【3行要約】・「営業は努力すれば売れる」という精神論は、組織を崩壊させるリスクがあります。目標未達チームの50パーセント以上が「社内の支援に効果を実感していない」という衝撃のデータが明らかになりました。
・TORiX代表の高橋浩一氏は、顧客が発する「検討します」という言葉の86パーセントは建前であり、その裏には「潜在的な不満」や「タイミング」といった本音が隠れていると指摘します。
・顧客が自分を守るために被る5つの「購買者の仮面」を剥がし、根性論に頼らず科学的に成果を出すための具体的なアプローチと「共通言語」の作り方を解説します。
前回の記事はこちら 目標未達チームの傾向
高橋浩一氏:さて、話を戻しますと「ガンバリズムの罠」と呼んでいるのは、私は別に努力を否定するわけではぜんぜんないんですけれども、「努力をすれば成果が出る」というシンプルな図式で組織全体を運営しようとすると無理が出てきますよ、ということなんです。
得てしてトップの方が努力で結果を出してしまった方だと、なかなか組織を支援するというふうにならないわけなんですけれども、この「営業を支援しない」というのは実は、目標未達チームの顕著な傾向なんですね。
当社がお客さま・営業それぞれ1万人に調査をするということがあったんですけれども、これは2022年に調査をしました。その中で営業組織の実態について、5,073人に聞いてみた調査があったんですけれども。
「あなたの所属するチームにおいて、社内の教育プログラムや営業ツールのうち、効果を実感している取り組みはどういうものですか」と、こういうような質問があります。
「何の支援もなしに売れる人」は本当にレアケース

さて、ここでグラフを見ていただくと、ブルーとピンクが両方見えると思うんですが。5,073人の集団を目標達成段階で5段階に分けまして、一番上の人たちはいわゆるハイパフォーマー。目標の達成レベルで言うと社内の上位に位置するレベルで、コンスタントに達成している上位集団ですね。この人たちがブルーで表現されています。
かたやピンクの人たちは目標達成5段階のうち一番下です。達成状況は芳しくなく、社内でも下位に位置しているということで、この人たちはピンクで色分けされています。真ん中の人たちはガサッと抜きました。一番上の人たちと一番下の人たちを比べているんです。
さて、そうすると「効果を実感している取り組みはどういうものですか」と投げかけたんですけれども、だいたい各項目でブルーのほうが数字が上回っているんですよね。そうするとピンクの人たちの回答はどこに集まったのか。
一番下に注目いただきたいんですけれども、「効果を実感している取り組みは特にない」という回答が、目標未達チームはなんと過半数です。半分以上の方はこう答えていました。
これはオンラインで調査をやったので、選択肢がランダム表示されるかたちになっています。10数個の項目の中からわざわざ「効果を実感した取り組みは特にない」と回答している人たちが半分以上いるって、ものすごく恐ろしいですよね。
どうですか? マネージャーのみなさんはご自分のチームの半数が「うち、別に効果を実感してる取り組みないんですよ」とか言ったら、ちょっと怖い気持ちになりますよね(笑)。
ですから私が言いたいことは、やはり何の支援もなしに売れる人は本当にレアケースである。ただ何の支援もなくても売れる人っているはいるんですが、そういうごく一部の例外の人たちの体験を基に「別に助けてあげなくても、営業なんか簡単だから売れるでしょ」というふうにやってしまうと、成果が出にくいんじゃないかということです。
ほとんどの営業が経験する「検討しますのでお待ち下さい」
これを聞いて「おっしゃることはわかりますよ。でもうちのチームはそれなりに支援はしてるんです」という方もいらっしゃると思いますが、じゃあ試しにちょっと次を見ていただきたいんですけれども。
「検討しますのでお待ちください」というのは、ほとんどの営業の方が経験する壁じゃないですか? さあ、どうでしょうかね。みなさんの企業ではこの、どの営業もおそらくぶつかるであろう壁に対して十分な支援はなされているでしょうか。
まずこれがどのくらいの割合で登場するのかなんですけれども、お客さま10,303人に調査をしたデータがこちらにあるんですが、お客さまに聞いてみると「検討しますのでお待ちください」というふうに「言ったことがありますよ」という回答は、実に7割以上に上ります。
大半のお客さまはこういうふうにシャットアウトしたことがあるということです。けっこうな頻度でこういうお客さまって登場するわけなんですけれども、じゃあなんでシャットアウトしたのか知りたいですよね。で、私はちょっとこういう聞き方をしてみました。
「見積提示後にさらなる説明をしたいと言ってきた営業担当者に『検討しますのでお待ちください』とシャットアウトしたことが『ある』と回答された方におうかがいします。営業担当者からの追加説明にOKを出すためには、何が必要でしたか」と、こういうふうに聞いたんですね。

7,339人ということですから、10,303人のうち7割以上はシャットアウトしたことがあるわけなんですけれども、実はこの回答に明確な傾向がありまして、「本当に可能性がなかった」という回答は13.7パーセントしかいないんですよね。
裏を返すと86.3パーセントのお客さまは「こういう条件を満たしてくれたんだったら『検討しますのでお待ちください』とシャットアウトをしたとしても、追加説明をOKしましたよ」というわけなんですね。
不満があっても営業には言わない心理
さて、この条件にもはっきりとした傾向が現れておりまして、一番上位は「潜在的不満の解消」というものだったんですよね。要するにこれまでの商談の中で、ちょっと納得いかない点があるとか、ちょっと疑問があるというふうに、営業には言わなかったんだけれども、実は足りていないと感じていたと。
ここがポイントです。営業には言わなかったんだけれども、何かが足りないと感じてはいる。これを言わなかった。ということで、そこに対して営業が示してくれるんだったら話を聞くよ、ということですよね。
よく考えてみれば不思議な話です。不満があるんだったら言えばいいじゃないですか。なんですけれども、言わない。なぜかというと、面倒くさいからですよね。
そして2番目の集団。これは本当にシンプルな話ですね。「タイミングを変えて再アプローチしてくれれば話を聞いたと思うよ」ってことなんですよ。
ですから例えばこのデータをみなさんの営業組織で共有して、「検討しますのでお待ちください」って言ったとしても「ぜんぜんまだチャンスあるよ」「まだタイミングを変えれば話を聞いてくれるんだよ」ってことを示せば、それだけで営業の方にとっては支えになりますよね。
そして3番目。このあたりは若干難易度がありますけど「プラスアルファを提示してほしい」ということですよね。さらにプラスアルファをこっちから提示しないと話を聞いてくれない。だけどプラスアルファがあれば話を聞いてくれるという話です。
さあ、どうでしょうか。このあたりについて何の支援もしないで、ただ失注するのを待っている営業の集団と、ここに関して具体的な支援をする集団。どっちが成果が出そうですか、という話です。