【3行要約】・打ち手ばかりを議論して空回りする会議と、スムーズに前に進む会議。その違いは2つの定数の固定にあります。
・萩原雅裕氏は、仕事が噛み合わない時は「期待する成果」か「現状把握」のどちらかが絶対にズレていると指摘します。
・メンバーの認識を揃え、仕事のズレをなくしてクリエイティビティを発揮するための、定数の固め方と具体ステップを学びます。
前回の記事はこちら 「打ち手」の会議だけではズレはわからない
萩原雅裕氏(以下、萩原):もう1個ぐらい事例、いきましょうかね。
こんなふわっとしたかたちで出てくるかどうかはさておき、「今後の戦略を描いて」「今後の方針を考えて」と言われたとします。
これを、「今ちょっとヤバい感じだから、どうしたら既存のお客さんとの取引が守れるか、その方策を決めるっていうことなんだろうな」って勝手に思って、会社の歴史・現状とかお客さんとか、市場だのなんちゃらかんちゃらとかいろいろ把握した上で、「よっしゃ、こうして、うんぬんかんぬんで……」みたいな提案を持っていったら。
「違う。ぜんぜん違う。なんでそんなありきたりな話ばっかり出てくるの?」と。「もっと新しい視点が欲しいんだよね」みたいなフィードバックが出てくる。「よくわからんな」という会話になります。

これは何が起きているんでしたっけ? フィードバックを取りにいくとしたら、いろいろと質問をしていってわかったことは、「どうもこれ(①期待している成果)が違ったっぽいぞ」と。
「『今後の方針を考えて』っていうのは、本当は10年先を見据えて、どこで成長したらいいかを考える話を期待していたんだよね」ということだと判明したならば。
②(現状把握)が同じだとしても、「こんな新しい方向が考えられますね。例えばAとかBとかCとか」みたいな(10年先に対する)話だったら、「そうそうそう、なるほどなるほど。じゃあ、それぞれ考えてみようか」と、議論がかみ合い出しますね。

冒頭で申し上げたとおり、だいたいの会議は「打ち手」の話が合っている・合っていない、「ちょっと違うんだわ」みたいな話になっちゃうのですが、どこかがかみ合っていない時には、①か②が絶対にズレているんですよ。
「①がズレているんですか? ②がズレているんですか?」っていう話を確認していく。
さっきみたいに①のズレが判明すれば、「そりゃ、まったく意味が変わりますわ」って、自然にそのフィードバックを受けて、次のたたき台バージョン2も作りやすくなりますし、話も進みやすくなります。
「目標」と「目的」の捉え方
質問タイム……あるんでしたっけ? 気になるところがあったらお受けしますけど、大丈夫ですか?
(会場挙手)
萩原:じゃあ、どうぞ。
参加者1:ありがとうございます。①の期待する成果を明確にするところでちょっとうかがいたいです。

本に書いてあったら申し訳ないですけど、目標と目的でいうと、この①が目標かなと思って。その期待する成果をより明確にするんですが、Whyとか目的とかも重要だと思ってて、この中だと①に該当する感じですか?
萩原:①に該当すると思います。目的と目標、どっちがどっち? みたいな話があるかもしれませんけど、私がどう使っているかをお話をすると。
期限とか数字とか、具体的な基準が出来上がっていたら目標。もうちょっと上の上位レイヤーが目的だと私は捉えています。
これ(「今後の戦略を描いて」)はぜんぜん目標になっていないです(笑)。これがさらに「いつまでに考えてね。それをA4何枚ぐらいにまとめてきてよ」みたいな話になったら、だいぶ目標っぽいかなと思います。
これは短期的な話をしていますけれども、中長期の話もきっとあるでしょう。「社会に○○なインパクトを与える」みたいな会社のミッションはかなり「目的」に近い話で、「そのために当社は、○○の技術を磨くのである」みたいなのも、まだ目的みたいな話で。「そのために今期来期、もしくはこの3年間で○○を目指すのである」みたいなものはちょっと目標に下りてきて、みたいな。そんなイメージで私は捉えています。
それがドンドンと分解されていって、きっとみなさんの日々の仕事の中での目標に落ちていっていることが多いんじゃないかなと思います。
そこで(「今後の戦略を描いて」のような指示が)フワッと来ると、「これ、ちょっと何ですか?」って具体化しなきゃいけない場面がたくさん出てくる。そんなことだろうなと思います。
「何を依頼されているか」を明確にするには
参加者1:それに付随して、ごめんなさい、1個だけ。
萩原:どうぞどうぞ。
参加者1:現状によって打ち手が変わるっていうお話があったと思うんですけど、それでいくと、目的によっても期待する成果って変わるかなと思って。例えば上司とか仕事の依頼者にちゃんと確認して、目的を踏まえた上で目標をしっかり決めていくのが重要だったりしますか?
萩原:「言われた話の深堀りをしないといけないんじゃないか?」みたいな感覚でしょうか? 依頼されたことそのままではなく、という話ですかね?
参加者1:そうですね。目標として「こういう成果」って言ってくれていたらいいかもしれないんですけど、ちょっとフワッとした時とかに、自分で考えるとなったら、目的によって目標って変わるのかなと思ったので。そういう意味では目的も重要だったりするんですかね?
萩原:そうですね、重要だと思います。何を依頼されているかにもよると思うんですけど、できればみなさんは「何を依頼されているか」をもうちょっと明確にしたいじゃないですか。仕事をうまいこと進めたいんだったら。
といった時に、なるべく「達成のための計画を作ること」が課されている状態にしたほうがPDCAを回せますよね。目標を曖昧なままにしておくと、みなさんの仕事がグルグル回せなくなっちゃう。上側(目標、期待する成果)をクリアにしたいですよね。

そこをクリアにする方法が、さっきみたいな「具体化していく」というかたちです。「そもそもこれって何のために?」と。
逆にこっち(誰が/何をしている・した)しかできていなくて、「そもそもこれは何なんでしたっけ?」みたいな、①②③がよくわからなくなるなら、たぶん上(目標)に戻っていただくのがいいのかなと思いました。
ありがとうございます。
(会場挙手)
クリエイティビティはルールの中で発揮される
参加者2:ありがとうございます。この進め方はすごくきれいだなと思うんですけど、一方で、最初から成果を明確にして、カチッと形にして作って、現状把握しますって……こういう仕事っておもしろいなっだっけ……みたいなことをやや感じて。
(会場笑)
「これをいっぱい回数を回すから楽しい」のかっていうのと。
参加者2:あともう1個が、ふだんの仕事ってほぼほぼ現状把握できていないんじゃないのかっていう大問題があって、だから結局打ち手を考えるところで、どうにか見えない中でもやっていくことが重要かなと思うんです。PDCAサイクルですごく思うのが、めっちゃ「P」が多いんですよ。
僕の中のイメージでいくと、知識って今の状況で10あれば成功確率10パーセントで、いろいろ進めていったら知識が40になるから、(成功確立も)40パーセントになるから、(後から考えたもののほうが)正しいんじゃないかと。
「いろいろ最初によく考えたものってだいたい無駄になっていないか?」という感じを受ける時があります。中期計画とか、そういうのってどう答えていけばいいのかなと。
萩原:なるほど、ありがとうございます。1個目のご質問の「この仕事は楽しいのか?」っていうお話でいくと……。
(会場笑)
萩原:ゲームのルールが決まっているからクリエイティビティが発揮されると思っているんですね。今週ワールドカップが始まりますけれども、サッカーっていうゲームのルールが、「手を使っちゃいけない」とか「相手側のゴールにボールを入れることである」って決まっているから、プレイヤーはフィールドの中で「どうやったらそれがうまくできるか」にクリエイティビティを集中させることができます。
ゲームのルールが決まっていなかったら、突然ボールを持って走り出して観客席に行くようなやつが出てきた時に、「これ、何なの?」「楽しいの、それ?」って、逆に楽しくなくなっちゃう性質があるかなと思っていて。定数を固めて変数を1個にすることで、そこにクリエイティビティを投入できるのかなと私は捉えています。そのお話はちょっとこの後しようかな。
「やってみなきゃわからない」は本当か
萩原:2個目のご質問は……。
参加者2:現状把握……。
萩原:現状把握の話をしていないんじゃないか? その話はこの後しますね。
3つ目、「やってみなきゃわからないんじゃない?」みたいな話は、「やってみなきゃわからない」と言った時に、実は本当にわからないこととわかることがあると私は思っていて、これはどっちかというと1冊目(
『「今日も仕事が終わらなかった」はなぜ起きるのか? 仕事が3倍速くなる計画・実行・中断の技術』)でお伝えした話なんですけれども。
やった結果どうなるかは、やってみないとわからないです。一方で、その結果を出すためにどんなステップを踏まなきゃいけないのかというのは、実はやる前からわかっているはずです。
逆に言うと、わかっていなかったら、さっきのPDCAは「達成のための計画」と言っているので、達成するところまでのステップが踏めていなかったら「達成のための計画」になっていないんですよね。
これ、意外と「やってみなきゃわからない」って言うんですけど、それは、このステップを踏んでいったらこう結果が出る。結果が「うまくいく・いかない」は、それはやってみないとわからない。でも(うまくいく場合もうまくいかない場合も、)結果を出すためにこういうことをやっていかなきゃいけないっていう(ステップ自体)は、たぶんそんなに変わらないんです。多少分岐することはもちろんあるかもしれないんですけど。
なのでそこは切り分けて、本当はわかるものを「やってみなきゃわからない」って放置するよりは、実はこうやって(プロセスを)切ったり、詰めていったらわかることってけっこうある。逆説的なんですけど、感覚としてはあるかなと思っています。
それよりも「現状がわかっていないんじゃない?」って話のほうが大事な気がしてきたので、ちょっと先に進めますね。
参加者2:ありがとうございます。
たたき台を作る人に求められる2ステップ
萩原:すみません、ご質問ありがとうございます。クリエイティビティの話。「たたき台」っていう言葉から想像されるのは、要は打ち手の提案ですね。ここも一応2つステップがあって、「①複数案を出して、②1個選ぶ」というのがたたき台を作る人には求められていると捉えていただきたいなと思っています。

なので、たたき台の定義って「ペライチだったらたたき台か?」とか「粗かったらたたき台か?」「早く出したらたたき台か?」とか、そういうことじゃなくて。この本で「レベル3」とご紹介しているんですけど、右端の箱(期待される成果)が明確になって、左側の箱(現状)が整理されて、案が複数あった上で、これだなっていうのが選ばれて。これがたたき台の姿かなと思っています。
複数の案を考えた上で1個選んで、「これがいいと思います」っていうのをぜひ持っていっていただきたいなと思っています。この「どれがいいかな?」の案出しと、「これがいいんじゃないですか」の(選別の)ところに、ぜひクリエイティビティを投入していただきたいなと思っております。
リーダーになると出てくる、方程式の順番
ちょっと時間が……巻きます(笑)。実はこの本を書く時に、私、①②③の順番をどうするか、すごく悩んだんですね。すごく悩んだんですけど、「この本に『入社1年目から使える』って入れよう」とか、(編集担当の)齋藤さんが「私が使えるように」っていう話だったので、「じゃあ、①はこっちだな」としたんですね。
これは作る人、もしくは仕事を依頼される人の視点です。みなさんがもしもっとレイヤーが上がってリーダークラスになると、こんなパターンが出てきます。

上のパターンは、その1。「期待する成果」をそもそも見直さなきゃいけない、再定義しなきゃいけない。でもフワッとしているから、自分が定義しにいかなきゃいけないケース。
「そもそも、今与えられている『期待する成果』は、本当にここを目指していていいんだっけ?」と、前提を疑う。今までずっと達成のための計画を考えてグルグル(PDCAを)回していたんだけど、「目標、違うんじゃね?」みたいなことを考えなきゃいけない、そんな立場に立つこともたくさんあると思います。
その2。順番が違う話。さっきの現状把握の話です。いろいろ試したし、めっちゃ実行し切った、でもうまくいかない。「それって実は、何が起きているかを正しく捉えられていないんじゃないか?」という、前提の疑い方をしなきゃいけないケースも、リーダーになるとすごく多いかなと思います。