2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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佐々木紀彦氏(以下、佐々木):ただ今ご紹介にあずかりました、NewsPicksの佐々木紀彦と申します。私からは「2016年の5つのメディアトレンド」と、「2016年の5つのNewsPicksの取り組み」について、お話しさせていただければと思います。
まず、「2016年の5つのメディアトレンド」についてお話しする前に、ちょうど今年の1月に、「今年のメディア業界はこうなる!」ということで、5つ予測いたしました。その予測がどうだったかということを、自己採点していきたいと思います。
まず1つ目。「PV至上主義が終わり、新王者をめぐる戦いが過熱する」という例えをしました。PV至上主義が終わるということはかなり強調していたんですが、最近メディア業界のジャーナリズム側の方に聞いても、マーケティング側の方に聞いても、「PVは売ってもしょうがない」とまでは言いませんけども、「あんまり有効じゃないよね」という声をかなり聞くようになってきまして、このトレンドはかなり浸透したんじゃないかなと思っています。
2つ目が「『ファストコンテンツ』から『クオリティコンテンツ』へ」ということです。ここでいうファストコンテンツというのは、どちらかというと、気軽なコンテンツといいますか。おもしろいというよりも、安易に作っているというか。コピペしてしまったり、バイラル的に軽いコンテンツが出回ることが多かったと思うんですけれども。
そういった流れも1周して、クオリティの高いコンテンツが、ブランディング的にも、読者の有料課金という意味でも、あらゆる意味でいいんじゃないかということで、コンテンツに投資しようという流れが生まれてきている感じがしています。
そして、3つ目。「ジャーナリズムをめぐる本質論が盛り上がる」というところ。これが2番目の議論とも絡むんですが、今、ちょっと話題になっているのが、『週刊ダイヤモンド』のステマ報道の記事だと思うんですけど、あれをお読みになった方はどれくらいいらっしゃいますでしょうか? (会場挙手を見ながら)3分の1くらいですかね。
ダイヤモンド、この号はけっこう話題になったんですよね。そういうこともありまして、結局ジャーナリズムとビジネスをどういうふうに線引きするかとか、ファイヤーウォールといいますけど、そこの議論がけっこう過熱してきたと。
そして、ネット業界における広告とジャーナリズムのバランスといいますか、ルールというのが今まであんまりなかったわけですけど、そちら(会場)にいらっしゃる長澤(秀行、JIAA事務局長)さんが音頭をとって、そこをしっかり引いていこうと。
それによって、ネットメディア業界、ひいてはメディア業界全体の信頼が上がるということがかなり認識されてきました。この議論が高まってきているのは、非常にいい状況じゃないかなと思っております。
そして4つ目。「BuzzFeedの日本上陸とネイティブ広告の進化」ということ。これは実際、BuzzFeedが今年の冬にYahoo! Japanとのタッグでスタートすることが決まりました。
そして、その議論とも絡むんですが、5つ目。「人材の『移動』と『異動』が加速する」というところ。BuzzFeed Japanの編集長に就任したのが、朝日新聞の古田大輔記者です。
それ以外にも、ちょっと内輪ネタっぽくなってしまうんですけど、私の周りでも、メディア業界で本当にすごいなと思っていた人たちが、ネット業界とか他の業界に転職するという例が、今年はかなり増えてきたという印象を持っています。
例えば、『暮らしの手帖』の松浦弥太郎さんがクックパッドに移籍されたり、元『LEON』の総編集長の西園寺薫さんが、新しいキュレーションジャパンという会社を立ち上げたり。あと、日テレの敏腕プロデューサーだった三枝孝臣さんが、森川(亮)さんが率いるC CHANNELに入ったり。
マーケティングサイドでも、花王でデジタルマーケティングを切り開いた本間(充)さんが、アビームコンサルティングに移られたり。あとは、無印良品でアプリを作られた奥谷(孝司)さんが、オイシックスに移ったりであるとか。いろんな流れが加速してきたという印象があります。
ですので、勝手に自己採点しますと、けっこう当たってるんじゃないかなと思っておりまして……。誰もほめてくれないので、自分でほめようと思います。
では、「2016年どうなるか」ということをお話しさせていただきます。
まず1つ目、「モバイルブランディング元年」ということで、今日のテーマとどんぴしゃなんですけれども。やはり、まだスマホというのは、獲得型広告には使えたりするけれども、ブランディングまでできるんだろうかという意識が、特に今年の前半までは強かったかと思います。
ただ、今年の後半に入ってきて、ブランディングでもモバイルを使いたい、使わなきゃリーチできないというところで、かなりニーズが高まってきたという印象をもっています。
今日、Instagramの小関(悠)さんにご登壇いただきますけれども、Instagramが1つの大きい例なんじゃないかなと思います。Instagramのように、動画であったり画像であったり、カルーセルアドであったり、そういった形でブランディングにも使えるようなモバイル広告が非常に増えてきていると。
この流れが来年さらに加速して、モバイルは獲得だけでなくブランディングにも使えるということが浸透していくんじゃないかと思います。そのあたりは、後ほどのセッションで私がモデレーターを務めますけれども、より詳しくプロの方々に伺っていきたいと思います。
2つ目のトレンドが、「モバイルネイティブコンテンツ 百花繚乱」ということです。何が言いたいかといいますと、モバイル最適化したコンテンツの作り手や作り方、見せ方のトライアンドエラーがより加速するということです。
我々もモバイルネイティブメディアをやっているわけですけど、モバイルでどう見せるか、どうコンテンツ作るかというところは、まだ十分に開発されていません。
ちょうど後ほどプレゼンする、弊社のインフォグラフィック・エディターの櫻田(潤氏)が、その問題意識を話してくれますけれども、モバイルでどう見せたらいいコンテンツになるかというのは、まだ相当工夫の余地があって、軽く言うと、そこにイノベーションの余地が大いにあるんではないかなと思っております。
特にすごいと思うのは、「LINE NEWS MAGAZINE」とか。私が見るには、スマホに適応したレイアウト作りやタイトル付けなど、LINEがそういったものが一番進んでいるメディアじゃないかなと感じています。
ですので、我々もLINEなどに学びながら、モバイルでどう見せたらいいのか、どのくらいの長さがいいのかとか、そういった細部も含めて、方法論をどんどん試していきたいと思います。きっと、それが広告のほうにも活きると思っています。
次が、「コミュニティのクローズ化」というところです。この問題意識の根底には、「今のWebメディアはオープンすぎるんじゃないかな?」というのがあります。逆説的なんですが、コミュニティを作るためには、ある程度閉ざされていないといけないという問題意識があります。
例えば、同じ共通目的を持っていたり、同じ専門を持っていたり、そういう人たちが集まらない限り、いつまでもオープンで、無料で誰でも来れるという中では、コミュニティができない。そうであるがゆえに、メディアというのはコミュニティを作るには最適な手段だと思うんですが、Webの中では未だにメディアに紐付いたコミュニティが、あんまり出てきていないと。
そういう中で、今まで無料一辺倒でやっていたのが、より自分たちのメディアに紐付いたコミュニティを作るためにちょっと階層化したり、クローズ化する流れが強まっていくんじゃないかなと思っています。
その意味で私が注目している動きが、イギリスで「Guardian(ガーディアン)」というメディアがありますけれども、このメディア、最近まではフルオープンで全部記事を無料で出していました。けれども最近、「メンバーシップ制度」というのを始めまして、具体的には、3つのメンバーに分けて、会員を階層化という言い方はアレかもしれないですけど、カテゴライズ化しています。
具体的には、5ポンド払うサポーター会員ですと、コンテンツが全部読めて、オンラインのセミナーを見られるというやり方です。
そして、2番目のサポーター会員に続く会員としては、月15ポンド払うパートナー会員。今度はオンラインに加えてリアルなイベントとか、ガーディアンのジャーナリストであったり、ガーディアンに関する知識人が行う学校、クラス、例えばインフォグラフィック入門やマーケティング入門など、そういった学校に参加できる権利が、15ポンド払えば生まれます。
そして、最後に一番高い60ポンド。日本円でも1万円くらいですね。月額1万円くらい払う、パトロンコースというのがあるんですけど、それに入ると、コンテンツが読める上に、少人数での会合に呼んでもらえるんですね。
そういったところで、自分がこのメディアについてどう思うかとか、そのメディアをよりパトロンとして支える役目を担うことができます。そういった話で、単なる無料会員、有料会員という話ではなくして、会員がより複層化していく流れが世界中で生まれるんじゃないかなと思っています。
もう1つの注目の動きが、これも今日、LinkedIn(リンクトイン)の堀(母日花)さんにご登壇いただきますけども、「LinkedIn」が非常にうまくできているなと思っております。
LinkedInには、プロフェッショナルグループというものがあります。LinkedInの中で、例えばジャーナリストであれば、ジャーナリストばかりが集まるコミュニティやマーケターばかりが集まるコミュニティなど、そういったものがあります。
そこで専門の深い議論が、実名で行われているんですね。ですので、こういった専門に分かれたりして、みんながより濃いコミュニケーションをとる場が、よりWeb上に生まれてくるんじゃないかなと思います。
次、トレンド4番目。「メディアのオムニ化」ということで、なんかトレンドに乗っかっているだけという感じもするんですけど。簡単に言うと、マルチメディア化とそんなには変わらないんですが。メディアがより、動画とかテレビやラジオ、紙などいろんなものを融合した形がより増えていくんではないかと。
そして、これまではどちらかというと、テレビが動画に出ていったり、紙メディアがWebメディアに出ていったり、そういった流れが多かったと思うんですけど、今後は、例えばWebネイティブなメディアが紙をやったり、イベントをやったり、もしくはテレビをやったり、逆の流れの動きも大いに生まれてくるんではないかなと思ってます。
そして、オムニというからには、そこの全体のリアルとネットをうまく、データも含めて、ブランドの見せ方を全部統一して、どこでタッチしても、どのタッチポイントでそのブランドに出会っても、同じような認識を与えられる、同じようなイメージを与えられるような戦略が大事になるんではないかと思います。
その意味で私が大好きなメディアが、「Monocle(モノクル)」という、タイラー・ブリュレというカリスマ編集長がやっているメディアです。ここは雑誌やWebサイトを基幹にしながら、ニュースペーパーをやっているんです。このニュースペーパー、デザインがすごくいいんですよ。ニュースペーパーをやったり、トラベルガイドをやったり。このトラベルガイド、すごく売れています。本でトラベルガイドをやったり、プジョーと一緒に組んでやっているラジオもやってますし、コムデギャルソンと組んでマグカップを売ったりもしています。
更に、行かれたことがある方も多いかと思いますが、銀座に「モノクルカフェ」というのを開いています。そういった形で、あらゆるタッチポイントでブランドを作っていくというような流れが、Monocleのようなメディアであったり、他のより大規模なメディアでも進んでいくんではないかなと思ってます。
最後、「有料課金2.0」と書いたんですけど、これ2.0というからには、「1.0ってなんぞや」ということをまずご説明しなきゃいけないと思います。有料課金の最初の1.0というのは、いわゆる「メーター制」というものですね。これは今、『フィナンシャルタイムズ』や『日経新聞』、『ニューヨークタイムズ』とかがこれで成功しています。
具体的には、無料で10本くらい記事が読めるけれども、11本目を読みたい人には有料で課金してもらうというモデルです。いわゆるフリーミアムの典型モデルでした。けれども、そのフリーミアムモデルで一番成功していた『フィナンシャルタイムズ』が、半年前にメーター制を捨てました。そして今、「トライアル制」というのをやっています。
具体的にはどういうことかと申しますと、(スライドの)これが申し込み画面なんですが。これはデジタルサブスクリプション・トライアルということで、1ポンド、約180円払えば1ヵ月間はFT(フィナンシャルタイムズ)の記事が読み放題になるわけです。そしてこれは、プリントでもオッケーでして、1ポンド払えば1ヵ月間購読できるということで。とにかく、最初は有料課金の敷居を下げて、いっぱいFTのコンテンツを読んでもらうと。
そして、いっぱい読めば、いい意味でFTの記事中毒といいますか、FTの記事って本当にいいんだなとわかりますよね。そしたら、会員を続けようということで。2ヵ月目からは値段がぐっとアップするわけですけども。こういった形で、最初に敷居を下げることで、有料課金の会員を増やしていくと。こういった試みをやっているそうです。
FTというのは業界のスタンダードを作るのがうまいので、それがグループである日経に広がったり、いろんな会社に真似されていく可能性もあるんじゃないかなと思います。
ですので、こういったFTの取り組みに限らず、有料課金を増やすために、どうしたらいいだろうかと。どういうシステムがいいだろうかとか。どういうふうにリアルとネットとコミュニティを繋げていけばいいだろうかとか。有料課金に関するアイデアを試すトライアンドエラーの動きが非常に強まるんじゃないかと思います。
その意味でも、やっぱりPV至上主義といいますか、無料で全部見せるモデルはかなり陳腐化していくんではないかなというのが、私の予測です。
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