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A Conversation with Eric Schmidt and Jonathan Rosenberg(全3記事)

若者が学ぶべきスキルは? Googleシュミット会長「分析力とプログラミング、統計学とデータサイエンス」

Google会長のEric Schmidt(エリック・シュミット)氏、『How Google Works』の著者であるJonathan Rosenberg(ジョナサン・ローゼンバーグ)氏、Kahn Academy創設者のSalman Khan(サルマン・カーン)氏が、これからの働き方や人材の育て方について意見を交わしたトークセッション。本パートでは、シュミット会長がテクノロジーの進化によって教育の形がどう変わるかを予想しました。

企業文化を変えるチャンスはどの企業にもある

サルマン・カーン氏(以下、サルマン):お二人は既にイノベーションが起こっている環境に後から貢献したと思います。そこで「Googleのカルチャーを作る時、何が難しくて、他の国だったらどう難しいか」という質問です。最後のところは興味深いですね。別の国と言わずとも、別の会社でGoogleみたいな会社を作れますか?

エリック・シュミット氏(以下、エリック):会社のカルチャーは上部の人間で決まります。本の中で有名なスローガンの話があるんですが、君が好きだったのは何だったっけ? エンロンだっけ?

ジョナサン・ローゼンバーグ氏(以下、ジョナサン):エンロンもそうだけど、レーマンのやつも確か「献身と忍耐を持つ社員と共に無償の協調関係で、投資者のために株主価値を作る」だったかな?

エリック:それ、ブランディング会社が作ったコピーだと思うよ(笑)。まあそれは冗談として、企業のカルチャーは社員が一番わかっていると思います。既存の会社に入ったとき、創設者やCEOではなく、社員にカルチャーについて聞いてみてください。正直な回答を得られて、改善の余地も見えるでしょう。

「斬新で面白いからGoogleでできた」と言われることが多いのですが、そうは思いません。アメリカの企業では平均的に1年で5~10%の割合で社員が入れ替わります。ここにカルチャーを変えるチャンスがあります。

それを機に、本でも触れているように採用プロセスを変えてみたり、変化を求める機会があります。どの企業にも、何かしらの戦略があると思います。きちんとした5年計画を作って、社員達がそれを信じられれば、問題ないと思います。

シリコンバレーにおけるジェンダーフリーへの取り組み

サルマン:次の質問は、近日話題になっている取り組みです。

「ジェンダーフリーに対して、どのような取り組みをされていますか?」

ジョナサン:「多様性は視野が狭まることを防ぐ」と我々は言います。「Girls Who Code」など、プログラマーの多様性に対する取り組みには多く投資しています。実際に先日トロントへ行ったのですが、子供達が作った3Dプリンター作品やゲームなどのデモを見ました。Googleでも女性のメンターをすることはよくありますし、例年採用時に行う多様性プログラムに参加することもあります。

エリック:この業界は、男女の比率に大きな問題を抱えています。生物学や他の分野を見ると、博士の多くは女性です。比較すると驚かされます。我々がやっていることで何かがおかしいことを認識して、直す必要があります。

ジョナサン:最近、女性と少数者に関する白書を発表しましたが、他のシリコンバレーの会社も同じような取り組みを始めていることを嬉しく思っています。

サルマン:ただ単に入ってくる人たちが少ないだけなのでしょうか、それとも社内の文化が女性に消極的に捉えられてしまっているのでしょうか?

エリック:見えないバイアスがある、という証拠は数多くあります。リベラルな会社でも、バイアスは生まれてしまうものです。我々はバイアスが生まれないように努めています。現在は取締役会に女性が3人いて、女性管理職者の多くが自分の会社を作るために退職しているので、良い方向に進んでいると思いますが、まだまだできることはたくさんあります。

自身が今のGoogleに就職したいと思うか?

サルマン:おっしゃる通りですね。次も興味深い質問です。

「今だったらGoogleに就職したいと思いますか? するとしたら、どのプロジェクトに一番興味が湧きますか?」

ジョナサン:もちろん応募しますが、採用されるかはわかりませんね(笑)。

エリック:僕も同感です。自分たちを対象にして採用プロセスを考えたことはないですね。

ジョナサン:面接官の要望に応えられるかわからないですね。Googleの広告システムを若者に学んでもらうことは、もちろん会社にとって重要なことです。そしてさらに、これを学べば、スタートアップに参加して、インターネット上で利益を得る仕組みを提供する機会を得ることができます。

これは長期的にも重要なスキルです。資金調達やプロトタイピングが楽になったため、いいプロダクトがあるスタートアップに協力してマネタイズする仕組みを理解できれば、とても良いキャリアパスに乗れると思います。あるいは世界を変える物事に参加することもできます。コンタクトレンズや自動運転が良い例です。このどちらかに限られると思います。

エリック:これまで私はコンピューターサイエンティストとしてOSのプログラム言語を作ってきましたが、過去のトレーニングを武器に、Androidのチームに参加したいです。数億もの人に、プラットフォームに使用されていることは今でも信じがたいことですし、ぜひ携わりたいです。

逆に私がまだ若者で異なるバックグラウンドがあるとしたら、Google Xのプロジェクトには惹かれます。ソフトウェアとハードウェアの融合を、想像したこともないような手法で行っていますから。

若者はプログラミングとデータサイエンスを学べ

サルマン:同じ系列の質問として、12歳とか15歳の少年少女がGooglerになりたいとしたら、シリコンバレーでキャリアを積むためにはどのようなアドバイスをしますか?

エリック:今のティーンは、両親や社会からのプレッシャーが大きくあると思います。私自身は元からコンピューターが好きだったので自然とこの業界に入りましたが、あまり干渉しないことが大事だと思います。できるだけ自然にさせて、何かに追われている18歳にさせないことです。それは人間として、まだ成長仕切っていない脳を持つ若者として、よくない状態です。

早い段階でプログラミングを学ぶことも重要です。早期に読書のスキルを発達させることがパフォーマンスに大きく影響することは教育者ならご存知だとおもいますが、読書から発展して、プログラミングを学ぶことは大切です。

別にCやC++ではなくても、ゲームやグラフィックスをいじったりしてどのように動いているかを理解すればいいのです。考え方が変わり、思考の整理ができるようになります。プログラマーにならないとしても、例えば弁護士や医者になったとしても、このスキルは役に立ちます。

ジョナサン:私の答えはもっと文系らしいものになりますが、統計ですね。ビル・ゲイツも言っていましたが、彼はコンピューティングのコストが下がることを理解していました。

莫大な量のビッグデータがあり、そのデータにはインターネットで無料でアクセスできます。タダでアクセスできるデータに自然と紐づくのは、そのデータの分析能力です。アナリストは今後一番求められる職業になると思います。

エリック:ちなみに今では「アナリスト」ではなく「データサイエンティスト」と呼ばれることが多いですね。

ジョナサン:なるほど、ありがとう。

エリック:アナリストとデータサイエンティスト、どっちも言っていたら、完璧な答えでしたね(笑)。

ジョナサン:来週はそう言うよ(笑)。

エリック:Khan Academyでも検討すべきだと思いますが、分析力とプログラミング、統計学とデータサイエンスの理解は若い時に持っておくべきことです。何でも測り、何でも視覚化される時代です。データから何を読み取るのか、どう分析するのか。

サルマン:おっしゃる通りですね。

機械は人間よりうまい運転ができる

サルマン:次の質問は私も気になりますが、「現実的にいつ頃、自動運転が一般化しますか? また、どのようなテストを行っていますか?」

ジョナサン:一般に100年ほどと言われていますが、もっと早い可能性もあるのではないかと思います。

エリック:テストではね、ジョナサンが操縦するんですよ。

ジョナサン:自動運転車を運転したのは最高だったよ。いや、自動運転だから運転していないか(笑)。初めて運転する人に教えるとき、助手席に座って、存在しないブレーキを踏んでることがあるでしょう? あんな感じです(笑)。

でも20分ぐらいすると、安心できるんです。自動運転はわき見しないし、飲酒もしません。前方車を見るレーザーは我々の目よりむしろ認識は正確で、衝突したりしません。自動運転車は、今我々が運転している車より安全です。自動運転によって多くの命が救われると思います。

エリック:規制的な観点からは、実際何年かかるかはまだ分からないと思います。懸念の声もありますし、既存の車と共存できるものなのかという疑問もありますが、様々な条件下でのテストはたくさん行っています。いつ「自然に返す」かは、まだ疑問ですね。

サルマン:教育関係で知り合いのセバスチャンに聞いたのですが、64万キロくらい走っているそうですね。

エリック:まだ無事故です。

ジョナサン:あなたより運転上手ですよ(笑)。

サルマン:でしょうね(笑)。

ジョナサン:一般論として、自動運転は上手いですよ。

サルマン:私の運転はちょっとアグレッシブだからな(笑)。

エリック:それは君じゃなくて、周りの車が危ないんだよ(笑)。

サルマン:母親にもそう言われましたよ(笑)。

起業家精神は教えられるが、情熱を教えるのは難しい

サルマン:さて、それでは次の質問です。「Appleはモバイル決済の領域で話題になっていますが、Googleはその領域で何か行っているのですか?」

ジョナサン:Mobile Walletが既にありますが、Appleもそれに似たものを発表しましたね。Appleがモバイル決済を促進すれば、より多くのNFCレジが導入されるため、我々にもメリットがあります。今後モバイル端末にそのような機能を増やし、コストも低くなると、Mobile Walletを使う人がどんどん多くなると思います。

エリック:これはAppleもそうなのですが、GoogleやAmazonが使うプラットフォームで生まれるイノベーションでは、皆が有益な立場になります。ジョナサンがいつも「摩擦の無いマーケット」の話をしますが、物を買うことを簡略化させたとき、購買率は自然と上がりますから。

サルマン:次は「もともと起業家では無い人に、その精神を植え付けるためにはどうすればいいですか?」という質問です。そもそも可能なんですか?

ジョナサン:情熱は教えることはできません。だから我々も採用プロセスで情熱を深く探っています。しかし何かを作り上げて成功させる、というポジティヴな感情を与えることはできると思います。あまり成功のない技術者に、作ったものをマネタイズする手法を教えると、起業に興味を持ちます。情熱より起業精神の方が教えやすいかと思いますね。

エリック:私もそう思います。

テクノロジーが教師という職業を奪うわけじゃない

サルマン:この質問は仕込んだわけではないのですが、「教育は技術によってどう変化しますか?」という質問がきています。

エリック:その質問はサルマンが答えるべきじゃないかな(笑)。

サルマン:私が書いたわけじゃないですよ。筆跡が違いますよ(笑)。

エリック:とりあえず答えなよ。

サルマン:お二人の時間を奪いたくはありません。

エリック:だってあなたが書いた質問でしょう?(笑)

サルマン:私じゃないですって。

エリック:じゃあ私があなたっぽい答えを出しましょう。この部屋にいる人はみんな同じような教育をされてきた人だと思います。しかし、人によって学び方が異なることは、科学的に証明されています。

ゲーミフィケーションや新しい実験手法を用いて、今あるネット上の教育ツールを使うと学びのスピードが上がることがわかります。もちろん、これで先生が不要になるというわけではありません。先生がこのプロセスを監視することによって、より効率的な学びが実現するのです。どう、この答え?

サルマン:最高ですよ。

エリック:だからKhan Academyの役員会に入れてくれたんだね(笑)。

今後増えていくのは反転授業

ジョナサン:私は今後、反転授業が増えていくと思います。

エリック:誰がそのコンセプトを推進したんだろう?

ジョナサン:君か?(笑)

エリック:違うよ、サルマンだよ!(笑)

サルマン:そういうわけではないけれど、その手法を取り入れてはいます。

ジョナサン:大学生たちが予習として、有名な物理学者が教えるアインシュタインの相対性理論の動画を見るとします。それを元に、授業では教授とディスカッションを行うのです。このモデルがどんどん普及するでしょう。さらに、携帯端末の普及によって、学習環境に恵まれていない人たちも無料で学ぶことができるようになります。

エリック:人々に教育を与える取り組みや、サルマンたちが行っていることは革新的です。それはもちろんやるべきですが、大学教育を経て今ここにいる人たちも、このような教育手段から学べることはたくさんあります。

ある物理学の授業で行われた実験がありました。10分間のレクチャーを見て、質問の答え方を教え、実際に質問に答えてもらい、手法を分析するというものです。この方が従来の物理学のレクチャーより効率的であるという結果が出ました。2倍も効率が良かったんです。この結果が他の分野で適応できるのかはわかりませんが、物理学では有効だという結果が出ています。

質問の答えは『How Google Works』の中に

サルマン:少しだけ触れたかもしれませんが「Googleが今後発展していく中で、カルチャーを保つ為にはどうするのですか? 今までも拡大する中、どのようにカルチャーを保ってきましたか?」という質問です。加えると、Googleが発展していくとき何が一番心配ですか?

ジョナサン:この内容を『How Google Works』にまとめたんですよ。

エリック:社員全員に渡しました。

ジョナサン:と言ってもデジタル版ですが。今朝も社員会議で、その内容について意見を聞きました。本に書いてあることで、まだ意識的に行っていないことなどをヒアリングしました。トロント、ワシントン、ニューヨーク、マウンテンビュー、来週はロサンゼルスにこの話をしに行きます。

「群の掟」を共有した後の話し合いが大事です。今までもやってきたことですが、この本は2009年に私が行ったトークを元に生まれたものです。当時は急成長していて、社内のルールなどを書き留めようとしていたんです。

エリック:このトークの題名は?

ジョナサン:面白くないタイトルだったな。「出版しないであろうベストセラーの為のメモ書き」だったかな。

エリック:それが昨日で?

ジョナサン:ベストセラーになっちゃったね(笑)。

サルマン:おめでとう。

エリック:成功者の仲間入りだな。

サルマン:やっと成功者になったんですか。傍聴者の皆さんも不安を感じているでしょう、私の本はそこまで成功できなかったですね。

ジョナサン:毎日100万PVじゃないか!

サルマン:それはそうだけど……。

エリック:文句を言うのはやめなさい。世界一有名な教育者なのに不満なの?

サルマン:確かに金銭以外の裕福さはあります(笑)。

サルマン:最後にもうひとつ質問を読みます。

「エリック・シュミットによる、Googleの再生可能エネルギー促進には敬意を示します。Googleは気象変動に関する法制度に対して、どのように改正を求めるのでしょうか?」

エリック:気づいていないかもしれないですが、なかなか法改正しようとしないのです。我々が選んだ人たちだから文句は言えませんね。気象変動はすぐに対処しなければならない問題だと思います。

データを見ると、今後フロリダの半分は海面上昇によって、洪水でなくなってしまうとのことです。フロリダ以外も、ヒマラヤ山脈の飲料水や遺伝的多様性が影響されます。物がないことから紛争も生まれつつありますね。

今日の気温もおかしいでしょう? 様々な観点から見ても、気象変動は既に始まっていると思います。どのように対処するかはさておき、まず事実を並べるところからはじめなくてはならないと思います。

サルマン:どうもありがとうございます、とても楽しかったです。まだ延々と続けられますがここまでにしましょう。みなさんもぜひ、『How Google Works ― 私たちの働き方とマネジメント』を読んでみてください。

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