2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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庄野裕晃氏(以下、庄野):はじめに、ASIAN CREATIVE NETWORK(以下、ACN)についてご紹介させていただきます。
アジアのクリエイターがグローバルに仕事を得るために作品を発表する「ubies」というウェブサイトをつくるにあたり、『世界を熱くするアジアのクリエイター150人 ASIAN CREATIVES』という本をつくりました。
これはアジア10カ国のクリエイティブシーンを担うリーダーやキーパーソンを取材し、自国のクリエイティブシーンを語っていただき、また今注目すべきクリエイターを紹介していただいたものです。
アジア各国を取材するなかで、さまざまな出会いがありました。例えばタイを代表するデザインチームのPractical Design Studioを訪ねると、「自分たちがタイでもっともおいしいと思うものを食べてほしい」とおもてなしをしてくれます。
そうすると、彼らが大阪に来てくれたときには、大阪で一番おいしいものを食べてもらおうと考えます。そうやって仲良くなり、互いの文化を知ってエクスチェンジすることで信頼関係ができ、「何か一緒にやろうよ」とプロジェクトに展開していきます。
そうして一緒に手がけたのがエンライトメントのヒロ杉山さんが企画、キュレーションをしている「Here is ZINE」という手作りアートブックの展覧会のエクスチェンジです。これはタイと東京で開催しました。
こうした経験から、クリエイティブや文化を通じて人がつながることで、政治や経済のつながりだけでは成し得ないつながりが生まれ、違う視点でアジアの未来が見出せるのではと、クリエイティブを通じたアジアのつながりを促進するためにACNを設立しました。
ACNのミッションは「アジアをクリエイティブでつなぎ、共によりよい未来をつくる」です。中国、韓国、ベトナム、タイ、インドネシア、日本に、このミッションに賛同してくれたメンバーがいます。昨年はメンバーで『ASIAN CREATIVE AWARDS』を開催しました。
今年8月には、株式会社竹尾本社でこのアワードの展覧会を開催しました。また、アジアのクリエイティブについて共に学び共有しようというアジアンクリエイティブフォーラムや、アジア各国から110組のアーティストが参加するアートフェアなどを開催しています。
今回のテーマはクリエイティブ・プラットフォームです。なぜこのテーマを選んだかというと、『ASIAN CREATIVES』の取材で出会ったインドネシアのクリエイター、ヘルマワンの活動に触発されたからです。
彼はインドネシアのグラフィック界の第一人者と言われている方で、成功者ですが、自らの成功にとどまらず、「Dialogue Artspace」という、クリエイター同士をつなげ、つながりを育みながら個々の個性が生かされる場をつくっています。
アジアでキーパーソンとなるクリエイターたちは、自分自身の活動のみならず、個々の特性やパワーが活かされるような集合体の形成を目指しているのです。
その様子は、Wikipediaのように人々がつながり、集合知によって世界をマーチャンダイジングさせていく現代の特性と、強くリンクしていると感じます。
国によってクリエイティブ・プラットフォームのあり方は様々ですので、まずは各国の状況からご紹介したいと思います。
シンガポールは国土が小さく、淡路島とほぼ同じくらいの面積です。天然資源が乏しく、水でさえも隣のマレーシアから購入している状況です。このシンガポールが世界有数の景観都市として発展した訳は、強いリーダーシップにあります。
強いリーダーのもとに長期的・総合的な都市計画を立て、実践し、世界有数の景観をつくりあげたのです。
庄野:そしてもうひとつの大きな特徴は言語です。公用語は英語、中国語、マレー語、タミル語の4つで、学校教育は英語でおこなわれます。また、シンガポール国民は華人が7割を占め、中国語が堪能な人が多くいます。
世界中に多数の話者を持つ英語と中国語の両方を話すことができるのは、大きな強みです。その強みを活かし、軽やかに国境を超えて活躍するクリエイターが次々と生まれています。
国際的な賞を100以上受賞しているクリス・リーなど、世界を舞台に活躍するクリエイターを育んでいるのがシンガポールです。
建国時の計画性を反映してか、スマートに、クレイバーにクリエイティブシーンを構築しているのがシンガポールではないでしょうか。
タイはフリーマーケットに特色があります。1万軒が軒を連ねる世界最大と言われるフリーマーケットでは、日常雑貨、衣類、テントまでが販売され、週末には20〜30万人が訪れます。
ここにはタイの若手ファッションデザイナーも出店するため、大手百貨店やファッションビルなどのバイヤーが世界中から集まり、ファッションデザイナーの登竜門にもなっています。
バイヤーの目に止まってデビューするというサクセスストーリーも生まれています。フリーマーケットはタイの最先端の流行の発信基地になっているのです。
タイ人のデザイナーが出店する、刺激的でアーティスティックな内装を持つファッションビル「SIAM CENTER」も誕生しています。ストレシスというファッションブランドは世界中で人気があり、ビヨンセやケイティ・ペリーなどのセレブ、日本でもローラや西野カナ、Perfumeの衣装にまで採用されています。
タイではストリートアーティストの活動も活発です。ラキットというストリートアーティストは、大企業の目に留まり、G-SHOCKのスペシャルパッケージに作品が採用されたり、トヨタのプロジェクトに参加したりしています。
タイには「つくりたいからつくる」という衝動が、すぐにかたちにできる環境があります。また、そうした環境が高いオリジナリティーを生んでいるのではないでしょうか。
庄野:日本の特徴は東京の一極集中にあります。1960年代には年平均10%を超えていた経済成長率が、現在ではマイナスになることも。街には隙間がありません。
このように飽和した日本のクリエイティブシーンでは、地方に目を向けるという動きがあります。瀬戸内海の自然豊かな景観の中にアートを設置することで、アート・ツーリズムが生まれ、観光誘致につながっています。
こうして人気が出た『瀬戸内国際芸術祭』から、「ディスカバーリンクせとうち」のような地方から世界に向けて、その魅力を発信するカルチャー拠点が誕生するという動きが起こっています。地方にクリエイターが介在することで、新たな資源や観光資源の再発見が起きているのです。
高度に発展を遂げた日本はクリエイティブも洗練されていますが、一方で飽和感は否めません。そういう意味で革新が期待されているのが日本のクリエイティブシーンだと思います。
本日は、ACNの共同設立者で、編集者の塚田有那の協力を得て、シンガポール、タイ、日本と、多様な背景を持つ3カ国で、「それぞれの国で新しいクリエイティブシーンを持続的に発展させ、イノベーションを起こしている3名に登壇いただいています。
シンガポールからはジャクソン・タンさんにお越しいただきました。
ジャクソン・タン氏(以下、ジャクソン):皆さんこんばんは。クリエイティブ・プラットフォームをテーマにお話をさせていただきます。
基本的には都市間や文化間、クリエイター同士をつなげて地域社会で仕事をし、協業し、都市を祝うということです。2年前にスタートした「クリエイティブシティ」というプロジェクトを紹介します。
2013年に台湾の高雄市で都市サミットを開催することとなり、アジア太平洋地域のクリエイターの交流を促進するための展覧会を開催することになって、私のところに「キュレーターとして参加しないか」と依頼がありました。
連絡を受けたとき、私は仕事で東京にいました。東京は新陳代謝の早いスピーディーな都市ですので、私も常に新しいところにいき、新しいプロジェクトを見たいと思っています。
東京を存分に味わうためには、東京にいるクリエイターの友人に案内してもらうのが一番です。彼らはどのフェスティバルにいき、どのレストランにいけば良いかをよく知っていて、案内をしてくれたり、地図を書いてくれたりします。
この経験をもとに、アジア太平洋地域の友人に各都市の地図を書いてもらい、それを集めてアジアの巨大なマップを描く、「クリエイティブシティ」というプロジェクトを企画しました。
台湾の高雄市はシンガポールや横浜と同じく港町です。埠頭の倉庫街を中心に都市の再活性化事業が進んでおり、多くの建物や倉庫がカフェやアートギャラリー、そして店舗に変わっています。そこでわれわれはその地域にクリエイター間の交流を行うプラットフォームの構築を試みました。
ジャクソン:まず10都市を対象としてプロジェクトをスタートさせました。バンコクから東京、シドニーまで、アジア太平洋地域は、かつてないほどにクリエイティブシーンが活性化しています。プロジェクトでは各都市のクリエイティブな人物および各都市の特徴を紹介します。
まず10都市を選定し、その後各都市で5名のキュレーターを選びました。さらにその5名のキュレーターに25名の影響力あるクリエイターを指名してもらいます。そして選ばれたクリエイターからは都市の知識や情報、そして都市のサウンドトラックなどを提供してもらいました。
こうしてつくられた各都市のクリエイティブマップを、高雄市のデザインフェスティバルにおいて展覧会として発表しました。展覧会では各都市の文化の多様性を紹介しています。鑑賞者が楽しめるようインタラクティブな展示にしました。
Cイントロというパートでは各都市のインフォグラフィックや地理など細かい情報を紹介しています。Cインデックスでは10都市の概要をグラフィックアイコンやデジタル情報を使用して紹介し、Cマップでは各都市を象徴するアイコンやキーワードなどを、各都市のキュレーターやクリエイターから得た情報と一緒に紹介しています。
Cサウンドは、駅周辺の音や宗教の場の音、メディアの音、パブリックスペースでの音や地元のバンドの音楽などを聞けるようにしました。そしてCギャラリーでは、アジア太平洋地域のクリエイティビティを一覧することができます。
会期中には約2万5000人が訪れました。展覧会を通じてクリエイター間の交流が促進され、さらにSNSでもコラボレーションや文化交流が進んでいます。クリエイティブシティプロジェクトは、今後もさらにネットワークとプラットフォームを拡張していく予定です。
昨年は11番目の都市として横浜が加わりました。ヨコハマ創造都市センターとコラボレーションできたことを光栄に思っています。そして、オンラインでのネットワーキングも進めています。
クリエイティブ・プラットフォームをつくるおもしろさは、各都市をまたいでわれわれ全員が自己表現をできることです。同じメッセージでも、違ったかたちで表現することができます。
庄野:ジャクソンさんありがとうございました。彼の活動はアーティストやクリエイターの視点からアジアをつなぎ、それをビジュアライズ化して新たなアジアの都市の見え方を表現していると思います。
ACNとしても共感するところが多く、刺激を受けています。続いてはタイから、ジラッドさんお願いいたします。
ジラット・ポーンパニパン氏(以下、ジラット):私はタイのバンコクから来た、働く、一人の人間です。そんなにできる人間ではありませんが、社会に対して重要な視点を持っています。本日は私のこれまでの経験や物事の見方を、皆様に共有できればと思います。
この10年間で、タイには大きな変化がありました。新しい世代の人が自分の文化を創造するようになってきたのです。以前の若者は、NYや東京など海外の文化をそのまま取り入れてきました。
しかし、現在の若い世代は「そろそろタイ人も自分らしさを取り入れて表現をしたほうがいいのではないか」と思いはじめてきているのです。
チェンマイやバンコクなど、タイの各地には様々なクリエイティブシーンがあり、スローライフがみられます。クリーンフードが好まれたり、フリーマーケットやフードトラックに夢中だったり、女性が腹筋を鍛えたりと、じつにさまざまな流行があります。
以前のタイでは芸能人や俳優が影響力を持っていました。現在はアーティストやデザイナー、クリエイターや映画監督などが、インフルエンサーやオピニオンリーダーとしての影響力を発揮しています。
彼らはチェンマイ、コンケン、ハジャイなどタイ各地で作品を発表し、活躍しています。昔は見向きもされなかった作家やスタイリスト、テレビのプロデューサー、写真家などが、いまや芸能人より影響力を持ち、マーケットでも注目を集めています。
以前は医者、教師、軍人、ビジネスマン、経理といった職業が人気を集めていましたが、いまの若い世代はインフルエンサーの職業に注目をしています。
タイでいまとても流行しているのがフリーマーケットです。港、倉庫、サッカー場など、少し変わった場所で、クリエイターが場所を演出した個性的なフリーマーケットが毎日のように開催されています。
倉庫を会場にしたビンテージのフリーマーケットでは、家具や洋服を購入することができますし、ショッピングのみならず、デザインのイベントも楽しむことができます。タイの経済は好調とはいえませんが、お手軽な価格で商品が手に入るフリーマーケットは盛況です。
古着は300円ほどの価格から買うことができます。フリーマーケットは集客力が高いので、大きなスポンサーが付き、イベントをおこなったりします。
ジラット:また、もうひとつのタイのトレンドがSNSです。FacebookやInstagramなど、ありとあらゆるSNSに、皆が夢中になっています。食べた食事のすべての写真をインスタグラムに投稿するのが流行っているのです。
インフルエンサーには10万人以上のフォローがいます。そのため、タイの大手企業はマーケティングにSNSを活用しています。インフルエンサーがまるでプライベートなメディアを持っているような状況が、現在のタイの姿です。
私の簡単な職歴と考え方をご説明したいと思います。私は11年前に「CHEEZE Magazine」という若者のストリートカルチャーを紹介する雑誌を創刊しました。その5年後に男性用のストリートカルチャーを紹介する「LOOKER」という雑誌をつくりました。
そして3年前に、最近の若い人はあまり本にお金を費やさないのではないかと気がついて、カフェに置くフリーペーパーを開発しました。
大きなイベントも手がけています。「Cheeze Awards」というファッショナブルな人を表彰する賞を設立しました。一般の人でもTPOをわきまえた素敵な服装をしていれば、受賞する権利があります。
「Cheeze Car Boot Sale」という、車のトランクを開けて物を売るフリーマーケットや音楽祭などのフェスティバルも開催しています。また、テレビ番組も2つ製作しており、地上波やケーブルテレビで放送しています。
教育分野では、ゲストレクチャーとして様々な大学で特別講義をおこない、若いタイの人たちを勇気づけています。
タイ社会では勇気づけてほしいと感じている人がたくさんいるのです。私は本を書くのが好きで、作家でもあります。私の本が社会で苦しんでいる人たちのインスピレーションになるように書いています。
ジラット:私の職歴は複雑です。学生時代にビンテージの洋服屋を開いたことがキャリアのスタートでした。そこでファッション業界を少し知ることができました。次にグラフィックデザイナーになり、ファッション誌のグラフィックデザイナーになり、その後はファッション誌の編集者になって、最終的に編集長になりました。
その頃は雇われ編集長でしたので、自分がやりたいことを思いきりやることができませんでした。そこで自分の雑誌を創刊しようと思ったのです。私は美しい雑誌をつくるテクニックも知っており、文章が書けて、ファッションも知っていました。
「人々はいったいどういう雑誌を読みたいのか」と考えました。読者はどんな情報を欲しているのかを考えたのです。そして私はある時期から、読者の視点を超えて、「この国にはなにが欠けているのか」を考えはじめました。
人々がなにが好きでなにが嫌いか、なにがほしくてなにがほしくないか。たとえば放課後にはどこに行って、どんな洋服を着たいのか。どんな音楽が好きなのか、夏休みにはどこの国に行きたいのか。
とにかく消費者の動向を様々な角度から調査しました。このような情報を集めることで、人間に関わることはなんでもできるのではと思ったのです。そして、人々のニーズに応えながらも、少しずつ自分の伝えたいことを伝えていこうと思いました。
私は自分で自分を「できる人間ではない」と言い聞かせています。他の人と比べられたくありません。そのため、なるべくいつも新しいことをやろうと心がけています。書店で本を見ながら、他の人はなにをやっていないか、なにが新しいのかを考えました。
私はストリートファッションが好きです。例えばNYにはNYの、ロンドンにはロンドンの、東京には東京のストリートファッションがあります。ですがバンコクではストリートカルチャーが語られてきていないと感じました。
ですから、私は11年前にストリートファッションを紹介する『CHEEZE Magazine』という雑誌を創刊したのです。
もしかしたら30年後にはこの雑誌が、タイのファッションの歴史を調べる調査資料になるかもしれません。こうして将来までも予測しているのです。消費者の動向を注意深く読み解くことが、私の活動の根底にあります。
そしてインフルエンサーは、私の伝えたいことを、伝えてくれる人たちです。特にバンコクにおいては、インフルエンサーは社会のパワーです。私の活動が新しいインフルエンサーを生み出すパワーになってくれればと思っています。
バンコクに限らず興味深い都市があります。チェンマイ、コンケン、ハジャイでは、それぞれの地域に合わせてまったく違うことをします。都市ごとにまったくイメージが異なるため、同じコンセプトでイベントをおこなうことはできません。その地方が持つ力を100%活かしてほしいと思っています。
そして国内だけではなく、バンコクのカルチャーを東京で紹介したり、東京のカルチャーをバンコクで紹介したいと思っています。シンガポールやクアラルンプールとも一緒にやってみたい。近い将来に実現できればと思っています。
庄野:ありがとうございました。ジラットさんはご自身を「たいした人間ではない」とおっしゃいますが、おそらくタイのファッション業界で最も影響力がある人の1人です。Instagramでも、約30万人のフォロワーがいます。
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