優秀な人が即答・即決できるわけ
では、どうすれば考えを深くできるのでしょうか? ここから実践編です。まず1つ目。何かを聞かれた時に、すぐに「わかりました。こういうことですね。つまりこうですね」と答えを出さないことです。
もちろん仕事ではスピードって大事です。でも、「考えが浅い」と言われがちな人ほど、答えるのが早すぎるんですね。早いこと自体が悪いのではないんですけども、問題は確認すべき情報を確認する前に答えを出してしまっているということですね。
例えば、病気になって病院に行きました。先生がぱっと見て「扁桃炎だね」と言う場合と、いろいろ診察をして「どうも扁桃炎のようだね」と言われた時、どっちが信用できますかということですね。答えが早ければいいわけではないということなんですね。
よく「優秀な人は即答・即決している」と言いますね。あれは少ない情報で行き当たりばったりで判断しているのではなくて、優秀な人はもともと大量の情報を持っているんですね。だから即答・即決できているんです。
なので、情報を持っていない人が即答・即決したら、確実に間違うだけなんですね。情報が少ないのにできる人の真似をして即答・即決すると、単純に考えが浅い人になります。
自分の思考の癖を変える問い
まず一歩立ち止まってください。そしてこの問いを自分に向けてください。「他に確認すべき情報項目はないか?」。この問いを持つだけで思考はかなり変わります。
例えば上司に、「この案件は進めていいと思うか?」と聞かれたとします。考えが浅い人は、今見えている情報だけで答えます。「はい。進めていいと思います」みたいな感じですけども、考えを深くしたいなら、そこでいったん立ち止まってください。
「まず、判断するには予算・納期・担当者の工数・リスク・先方の決裁状況を確認したいです。現時点の情報だけなら進める方向で良さそうですけども、納期と工数だけ確認してから判断したいです」みたいな感じで答えたりします。こうなると、だいぶ印象が変わりますよね。単に慎重なだけではなくて、判断に必要な情報項目が見えているということですね。

そして次に2つ目。情報が増えたら、最初の答えはいったん捨てる。これは本当に大事なんですね。多くの人は、後から情報が増えた時に、最初の答えに情報を追加しようとします。でも、そうではないんですね。情報が増えたら最初の答えを捨てて、もう一度ゼロから組み直す。ぜひこれを習慣にしてほしいと思うんですね。
例えば、最初は「この商品は若者向けの商品だ」と思っていたとします。TikTokには若者が多いということで、それをTikTok広告で売っていました。でも調査してみると、実際に購入しているのは50~60代でした。
この時に考えが浅い人はこうします。「若者向けの商品だけども、50代・60代にも刺さっているんですね」。これは最初の考えを残したままになっています。そして、TikTok広告のコンテンツに50代・60代のコンテンツを出します。
要はTikTokは若者向けと言いながらも、50代・60代の人たちも見ています。だからTikTok広告で50代・60代の人が買ってくれたということなんですけども、「じゃあTikTok広告の中でも50代・60代の人により刺さるようにしていきましょう」みたいなのが考えが浅い人なんですね。
最初の答えに執着しない
でも、考えが深い人はどう考えるかというと、「そもそも若者向けという前提自体が間違っていたのではないか。実際の購買層を見ると、実は50代・60代向けの商品なんじゃないか」。となってくると、「そもそもTikTokで売るよりも、販売チャネルを見直して、テレビ通販とか新聞通販とかでやったほうが爆発的に売れるかもしれないな」というふうに思います。
なので、「若者向けだということ自体がそもそも間違っているかもしれないな」と見直していくということですね。この差はかなり大きいと思います。考えを深くするには、自分の最初の答えに執着しないことが必要になってきます。
けっこう見ていて思うのが、考えが浅い人は、まず少ない情報で答えをポンと出してしまうんです。ここに対してけっこう舞い上がっちゃう人って多いんですよね。「すごくいいアイデアがわかった」とか「いいことに気づいた」と思っちゃうと、後からその情報を決めた仮説を否定するような情報が出てきた時に、すごく嫌がるんですよ。
自分の「すごいものだ」と思っている感情の部分が、どうしてもそういうものを阻害してしまうところがあるので、新しい情報があると、より良い答えにたどり着くかもしれないという気持ちを持ってほしいなと思います。
結論を真似るよりも、そこに至るプロセスが大事
そして3つ目です。先輩や優秀な人が、どの情報項目を見ているかを観察する。これはかなり実践的です。考えが深い人は答えがすごいんじゃなくて、答えにたどり着くまでの見ている観点が違うんですね。
例えば同じ営業会議でも、経験の浅い人は売上金額だけを見ています。「今月の売上は上がりました」「下がりました」。これだけなんです。でも、経験のある人はもっと見ています。
「今月の売上が上がった理由は○○ということです」「新規顧客の比率がこうなっています」「既存顧客のリピート率はこうなっています」「単価が上がっています/下がっています」「受注までの期間が長くなっています/短くなっています」。
「特定の担当者だけ売上が上がっています/下がっています」「来月以降の見込み案件が足りていないので、今月は上がっていますけど来月は落ちそうです」「値引きをして無理やりやっていたので、売上は上がっていますけど利益は下がっています」みたいな感じですね。

同じ売上を見ていても、やはり確認している情報項目がぜんぜん違ってくるんですね。なので、優秀な人の結論だけを真似しても意味がないんですね。この人は何を見てその結論に至ったのかを見ることが大事なんです。
先輩が会議で質問している内容をメモるとか、上司が資料を見る時にどこにツッコミを入れるかを見るとか、ベテランが判断に迷った時に何を追加で確認するかを見る。そうすると、判断に必要な情報項目はだんだんわかってくるという感じですね。

そして、最終的には既存の情報項目、先輩たちがやっている情報項目を学ぶだけじゃなくて、自分自身が新しい情報項目を発見できる人になるのが大事ですね。ここまで来るとかなり強いです。
自分なりに必要な情報項目を考えてみる
例えば最初の例であった道案内の例です。駅の右に目的地があるということなんですけども、先輩のみなさんは信号や踏切や道の状態を見ていました。でも、あなたが提案できたらどうでしょうか。
「いろいろ調べたところ、この場所とこの場所にLUUPのポートがあります。つまり、この区間だけLUUPを使えば徒歩より速く移動できます。なので、今後目的地への道を探す時は、LUUPのポートの有無も確認項目に入れたほうがいいと思います」。

みたいな感じでいくと、これはただ先輩の判断を真似しているんじゃなくて、より良い情報判断のために、あなた自身が新しい情報項目を追加しているということですね。
あるいは営業で売上だけを見ていたところに、「値引き率も見ましょう。売上が上がっていたとしても、利益が削られているなら危険です」と提案すると。これも思考が深い人の動きです。ただ与えられた数字を見るのではなくて、本当に判断に必要な情報項目は何かを考えていきましょうということですね。
考えの浅い部下に「もっと深く考えて」と言っても意味がない
ここで、部下とか後輩を育てる側の人にも話しておきたいことがあります。「部下の考えが浅い」と感じる時、ただ「もっと深く考えて」と言ってもほとんど意味がないんですね。なぜなら、本人は本人のできる範囲ではだいたい最大限考えています。なので、考えが浅い人は別にサボっているわけではないんですね。
本人なりに一生懸命考えているんですけども、確認すべき情報項目が少ない。もしくはわからない。もしくは「情報項目を増やす」発想がないということなんですね。そして、一度出した答えを固定していきます。
なので、指導する際は「もっと深く考えろ」じゃなくて、「何を確認しましたか?」とか、「他に確認すべき情報項目はないですか?」とか、「この結論が間違っているとしたらどこに原因がありそうですか?」とか、「新しい情報を入れたら結論は変わると思いますか?」という聞き方をしてください。こういう質問をすることによって、「情報項目を増やしていかなければいけないんだ」という考えの型を覚えさせていくんですね。
そして特に効果的なのが、答えを教える前に観点を教えることですね。例えば、部下が「この施策をやるべきです」と言ってきたとします。その時にいきなり「それは違うよ」と言うのではなくて、「判断するためには、費用と工数と期待効果、失敗した時のリスク、他の施策との優先順位を見てください」と言います。
すると部下は、「自分は効果だけしか見ていなかった。工数を見ていなかった」と気づきます。これがすごく大事になってきます。例えばどんなものを見ていくべきかを教えて、その後に「他にも見ていくべきものがないか考えてみて」という感じですね。
思考の深さは才能ではなく習慣
最後に今日の話をまとめます。まず、考えが浅い人の問題は、単に知識が少ないということではないです。問題は大きく2つです。1つ目は、与えられた少ない情報だけで答えを決めてしまうこと。2つ目は、一度決めた答えを固定して、後から修正できないこと。

だから、考えを深くするためにやるべきことも2つです。1つ目は、他に確認すべき情報項目がないかを考えること。そして2つ目は、新しい情報が出たら最初の答えをいったん捨てて、結論を作り直すこと。この2つを習慣にすることによって、判断の精度はかなり変わってきます。
そして最終的には、既存の情報を見るだけではなくて、より良い判断のために、新しい情報項目を見つけられる人になっていくんですね。考えが深い人は、何でも知っている人ではないんです。少ない情報からより正確に出しているんじゃなくて、正しい答えを出すために情報をたくさん集めている人なんですね。
優秀さの差は、知っている情報の量で決まるのではなくて、情報を集めるというところになってきます。思考の深さは才能ではなくて習慣です。すぐ答えるのをやめる。必要な情報を取りにいく。最初の答えにしがみつかない。それができる人から判断の精度が上がっていきます。