【3行要約】
・「努力すれば成果は出る」と信じる精神論中心の組織と、具体的行動を型にする科学的組織。その差が営業現場の離脱率と業績を二分します。
・TORiX代表の高橋浩一氏は「超人であるトップの武勇伝による指導は、現場を疲弊させる『ガンバリズムの罠』に陥るリスクがある」と指摘します。
・根性論やムダな努力を一掃し、誰もが売れる「最強の営業組織」を作るために必要な、具体的で再現性のある「共通言語」の正体とは。
「みんなが売れる営業組織」はどうしたら作れるのか?
高橋浩一氏:みなさん、こんにちは。TORiX株式会社の高橋浩一と申します。「10,000人調査のデータが示す、最強の営業組織を科学的に作る『共通言語』」というテーマで、これからお話しをさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
最初に簡単な自己紹介をさせていただきます。営業の研修やコンサルティングを提供するTORiX株式会社の代表を務めております、高橋浩一と申します。
私は新卒で、外資系のコンサルティング会社で2年半ほど働きました。25歳の時、2003年にアルー株式会社という人材教育のベンチャーを3人で始めたんですけれども、この創業役員として会社の設立から6年間、役員を務めておりました。
3人で始めた会社は6年経った頃には70人ほどになりまして、その中で特に一番自分が力を割いていたことが、事業の立ち上げと営業の組織作りでございました。
みんなが売れる営業組織をどのように作るのか。コロナ禍で特に営業の体系化が非常に重要だなと思うに至りまして、今現在、営業に関する本を書かせていただいたり、いろんな企業さまの営業のご支援をやらせていただいております。
また2024年から東京学芸大学という所でアカデミックな仕事もやっておりまして、教育をテーマにいろんな研究活動……当然その中では営業組織をどのようにしてより強いものにしていくか、活性化させていくかといったことも研究対象に含めております。
さて、本日ですが、みなさんと一緒に営業の組織作りについて考えていきたいと思います。2024年に
『営業の科学 セールスにはびこるムダな努力・根拠なき指導を一掃する』という本を出させていただいたんですが、非常に反響がありました。ここでもたくさんのデータをご紹介しているんですが、その中から一部を、みなさんと一緒に共有をしていきたいと思います。
だいたい営業のトップは「壁を乗り越え続けた超人」
まず営業組織を作るにあたって、やはりある種の前提があるかなと思うんです。営業ってとても「がんばる」ことが求められる仕事だと思うんです。
「いやいや、そんなの仕事をしているビジネスパーソンであれば、みんながんばるものじゃないか」と思われるかもしれませんが、特に営業って、お客さまという相手がすべてを決める。アポイントもなかなかいただけない、メールもなかなか読んでいただけない、電話にもなかなか出ていただけない。このような状況を乗り越えて結果を出していく必要があります。
その中には尋常ならざる努力をして結果が出るところまでがんばり続ける人たちも当然いるわけで、やはり営業組織のトップには、そのような「壁を乗り越え続けた超人」が登り詰めるケースが非常に多いんじゃないかなと思います。
だいたい組織のトップにいらっしゃる方は、商材やビジネスモデルで差別化できていなくても、そんな壁は乗り越えてしまう。勝てる戦略がなくても自分なりになんとかしてしまう。営業のやり方を教えてくれなくても、自分なりに売れるやり方を編み出す。そして最初はなかなか結果が出なくともへこたれず、心が折れることなくがんばり続ける。
こういう方がやはりトップにいるわけなんですけれども、でもそういう人って冷静に考えると、全人口のうちどれだけいますかと。本当に一握りの方々だと思うんですよ。だからこそそういう方々がトップにいらっしゃるということだと思うんですけれども。
こういうなかなかレアケースな方々の思考回路は、「努力をすれば成果が出るんだ」と。なぜなら自分がそうだったから、となりやすいわけです。当然ながら世の中って、そう簡単にうまくいくわけじゃないですから、がんばっても結果が出ない人なんか山ほどいるんです。

「努力をすれば成果が出る」という考え方のリスク
でもこういう超人の方というのは、ある種「自分ががんばったからうまくいったんだ」ということが、ご自分なりの過去を強烈に裏付けているわけです。
別に努力をすれば結果が出るという考え方を否定するつもりは一切ありません。「努力をすれば成果が出るものだ」ということを自分への戒めとか、自分を発奮させる言葉として使うぶんには、私はもう「無制限にどうぞやってください」という立場なんですけれども。
ことマネジメントにおいて、メンバーに対して「努力をすれば成果が出るんですよ」ということだけで組織運営をするのは、非常に大きなリスクがあるんじゃないかと考えます。
なぜかと言うと「成果が出ないのは努力が足りないからなんだ」と言えてしまうからなんですよね。努力が足りないから成果が出ないんだと言ってしまうと、努力しているつもりなんだけど成果が出ない人って当然いるわけで、じゃあどうしたらいいんだとなるわけです。
厳しい現実としては、私は「ガンバリズムの罠」と呼んでいるんですけども、こういうことが本当に組織の中でよく起こりがちでございます。

トップの方は「営業なんて簡単なんだ、当たり前の基本をやるだけなんだ」とおっしゃる。そうするとその直下にいる方は、だいたいこういうふうになるわけです。「営業支援のための予算などない。なぜなら営業は当たり前の基本をやれば成果が出るからだ」と。助けてあげなくても成果は出るぞ、と言うわけですよね。
そうしたら当然ながら現場の上司の方、中間管理職の方々は「目標達成を意識して、大量行動してお客さまと関係構築しなさい。そうすれば成果が出るんですよ」と指導するわけです。
トップ営業のやり方を真似して失敗する理由
一番のポイントは、別にこの指導って間違っているわけではないんですよ。ただ普通の人がこれでやろうとすると膨大な時間がかかるし、当然ながら結果が出る前に離脱してしまう方も出てくるということなんですよね。
でも健気な若手のメンバーが「がんばってるんですけど、なかなか成果が出ないんです。どうしたらよいでしょうか」と上司に相談をすると何が起こるか。「いやいや、まだ目標達成意識が薄いんじゃないか」とか「行動量がまだ少ないんじゃないか」「お客さまとの関係構築がまだできていないんじゃないか」。
これも言っていることは正しいんですよ。なんですが、これがぐるぐる回っているうちに、ちょっと疲れてしまうということが起こるわけですね。
私は以前、当社で実施したお客さまのご支援の中で、新卒を毎年数百人規模で採用されている企業さまをご支援したことがあるんですけれども。その中で300人ぐらいの新卒に対して、ある人は成果を出して成長軌道に乗っていくんだけれども、ぜんぜん売れるようにならない人もいる。
「これは何が違うのか、外部のプロの目から見ていただけませんか」と言われて、ちょっとした営業同行をやったり、あるいは上司が部下に対してやっている指導の動画、面談の動画を300人分送っていただいて、これを分析するということをやりました。
300人分の上司の指導場面を会社で分析しまして、非常に興味深かったのは、新人の方の成績が下にいけばいくほど……要するに売れていない人たちです。売れていない人たちの上司の指導に、明確な傾向があったんです。
成績が悪いチームの上司は「武勇伝」を語りがち
どんな傾向か。成績が下のほうにいけばいくほど、上司の武勇伝の割合が多かったんですよ。こんな会話です。若手の方が「部長、私ものすごくがんばってるつもりなんですけど、もうぜんぜん成果が出なくて、どうしたらいいんでしょうか」。そうすると課長がおっしゃいます。「わかるよ、わかるわかる。自分もそうだった」。
ここから課長のつらかった時代の話がずっと始まるわけですね。自分もぜんぜんお客さまに対してアプローチをしても、箸にも棒にも掛からない。相手にもされない、断られる。つらい日々が続いた。でも「そこで諦めなかったから今の自分があるのだ」と、こういうふうになるわけです。だからお前もがんばりなさい、というわけですよね。
ちなみに成績が上にいけばいくほど、具体的な会話が多かったです。「この間の商談で、3週間前にこの案件をやった時とはぜんぜん違っていたね」と。「こういうところが成長していたよ」とか「あの時の商談のこの台詞が良かったね」というふうに、具体的な指導が成績上位者にいけばいくほど多かったんです。これは非常に印象深かったですね。