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AROUND 35「各社のデザイン文化」についてのパネルトーク(全3記事)

デザインの本質は“デザイン”にあらず 現代のデザイナーが果たすべき義務とは?

「若手デザイナーがもっと成長できる場を」というスローガンを掲げ、立ち上がったデザイナーのためのコミュニティ「UI Crunch Under25」。本セッションでは、人生の先輩、そして企業内ではデザイナーをまとめる立場につくAROUND35世代の4名が登壇。DeNA、DMM、カヤック、グッドパッチ各社のデザイナーの役割について語られました。

センスができないからデザインできない?

坪田朋氏(以下、坪田):よろしくお願いします。今日は素晴らしい話がいろいろ聞けたんですけれど、我々はゆるい感じでやるので(笑)、おっさんの話だと思って聞いていただければと思っています。

「UI CRUNCH」というイベントをよくやっているんですけれど、今日、25歳と年齢を区切った経緯には、実はあまり深い意味はないです。ただ、スタートアップ界隈含めて、どこもデザイナー不足だったりするんですよね。

美大生や若いデザイナーの子たちと話すと、「派手な広告やりたいです」とか、「メーカー系のプロダクトデザインやりたいです」とよく言われますが、今、雇用も含めて一番盛り上がってるのってやっぱりネットだと思うので、その市場を盛り上げたいという狙いで若手向けに開催したのが背景です。

最近は「学生でも自分でサービスを作って出してみた」みたいな世の中で、エンジニア志望の学生がそのまま起業したというケースは結構あるし、文系の学生でも自分で学んでやっちゃおうみたいな人がいる。

ただデザインとなると、「センスがないから私できない」となって、勉強するのも、アクションに移すにもハードルが高い。ただ、絵のセンスがなくても好きだったら訓練次第で誰でもできる領域がUIデザインだと思っているので、そんな人達をもっと市場に増やしていきたいと。

UIデザインとかプロトタイプってIT業界では新しい言葉だと思うんですけど、そこに興味持ってる人たちってまだあまり多くはないのでおじさんデザイナーで語っていきたいと思います。

村越氏のキャリアはエンジニアから

今日は4社の方に集まっていただいたんですけれど、みなさん僕が尊敬する方たちで、自分が「話を聞いてみたいな」と思っていたので、主に僕が聞きたい話しを聞く感じで進められたらなと思います(笑)

僕はもう自己紹介が済んでいるので、簡単にみなさま自己紹介していただくのがいいかと思います。じゃあ、村越さんからいきますか。

村越悟氏(以下、村越):こんにちは。みなさん、元気ですね。グッドパッチの村越と申します。今日AROUND35となってるのは、僕が36才だからというのもあって(笑)。36才になっちゃったんです。アラフォーなんですよね。

グッドパッチは、受託事業と自社事業のPrott(プロット)というサービスをやっている会社なんですけど、僕はどちらかというと受託事業のほうの事業責任者をやっていまして、ゼネラルマネージャーということで、全部の案件の統括だったりとか、メンバーの育成みたいなところをやってます。

元々、僕のキャリアはデザイナーではなくてエンジニアでして、ずっとエンジニアをやっていて、そこからHTMLとかフロントエンドのコーディングのほうに行って、フラッシュ触ったりとかして、というところでだんだんインタラクションとか、そっち系のほうに行きつつ、当時あまりディレクター人口も多くなかったので、ディレクターみたいなこともやりながら進んでいって。気が付いたらデザインにも口を出してるし、ビジネスのコンサルみたいなところもやって。

前職はGREEという会社でゲームを作っていたんですけれど、ゲームを作るところのデザイン部門のマネージャーをやったりして、また今デザインの会社にいるというキャリアになっています。よろしくお願いします。

金属加工業からITの世界へ飛び込んだDMM赤坂氏

赤坂幸雄氏(以下、赤坂):はい、DMM.comの赤坂と申します。坪田さんのDeNAさんと名前も似てるし、やってることも似てるし、サービス自体、求めてるところとか目指してるところも、結構一緒なんですね。で、これを機に「DMMのDは、ディライトです」と名乗っていこうかなと。

(会場笑)

よろしくお願いします。僕はDMMに入って結構長いです。元々デザインを学んでいたとか、デザインに近いことをやっていてDMMに入ったというわけではなく、以前は金属加工の工場で下請けの仕事をやっていました。

でも、景気にだいぶ左右されるし、自分がもっと技術力を身に着けたとしても、やっぱり中国、インド、ああいったところに勝てないということで、入ったのがDMMです。

その頃は、まだ20人くらいの規模だったんですけれど、今もうあっという間に1,000人を超えてしまって、それくらいスピードの速い会社です。僕自身も毎年転職している気分にさせられてしまうくらい、DMMでいろんなことをやっています。

その中で基本的にはずっとデザインに関わるかたちでいるんですけれども、うちの会社はいろんなことをやるので、DMMというとインターネットって思われがちなんですけども、インターネット以外のことにもどんどんと手を出しています。

その中でUI、UXデザイナーとして、領域、職域っていうのを広げていってる。

そういった会社だと思って、皆さんもDMM、DeNAさんだったり他社さんも含めてですけれども、まだまだインターネットっていうのは広がっていくと思いますので、ぜひその中でのUI、UXっていうところに興味持っていただければなと思います。

ちょっと自己紹介からずれましたけれども、そんなことを考えてる人です、と思ってください。

UIを語る人は正しくて怖い?

坪田:ありがとうございます。ねじさん、お願いします。

佐藤ねじ氏(以下、佐藤):はい。面白法人カヤックというところで働いてます、佐藤ねじと申します。

僕はあまりこの「UI CRUNCH」に座る感じの人間じゃない、というか……。普段ちゃんとした仕事もやってるんですけど、個人製作でも作品をいろいろ作っていて、どちらかというと、WebをばかにしたWebとか、UIをばかにしたUIとかですね、普通とちょっとずれたものを作るみたいな、そういうことが好きでやっています。

UI CRUNCHはしっかりしたUIイベントで、UIイベントはすごく正しいというか、ちょっと怖いんですよ。UIを語る人って、なんか、“正しい”がある感じがして。

というのがあったので、そうでないゆるいUIイベントとして、ちょっと前に「UI温泉」といって綱島の温泉で、お風呂に入りながら湯(U)と愛(I)を語るっていうUIイベントをやったり。しょうもないことをやってたり、そういうのがあるんですけど……。

カヤックも面白法人というふざけた名前があるんですけど、僕もそうですけど、ベースではみんなちゃんとUIのことはまじめに考えていて。その上でちゃんとしたものは、ここにいらっしゃるようなちゃんとしたところの人が出してくれるので。

それ以外の、ちゃんとしたものをベースにしながら、ちょっとまた違うものっていうんですかね、そういうものを描いていくみたいなことを個人的にもいろいろ考えて作ったりしています。はい、以上です。

坪田:ありがとうございます。

坪田氏「ねじさんの作品に憧れてます」

あまりかしこまってやるのもあれなので、フリートークみたいな感じでいいかなと思うんですけど、僕は佐藤ねじさんの作品が超好きで、「しゃべる名刺」ってありましたよね。

佐藤:はい。

坪田:あれを見た時に衝撃を覚えたんです。佐藤ねじってググるといろいろ作品出てくるので、こういうもの作りたいなあみたいな憧れをもって僕もデザインしてます。

佐藤:本当ですか?(笑)

坪田:実は今日会うの初めてだったりするんですけど(笑)、めっちゃファンでした。

佐藤:さっきの南場さんの話で行くと、3つの項目があったじゃないですか?

坪田:はい。

佐藤:「市場が8千万だと(小さすぎて)全然だめ」とかって、全部はねられますからね、カヤックの(仕事は)。

(会場笑)

佐藤:どきっとします。

(会場笑)

坪田:今日バランスいいなと思うのが、うちDeNAとDMMさんが多分、自社でサービスを作っていて、カヤックさんは自社でも作ってると思うんですけど、グッドパッチさん、カヤックさん、結構受託というかクライアントさんと一緒に作るスタイルなので、デザイン部門の役割りとしては、うまく分かれるのかなあと思うので、そんな話をいろいろ掘り下げられればと思います。

DeNA流の仕事の進め方

DeNAの話は、先ほど南場から話した通り、結構伝わってしまったのかなと思うんですけど。

デザイン部門の役割りで言うと、最近は企画書みたいなものが無くなってきているので、うちの場合、赤川(隼一氏)の話じゃないですけど、こういうもの作りたいみたいにビジョンを持ったプロデューサーがいるんです。

そういう人たちは、想いだけでは無く、予算、環境、体制作り、交渉力など前に進める力があるので、それをどうやって現実的なかたちにするのか、作っていくのがデザインの仕事だったりします。

だいたい初期は3、4人くらいのチームで、企画とデザイナーとエンジニアがいて、そこからプロトタイピングしながらサービスを作っていくケースが多いですね。

デザインっていうと、世の中的にはグラフィックを作る、みたいな言葉として使われる事が多いかもしれないんですけど、最近は、本来のサービス作る、プロダクトを考えて設計するところに、デザイナーもコミットしてるみたいな感じだったりします。

じゃあ、各社お話をいただくと、村越さんどうですか? 村越さんは元々GREEさんで似たような感じだったと思うので、それからグッドパッチさんに移っていろいろ変わったというお話もあると思います。

デザインの本質は「対話」

村越:そうですね。デザイン部門の役割っていうことで言うと、僕が見てる部門がちょうどデザインディビジョンっていう名前で、クライアントワークをやっている部署を見てるんですけど。

役割としてはクライアントビジネスを全部推進するっていうところで、中身で言うと職種ごとにチームをヒエラルキーで分けたりはしていなくて、ディレクター的な立ち位置の人も、デザイナー的な立ち位置の人も、エンジニアも全部ひとくくりでデザインディビジョンという中に入ってます。

やんわりチーム的なものを作ってるんですけど、職種ごとにチームを分けるというよりは、プロジェクトごとだったり、やってる案件、関わってるサービスが近しいところでゆるやかなチームを作って、そこでコミュニケーションが活性化するような感じのチーム作りをやっています。

なんでそういうことをしてるかというと、僕が考える「デザインの本質」って、僕が元々グラフィックから来てるデザイナーではないので思うんですけど、結構対話とかコミュニケーションがデザインの本質だと思っていて。

チームが円滑にコミュニケーションできているかとか、その中に流れているコミュニケーションの流量がものすごく大きいかとか、さっきの南場さんの話じゃないですけれど、すぐに人と打ち解けてそういう関係値を作れてるかどうかっていうのが、社内であっても、対クライアントであってもすごく重要で。

そういう関係性の中で出てくるコミュニケーションの中から良いアイデアとか良い発想っていうのができてきて、それが良いプロダクトとか良いチームになっていくっていうところの関係値を作りたいなと思っているんです。

コミュニケーションの最大化に注力

なので役割というところで言うと、クライアントワークなんですけど、僕はデザインディビジョンを運営していく上ですごく力を入れるというか、こだわって気にかけているのは、コミュニケーションの部分をちゃんと最大化できるかどうかってところですね。

坪田:やっぱり、会話して作っていきますもんね、デザインは。

村越:本当にそれに尽きるかなと思います。

坪田:特にパートナーとは会話して、まず意識合わせから始めないといけない。

村越:そうですね。グットパッチの場合だとクライアントワークのときも、キックオフのときに3時間、4時間くらいかけてワークショップするんです。そのときは本当に自己紹介から始めて、その人のパーソナルな話とかも含めてアイスブレイクして、プロジェクトに関して個々思っていることをとりあえず吐き出して。

それを午前中にやった場合は、終わった後にみんなで昼メシを食いに行く、みたいな結構コミュニケーションを主軸に置いたプロセスを僕らは作ってますね。

坪田:デザイナーってコミュニケーション大事ですからね。

村越:そうですね。

坪田:喋るのが苦手というデザイナーも多いと思うんですが、これも訓練かなと思ってます。。喋るのがめっちゃ上手なところでいうと、赤坂さんは喋るのが上手ですよね。ここからは、喋るのが上手な赤坂さんに変わっていただくとして(笑)。お願いします。

赤坂:はい。

坪田:お願いします。

デザイナーには説明する義務がある

赤坂:どうします、コミュニケーションについてにしますか? それとも題目通り、役割りでいきますか?

坪田:DMMさんって結構謎な会社というと失礼ですけど、何でもやってるじゃないですか。うちと近いんですけど。デザイン部門って何やってるんですか?

赤坂:DMMって名前のつくもの全てにデザイナーが関わっている、と言っても過言じゃないかなと思うんです。

もちろんシステム、ネットワークといったところは関われてはないんですけれども、うちの会社のデザインの明確な役割で言うと、今は設計者です。

すごく歴史のあるサイトで、今もう16才です。高2ですね、DMM。高2なんでずっと培ってきたものもあれば、今どんどん新しいサービスを打ち上げているという中で、新しい部分とずっと昔からの古い部分が存在します。

デザイン部分で見てもそうですし、システム部分で見てもそうですし、新旧入交りすぎててカオスになってる。矛盾が生じてしまってるんですね。

我々デザイン部が新しい部分と古い部分でごちゃごちゃってなっているところを、ちゃんとユーザーとビジネス両方から冷静な視点でとらえて、設計して作り上げていくっていうことが、今の僕らの役割りかなと思っています。

そこからどんどんといろんな役割りの人に落ちていくわけなんですけど、先ほどの村越さんも坪田さんもおっしゃったように、基本的にはコミュニケーションなんですね。なんでこの設計にしたのかとか、こうすることでユーザーがどう体験できるのかとか、どう感じてくれるのかとか。

そういったところを関係者全体に対して説明する義務があります。その中で関係者と合意形成をとったりとか、共感をしてもらったり。

そして、そうあるべきだと思ってもらうところまでちゃんとデザイナーが舵をとって説明したりとか、お話したりっていうことをしていく。

なので基本的にはDMMって名前のつくもの全ての案件にデザイナーが大きく関わってる、っていう感じだとちょっと堅いですかね?

坪田:いや、良いと思います。

赤坂:デザイナーは、そうですね、ナンパみたいなものです(笑)。

(会場笑)

坪田:そんな感じで良いと思います。おっさんだと思うんで。

赤坂:うん、そうですね。そこについて、詳しい話聞きたかったら、また後ほど来てください。

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