろまとめをしてローリーに交代したいと思いますが、その前に、バイアスを乗り越えるために、組織は何ができるかということを少しお話させてください。
ローリーは我々個人が何をできるかを話してくれます。今日はそのような予定です。
では組織に何ができるかというと、我々が取り組むことには、2つの大きなポイントがあります。1つは、リーダーシップに対するステレオタイプは変えることができる、もっと一般的に言うと、成功がどんなものかということに関するステレオタイプは、組織の中で変えることができるんです。
リーダーシップのケースでは、たとえリーダーが多様な特徴の層を体現していると知っていたとしても、我々のリーダーに対するステレオタイプは非常に狭いんです。
リーダーとはスティーブ・ジョブズなんです。生まれつきの天才で、変化を促し、たとえ他人を踏み台にしても気にしない。こんなステレオタイプをリーダーに持っているせいで、女性はリーダーには向かないとみなされてしまうんです。
そして、女性のパフォーマンスをリーダー的ではないと判断するんです。Association for Women in Scienceの興味深い例があります。これは我が国の22のプロの科学団体をつなぐ女性グループです。
たとえばAmerican Chemical Societyなどですね。彼女たちが気づいたのは、キャリア・アチーブメント・アワードで表彰される女性は極めて限られているということです。
この賞はキャリアの頂点に達したことを示します。たとえ女性の供給ラインがいっぱいになっていたとしても、表彰される女性はほとんどいなかったんです。
そこで彼女たちは、使う言葉を変え、指名制にしました。ただその人を天才だと形容するのではなく、先駆的な事例となりましたが、キャリアにおいて類まれなる成果を出した人を指名するようにしました。
これはキャリア・アチーブメント・アワードですから、理にかなっていますよね? さらに言葉を変えたことで、より多くの女性が応募するようになり、より高い確率で女性が受賞し始めました。
つまりリーダーシップや成功に関するステレオタイプを広げることは有効な手段になり得るんです。
2つ目に、採用や昇進を行なうときにステレオタイプの効果をブロックするためには、評価プロセスを変えなければいけません。いくつか簡単な例をお見せします。
1つは、評価を行なう前に明確な基準を作る必要があるということです。先ほどお話した警察のチーフの例では、最終的な条件が1つありました。この条件の場合は、新しい書き手の組み合わせがそれに当たります。
候補者を見せる前に、本当に問題となることを書き出しておくんです。想像してみてください。きっと「学歴」と書くでしょう。そこでより高度な教育を受けた女性候補者を見たら、その人を採用するでしょう。
より明確な基準があれば、より女性や有色人種を雇い、昇進させるようになるということを示す、20年分の研究があります。基準があれば、ステレオタイプをもたらすショートカットはいらないんです。
2つ目の例は、その基準はすべての人に等しく適用されるということを確かめる必要があるということです。心理学の研究を振り返ってみましょう。
教育手腕の根拠を見る必要がありましたね。もし会議でそんなことをいう人がいたら、それを行なう人が必要です。この人の事を基準モニター(criteria monitor)と呼びます。
この人は、「もし教育手腕の評価を考慮するとしたら、少し戻ってすべての候補者にそれを適用しないといけないんじゃない?」と言う必要があります。これはとても効果的です。
3つ目の例は、信用性と透明性を高める必要があるということです。彼らが雇ったり昇進させたりした人を正当化する必要があるとき、より慎重に判断を下すようになる傾向があります。
自分が雇った人のことを説明するときに「んー、ただの勘です」とは言えませんからね。基準は何か、候補者はそのマップのどこに位置するかといったことをしっかりと考えなければいけません。
透明性に関しては、番号を振り、女性やその他の多様なグループを雇うという点においてどんな判断をしているか記録を残すんです。我々はこれをスタンフォードで行ないました。
毎春に副学寮長の1人が教育評議会に来て、「gains and losses」と呼ばれるレポートを提出します。ここでは基本的にどれだけの女性や有色人種を受け入れ、どれだけ拒んでいるのかを見ています。
目的は透明性を担保し、データを集めて、学生全体が見えるようにすることです。この目的にフォーカスし、そこに向かってマネジメントします。
最後に、実力主義を疑うことについて。我々の職場では、特にシリコンバレーの企業は実力主義だと考えられています。量的で、データを重視し、自分たちを実力主義だと考えています。
しかし最近の研究で、自分たちが実力主義者だと思う組織は、そうでない組織よりも、バイアスに陥りやすいということがわかりました。だからもし実力主義がゴールだとしても、現実的に見たらゴールを弱体化させることになってしまうんです。
これは理にかなっていますよね? すでに実力主義だと思っていたら、その組織にはバイアスはなく、問題もないと思ってしまいます。問題を解決しようという意識には到達できないでしょう。
だから実力主義に疑問を持ち、問いかけ続けるんです。そして採用や昇進において、自分たちが公平かどうか根拠を求め続けることが非常に重要なんですね。
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