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第2部「現役ディレクター2名が語るテレビ業界の話」(全5記事)

Twitterは強力な情報源 TVディレクターのSNS活用法

2015年8月20日、サイボウズ株式会社の新オフィスで「BtoB/IT広報勉強会」が開かれました。勉強会の第2部では、フリーランスとして『TOKYO MX NEWS』の製作に携わる久保田直彦氏、NHKのニュース番組を担当する原田大輔氏の2名が、テレビ局の番組づくりについて語ります。本パートでは、「ネタ集めの方法と分担」や「ニュースソースとしてのTwitter」の活用方法など、テレビ局のディレクターが日頃からアンテナを張って意識していることを紹介しました。

東京の街はどう変わっていくのか

椋田亜砂美氏(以下、椋田):次の質問にいきます。

「今気になるニュース、今後話題になるだろうと読んでるニュースを知りたいです」

久保田直彦氏(以下、久保田):ウチのMXさんの立場でいうと、やっぱり2020年東京(オリンピック)で。

だけどオリンピックってものすごい著作がうるさいので。「MXでできるのかな?」っていう。競技を放映できないかも(笑)。

椋田:あれ、いろいろ権利がありますよね。

久保田:あまりにも高額なので民放が各社「みんなで協力し合ってやろうね」っていう中に、同じだけの金額出せんのかな? 言っちゃっていいかな(笑)? そういうのがあるんですけれども。

(会場笑)

ちょっと変わってる話だと、今、東京都内でいろんな再開発が進んでますけれども、これはオリンピックのためではない。

今の再開発は、もっともっと昔から計画されて始まってることなんで。それが「どんなふうになるのかな?」というのがちょっとわかりにくいだろうな。

椋田:渋谷とかでしょうか。

久保田:もう渋谷と新宿でお客さんを奪い合ってる時代ではないということだけはわかっているので。「じゃあ東京っていう街をどうやっていくんですか?」っていう。

「東京っていう街がどうデザインされていくのか」っていうのが、長期的に気になっているニュースだなという感じにはなりますかね。まさしく、ここの日本橋とか大手町なんかは、どう変わるのかっていうことは、気にしています。

原田大輔氏(以下、原田):僕はこれがわかったら、超一流ディレクターになれてると思うんで、わかんないです。もしくは知ってても言わない。

(会場笑)

椋田:「これ気になってます」とは言わない。まあそうですよね。自分の宝物ですよね。

原田:うん。でも正直に答えると、「将来これにヤマ掛けてる」っていうことは、僕はあまりやらないです。どれだけ今に反応するかっていうことにこだわってるので、あんまり遠い未来は見ないですね。

テレビ露出によって関係が悪化することはある?

椋田:じゃあ次にいきます。

「テレビへ露出した結果、関係が悪化したことはありますか」

今はよかった話も最初出ましたけども、何かダメだったことはあるんですかね?

久保田:ないわけではないと思います。一番わかりやすいのは、流行ってるお店を取り上げてそこのお店の質が落ちたっていう。

椋田:確かに、あるあるですね。

久保田:特に地方の観光地とか行楽地はゴミ問題が出ちゃって、それを処理できない。そこに大変なお金がかかって行政が赤字になるっていう。それはよく聞きますね。

自分が悪化したというのはないんですけど、取材して出した企業で「ここの会社すごい好調なんです」っていう企業が2年後に倒産したっていうのがあります(笑)。それはちょっとショックでした。

(会場笑)

椋田:ありますよね。取り上げた途端、不祥事が起きたみたいなの、どうしようもないですよね。

原田:僕もないんですよ。幸か不幸かないのかもしれないですけど、テレビ露出した結果関係が悪化した企業はないですね。

さっきの話と全部繋がるんですけど、人と人とのやりとりなので、企業を出そうとか全く関係なくて、誰と仕事するかっていうことだけを考えてるので。

人間関係が悪化してまで仕事したくないっていう。そんなのおもしろくないので。楽しくないじゃないですか、そんな仕事。だから「この人とやれねぇな」と思ったら最初からやらないし。この人とは楽しく仕事できるだろうってなればするし。

当然言い合いしたりする場合もあるかもしれないですけど、それは「いいものをつくろうと思ってる」っていう、お互いのコンセンサスはとれてるので。かえって「またやりましょうね」って言うほうが大半かな。

久保田:あとはニュースでない限りは、制作番組なんかで取り上げた場合は、関係が悪化する前に番組のほうが早めに終わっちゃうっていうのもあるんで。民放の番組、そんなに長生きしないですからね、制作の場合は。

(会場笑)

原田:だいたい関係が悪化するっていうのは、お互いコミュニケーションの取れていない中で、テレビ側は自分たちのつくりたいようにやるし、企業側は出して欲しいように……。

椋田:意図が違うかも。

原田:そこのコミュニケーションが取れていないんですよ。そこでコミュニケーションがちゃんと取れたら、「そこ合わないんだったら、もうやめようね」っていうふうにならなきゃいけないものを、強引にやっちゃった結果なので。

椋田:そりゃ、キツイですね、お互いに。

原田:でもあるんですよ。特に経験が浅い、若いディレクターとかがやると、放送までいかなくてもロケの途中で「お前、そんなはずじゃなかったんじゃないのか」みたいなことってあるので。

番組のネタ集めと分担方法

椋田:了解です。じゃあ次の質問。

「ネタ集めの方法とか分担はありますか?」と。あと「電話のイメージがすごい強いんですけど、やっぱり電話がいいんですか?」

原田:具体的なネタ集めに関しては、めちゃくちゃアナログです。新聞は極力全部読むんですよ。雑誌も読むし。

椋田:紙ですね。

原田:実際にする順番で言いますね。新聞を読む。それから雑誌を読む。そのあと僕の場合はニュースサイトをRSSにしているので、それをザーッとチェックして。だいたいそこで終わりかな?

あと時間があるときには会える人に会いに行って、「この人ちょっと話聞いてみたい」「ここ行ってみたい」とか言って足を動かすっていう。そういう方法ですね。

これはディレクターによって得意分野があるので、自分の得意じゃないものはあえて手を広げないし、逆に自分の得意分野じゃなくても何かおもしろいのがあるんだったら(それが得意なディレクターに)あげるっていうことをする。

分担はとりあえずプロデューサー、チーフディレクターとかデスクとか、それからディレクター、AD、リサーチャーとかは、基本的にみんなネタを探しています。決済権があるのはプロデューサーなんですね。

だけども現場でつくるのはディレクターなので、一番発想するのは僕らなんです。だから、ネタを探しているという部分においてはみんな同じように探しています。

久保田:そうですね。ニュースでもない限りはさっき言ったように、各番組がルーティンとして何日に1回とか1週間に1回とか、企画会議や構成会議を開いているので、その時の集まるメンバーをどういう人にしてるのか。

全員集めてネタを挙げさせて、1回全員で目を通しておいて、決済権のあるプロデューサーとディレクターで別な日に決済するというふうにするのか。そんな感じですかね。

後はさっきも言いましたけど、リサーチャーが得意な分野というのがあります。トレンド情報とかは、僕らディレクターよりもむしろリサーチャーのほうが早かったりするので、僕はトレンド系なんかはリサーチャーを使います。

一時かなり(ターゲットの)せまい番組をやっていて、先ほどの中小企業の親父さんたちを毎週取り上げていた時は、足を棒にして、町中を記者のように探していたりというのを3ヵ月ぐらいやって。

放送のVTRを企業に見せたり、出てくれた社長のお友達の社長を紹介してもらったり、そういう人脈でなんとか凌ぐ。そんなことはしました。

おもしろいポイントは会話の中から見つかる

椋田:「メールか電話か」というのはどうですか? これは人によりそうですけど。

久保田:そうですね。報道とかニュースのような時間のないものは電話のほうが多いかもしれないですね。企画はメールのほうが多いと思いますけど、あまり電話はしないですね。

原田:僕は逆ですね。僕は電話嫌がる人と仕事しないので。だって会話ができなかったら、その人と仕事できないから。

こうやって誰かとしゃべっている中で「あっ、そこポイントかも!?」とか気づきが出るので。文字で1回1回やっていると、時間がかかってしょうがないね。

逆に効率が悪いですよね。これは広報でなくて取材相手(の話)なんですけど、以前「これは絶対おもしろい」という企画があった。

でも取材相手から「どうしても忙しいから、全部メールでやりとりさせてくれ」と言われて。メールでやっているから、全然前に進まなくて「もうやめた」ということがあった。

というのもあるので「メールで」って強要されると、「この人とは仕事できないな」と思う。結局脳みそを刺激しない。話っておもしろく聞くものじゃないですか。

久保田:世代的な問題もあるのかもしれないんですけど、さっきの(椋田さんの)プレゼンを聞いていて「クラウドなんてまだ出ていなかった」とか思いながら「ITってなんですか?」みたいな番組を、20数年前にやっていたなと。

その頃は「メールっていう単語をどうやってビジネスに活かしましょう?」とかやっていて、その時は完全に電話でした。

原田:メールだと文字面でいっちゃうので、印象に残らないんですよ。おもしろいポイントとかが。

椋田:それはあるかもしれません。

原田:例えば椋田さんがしゃべっていたら、椋田さんは何か僕に売りたいものがあった時に一生懸命しゃべっているのだけど、全然売りたいところじゃないポイントのほうが輝いているときがある。

椋田:ありますよね。

原田:そういうところに僕らはアンテナを張るので。(文字だと)ポイントは「平坦になっちゃうから」。

世代というのがあるのかもしれないけど、僕は基本的には電話のほうが圧倒的に情報量が多いし早いと思ってます。

久保田:企画書とかメールをプリントアウトして、移動中にそれを見るということはしますよね。

Twitterは強力な情報源

椋田:最初のほうに、Twitterっていう話も出たんですけど。最近よく「ソース元はTwitterからで、そこから調査始めます」とか。「お前自分で探せよ」みたいになるだろうから。

原田:ありますね。

椋田:Twitterはどうですか?

原田:僕はめちゃくちゃ注目していますよ。一番衝撃を受けたのが、秋葉原の通り魔事件があったじゃないですか? あの時にテレビも何もまだ放送していない時に、現場にいた人たちが写メを撮っているんですよね。リアルにそこで起きているものが、全部映像化される。

それまで僕らは、「最速でたくさんの人に拡散できることが、テレビやメディアの強みだ」と思っていたのに、(それが)一気に奪われた瞬間だった。

僕はTwitterとかテレビとかメディアとして分けていないです。共存とかではなくて、お互いにうまいところを使い合えばいいと思うんですよね。

実際にグーグルアラートを使って、Twitterで何が起きているのか当然メールが入るようにしているし。

実際に「火事が起きました」っていうとTwitterでバーっと出るわけじゃないですか。画像付きであったらだいたいどこで起きているかわかるので、そこに行ってみるかみたいな。

原田:一番リアルなんですよね。

椋田:それはそうですね。

原田:そう。リアルな人たちが、目の前で起きていることを自分の赴くままにつぶやいているので、こんなリアルな話はない。僕らも取り上げたくて仕方がない。

椋田:なるほど。

久保田:多分みなさんも目撃してると思うんですけど、民放のウェザーニュースさんの全国にいる会員さんの雲の画像とか、そういうのがTwitterを使っているいい例だと思いますし。

MXだと東日本大震災の時の夜中の交通網がどうなっているかというのを、その当時のキャスターのツイートでお知らせしています。

久保田:ただ、マンネリで使うのは非常に危険です。遊んじゃうツイートもくるんで、それをどうやって弾くかっていうのはまだ人海戦術になっているところなんですね。取捨選択がなかなか難しいんだけれども。

椋田:確かに有象無象というか、精査が難しいとかありますよね。

原田:それが本当はテレビができるところです。一次情報をTwitterにして、テレビはその現場がどうなっているのかというのをちゃんと伝えるメディアになればいい。

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