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A Conversation with Eric Schmidt and Jonathan Rosenberg(全3記事)

Googleがミーティングでプロジェクターを2台使う理由とは--エリック・シュミット会長が語る会議術

Google会長のEric Schmidt(エリック・シュミット)氏、『How Google Works』の著者であるJonathan Rosenberg(ジョナサン・ローゼンバーグ)氏、Kahn Academy創設者のSalman Khan(サルマン・カーン)氏が、これからの働き方や人材の育て方について意見を交わしたトークセッション。本パートでは、Googleが求める「スマートクリエイティブ」という人材について語りました。

朝出社したら、隣の席に知らないやつが座っていた

サルマン・カーン氏(以下、サルマン):『How Google Works』は素敵ですね。様々な本が私の元に来るのですが、ジョナサンとエリックに憧れている私は「ちょっと読んでみるか」と思いましたよ。

エリック・シュミット氏(以下、エリック):タイトルのせいですよ。Googleって書いてありますからね(笑)。

サルマン:そう書いてあるから気になりますよね。実際に読んでみて、すごくためになりました。色々なことを学べましたよ。まずエリックからおうかがいしたいのですが、どのタイミングでGoogleが普通の会社ではないことに気づきましたか?

エリック:まあ、最初の日からでしたね。最初のオフィスは5人居て、私はそのテーブルの端っこの席にいました。その時点で「面白いな」と思っていたのですが、その後すぐに2.5m×3.5mの小さなオフィスに移動しました。

しばらくそのオフィスで満足して仕事をしていたのですが、ある朝出社すると、なんと知らない人が部屋で仕事をしているんです。ヘッドフォンをつけて仕事をしていたので、多分エンジニアだろうなと思いました。

挨拶したら「こんにちは、エミットです」と自己紹介してくれました。妙な感じでしたよ、何せ彼がいるのは私のオフィスだったんですから。

話を聞くと、彼は「僕のオフィスはあっちにあるんだけど、6人もいるから集中できないんだ。エリックのオフィスはいつも空っぽだったからこっちに来たんだ」と言うのです。

この時点で何を言っても意味がないことに気づき「なんてことだ……」と思いつつ、とりあえず隣に座りました。その後、彼とは親友になり、同じオフィスで3年間を一緒に過ごしました。

プロダクトプランに足りなかったエンジニアの視点

ジョナサン・ローゼンバーグ氏(以下、ジョナサン):僕はエリックより遅かったですね。3ヶ月くらいかかりました。私はプロダクトマネジメントとプランニングの経験が多かったので、当然そうした経験が買われてGoogleに呼ばれたと思っていました。

プランニングをするためには、経営学の知識が必要です。コンセプト、リサーチ、開発などのアウトラインを作り、人材やリソースを配分するのが仕事です。私はこうしたスキルを元に、最高のプロダクトプランを作り、印刷してラリー(・ペイジ)に渡しました。まあ、そもそもメールで送るべきでしたけどね(笑)。

プランが書かれた資料を手渡すと、座ってくれと頼まれて、一緒にプランの1ページ目を開きました。中身を見てラリーは「写真がかわいいね」と言いました。2~3ページ読み進めたところで、いきなり「こりゃダメだ」と言い出したのです。

理由を聞くと「エンジニアがプランから逸れて勝手に機能を追加することはあるか?」と言われました。私は当然「ありません」と答えました。次に「このガントチャートより早くエンジニアが仕事を終えることはあるか?」と聞かれたので、これにも「ありません」と答えました。

すると「じゃあこの計画はダメだ! お前はエンジニアと話をしてこい!」と言われ、エンジニアの人たちの話を聞きにいったのです。

ジョナサンがGoogleで求められていた役割

サルマン:気になったのですが、お二人が入社した頃は、Googleは黎明期ながら指数関数的な成長を遂げていましたよね。ジョナサンはマネジメントのプロとして、言い換えれば「大人」の役割を期待されて呼ばれたのだと思いますが、こうした出来事とどうやって折り合いをつけたんですか?

エリック:年頃の娘たちがいるからね、慣れてるんだ(笑)。

ジョナサン:娘はいなかったけど、私は問題なかったよ(笑)。

エリック:あれ、10代の娘さんと息子さんがいたよね?

ジョナサン:君のほうが年上だからね。そのときはまだいなかったよ。

エリック:年頃の子供というのは難しいものです。私が言うことに反発しますよね。するとしばらくして、同じことをあたかも自分が最初に言ったことかのように言うんです。

サルマン:それはなんというか……。

エリック:まだお子さんは幼いでしょう? そのうちわかる(笑)。

サルマン:それはそれで楽しみですね。

エリック:いや、それはどうかな……(笑)。

リーダーに適しているのは、可能性に賭ける人々

サルマン:社内が緊迫していたことは間違いないと思います。以前の会社では経験したことのない反応をされることもあったでしょう。新しい企業をリードする存在として、どのような経営を心がけましたか? 斬新さと堅実さのバランスは?

ジョナサン:私は本の中で、会社のカルチャーやミーティング、意思決定、透過的な情報共有などについて触れました。そこに書いたように、彼らに考え方を押し付けるのは不可能でも、考える空間を準備することはできました。みんなミッションを理解し、共感しているので、物事の進め方を具体的に述べるより、方向性だけを与えることにしました。

エリック:新しい才能を持った人たちがどこへ向かっているかを理解するためには「いいよ」と言ってあげることが大事なのだと思います。もちろん、違法でない限りですが。

これは前にあった出来事なのですが、ラリーとセルゲイ(・ブリン)がいつものようにローラーブレードをしに行って、帰ってくるなりこんなことを言い出したのです。「シリコン・グラフィックスがある場所に会社を移転しよう」と。「いくら何でもそれは無理だろう」と言ったのですが、結局SGIの本社があった敷地を購入しました。

設備投資がもたらす威力はすごいものですよ。その後、5年先の成長予測を作ったとき、社員数の予測に僕は驚きました。しかし彼らはそれでもなお「足りない」と言っていたのです。私は今あるものを大きく評価していたのですが、彼らは可能性に賭けていたのです。もちろん後者のほうが、リーダーとして適していると思います。

「スマート・クリエイティブ」という新しい人種

サルマン:本を読んだときにも思ったのですが、CEO出身者にしては謙虚ですよね。印象的な創設者2人と仕事するにあたって、苛立たしいことはありましたか?

エリック:もちろんありますが、誰が会社のオーナーかを忘れてはいけないと思います。ですよね、ジョナサン。

ジョナサン:進めてください(笑)。

エリック:シリコンバレーの良さは、スティーブ・ジョブズのような人たちがたくさんいる環境で、創設者が指揮を取る会社が多いことだと思います。彼らを見出して育て支えることが我々の仕事なのです。

もちろん、彼らのほうが詳しいこともたくさんあるのですが、私が手助けできることもたくさんありました。他人のビジョンを成功させるために仕事をすることは、素晴らしいことですよ。

サルマン:ラリーやセルゲイのみならず、優秀な人たちと仕事をしてきましたね。さて、本の大きなテーマとなっている「スマート・クリエイティブ」についてですが、シリコンバレーで働く人たちは、どう変わっていくべきなのでしょうか?

エリック:元々この本を書き始めたのは、現状がおかしいことに気づいたからなのです。大学生や大学院生は、面白い会社で働き、イノベーションを起こす気満々で卒業するのですが、結局行くのは頭の固い企業ばかりでショックを受けます。大学でのトレーニングと実際の会社で働くことの間に、大きなギャップがあるのです。

ジョナサン:私はあまりこの呼び方を気に入っていたわけではないのですが、エリックが「スマート・クリエイティブ」という言葉を気に入ったので、定義するよう頼まれました。

そこで技術力豊富で、経営に対して興味を持ち、好奇心旺盛な人のことを「スマート・クリエイティブ」と呼ぶことにしました。これまでは、技術者に説明しなくてはならなかったところ、彼らはひとりで素早くプロトタイプを作ってくるのです。

参加者全員の意見を引き出すミーティングを心がける

サルマン:彼らが典型的なエンジニアではなくビジネスやデザインに興味を抱いているとして、どのように企業の方向性を失わずに彼らに行動力を与えるのでしょうか?

エリック:様々な答えがあると思いますが、まず彼らにアイデアや企画をちゃんと話してもらうことです。ただ全て任せるわけにもいかないので、アイデアに対するレビューや評価手段として「Tuesday Google Product Strategy」と呼ばれるミーティングが設けられました。

この場でアイデアの良し悪しなどを詳細に話し合うのです。そのうち管理やプライバシーに対する意見やアイデアも話されるようになりました。もともとはマリッサ (・メイヤー)が管理していた「Top 100」という現在の活動を書いておくリストがありました。なぜか300項目もありましたけど(笑)。

ジョナサン:ミーティングの構成と意思決定の方法も大事だと思います。ジム・バースクデールが「データがあるならデータを使って、意見しかないのなら私のを使う」と言っていたように、まずデータを持ってミーティングを始めています。

エリック:もし全てのミーティングをデータ共有から始めたら、国や会社は大きく変わるでしょう。論点が全く違ってきますから。

ジョナサン:とにかくデータを元に論ずることを大切にしました。エリックはHiPPO(Highest Paid Person’s Opinion・一番給料が高い人の意見)だけではなく、皆が意見を述べられるようにしていました。

エリック:その略語、君が作ったの?

ジョナサン:そうだよ。

エリック:一番給料が高い人の意見?

ジョナサン:そうだよ。ネットに風刺画がたくさんあるんだ。みんな気に入ってたよ。HiPPO(カバ)とFat Cat(太ったネコ)だったら、HiPPOの方がいいでしょう?(笑)

でも、ミーティングは一番上の人が仕切って、参加者全員のオピニオンを引き出す立場であるべきです。意見を主張しない人はミーティングに参加する必要はありません。みんなをデータに注目させて、それぞれがオピニオンを出して、ボスが締めくくる。ミーティングはそうあるべきです。

Googleがミーティングでプロジェクターを2台使う理由

サルマン:聞くだけだと簡単そうに聞こえますが、それをどのように実践するのですか? 私がまだ若手のGoogle社員だとすると、あなた達とミーティングをしたら圧倒されてしまいそうです、今日もそうですが(笑)。社員とどうやって触れ合えばいいのですか?

エリック:様々な方法があると思います。実は我々は、ミーティングを効率的に行うためのルールを作っています。まずミーティングを仕切る人とメモを取る人を決めます。そして出すべき結論を決めておくのです。

これはジョナサンが考えたことなのですが、部屋にプロジェクターを2台置いて、プレゼンテーションの資料と、取ったメモの両方を映し出すのです。時々メモを見ていて、「そんなこと言ってないぞ!」となるときもあります。これが効果的なのです。

ジョナサン:私はプロジェクトマネージャーとして、以前からミーティングの後の行動を確認せざるを得ない環境を作ってきました。こうすることによって、アクションに意味をもたせることができます。マネジメント業務をやるようになっても、プロジェクターを設置していました。

エリック:こういうミーティングにおいて、マネージャーの仕事はミーティングを管理することです。実際マネージャー達は思っている以上にミーティングばかりしています。10%でも20%でもミーティングを効率的に行うことで、会社としての効率性の違いは歴然です。

他にもたくさんありますが、大事なのはみんながミーティングに参加する環境を作ることです。何も言わない人がいたら言うようにしなければいけないし、女性にももちろん話す機会を与えなければいけないし。

実際男性にとって、これは難しいことなんです。本当です。あと、コンセンサスを得て結論を出そうとするのではなく、対処策として一番良いものを考えることです。ここでは当然意見の衝突が生まれますが、大事なのはそこでみんなが問題解決を目指していることです。

コンセンサスの意味は「総意」ではなく、「意見を集める」こと

サルマン:コンセンサスという言葉だと一般的には全員の同意という認識があります。しかしその単語のラテン語源は「同じものを感じる」という意味です。これを見て、全員のオピニオンを聞く、という本当の意味を見出したわけですね。

エリック:時々合意しない時もあります。中国でこんなことが起きました。様々なプロセスを経て、意見交換をして、結局合意に至らず、決議せざるを得なくなったんです。

しかしいったんそこで採決した行動に移ると、反対した人も含めて全員がスピーディーに実装したんです。ビジネスは判断を迅速に行うべきです。もちろん同じくらい迅速に失敗する可能性もありますが、とても早く対応はできるのです。

ジョナサン:サルマン・カーンはちゃんとラテン語源の注釈を読んでくれてるんですね。

エリック:Khan Academyでラテン語講座やってるからじゃない?

ジョナサン:コンセンサスは「総意」という意味ではないんです。意見を集めるという意味なんです。

サルマン:気になったんでね(笑)。

エリック:ここに一緒にいるのは世界一有名な教育者だってこと、理解してる?(笑)

ジョナサン:わかってるよ、いつも子供達が使ってる教材から彼の声が聞こえるからね(笑)。

エリック:ヘッドフォンを使わせればいいじゃないか(笑)。ごめん、続けてください。

サルマン:いや、光栄です。ありがとうございます。

エリック:何、ヘッドフォンのこと?(笑)

サルマン:どのみち光栄です(笑)。

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