2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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木暮:なるほど。ちょっと視点を変えて古市さんに質問をしたいんですけど、僕らみたいに独立してひとりでやっていたり、何らかの形で注目をされると、必ずと言っていいほどアゲインストな風が来るじゃないですか。
僕もインターネットで連載とかもって、それがヤフートピックスに挙がると、必ずTwitterで「死ね」って来るんですよ(笑)。
(会場笑)
なんでヤフトピに挙げられると、死ななきゃいけないのかっていう……。罪に対して罰が重すぎるだろとか思うんですけど。そんなことがあるんですが、それに対して、怖気づいてしまうというか引っ込んでしまうと何も変わらないと思うんですけど、古市さんなりの対策というか、それに関してどう考えているかっていう。
古市:そんな来ます? わかんないけど。
木暮:古市さん、たぶん自分で気づいていないのかもしれないけど。
古市:もちろん、僕もネットで悪口は言われるんですけど、それって別に。普通に働いていても給湯室で悪口とか言われてるんですよ、どうせ。だから、現実社会でも悪口って言うじゃないですか。
木暮:じゃあ例えば、給湯室で悪口を言われていたとして……。
古市:それは届きにくいけど、たまたまネットだと見えちゃうから、たくさんあるんだと思うわけで、だって、世の中そういう憎悪の塊じゃないですか。ネットだろうが現実社会であろうが、みんな陰口は叩くものじゃないですか。
木暮:ですよね。そうなると、ちょっと出ようとしたときに叩かれて、やっぱ止めようってなっちゃう人はすごく多いと思うんですよ。それに対して、古市さん的にどう考えているのか。
古市:一個はしょうがないって思うのと。ただ、あと一個はひとつ前の質問に引きつけていうと、いかに逃げ道を持つかっていうことが大事だと思うんですね。
木暮:逃げ道を持つ?
古市:覚悟を持つことにしても、胆力を持つことにしても、そのために逃げ道をいかに持っているかということが大事だと僕は思っているんです。
木暮:逃げ道というのはどういうことですか?
古市:例えば、起業家精神とかチャレンジしようっていうと、本当にもう「崖っぷちでがんばります」みたいなイメージを想像しちゃうんだけど、そうじゃなくて。
本当はチャレンジ精神とか挑戦って、余裕がある人のほうができるって僕は思っているんですね。例えば、起業家の割合でいうと、実は北欧って起業率が伸びているんですね。この前も、フィンランドに行って来たんですけど、フィンランドは起業家の割合がすごく伸びていて、フィンランドって福祉国家っていわれるくらい、基本的に日本と比べても、遥かにいろんな福祉の水準も手厚いし……。
木暮:社会主義っぽいような。
古市:社会民主主義の国家なんですけど、福祉国家って人からチャレンジ精神を奪ったりとか、みんなを温々してしまうというのも当然あると思うし、一部の人はそうなんだろうけれども、起業家にインタビューしたら、「福祉国家だからこそ挑戦はできた」って言っていたんですね。
木暮:それはセーフティネットがあって?
古市:セーフティネットがあるから、挑戦をしても、またやり直せるっていうのがすごい大事だと思うんですね。だからそれって、アゲインストの風とかにもいえて、本当に崖っぷちの人が悪口を言われたらだめかもしれないけど、僕の場合は、まぁメディアとかに出なくても、別に友達との仕事もあるしなぁとか。
最悪、海外に留学に行っちゃえばいいのになって、選択肢がいくらでも思い浮かんじゃうから、あんまりそれって気にならないんですよね。
だから、もしも本当にメディア1本でやろうとしている人が、そういうネットで悪口を言われたら、ショックを受けるかもしれないですけど、それじゃない道もあるよなって思える限りは、そんなに気にならない。
木暮:ということは、今自分でできるセーフティネットとしては、いくつか選択肢を用意しておくってことじゃないですか。でも、フィンランドの場合って、社会としてそういうのを用意しているって話じゃないですか。例えば、今回は政府に頼らないってことですけど、社会に何かを求めるとしたら、古市さんは何を求めたいですか?
古市:社会に求めるのは、セーフティネット。つまり、現役世代に向けた社会保障。
木暮:それはお金?
古市:お金とか職業訓練とか、何でもいいんですけど。日本って、社会保障の使い方を見ていても、高齢者向けの社会保障はだいたいOECDの先進国並みの水準まで来てるんだけど、現役世代向けってほとんど無いんですね。
それは職業訓練でもいいし、失業手当でもいいですし、なんでもいいんですけど、そこが足りない。だから、そこが足りないと、会社からドロップアウトしちゃったら、もう何も無いんだろうなって思わせちゃうってことですよね。
それが社会に求めるひとつのことで、社会に求めている暇も無いっていう段階で、個人ができることとして思うのは、確かに社会保障は貧弱ではあるけども、さっき慎くんが言っていたように、実は日本って恵まれているとも思うんですね。
たしかに改善できる余地もあるけども、日本の20代・30代って、世界中の20代・30代から見たら、遥かに水準的に恵まれている。
木暮:例えば、何の水準?
古市:わかりやすい例でいうと、日本国籍の人がパスポートを持っていれば、ビザが無くて、160とか170の国に行ける。これって世界トップ5ぐらいのビザ無し行ける国の数だと思うんですね。
例えば、中国国籍の人だったら、ビザ無し行ける国って、たかだか40ぐらい。たぶん、えーとパスポートが無いんでしたっけ?
慎:持ってないです。
古市:だから……。
慎:僕、法律的に無国籍なんで、どこ行っても、途上国だと別室に連れて行かれて囲まれるっていう、楽しいコースが付いています。
古市:そう……。とかと比べると、日本国籍の人がパスポート持っていたら、世界中のほとんどの国に行けて、しかもそんな疑われもしないじゃないですか。こいつ怪しいこととか事件起こすなぁとかってことは大抵疑われない。
これってすごいアドバンテージだと思うんですよね。だから、実は普通の平均的な日本人が何も持っていないと思っている人でも、実はその持っているものをリストアップしていったら、意外と持っているんだなってことは思えるんじゃないかなとは思います。
木暮:じゃあパスポートが無い状態で、ディスアドバンテージと言ってしまうと、あれなんですけど……。
安藤:私、びっくりしました。パスポートが無かったんだ。慎くん。
木暮:入国だけじゃなくて、出国のときも出してもらえないみたいな話……。
慎:前に、ちょっと衝撃受けたのが、中国でサマーダボスっていうのに参加したんですね。いわゆるダボス会議の中国版。そこに参加する人用の特別レーンまで空港にあったんですけど、出国するときに、「お前は通さない」と言われてですね。
飛行機があと何十分で出るというところで、こういうのしたくもなかったんですけど、怒鳴り散らして、「いいから通せ」って言って、通してもらったっていう。
木暮:パスポートが無くて通れないのに、怒鳴り散らすと通れるっていう(笑)。
(会場笑)
慎:でも、ちょっと補足させていただくと、最近国連でもですね、グローバル・ステートレスネスというのは、ひとつのトピックに上がってまして、だいたい5000万人ぐらい居ます。だから1000人のうち1人は国籍が無いんですよ。だいたい第2次世界大戦の名残りです。20世紀前半の名残りなんですよね。質問なんでしたっけ?
木暮:さっきの質問に戻りますけど、世の中からバッシングを受けたときに、どういうふうに自分として捉えるのか、かわすのか。そこが無くて留まっちゃう人が多いと僕は感じているので。それについてはどう思いますか?
慎:一番楽なのは、たぶん聞く耳を持たないとかだと思うんですけれど……。個人的には、もうちょっとマゾっぽいかもしれないけど、もうちょっと真面目に接したいと思っていて。
例えば、自分が書いた本に、Amazon欄ですごく荒れる。本が売れると、だいたい荒れ始めると思うんですけど。最初、書かれているときに「う~ん」と思うんですけど、そういう人って、たぶん星いっぱい付けてくれたコメントに、「参考にならなかった」を付けまくって、それを落とすっていうのをするんですが。
たぶんここにいる人みんな経験している気がするんだが。じっと心を落ち着けて読んでみると、正しいこともある気がするんですよね。
木暮:一理ある?
慎:一理ある。それに対するアンテナを失わないでいたいなと思っていて。というのも、そういう大勢の人が考えているっていうことは、それもある意味社会の声だったりするので。
それを素通りする力も、時には必要だと思うんですけれど、意外とそういうのも個人的には大切にしていきたい。結構、時々「う~ん」と沈んだりもするんですが、それのほうがむしろ長期的にはいいんじゃないかなって。
木暮:なるほど。女性の視点から見てどうですか? 安藤さん。
安藤:どうですかねぇ、女性の視点?
木暮:ごめんなさい、女性代表じゃなくてもいいんですけど。
安藤:私も毎日リプライはほぼゼロなんですけど、検索すると出て来るみたいな。裏で、給湯室で悪口は言われているんですけども、時々ね。
でも、私それまでずっと嫌だったんですよ、それが。なんか悪口言うやつ嫌だなと思ってたし、できることなら目も耳も塞いでいたかったんですけど。
実はちょうど1年前かな、家入(一馬)さんが出馬されたときに、私のことをコテンパンにネットで書いた人に出会っちゃったんですよ。目の前で。私は、書かれていたことはエゴサーチして認識していて、顔もわかっていたんですけど。
木暮:向こうは名前を出して書いていた?
安藤:名前を出してちゃんと書かれていた方で。一理あることも書いてたんです。でも、基本的にムカついてたわけですよ。会ったこともないのにと。で、会っちゃったんです(笑)。
それが本当に緊張したんですけれども、実はそこでさっきも言ったように、飛び込んでみたんですね。まず握手して、いろいろと話をしてみたら、やっぱりその人にはその人なりの思うこと、正義とか、思うことがあって、書いたっていうことがわかって、私の心の中で雪解けがあったんですよ。結構いい奴だなと思って(笑)。
そしたら、その後二人でお茶するみたいな仲にはなりませんけど、すごく仲良くなって、お互いにしょっちゅう「いいね!」押したり、コメントしたり、メッセージを送りあったりなんかがあって、ちょっとしたことなんですけど、結構それが大きかったんですよ。
木暮:たしかに、懐に飛び込んで仲良くなるっていうのは、僕もいいやり方だと思いますね。
安藤:かといって、別にそれ以外のケースがあるわけじゃないんで、ほんの一例なんですけれども、当たり前ですけど、相手も人間なんだなというか。完璧じゃない、でも思いがある人間なんだなと思うと、良かったですかね。
あとは、旅に出ることじゃないですか? 旅というか外国に行くっていうのも結構あって、私もちょうど、3〜4日前にメルボルンから帰って来て、来月頭もすぐセブ島に行っちゃうんですけど、これは意識的に、そして書籍とか雑誌の企画で海外も行かせていただくことが増えた、いろんな結果なんですけれども。
メルボルンで F1を見てたんですよ。合間にすごく美味しいコーヒー飲んでたら、結構どうでもよくなるというか。だから、ネットだけじゃなくて、女性ひとりでもいろんなことをやっているので、女性の観点からすると、たぶん男性が想像する以上に、いろいろ大変なことがあるんですね。
あんまり考えないようにしてるんですけど、やっぱりあるんですね。「あぁ、ここちょっと舐められたなぁ」とか。「軽くみられたな」とかあるわけですよ。でも、誤解されたりとか、F1の1000分の1秒で戦っているレーサーに比べたら、自分って1時間のんびりお茶もできて、3〜4日海外にも行けて、全然いいなって思うし、いっしょに旅した友達がいれば、これも結構幸せかなみたいな。
木暮:ちょっとまた視点を変えたいんですけど。今回、「新たな価値観が生み出すワークライフスタイル」ってありますけど、今までの通念でいうと、終身雇用があって、初志貫徹みたいな話があって、「二足の草鞋を履くなんてけしからん」みたいな風潮があったと思います。
現に今でもそういうふうに言う人もいます。僕も言われたことはあります。ただ、僕も含めてこのメンバーはみんないろんな側面をもっているじゃないですか。
それを批判する人たちのひとつの根拠は、一本に集中しないと、専門を持って、そこに一球入魂しないと、専門性が育たないんじゃないかと。力として発揮できないんじゃないか、というのがあると思うんですけれど。それは、古市さんはどう思いますか?
古市:日本ってそもそも、あんまり専門性を重視してこない社会だったわけですよ。
安藤:本当ですよ。スーパージェネラリストですよね、会社とか。
古市:会社員って名刺は一個だけれども、部署はどんどん変わっていく。そういう意味で、専門性云々ってものは、そもそも日本自体を重視してこなかったから、それはあんまり批判になってないと思うんですけど……。
木暮:例えば、多くの会社が副業禁止じゃないですか。それっていうのは、本業が疎かになるから、っていうのが背景にあると思うんですね。
古市:でも、日本の会社って、労働時間も無視して、そこの会社のメンバーになるかどうか。自分の何らかの専門性を対価として渡すんじゃなくて、全人格的に自分をその会社に捧げますっていう人材を求めてきたから、おそらく副業規定というものがあったと思うんですけれども、それも徐々に変わっていくとは思います。
おもしろいと思うのは、日本ってたしかに終身雇用で年功序列っていうイメージはずっと強かったんだけれども、実際に統計を見てみると、一個の学校を卒業後に、ある会社に入り、それで定年まで勤め上げた人って、男性では3割ぐらいしかいないんですよ。
女性に至っては、過去は結婚で辞めてましたから、ほぼいない。だから、そもそも終身雇用とか年功序列っていうのは飽くまでも一個のイメージで、たしかにそれを標準だとみんなが思い込もうとしたんだけれど、実際に勤めた人っていうのはあまりいないわけですよ。
だから実は日本って、一個の仕事にみんなが従事していたわけではなくて、ブルーカラーの人を中心に転職も当たり前だったし、いくつかの仕事を掛け持ちするってこともそんなに珍しくなかった。
しかも戦前まで遡ってしまうと、そもそも戦前って、自営業者、農業従事者がすごく多い国でしたから、複数の仕事を掛け持ちするのは当たり前だったというか、掛け持ちしないとやっていけなかった。
たぶん、これからもそういうふうになっていくと思うんですね。なぜかというと、貧しい人が増えていくからです。正社員にもなれない、一個の安定した仕事に就けないと、複数の仕事を掛け持ちせざるを得なくなる。
すごいアッパー層で、いくつかの名刺を持ちながら、複数の領域に渡る仕事をしていくんだろうけど、逆に一番下の層も、ひとつの仕事だけではお金を賄いきれなくなって、バイトなり仕事なりを掛け持ちしてくってことが必然になってくるんだろうなっていう気がします。
木暮:イタリアでもセカンドワークというのは一般的に。昼間働いて、帰って来て、夜また働きに行くっていうのは一般的に行われていることですし、そういうことになっていくのかなって思うのですが。
個人で考えると、慎さんに伺いたいんですが、仕事という以上お金を貰うじゃないですか。ということはある程度、他人と比べて秀でていなければいけないとか、ちゃんとできなきゃいけないですよね。
そのための能力を自分の中で育てるために、二足三足の草鞋っていうのは、どうやったら履けるようになると思いますか? どうやったらそれぐらい力を身に付けられるか。
慎:なんでしょうね。
木暮:例えば、ご著書の中で書いていたように、ある程度一生懸命やらなきゃいけないよ、とか。
慎:私ずっとNPOをやっていましたけど、本業優先で常にやってました。今もそうで、本業はガチンコで。民間初の世界銀行をつくるって言い張って、30年後にそれをつくるつもりでやっているので、世界中の人に金融サービスを届けるっていう。今も持っていない人が30億人ぐらいいるので。それは変わらずずっとやっていくつもりで、真剣にやっているんですけれども。
だから、それは常に自分の専門性として持っていたことで、常に変わらずやっているんですが、それを目指すからといって、24時間全部仕事だけしなきゃいけないかっていうと、昔はそう思っていたんですけれど、意外とそれだけでもきついなって思うようになったんですよね。
(ユニクロの)柳井さんの話していたことがすごく印象に残っていて。17時以降って家に帰ってテレビを見てるっていってるんですね。
木暮:柳井さんが?
慎:イメージつかないですか? テレビ見てぐだーってなってますって書いてて。
「何でですか?」ってインタビュアーの一橋(大学)の先生が聞いてたんですけど、7:30から17:00まで仕事してたら、ヘトヘトになって、仕事のことなんか考える余裕がないと。
24時間あると思って仕事をしてるとそうなんですけど、10時間ぐらいでやらなきゃいけないって決めてやると、実際そうなんですよね。私、最近はそんな感じで。
カンボジアって朝早くて、7:30から金融機関行って、そこで仮CEOみたいな仕事をずっとしているんですけど、17:00ぐらいになると、ヘトヘトなんですよ。
頭切り替えないとつらいなぁと思って、他の本を書くとかNPOの活動をするとかっていうのをずっとやってるんですね。
木暮:ヘトヘトになったなかで、次のNPOも仕事といえば仕事じゃないですか。執筆も仕事じゃないですか。次の仕事っていうのは、いけるものですか?
慎:別腹じゃないんですけど、脳みそってそうなっているっぽいんですが、ひとつのものに関して突き詰められる時間って、真面目に仕事をしていると、8時間が限界だと思うんですよね。
それ以上って、たぶん人間は生物的に無理。もしかしたら違う人もいるかもしれないですけど。私囲碁をずっとやっていたので、1日中集中して、小学生の頃から9:00から18:00までずっと碁を打つみたいなのをやってたけれど、それぐらいが限界なんですよね。
意外とそれ以外のほうの脳みそは回るんですよ。だから、モードが切り替わると、その分精神的な体力が戻っているというか。
木暮:なるほど。時間の使い方として、固めてぎゅっと、本業というか1つ目の仕事をやり、脳が疲れてきたら切り替えて、2つ目のものをやるっていうのは十分可能である?
慎:可能であると思いますね。まず、仕事は長けりゃいいって価値観を壊すというのがすごく大切だと思うんですけど、人間の命と同じで、時間にも区切りがあるっていうのを、意外と皆さん、私も含めて、考えずに24時間あると思うから、だらだら働く。
だけどそれを実は有限なんだと。有限な時間に終わらせるんだと決めると、また違うことができるんじゃないかなと思うんですけどね。
木暮:安藤さん、時間の使い方に関しては、どういうふうに意識してます?
安藤:結構いっぱい寝ますし、スケジュール管理をちゃんとやっているわけじゃないんですけど、むしろ生来飽きっぽい性格で。ただ、熱中もしやすい性格だったりするんで。
アプリを次々起動するように、マルチタスクがあまり苦にならないっていう。つまり何が言いたいかというと、ワークスタイル、ライフスタイル、いろいろあるじゃないですか、世の中に。とにかく自分に合っているものをやるっていうことだと思うんですよね。
私は20代ずっと出版社で社員やってましたけれども、そこで出版に関わる専門性がどれだけ磨けたかはわからないですけど、やっぱりひとつの仕事に従事するのが退屈に思えたし、できることならいろんなことをやりたい。
例えば、本当に今だと、朝は大学の広告のデザインの打ち合わせを教員・職員と一緒にやって、そのあとはイベントに登壇して、そのあとは出版の打ち合わせして、商品企画の打ち合わせして、そういう感じなんですよ1日。
そうやって切り替えていくやり方が自分には合っているし、新しいことをやろうと決して思っているわけではないんですけど、新しい感覚とか価値観はすごく大事で。例えば、ライフスタイル的なことでいうと、私は家を買わないってポリシーをもっていまして。
木暮:安藤さんが自分に合うスタイルを見つけられたのは、何があったから? もしくは、それをこれから見つけようとしている人たちは、どうすればいい?
安藤:例えば、不動産のことでいうと、うちの叔父が不動産投資で、家をたくさん持っていますと。でもそれ見たときに、「私はこういう生き方じゃないな」と思ったんですね。
不動産よりも可動産。不動の財産を持つっていうのは20世紀的な感じがして。ごめんなさい、否定しているわけじゃないんですけど、感覚として正直に言うと。
でも、これからっていうのは、可動的な生き方っていうか、身軽に洋服も1年間で30着しか持ってなくて少ないんですけれど、とにかく身軽に、物も少なく、思い込みも制限もできるだけ外して、いろんな仕事をいろいろな場所や人と関わりながら、やっていくみたいな。それはひとつでいうと、叔父のひとつの仕事から対比させて、自分はこうだなぁと思ったり。
木暮:いろんなサンプルを吸収するのが、最初?
安藤:だからG1サミットの方って、本当にスペシャリストな方が多くて。毎回、上場したとかあるじゃないですか? あれを聞く度に、自分の生き方とは全然反対だなというか。
それは本当にすばらしいと思うし、でも自分の個人商店的な生き方も、すばらしいと思うし、そうやって常にいろんな中で、人との対比や対話の中から自分を見つけていく感じがしてます。
木暮:一方で古市さんは、結構自己との対話が多そうですけど……。
古市:さっきの話に戻っちゃうんですけど、さっき安藤さんは自分の悪口言っている人と会って仲直りしたっていったじゃないですか。僕は前のG1で池田信夫さんとすごく談笑して、仲良くなったと思ったんだけど、その後も延々とTwitterで悪口書かれて。
木暮:たまに、会っているときの人格とネットの人格が著しく異なる方がいらっしゃって(笑)。
古市:あれなんなんですか?
木暮:池田先生は池田先生のキャラクターがおありになるのかと思いますが(笑)。
古市:質問はなんでしたっけ?
木暮:いろんなサンプルを吸収して、今の自分の道はこれかな、って選ぶタイプと、古市さんの場合は、自分の中で本とかとの対話が多そうで。なんだろうなぁ。
(会場笑)
古市:社会に適合していないってことですか?(笑)
木暮:誰かのサンプルを見て、「この人の生き方を参考にしよう」っていうふうには見えないんです、僕からは。だって小学校のときに、月曜日を休みにしてたんですよこの人。勝手に。
古市:当時は週休2日じゃなかったから、多いじゃないですか。
木暮:多いかどうかってのはあなたが決めることじゃないよっていう……(笑)。それぐらい自分の方針というのが、僕から見ると、あらかじめあって。
古市:そうですね。僕って何かが起こると、自分の間違いじゃなくて、社会の間違いを疑っちゃうんですよ。例えば、届いているはずの郵便物が届いてないとなると、自分が失くしたんじゃなくて、郵便局が悪かったのかとか、相手が送ってないのかなとか。
(会場笑)
まず誰かを疑うんですよ。まず誰かと社会を疑って、全部可能性を潰した上で、もしかしたら自分が失くしたのかなっていうふうに初めて後から思う。
木暮:最後の最後で。
古市:そういうことが多いんですけど。だから、あんまり自分のせいとかにしないです。
木暮:古市さんを見てると、そこまで他人を批判しているように見えないので、そこまで自分のせいも含めて一環的に処理しているのかなって感じはするんですが……。
古市:たしかに、自分のワークスタイルを考えるときに、あんまり他者の事例を参考にっていう感じでもないですね。単純に自分が一番ストレスないものを選んでる気がします。
安藤:それは同じくですね。
木暮:それは大事な話というか。安藤さんが選ぶときも、いろんなサンプルがあったなかで、自分がっていう。
安藤:それのために、3000人と名刺交換しましたもん。いろんな人の話を聞きました。
木暮:でも3000人と会っても、わかんなくない? 深い話ってできなくない?
安藤:もちろん、名刺交換がほとんどなんで、そのなかで話を聞いたのは100人弱ぐらいだと思うんですけど。
木暮:100人とは深い話を?
安藤:話しました。土日も全部。朝の時間も使って。
木暮:慎さん、どうやって行き着いたんですか? 今の感じに。
慎:今のですか? 僕の場合古典が昔から好きなので。古典って岩波文庫とか。それが基本、座標軸です。
木暮:本から情報とか知識とか知恵をもらって、そこを自分で咀嚼していって……。
慎:とくに最近は、ひとつの本を何回も読むっていうことがすごい増えて。
木暮:それいいですね。
慎:論語とかすごいですよ。最近のマイブームは、ヒンズー教のギーターっていう聖典なんですけど。インドの哲学者の解説付きで読んでたら、そこには世界の全てがあるって言われるほどの聖典なわけですが、たしかにそうだなぁと。2000年レベルで残っている本ってすごくて。たぶん、そこらへんが自分の軸になっている気はします。
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