【3行要約】 ・北の達人コーポレーション 代表取締役社長の木下勝寿氏が、「モ・ゲ・ジョの法則」(目的・現状・条件を整理するフレームワーク)の上級編として、現状把握に役立つ5つの型を紹介します。
・木下氏は「成果を出す人はアイデアのひらめきではなく、問題の場所を正確にあぶり出している」と語ります。
・現状把握を助ける5つの型を活用し、課題の本質を見極めて最適な改善策を導く具体ノウハウを解説します。
前回の記事はこちら 現状把握を助ける「モ・ゲ・ジョの5つの型」
木下勝寿氏(以下、木下):ここからはモ・ゲ・ジョの上級編になります。モ・ゲ・ジョの中でも特に難しいのは「ゲ」、現状把握のところなんですね。目的は比較的わかりますよね。場合によっては相手に確認すればいいだけの場合もあります。条件も、目的と現状が見えれば、ほぼ自動的に出てくるので絞れます。
でも、多くの人が苦戦するのは「今、何が起きているかをどう整理すればいいか」という現状把握のところですね。ビジネスの現場では、売上がダウンしているとか、クレームが増えているとか、とにかく現場が忙しいとか、常に頭がごちゃごちゃした状態になります。
こういう時って、どこから何を見ればいいかがわかりにくくなるんですね。そういう時に使えるのがモ・ゲ・ジョの5つの型です。これは一言で言うと、現状を整理するための型です。この型は5つあります。1つ目が「足し算の型」、2つ目が「掛け算の型」、3つ目が「歩留まり率の型」、4つ目が「内部要因」、5つ目が「外部要因」です。

ステップ1とステップ2に分かれているんですけれども、ステップ1は5つの型の前半の3つで、これらは「どこがレバレッジポイントで、どこがキーポイントなのか」を見つける型です。問題を定量把握する、(つまり)数字で把握するということですね。すべてが数字(で表せるわけ)じゃないので、量的に把握すると言ってもいいと思います。
そして(ステップ2となる、5つの型の)後半の2つは「そのレバレッジポイントがなぜそうなっているのか」を見る型になります。問題の定性把握と言ってもいいかもしれません。難しそうに聞こえるかもしれませんけれども、実はめちゃくちゃ実用的です。しかも大事なのは、この5つを全部は使わなくてもぜんぜんいいということです。
案件によっては1、2個で十分なこともありますし、順番も特に固定ではありません。けれども、最初は型どおりにやったほうがわかりやすいので、今回はそのような(方法で)例を説明したいと思います。
いきなり打ち手を考える「打ち手バカ」にならない
木下:では、さっきも出した飲食店の例ですね。「最近売上が落ちてきている。改善策を考えてくれ」という課題をこの5つの型で解決します。この時、知頭モードの人はすぐにこう言います。「最近はやっているスイーツを入れたらどうでしょうか? ドバイチョコレートとかがはやっていますよ」「SNSをがんばりましょう」「クーポンを配りましょう」「『食べログ』の対策をしましょう」とかですね。
このようにモ・ゲ・ジョを確認せずにいきなり打ち手を考える人のことを「打ち手バカ」と言います。モ・ゲ・ジョで考えると、目的は「売上を戻すこと」。次に、現状確認においてどこが問題なのかを具体的に特定していきます。その際に使うのが最初の3つの型です。

まず、1つ目の足し算の型ですね。ざっくり言うと、売上は「ランチ売上+ディナー売上+その他時間帯の売上」という足し算で全体を表現することができます。ここを見ていくと、「ディナーの売上ってそんなに落ちていない。でも、ランチ売上が大きく落ちている」みたいなことが見えてきます。
なので、(確かに)全体売上が落ちていますけれども、実はランチ売上が落ちていることが問題だったんですね。

そして、ランチ売上をどう分解できるかなんですけれども、ここでいったん掛け算の型を使ってみます。「ランチ売上=ランチ客数×ランチ客単価」ですね。この2つの掛け算によってランチ売上は構成されています。
ここで分解してみると、ランチの客単価自体はそんなに変わっていない。でもランチ客数が減っているということが見えてきました。「ランチ売上が落ちている理由は、ランチ客数が減っているからだ」という原因がわかりました。
「歩留まり率」で問題の在り処を特定する
木下:そして3つ目(の歩留まり率の型)です。ディナー客はだいたい予約で来ることが多いです。しかしランチ客は通りがかりに入ってくることが多いです。つまり、この時点で食べログなどの予約サイトの改善はあまり関係がないということがわかってきますね。
ランチ客の集客動線は、「店の前を通る人がいる」「その人たちが店の存在に気づく」「入ってみようと思う」「実際に入店する」という流れになっていますね。そうするとランチ客の入店数は「通行者数×店の認識率×入店率」に分解できます。これを歩留まり率の型と言います。
この数字をそれぞれ見てみますと、実は店の前を通る人はあまり減っていません。実際に(店の前を)見てみても、前とそんなに変わっておらず、パッと店の前を通る人の表情を見ても、うちのお店の存在にパッとこっちを向いて気づいている人もそんなに減ってはいません。入店率だけが落ちているということがわかりました。
ここまで来ると問題の場所がはっきりしてきます。全体(売上)が悪いんじゃなくて、ランチ(売上)が悪いんです。ランチ売上が悪いのは客数が減っているからなんです。客数が減っているのは入店率が減っているからなんですね。つまり、人が店の前を通っているのに入ってこないことが本当の問題だということですね。ここまで特定できてくると(ライバル店と)勝負(するための打ち手)ってかなり決まってくるんですね。
「内部要因」で自分たちの落ち度を洗い出す
木下:ここから後半の2つの型に移ります。4つ目の「内部要因」と、5つ目の「外部要因」です。
まずは内部要因です。これは自分たちでコントロールしやすいものです。例えば飲食店だったら、味や接客、メニューの見せ方、値段、外観、内装、提供スピードとかですね。
今回のケースで見ると、「店頭のメニュー表示黒板を新しくしてから内容がわかりにくくなったんじゃないか?」ということがわかりました。つまり「店の前を客が通っても、何がいくらで食べられるか、すぐ出てくるのかがわからなくなった。それによってランチ客が入りにくくなったんじゃないか?」ということがわかってきました。

次に、外部要因です。これは自分たちで変えにくいものです。立地や競合、周辺の人の流れ、景気、流行とかです。今回でいくと、周辺の人の流れは特に変わっていません。ただし、近くにテイクアウトできる回転の早い店が増えていました。そうなってくると、時間がない会社員の人はそっちに流れやすかったりします。
つまり、今この店は、内部では「メニューの伝わりにくさ」、外部では「近隣に(回転の)早いランチ店ができた」という2つ(の要因)によって入店率が落ちている可能性が高いわけです。ここまで見えてくると打ち手はかなり自然に決まってきます。
例えば、ランチの味はそのままでも提供時間を短くできるテイクアウトメニューに改善することや、店頭の黒板を見直して、何がいくらでどれぐらい出てくるかを一目でわかりやすくすることです。これなら、さっき特定した「入店率の低下」に対してちゃんと効く打ち手になります。
逆にここまで分解した後には、「はやりのスイーツを入れよう」「SNSをがんばろう」という案はかなりずれていることがわかると思います。悪い案というより、今の課題に刺さっていないんですね。これがモ・ゲ・ジョの5つの型の威力です。
5つの型はあらゆる問題に応用できる
木下:つまり、地頭がいい人というのは最初からすごいアイデアが出る人ではないんですね。問題の場所を、「足し算」「掛け算」「歩留まり率」「内部要因」「外部要因」という順番であぶり出しているんです。だから、施策の外れが減ります。判断が早くなります。しかも精度も上がります。これが本当に大きいんですね。
そして、この考え方は飲食店だけの話ではありません。営業や採用、広告、子どもの勉強でも使えます。夫婦の問題ですら使えます。もちろんすべてのことに当てはまるわけではありませんけれども、特に数字にまつわる部分には基本的に全部当てはまります。
最初に言ったように、すべてを使う必要はありませんし、必要なものだけを使ってみてください。まずは足し算の型で全体像を把握するところからやるのがおすすめかなと思っています。モ・ゲ・ジョで目的・現状・条件を見る。その上で、特に現状が見えにくい時は5つの型で整理する。ここまでできるとかなり本格的に地頭モードに入れます。

さて、みなさん、どうでしょうか? 今日(のお話で)地頭が良くなりそうでしょうか?
——私でも地頭スイッチを入れられそうな気がしました。初めてモ・ゲ・ジョの法則を聞いたんですが、これはもう、私でもできそうです! さっそくやってみたいと思います。今日も目からうろこのお話をありがとうございました。
木下:今日お話しした内容は、実は地頭スイッチのごく一部です。モ・ゲ・ジョの法則以外にあと2つあるんですね。モ・ゲ・ジョの法則をより詳しく、そしてあと2つの地頭スイッチについて書いた本が(2026年)6月30日にダイヤモンド社から発売になります。そのタイトルはそのまま
『地頭スイッチ』です。この本を読むとですね、あなたは間違いなく地頭が良くなります。ぜひお読みいただき、地頭を良くしてください。