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牛窪恵トークイベント(全5記事)

「恋愛は面倒だから結婚しよう」 交際ゼロ日 堀北婚夫婦から学ぶ多様婚のカタチ

『恋愛しない若者たち』の刊行を記念し、著者であるマーケティングライターの牛窪恵氏とディスカヴァー・トゥエンティワン社長 干場弓子氏が対談を行いました。2015年は女優の堀北真希と俳優の山本耕史との交際ゼロ日婚が話題となりました。牛窪氏が取材を行った交際ゼロ日婚夫婦の中には、「恋愛は面倒なので結婚しましょう」と言ってプロポーズした人もいたそうです。その他にも「同棲婚」や「婚外子」など、海外の事例を出しながら、多様婚のカタチについて語り合っていきます。日本人の場合は、告白から交際、結婚にいたるまで段階を踏んでいくことを重要視されますが、今後は「こうあるべき」と思っていた枠から離れてみることも必要なのかもしれません。

交際ゼロ日 堀北婚夫婦の馴れ初め

干場弓子氏(以下、干場):本書(『恋愛しない若者たち』)では、多様婚についても取材なさっていますが、実際には何パーセントくらいが多様婚を選んでいるのでしょう? 感触的にはどうですか?

恋愛しない若者たち コンビニ化する性とコスパ化する結婚 (ディスカヴァー携書)

牛窪:今回、クロス・マーケティングの協力で、20代の男女に600人の定量調査を行ったんですけれども、一番評判が良かったのは、やぱり「同棲婚」ですね。

籍を入れずに同棲のまま、一緒に住んで子どもをつくって、というような。結婚前のお試し婚みたいな感覚、トライアルみたいな意味合いもあって、やってみたいと言う子たちがすごく多かったですね。定量調査でも、男女ともに85パーセントが肯定派でした。

ただ、日本には今「同棲婚」のカップルを支援する制度がありません。フランスだとパックス、スウェーデンだとサムボといったように、海外では一定期間同棲するカップルに、籍を入れた夫婦に近い社会保障を約束する制度があるんですが。

あと実は、堀北真希ちゃんと山本耕史さんで話題になった交際0日婚がありましたが、これも実際に交際0日婚を果たしたカップルを2組取材しまして。

干場:それはお見合いではなくて?

牛窪:お見合いではないです。1組は、ある習い事というか、自己研鑚みたいな教室で知り合って、3ヶ月で結婚してるんですけれども。結婚前に2人だけで会ったのは2回きり、プロポーズの日を含めて3回で。

その2回も、図書館で一緒に勉強するために会ってるんですね。実は歳の差がけっこうあって、奥様のほうが年上でバツイチだったんです。

彼が私のこと好きかなっていうのは教室の中で感じてたらしいんですけど、でも彼に「占いで僕たち相性が良いみたいなんです」と言われて、彼女は断るつもりで、「私、恋愛とか、もう面倒なの」って言ったそうなんですね。

そしたら彼のほうが、「そうですか。僕も恋愛とか面倒なんで、じゃあ結婚しちゃいましょうか」って言ったそうなんです。

(会場笑)

牛窪:私、失礼なことをいろいろ聞くタチなので、「それで、エッチもする前にOKしたんですか?」って聞いてみたんです。というのも、プロポーズが、3回目にレストランで会ったときにされたって聞いたので。

実はその日食事しながら、プロポーズされるなっていうのは彼女は感じてたらしいんですけれども、彼が結婚を切り出した瞬間、やっぱり「え? もう?」とは思ったらしいんです。

そしたら彼もなんとなく察して、「一言お断りしておきますけれども、僕はノーマルなんで安心してください」って。そして、彼女はその場で、夜に一休ドットコムで空いてるホテルを予約して、その直後にOKしたそうです(笑)。

実は、彼女付き合ってる人いたんですよ! でも、その彼氏が、長年付き合ってもプロポーズも何もしてこなくって、彼女が「そろそろ子ども欲しいけどどうしようかな」って考えていたときに、年下の彼が「恋愛面倒だから結婚しましょう」って言ってくれた。それで「交際ゼロ日婚」したんですね。

結婚からもう1年以上経つんですけど、お幸せに過ごされています。そういう方もいて、改めて「結婚にはいろんな形があって良いはず」と感じました。でも、多くの若者はやっぱり、当たり前のように「恋愛したら、まず告白してお付き合いして、何度かデートをしてからエッチして……」って段階踏まなきゃいけないって思っています。

告白文化はもうアジアぐらいにしかない

牛窪:でも、今回の本で、山田昌弘先生にも、干場さんのご紹介で結構長くインタビューさせていただいて。そのとき一番衝撃だったのは、告白文化が、もうアジアぐらいにしかない、日本と韓国と中国くらいにしかないよというお話で。

干場:実は私そのときに初めて知ったんですよ。今は、告白しないと交際が始まらないんですね?

牛窪:そうですよね。本当はパリのマダムに学んで、フランス系の恋愛をしてもいいと思うんですが。

干場:山田先生によると、私たちの世代はスポット的に、例外とのことなのですが。告白っていうのは、プロポーズみたいに重いんですね。

牛窪:ええ、確かに!

干場:でしょう? 「付きあおう」って言うと、他の人たちにもばれて。それじゃあ、なかなかできないですよね。

牛窪:私たちバブル世代は、青春時代が『男女7人夏(秋)物語』の直後なので。山田先生も仰ってますが、あのドラマを境に、「エッチした相手とは結婚すべきだ」といった概念が、徐々に薄れていった。代わりに、いわゆる「エッチして良いか」っていう許可、免罪符を得る過程が告白っていう感じでしたね。

いずれにしても他の異性とは、同時進行では付き合わないよっていう宣言ですよね、男女ともに。それが、今にも続く告白だと思うんですけれども。

でも考えてみると、今(交際経験アリの)20代女子の7人に1人が「いる」と言う「セフレ」は、告白なしにエッチをしてる。ある意味、告白なしに複数と同時並行で付き合う、フランス流ですよね。

海外、とくにヨーロッパではそれが普通だったりするのに、日本では1人としか付き合えない。だから告白が重要な意味を持つんだけど、逆に「重い」んですよね。

干場:だから、私はそういう告白文化があるってことを知らなかったんです。今の若い子たちに。

牛窪:ああ、そうなんですねえ!

干場:皆さん知ってました? 若い人はそうなんでしょうけど。ねえ? ねえ、なんて言って(笑)。

牛窪:立ち入ったことを聞きますけど、干場さんは同時並行……?

干場:(笑)。

(会場笑)

エッチは結婚してから?

干場:さっきエッチもしないで結婚っておっしゃいましたけど。私たちの世代だと、結婚してから結婚初夜があるっていうのが建前。

牛窪:建前ね。

干場:半分くらいはそうだったと思います。だから、当たり前なんですけど。しないで結婚っていうの。

牛窪:まあまあまあ(笑)。親世代はよく、そういうことを口にしてますね。

干場:今、当たり前だと思ってることが当たり前ではなかったみたいな。

牛窪:そう、そういうことです。宮崎とか別府っていうのが、私の両親が結婚した時代の新婚旅行の定番で。うちの両親もそうですし、私の主人の両親もそうで。

そういえば先日、宮崎に出張したときにタクシーの運転手さんに聞いたんですけど、当時は本当にエッチ未経験のカップルが多くて。その運転手さんは昔、ホテルに勤めてたらしいんですけど、夜、新婚旅行中の奥さんが泣きながら来て、「夫が変なこと(エッチ)しようとしてるんです。助けてください」とか、男性が「どうやっていいかわからないから教えてください」なんてことが、本当にあったらしいんですよ。

干場:さっきの例ですと、男性にとっては結婚しないと自由にセックスができないっていうのがあったので、それも結婚の動機の1つになったんだけど。今はそれもないし。

さきほどの話で90パーセントが結婚したいっていうのは、生涯ひとりが嫌なだけで、今は結婚したくないんだと思うんですけど。特に動機がないもん、だって。

牛窪:そうなんですよね。女の子は最近「妊活」とか言われて、35歳までに子どもをつくんないと、その後、妊娠確率が20代の頃の半分になるって数字で言われてるから、ある程度32、3歳で結婚してって逆算をしたりします。

干場:でも、結婚しなくても子どもは持てますよね。先進国の中でフランスが少子化対策が上手くいっている要因として、もちろんいろんな手当とか様々出てるんですけど、それ以上に56パーセント以上が非嫡出子というのが大きい。

要するに、今日本でいくら最高裁が認めたとしても、やはり結婚しないで子どもをもつと白い目でみられたりする。でも、56パーセントいたら、そっちが主流派じゃないですか。そういうふうになって初めて、出生率もあがるのではないでしょうか。そうならないと、いくら保育園作っても無理かもしれませんね。

やっぱり大っぴらには言えないですよね。でも56パーセントいたら、そっちが主流派じゃないですか。そういうふうになって初めて、認知を上回ったわけですよ。出生率もあがるのではないでしょうか。だから、そういうふうにならないと無理かもね。いくら保育園作っても無理かもしれませんね、結局。

牛窪:もちろん、そうなんです。そこを変えないと。

干場:子どもを生むのに結婚が必要条件って、もちろんいい面もあるとは思うんですけど、それすらももう当たり前じゃないっていうところから見直さないと。

「恋愛結婚じゃなきゃいけない」って思わなくてもいい

牛窪:日本もそろそろ、「同棲婚」を含めて、事実婚を認めないと。今の制度のままだと、女性の側が男性と一緒に暮らすなりして子どもができたときに、女性だけがリスクを負う可能性がある。

日本の男性は概して真面目なので、相手の女性が妊娠したとき「僕は知らないよ」とは言わずに結婚する方が圧倒的に多いのは確かです。今20代で結婚するカップルの44パーセントが「できちゃった結婚」ですから。

でも、相手の女性が突然妊娠して、男性に「知らないよ」って言われちゃうと、女性は最悪、何の社会保障も得られない。DNA鑑定も結局は男性側が協力してくれないと鑑定できないので、法に訴えても、強制力はないんです。

干場:初めて知りました、この本で。

牛窪:そうなんですよ。だから、女性としてはそういうリスクがありますから。やっぱり今の制度だと、籍を入れない状態で子づくりするのは、すごく身構えますよね。

干場:子どもや女性の貧困という問題もありますものね。

牛窪:そうなんですよね。いまや、子どもの7人に1人が貧困、シングルマザーも約半数が貧困状態。若者がそれを恐れるのは当然ですが、逆に制度でリスクヘッジできるなら、事実婚を後押ししてあげれば良いと思うんですよ。

その結果、多少生活保護などは増えるかもしれませんけれども、国として大事な命を大切にしていこうっていう方針があるならば、そこをやっぱり支援しないと、少子化は止まらないだろうなと。

あと山田先生が仰っていたのは、日本の場合、お金がない男はその理由で恋愛や結婚ができず、逆にお金を持ってる男性は、忙しすぎて時間がないから、恋愛や結婚ができない。

まさにワークライフバランスも重要なポイントで、未婚男女は、何でこんなに仕事ばっかりしなきゃいけないのかなって感じつつも「デートより残業」なんですよね。

改めてそこは干場さん、バリバリお仕事されるほうですけれども……。ヨーロッパの暮らしとかいろいろご覧になって、疑問に感じませんか? やっぱり日本人は仕事好きなんですかね?

干場:(笑)。いや、私それについては一概に言えないと思っていて。統計的に見ると、日本はとっくの昔に、先進国の中でも1、2を争うように、労働時間が短くなっているんです。ただ、エリートに関してはそうとは言えない。

でも実は欧米のエリート層も昔から、ある意味日本のエリートと同じくらいっていうか、いや、それ以上にすごく働いている(笑)。なので、それに関しては一概に言えないんです。

ただ、欧米のエリート層は、日本のエリート層に比べると、自分の時間を自由に使って、たくさん働いてる感じはありますよね。勤務時間中にスポーツクラブに行っちゃいけないとか、そういうのがないみたいで。

牛窪:もうちょっとそういうね、グーグルさんじゃないですけど、ある程度裁量で働けるような環境ができれば、ちょっとは恋愛事情も変わるかなとは思うんですけど。

でも現実問題、「恋愛より楽しいことがいっぱいあります」って言われちゃうと、そっかって思いますよね。

私たちの青春時代はケータイもないしゲームもしょぼいのしかないし、インターネットもないしで。もう恋愛かゼミかサークル活動くらいしかやることなかったんですけど(笑)。

干場:ひとつは『恋愛しない若者たち』、ここにも書いてあるように、皆が「恋愛結婚じゃなきゃいけない」って思わなくなればいいのかもしれません。結婚したければ、先ほどの3か月で決める方法(交際ゼロ日婚)とか、そういうのがあると思うんですけど。

恋愛しない若者たち コンビニ化する性とコスパ化する結婚 (ディスカヴァー携書)

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