【3行要約】 ・失敗の原因を自身の思い込みで決めつけることはよくありますが、一方で、客観的な事実に基づいて真因を見極めるアプローチがあります。
・スキルベースの高松康平氏は「直感頼りではなくプロセス、思い込みではなく事実」で考える重要性を強調します。
・AI時代にも不可欠な人間の課題発見力を高め、研修で学んだ知識を実務の成果へと還元する手法を提示します。
前回の記事はこちら 人間は課題の原因を印象で決めつけてしまう
高松康平氏:(課題解決におけるよくある思考の2つ目は)人間は見たい部分だけを見てしまう。例えば問題が起きたら、「これはうちの会社の提案力が下がっているんだよ。提案力を上げよう」と、誘導するようなことはありませんか? いや、それは最初から提案力が下がっていると決め打ちしているじゃないですか。それは考えているとは言いません。
考えるというのは、「最近、業績が悪いし提案力が下がった。それはなぜなのか?」と思考することです。「前もうちの会社の提案力が下がっていると言っていたじゃないですか。それがなぜいまだに解決できていないんですか?」というところも探らなきゃいけません。
また、「提案力(が原因)と言うけど、なんでその1つだけが(原因だと思っているのか)。他にもいろいろな原因があるんじゃないか? その可能性は?」というところも見なきゃいけません。
思い込みではなく事実に基づいて考える
3つ目は、「思い込み」です。「最近、我が社のシェアが落ちてきたよ。なぜなのかな?」。みんなは「他社の値引き攻勢が原因だ。あの会社がめちゃくちゃ値引きしているらしいよ。だからうちも値下げをしないと、さすがにもう踏みとどまれない」と言っています。朝から晩までこんな会話が聞こえてくることはありませんか?
でも、本当なんですかね? 何が言いたいか。本当に他社は値引きをしているんですかね? BtoCであれば店舗に並んでいる商品でわかるかもしれませんが、BtoBだと実際にどれくらいの金額を提案しているかなんてわからなくないですか? 本当に事実として見たんですか? 本当に他社の見積もりを見たんですか?
「いや、ある1社のお客さんが(他社は値引きしていると)言っていまして」。けれどもたった1社じゃないですか。本当に他の会社で同じことが起きているんですか? また、本当に価格で決めているんですか?
ちょっと言い方はあれですけど、私も営業の時、「今回はコンペで負けました」と報告したら、「なぜ?」と聞かれたので、「他社がすごく値引きをしてきたから」(と答えたことがあります)。
自分の提案の腕はちょっとさておいて、「値引きしてきたから」と言いがちです。みなさんがそう言うかはわかりません。でも本当に価格が原因なのかはよくわからないですよね。価格を下げて勝てるの? 価格を下げたら利益がすぐ飛んでなくなるよ、怖い怖いと。
こんなことが起きてしまうのでちゃんと学ぼうよということで、「直感頼り」ではなくて「プロセス」。「部分的」なものではなくて「枠組み」をちゃんと作ろう。そして「思い込み」ではなくて「事実」。
課題発見力はAI時代にも必要な力
というところで、「課題発見」とは古くて新しい、ずっとあるテーマです。けれども人間としての価値で言うと、やはり「課題は何か」をちゃんと見つける力は人間が持たなきゃいけない。
それがわかれば、どうすればいいかはある程度AIが考えてくれる。もちろん課題発見もAIがやってくれるかもしれないけど、AIはみなさんの現場の情報を知りませんからね。
AIをうまく使いこなすためにも、ちゃんと人間自身がどういうふうにやるかを身につけないと、AIもうまく活用できません。なので、古くて新しい(テーマ)というところで、今はいろいろな会社さまで課題発見の力を鍛えるお手伝いをしています。
このあたりの話は実際のeラーニングでもしておりますが、ここからは我々がどんな取り組みを実際にして、どのように考えているかという話を進めていきたいです。
学びの効果を測る「4レベル評価モデル」
こういった学びや研修、eラーニングを受けていただいて何を実現したいのかなんですが、(スライドを示して)「レベル3以上の学習効果を実現したい」と書いています。
こちらは(ドナルド・L・)カークパトリックの「4レベル評価モデル」というもので、研修などの学習イベントがあった後にどこまで到達できるといいかを4つのレベルで評価しています。

レベル1が「リアクション(Reaction)」です。学習イベントに対して、受講生がどの程度、肯定的に反応したか。いわゆる満足度ですかね。「研修は良かったですか?」「講師の人はどうですか?」はもちろん大事だけど、満足すればいいかというとそれだけではない。
レベル2が「ラーニング(Learning)」です。学習イベントに参加することで、受講生がどの程度目標とされた知識、スキル、態度を獲得したか。「こんなふうに学んで、こういうスキルを得た。こうやればいいんだ」というところをちゃんとできるようになる。
レベル3が「ビヘイビア(Behavior)」です。学習イベント中に学んだことを、受講生がどの程度、仕事に戻った時に活用したか。実務で活用できるか。
そしてレベル4が「リザルト(Results)」です。学習イベントとその後の定着によって、どの程度の成果が生み出されたか。もちろんレベル4がいいんですが、1回の研修でそこまで明確な(成果を)すぐに出すのは正直難しいです。
レベル4を諦めたわけではないですが、やはり目指すべきはレベル3の「学んだことを活用できているか」です。ここにこだわることがレベル4にもつながっていくと思いますし、現実的にも
やはりレベル3を目指すことが現実的であり、レベル3をやるだけでも非常に難しいです。
現実的にはレベル1も大事なところで、気にすることはありますよね。研修後に受講生アンケート(での評価)が低かったらやはり問題になっちゃいますし、それがちょっと上下すると気になります。ただそれが目的ではないです。ちゃんとスキルを身につけて実務で活用する。そこを実現したい。
社内研修がふわっとした内容になる4つの理由
でも、難しいんですよね。だって、課題発見や課題解決の本ってずっと(本屋に)ありますよね。私もその(著者の)うちの1人なので、「あなたたちが教えている内容を理解するのが難しいだけでしょ」ということなんですが、でも、なかなか難しいからこそいろいろと工夫をし続けているわけです。
(スライドを示して)では、何が難しいか? こんなところかなと思っています。4つくらい挙げています。「活用イメージが湧かない」「できたかどうかがわからない」「できる人はできるが……」「課題発見の方法が難しい」。
どういうことなのか? まずは「活用イメージが湧かない」です。研修のアンケートに「研修内容は良かったですが、活用イメージは湧かなかったです」というコメントを書かれたらどうでしょう? 「それじゃダメじゃん!」となります。
でもそれはけっこう起きがちでして、1個1個はわかったけどどう持ち帰っていいかわからないことがあります。これは研修や学びの仕組みの問題だと思っています。
次に、「できたかどうかがわからない」です。できるようになることを目指しているのに、できたかどうかをチェックしていない。(これも)仕組みの問題です。
そして、「できる人はできるが……」です。「……」で濁していますが、「できない人はできない」ということです。つまり研修や学習が得意な人はめっちゃさらにできるようになるけど、どんな人でもやはり苦手な領域ってあるじゃないですか。苦手な人ができるようになるかというと、さらに差が広がるだけになってしまう。これも仕組みの問題です。