2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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西頭恒明氏(以下、西頭氏):今紹介していただきました、日経ビジネスの西頭です。今日はお付き合いいただきましてありがとうございます。少しでも何か参考になるようなお話ができればと思っております。
最初に私の自己紹介と日経ビジネスの話から入りたいんですけれども、さっきちょっとお話してて、ビジネス記者を知ってますとか取材を受けましたという話をお聞きしました。改めてお伺いしたいんですが、この中で、日経ビジネス、皆さん読んだことあるんじゃないかと期待してるんですけど(笑)。
(会場笑)
西頭:読んだことある方は手を挙げていただけますか? ありがとうございます。実際日経ビジネスの記者から取材を受けた、記者に取材をしてもらったことがあるっていう方、手を挙げていただけますか? 半数くらいいらっしゃるんですね。個人的に記者、デスクと知り合いがいるっていう方、いらっしゃいますか? はい、ありがとうございます。
じゃあ、ある程度日経ビジネスのこと知っていただいている部分もあるかと思いますが、そこは確認という意味で、お聞きいただければと思います。
私自身は1989年に日経BP社、日本経済新聞グループの出版部門であるこのBP社に入りまして、最初日経イベントという月刊誌にいました。宣伝とかマーケティングをテーマにした専門誌なんですけれども、ここに7年ほどいまして、その雑誌が休刊になりまして。そこから、96年の夏から、日経ビジネスにおります。
日経ビジネスの記者は、グループ毎に担当が分かれています。今でもそうなんですけど、大きく分けますと、まず製造業グループ。その中に自動車も入ります。あるいは電機ITグループ。電機業界とかIT企業ですね。それから流通サービスグループ。小売業とか消費財、飲料、化粧品、日用品とか、そういうものを担当するグループ。それから政治経済、マクロを扱うグループに分かれています。
私は最初流通サービス業を担当し、そのあと製造業に移って、電機を1年近くやったところで日経ビジネスのデスクになりました。それが2007年の話です。2008年に1回同じBP社の中の日経情報ストラテジーという経営とITをテーマにした月刊誌に移動しまして、2009年から3年間、そこで編集長をやりました。
2008年の秋にいわゆるリーマンショックが起こって、出版業界も広告収入、販売収入共に打撃を受けた。それまで日経情報ストラテジーという雑誌はずっと、毎年億単位の黒字だったんですけれども、私が編集長になって初の赤字に陥らせてしまいました。
何とか2〜3年くらいで立て直したんですけれども、3年間やって、また日経ビジネスの副編集長として、2012年に戻ってきて。この2年間は、のちほど説明しますが、編集部長という、ちょっと何なんだろうと思われるかもしれませんが、そういう肩書で仕事をしています。編集長ではなくて、編集部長です。この辺りは、追々説明していきます。
日経ビジネスなんですけれども、現在約20万部の発行部数です。いわゆる経済誌と言われているものの中では、部数が1番多いです。ちなみにプレジデントが18万部、週刊ダイヤモンドが8万部、東洋経済が6万部程度になっています。もしかすると見たことあるかもしれないですけれども、プレジデントさんが発行部数ナンバーワンの経済誌って、今年に入ってから広告で出してるんですね。
18万と20万の違いなんですけれども、日経ビジネス20万部の中の3万5千部、これは今デジタル会員、日経ビジネスデジタルの読者で、タブレットやスマートフォンで日経ビジネスを読んでいただいている読者が20万人のうちの3万5千人。これを両方セットで申し込んでらっしゃる方はカウント1としているんですけれども、3万5千人の方が、既にスマートフォン、タブレットで日経ビジネスを読んでます。
有料の雑誌媒体で3万5千部のデジタルっていうのはですね、今日本で最大です。他のところはまだ1万に達していないところばっかりですね。そういう意味で日経ビジネスはかなり、Webとかスマートフォン、タブレットのほうにシフトしてきておりましす。
部数的にもそうですし、広告収入も今7対3くらいなんですけれども、一応紙のほうが7で。Web、デジタルのほうには日経ビジネスオンラインっていうサイトがありますが、そちらが3っていう割合なんですけれども、2020年には逆転するんじゃないかという見通し。オンライン、デジタルのほうの広告収入のほうが逆転するんじゃないかっていうふうに予想を立てています。
今、日経ビジネスのオンラインは、登録会員、これは無料なんですけど、見ていただくためには登録をしてもらわなくちゃいけないんですね。会員登録してもらってるのが、200万人くらいいます。そのうちの90万人弱が、アクティブユーザー。頻繁に利用して、見ていただいているような読者です。ですから現在、日経ビジネスとそれから日経ビジネスオンライン、日経ビジネスデジタルの3媒体体制になっています。
日経ビジネスオンラインが2000年代半ばに立ち上がって、最初の頃は雑誌が、紙がメインで、オンラインっていうのは添え物でしかなかったんですね。当時なんかまだデスクが、「Webの仕事してるくらいだったら紙の記事書け」っていうようなノリでしたし、記者のほうの意識も、オンラインの記事を書くというよりも、やっぱり僕は紙のほうで書きたいですと。
当時は部数もそちらのほうが全然多かったですし、1番多かったころで35万部くらいですかね、紙が。意識としては、紙が優先、オンラインは二の次っていう意識だったんですね。
2010年代に入ったくらいから、それまで日経ビジネスの本誌チームとオンラインチームというのが明確に分かれていて、オンラインチームのほうは、オンラインの記事を、外部ライターの原稿も含めて担う。本誌の記者は、頼まれたら、ときどきオンラインの記事を書くっていう体制だったものを、全部いっしょくたの組織にしました。
これからはWebを重視する。ニュースはどんどん変わっていくので、2〜3年前からWebファーストといって、紙で1週間、10日単位で先の記事を書くよりも、Webのほうでどんどん記事を書くっていうように、日経ビジネスの体制も変わってきてますし、記者のマインドセットも変えるっていうかたちで。
最近では、本当に記者の意識もどんどん変わってきてて、「オンラインのほうに今日あった出来事をすぐに書かせてください」というような感じに移ってきています。ただ、紙は紙で重視してますし、特集なんかは2〜3ヶ月十分に準備期間かけて、取材をしてやっています。
動き方としては紙優先とかWeb優先とかいうかたちではなくなって、ニュースによってWebで書く、そのフォロー記事を紙で書くとかですね。ときには紙ですごく評判良かった記事をリライトして、再編集してWebオンラインのほうに流すということもやっています。
だんだんデジタルのほうが進んでくると、今度はモバイルファーストという言い方も最近ではし始めています。日経ビジネスオンラインも、今は7割くらいの方はパソコンから日経ビジネスオンラインのWebサイトを見てるんですけど、これもスマホが早晩5割を超えるんじゃないかっていうふうに見てまして。そうなってくるとどんどんモバイルファースト、モバイル対応を意識した誌面づくりというのが大事になってくるなと考えています。
西頭:今後の雑誌がどういうふうになっていくのかを考えると、マイクロペイメントというのが、1つ出版界の中でテーマになっています。記事単位で課金して、モバイルとかパソコンで記事を提供する。
今までは、日経ビジネスというのは年間購読制、年間50冊を買ってもらって2万4千500円を支払っていただくっていう。一方でオンラインでいろんなかたちであらゆる記事が配信されてる中で、そういうマイクロペイメント、記事単位ごとの課金でニュースを提供するのかっていうのが、問題としてあがっているんです。
これはニュースのiTunes化って言われてるんですね。iTunesのように、今まではアルバムで買っていたものを、曲単位でiTunesでダウンロードしてもらう。いろんな出版社とかいろんな媒体が、それぞれの考え方でそれにどういうふうに対応するうかっていうのを考えているところなんですけれども。日経ビジネスは現在のスタンスとしては、マイクロペイメントをやらない。あくまでもパッケージとして、日経ビジネスをとらえてもらう。我々が編集したものをパッケージとして読んでもらいたいと考えています。
もちろんこれからの時代の流れに沿って変化してくる部分はあるかもしれないんですけれども、現時点ではそういうような考えをもっています。ただ個人的には、日経BP社という会社として、こういうやり方ができるのかなと思ってることがあります。
例えば今、旭化成建材。杭打ちのデータ偽装っていうのがあったり、あるいはフォルクスワーゲンの排ガスのデータ改ざんがあって、こういうテーマはもちろん日経ビジネスでも毎号のように取り上げているんですが、例えば建築の話ですと日経アーキテクチュアという雑誌がうちの会社にあるんですね。あるいは自動車だと日経オートモーティブっていう自動車業界の専門誌があって、より専門性の高い記事を記者とか、あるいは外部ライターに書いてもらっています。
そうすると、例えばフォルクスワーゲンの今回の不祥事に関心がある人は、日経ビジネスを読むと同時に、他の日経BP社の媒体で、より高度な専門知識を求めて、関連する記事を読みたいっていうニーズはあると思うんですね。
ですから、1つのパッケージとして日経ビジネスを購読してもらった方に対して、例えば月に何本までとか、そういうかたちでのマイクロペイメントを上乗せした料金でやるっていうのは、読者ニーズに沿うのかなと思いますし、我々として1つのパッケージを守るということも維持できるんじゃないかのなということを考えています。ただこれは私見ですが。
そういうふうに、ITの進化とともに、これからどういうニュースを提供していくかっていうところも、読者の方もどんなものを利用して読むかっていうところで、変わってくるんじゃないかなっていうふうに考えています。
西頭:先ほどの編集部長っていう仕事なんですけれども、今こうやって紙があって、Webがあって、そのWebもパソコンだったりモバイルだったりっていうかたちで、読むスタイルが変わってきて、さらに今読者のニーズっていう中で、多いのはリアルの場なんですね。リアルの場で何かを体験したい。
例えば経営者の話を日経ビジネスの編集長インタビューで読むだけじゃなくて、自分がその場で聞きたい。ということで、いろんなイベント、セミナーに対してのニーズも高まってきている。
もちろん今まで、日経ビジネスが主催というかたちでいろんなセミナーを開いたりすることはあったんですけれども、多くの部分は名前貸しと言いますか、日経ビジネスのパイプは使ってはいるんだけれども、編集部の人間が深く関わっている、例えば講師を招聘するとか、プログラムを作るとか、そういうところまでやるケースっていうのはあまりなかったんです。
誌面、Web、それからリアルの場っていうのを、もっと串刺ししてやる必要があるんじゃないか、そういうニーズがあるんじゃないかっていうことで、そのリアルの部分っていうのに記者をどうやって絡ませていくか。
ある部分では営業部隊と関わって考えないといけないところもあるので、その仲介役みたいな役割を、私がしています。通常のデスクの仕事、原稿を見たり記事の直しをするだけじゃなくて、そういうリアルの場を企画して、それを記者に対してじゃあこういうところを調整してとか、いうところを依頼するような仕事もしています。あとは予算の管理とか、そんな仕事は雑用的な部分なんですけれども(笑)、やっています。
リアルな部分っていうもののニーズっていうのは、やっぱり高まってますね。あと、日経グループ全体なんですけれども、教育研修事業を本格的に力を入れ始めています。今年から日経ビジネスでも『日経ビジネス経営塾』っていう講座を立ち上げて、これは受講者50人限定で、毎月トップクラスの経営者の方に講師になってもらって、1時間半、話していただくんですが、そのうちの30分以上は質疑応答の時間に割いてる。やり取りをその場でやってもらう。少人数制で。
その経営者講師のお話のあとに、今度は早稲田大学ビジネススクールの先生がそれを理論的に裏付けるようなかたちでプログラムを組んで、第一期12名の経営者の方に出てもらっています。セブン&アイの鈴木会長、日本電産の永守さん、リクシルの藤森社長。これから先はサントリーの社長で、元ローソン社長の新浪さんとか、オリックスの宮内さんとか。今旬の経営者だと、ネスレ日本の高岡さんとかですね、カルビーの松本会長とか。そういう方たちに、講師になってもらっています。
これ年間120万円するんですけれども。生の声に触れたいいっていうニーズはすごく高まってきたので、そういう場をどれだけ提供できるかっていうのも、我々の任務になるのかなっていうふうに感じています。
そういうかたちで紙からWeb、リアルな世界へと記者の仕事とか我々編集者の仕事っていうのは、変わってきているのかなと思います。
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