2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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坂井崇俊氏(以下、坂井):さっそく、今日どんなことをやるかについてお話しますが、今日、3つやろうかなと思っています。1番目は表現規制業界の2015年。表現規制業界という業界があるかどうかはわからないんですけど(笑)。この界隈で、どんなことが話題になったのかというところをお話します。
その後、山田太郎の2015ということで、今回韓国行ったりとか、MANGA議連でいろいろやったりとか、そんなようなことをいろいろやってますので、そこらへんの活動のご報告をさせていただきます。
最後は2016年を占うということで、来年に向けて、どんなことが話題になりそうなのか、我々どんなことを頑張っていかなきゃいけないのか。というようなところのお話をさせていただければと思います。さっそく山田議員、おねがいします。
山田太郎氏(以下、山田):お越しいただきありがとうございます。いやー、皆さん暇なのか(国際展示場)駅で待つのが嫌なのか、混雑で1時間ぐらい待たされるくらいならここで温まっていったほうがいいと(笑)。
いろいろ皆さんの事情もあるんでしょうけど、いずれにしてもお越しいただきありがとうございます。メディアフォーラム自体は先月立ち上げまして、毎月少しずつ、表現の自由とかこのあたりについて情報を伝えたりとか、質疑応答に応答していこうということで、始めました。
毎月1日くらいにやるという感じでまわしてるんですけど、まさか元旦にやるというのもなんなんで。でも、12月31日の夕方のこの時期ですよ。どうかなー? と思ったんですけど、まぁ、コミケもあるし、10人くらい集まればいいやーと思ったら結構満席という状態になりまして。
後ろにも席を並べていただいたということで、びっくりしているんですけど。ということで、今日進めていきたいと思います。いろいろアジェンダとかあるんですけど、できれば閉鎖された空間といっても、ネット配信されているんで、ちょっとどうしようかなと思ってるんですけど、なかなか答えにくいこととか。そのあたり。
最後は時間を作って質疑応答を。今日は一方的には街頭演説して僕も喋り疲れましたんで。あれ3時間ですよ? ねえ(笑)。喋ることもなくなるって! というふうに思ってますけど。できれば質疑応答とか、受け答えをしながら、外じゃちょっと聞けない話というようなところが、飛び出てくればなぁ、というふうに思ってます。
ということでさっそくスタートしたいんですが、どうするんですか?(坂井氏のほうを向く)
坂井:どうしましょう(笑)。
山田:それでは昨日、坂井さんが夜なべをして即興で作って、皆さんにお配りした冊子と、今日は「山田太郎の物語」という、黄色い冊子ですね。
今日、コミケのほうでも配ってましたが、これ結構貴重な写真でありました。配りきっちゃったもんですから、世の中にもう100部もないという状況下でみなさんにお配りしましたが、これ実は夏のコミケ向けに作ってますので。
夏のコミケから冬の間、とくにTPPの非親告罪化、二次創作が関係なくなったということについて、ちょっと入っていないんですが、ただ、それまでの内容を詳しく作ってあります。写真もふんだんに入っているので、これを合わせてやっていければなぁと思っています。
で、2015年どんな年だったかということを総括していきたいと思うんですけど、説明しても演説と同じになっちゃうんで、ポイントポイントをやっていきたいと思うんですが。そもそも、(TPPによる)著作権の非親告罪化でコミケがなくなっちゃうかもしれないというふうには、私も当初は思っていなかったです。
「いくらなんでもそれは大げさだろう」と思ってたんですよね。このコミックマーケットは今回(2015年12月)で89回目ですよ。多分皆さんも本音を言えば、「これがなくなっちゃうとか、できなくなるというのはあり得ない」と思うと思うんですが。
ただ深刻だったのは、著作権トロールっていう問題があったんですね。これは何かと言いますと、刺し合いですよ。サークル同士が刺し合う。韓国では日本のTPPの前哨戦として、米韓FTAということで、アメリカと韓国の間で自由貿易協定が結ばれて、その知財の中で実際に刺し合う。韓国で著作権トロールっていう問題が起こっていた。
これはどういうことかと言うと、例えばサークルがあって、「あれは他の何かを真似てるらしい」と警察に告発するんですね。告発しておいて、プロ弁護士に頼んで、民事でも裁判を起こす。民事でお金が取れれば、示談で済まされそうになったら、刑事事件も告発を取り下げる。
現実的に隣の国ではそういうことが起こっていました。「これはやばいよね」ということで、赤松(健)さんなんかとも、この話は「かなりやばい」と。かつ「法定賠償金制度」というのがありまして。著作権というのは普通の賠償よりも高く賠償金が出てきます。
通常賠償金というのは、損をしたのが例えば100万円だったら100万円以内って決まるんですけど、著作権はいくら損したか関係ないんですね。これぐらい利益があっただろうということに対して、今後もこれだけ犯していれば利益があるだろうということも含めて何十倍も高く出るということがありました。
山田:私、お恥ずかしながら、上場企業の社長やっている時に、商標の問題で別の会社から訴えられることがありました。会社の名前が似ている所で、商標というのは複雑で20個くらい取っておかなきゃだめなんですが、1個取れていないでいたんですね。
そこをつけ込まれまして。実際に何百万何千万単位のお金で訴訟になって、知財高裁で負けたという経緯がありました。いかに著作権とか知財がこの国でも厳しいかということを知っていましたので、これは大変なことになるなと。現実的な韓国の話を調べたりとか、漫画家の赤松先生なんかとも話し合っていて。
多分サークルの刺し合いが、韓国のように日本でも起こるだろう。ということになれば、現実的に二次創作は相当厳しい状況になる。ということで、3月くらいに、この問題点を潰しておこうということで政府と交渉をしてきました。
特に予算委員会なんかで宮沢経産大臣に対して、初めてそうした質問もしたんですね。そうしたら政府側もこの問題が厳しい状態になるだろう。ということで、影響は無しとは言えないという答弁になってきます。
今年の3月、著作権の非親告罪化がそのまま認められれば、コミケが今後開けなくなるかもしれないという事実は当時あったんですね。何で開けなくなるかというと、同人ていうのはオリジナルの元があるわけです。
少しそこを真似ながら作っているわけでして、そういうものは全部訴えられれば、引っかかってくるということになるかなということで。今でこそ、それは除外するということになったんですけども、実際は「問題だ」ということになりました。
坂井:著作権は、ほぼほぼ皆さん犯しているというか破っているというか、この資料(提示資料)にもネットから拾ってきた絵とか入れちゃってるんで、そういう意味では厳密に言うと、僕も著作権法を犯していて。
山田:大変じゃない、坂井さん。
坂井:(笑)。皆さんも会社で資料をコピーして、記事をコピーして皆に配るということをやっているので、非親告罪化されちゃうとやっぱり影響が大きいというか。誰でも犯罪者になっているということを誰もが訴えられるということになると怖いなと思いますね。
山田:でね、今回の解決策はいびつなんですよ。なんでいびつかっていうと、今回の知財の問題ってビジネス界のほうが大問題なんですよ。会社で新聞とかコピーして使っているでしょう。あれ全部違反ですから。
私はコンサルティング会社にいましたけど、いろんな所の新聞とかネットで持ってきて配っていましたけど、これは家庭内使用じゃなく商業用で使っている資料なので、明らかに違反です。
でも、おもしろいでしょ。結局、今回は総理が二次創作に萎縮を与えないという(笑)。ここは、なぜ、二次創作というこんな狭い世界だけが国会で議論されたんだろう? っていうくらいめちゃくちゃやったっていうのがありますね。だって、今回の知財の問題は、ビジネス界でも出版界でもその他医療界でも皆やばいんですよ。
それにも関わらず、国会で「二次創作に影響を与えないように」と。二次創作の前提はコミケですから。それだけがすごくフィーチャリングされたっていう、私としては、「してやった」っていう感触感覚があるんですけど。
いずれにしても当時そういう緊張感があったんです。そこで、どうしようかなと思っていまして。これはTPPの交渉のフロントの担当が一番先鋭というか。実は渋谷さん(渋谷和久内閣審議官)ていう人が審議官でやっていて、これも偶然なんですけど、渋谷さんて僕の高校の先輩だったんですね。ネットがあるんで、どこまで言っていいのかわからないのですが。そういう関係もあって、けっこういろいろリークをしてもらっていました。
農林水産委員会の中でTPPも扱っていたんですが、僕が表現の自由について一生懸命やっているっていうのを彼もよく知っていたんで、その委員会でリークをしてもらっている中に、表現の自由についても事前に打ち合わせをしていたという事実もありました。
なぜか農水委員会で表現の自由をやっていた。そうじゃないと収まらないだろうって話になってきちゃって。極めてイレギュラーな考えられない人間関係も含めて、審議官のほうにも訴えてた。
それまでは、知財でコミケなんてものが存在していて二次創作なんてものは、政府関係の人は全く知らないんですよ。誰も知らない。「コミケなんてなんだ、それは」って担当者が言ってたくらいですから。経産大臣も知らなかったくらいです。そういう状態だったんですけど。
「クールジャパンってやっているのに、漫画アニメがこんなに規制されたら若者大変なことになる。暴動になるぞ」というくらいのことも言って。けっこうやりとりをしまして。認知を広めていくというのが、3月くらいに一生懸命にやっていたことです。
ということで、6月くらいからは、政府も発言の内容が変わっていくのがわかります。甘利(明)さんが決算委員会で私が質問したら、「一律に非親告罪はよろしくない」と。
1つ良かったのは、下村(博文)文科大臣というのもおもしろい人で、自民党が野党だった時代に別のACTA法みたいなのを議論していた時に、「著作権の非親告罪化はよろしくないんではないか」と自分が野党として質問していたんです。当時の民主党政権に。
その人が文科大臣をやってましたんで。「あんた、いくら何でも文科大臣になったからって取り締まる側じゃないだろうね?」って。「はい、取り締まる側です」っていうような答弁だったんです。そういうことを、全部言質とりながらやっていったっていうことです。
山田:8月に話題になった、例の、私が質問をしていないのに、「二次創作の萎縮の懸念も踏まえ……」と、安倍総理が私の顔をまじまじと見て、答弁をし始めるという。私は聞いてないし、質問してなかったんです。
質疑ってどうやるかと言うと、事前に「こういう質問しますよ」ってことをいくつか与えておきます。いじわるな共産党は内容を一切説明しなくて。私は別にいじわるしてもしょうがないし、野党のような反対反対をするのではなくて、問題を解決したい。
どちらかというと、大臣にはしっかりと答弁をしてもらいたい。大臣答弁って重たいんで、法律と同じだけの力を持ちます。しゃべらせるために、できうる限り、事前に内容を与えておきます。虐める時は突然質問するんですけど。
たまたま時間がなかったのと、この話はもう1回、その後に予算委員会とか控えていたので、その時に時間を掛けて質問をすればいいやと思って二次創作関係を外したんですね。
そうしたら、勝手に総理のほうが答えてくれまして。私の顔を見たらこれを言うに違いないと。どうも後で、総理自身も聞かれてないのに答えちゃったとわかって、つかつかと寄ってきて、「山田さんの顔を見たら、二次創作とか表現の自由を聞くと思ったんで、勝手に答えちゃったよ」って。そこをちょうどテレビが狙って見てたっていう。だから、「山田さんと安倍総理は何をコソコソと話してたんだ」「何の取引してたんだ」と後で言われましたけど。
坂井:安部さんはあまり間違えないですよね。
山田:間違えない。
坂井:ちゃんと答弁を聞いて質問に答えるという。
山田:わりと。中谷さんとか酷いもんでしたからね。本当にそう。麻生さんは答えすぎる。余計なことを答えるのはおもしろい大臣です。
坂井:官僚が紙作っているのを見てないっていう(笑)。
山田:見てない。
山田:そういう感じでここから空気は変わってきて。審議官の渋谷さんにも聞いたんですけど、この頃、知財のその部分については、注釈というふうに決まっていたんですね。二次創作、いわゆる精密にいうと、「市場で影響を与える」とか「商業的規模」以外は、二次創作っぽいもの以外は、著作権の非親告罪から外すという注釈が決まっていたんだと思います。
あとは、私はお山を固めるように、いろんな大臣等に質問したりして、コミケが特に二次創作がこの著作権問題から外れるようにと。前回の夏のコミケの時に、皆ワーワーワーワー、コミケの準備委員会も騒ぎ出して、あの時私は、「大丈夫だ」と。「政府の狙いはエロだから」と。
表現の問題のことで知っておいてもらいたいのは、政府は今回、真似るということに関しては大目に見ています。政府が狙いたいのは、エロです。エロはどうしても嫌なんですね。そうだったら、大体ターゲットはわかっていたので、私も一応裏を聞いていましたから、「大丈夫ですよ」と。
そうしたら、「山田さん、そんなの危ないですよ」ってさんざん言われたんですけど、実は知っていました。前回のコミケの時はああいう形で飛び入り参加して、「そこについては大丈夫だ」と。赤松さんもお互いやっていたので。
逆に言うと、「やばいやばい」と言ったほうが萎縮しちゃいますから。もうある程度戦いの結果がわかっているのであれば、萎縮しないようにというほうが重要だったんで。あんまり「問題だ、問題だ」って言っていると本当に問題になってしまいますから。
ただむしろ、法文上どう書いてくるのかっていうのが問題だったんで。そこで良かったのは、偶然ですが、MANGA議連に入っていまして、そこの幹事長の馳(浩)さんがまさか文科大臣になるとは思ってもいなかった。
ただこれは決まっていたようです。オリンピック関係ですね。オリンピックは旧森(喜朗)総理が仕切っていまして、ご存じの通り、馳さんも遠藤(利明)オリンピック大臣も旧森派ですから。そういう意味では自然の人事だったのかもしれませんが。
馳さんに関しては……。今のMANGA議連の代表である古屋(圭司)さんね、これもおもしろいキャラの人でありまして。前の安倍第2次内閣の時は、国家公安委員会委員長で、警察のトップだったんですが。「100キロで走れる道路、そんなもの守ってられるか」って言って記者会見やって大騒ぎになったっていう。なんでかって言うと、彼は走り屋なんですね。
一緒に官邸に行ったことがあるんですけど、彼の車はBMWで、赤のカラーのすごいスポーツカーで。いつもは自分が運転しているらしいんですけど、さすがに自分がそんなスポーツカーで官邸に乗り付けちゃまずいっていうので後ろの席に座ってましたけど。「俺、走り屋なんだよ」って言ってました。こういう、ちょっとはぐれものの変わった人たちがMANGA議連の役員をやっていたっていうことも良かったのかなって。
山田:それから古屋さんと馳さんに関しては、私も良かったのは、『「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」展』があったんですよ。あの時に、『あの花(あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。)』の前に止まって、20分間徹底的に「同人がいかに大事か」と。
「同人が結局は有名な作品になっていくっていうことで、ところで、コミケだとか同人だとか二次創作が潰れると全部この展示会なくなりますよ」と、「そうなのか」ということを随分教育をして回っていた頃でありまして。そんな中で、ほとんどこっちのペースにはまっている馳さんが大臣になって。
それで異例なことなんですけど、例のコミケの準備会に市川(孝一)さんや安田かほるさん、里見(直紀)さんにも来てもらいまして、そこでも発言をする機会を作りました。
本当はMANGA議連は、漫画を守るために作ったのではないんですね。どちらかというと、ナショナルアーカイブセンター。もともと麻生さんが「アニメの殿堂」って言っていたやつのリバイバル版、もちろんもっと真面目な意味で今回はやっていますけど。
それと、漫画アニメのクリエーターの給料が安すぎるっていうことが問題視されていて、クールジャパンの一環として作ったものでした。私が参加した時には、これでアーカイブした時に、「有害図書として区別されたらやばい」と思いまして。
逆図書館戦争状態になってしまうので。つまり国でしまう漫画とかアニメの中から「こういう物は有害だからしまわない」ってなった瞬間に決まっちゃいますから。これを防ぐために、役員に入り込んだと。
高校の後輩の(桶田さんという)弁護士が全部仕掛けていたんですけど。私を役員にして、繋いでいって仕掛けると。こういうことがありまして、その中でコミケの準備会にも呼んで証言をさせるという。
勿論赤松さんも呼んでワーワーワーワーやって。その時に、僕がこれ仕掛けたので司会も1人でやったんですけど、役員に並んでいる人に、コミケの里見さんが30分くらいしゃべりまくったんで、長すぎると。普通、議連なんかだと民間の発言は5分なんですね。だけど、「ここでしゃべらせなかったら、意味ないだろう」って思って。
「重要だから私はいいと思います。どうぞ言ってください」と。相当自民党の議員から反感くらいましたけど。しゃべるにしゃべらせて、窮状を訴える形で。
あとは大臣が帰る前に、目の前にいた馳文科大臣から、「ちゃんと、萎縮効果がないようにしっかりやれよ」と言わせちゃったと。これは大臣からの命令になりますから、どうにもこうにもしょうがないという顔を向こうはしていましたけど。
そういう形で二重にも三重にも、著作権の非親告罪化が二次創作に影響を与えないようにってことを、裏からも表からも仕掛けたことが功を奏したのかなと思います。
私も野党の議員として、「1人くらいが反対したところで何ができるんだ」ってさんざん当初言われてきて「悔しい」と思っていましたから。たった1人でもあらゆる手を尽くせば。
「反対反対」と騒いでいるだけじゃあ何も始まらないんで、どうやって現実的にコミットして変えていくのか、本当に阻止していくのか。こういうことを実現したというのが、非親告罪の実体だったのかなと思っています。
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