【3行要約】・良かれと思って言葉を濁していませんか?「相手を傷つけないための配慮」は、実は不信感と偏見を育む最大の原因かもしれません。
・職場の対人関係専門家エイミー・ギャロ氏は、意思決定の「プロセスの公正さ」と「透明性」こそが、たとえ厳しい結果であっても納得感を生む鍵であると説きます。
・自分の頭の中だけで鳴っている「メロディー」を、相手も知っていると思い込まないこと。感情をコントロールし、背景情報を丁寧に言語化することで、組織の「不公平感」を解消する具体的な対話術を身につけましょう。
前回の記事はこちら ヒント3 不公平感を減らすには透明性のダイヤルを上げる
Amy Gallo(エイミー・ギャロ)氏(以下、ギャロ):さて、3つ目のヒントです。「透明性のダイヤルを上げること」。
私たちが職場で感じる不公平の多くは、先ほどのパースのランチの彼のように、誰かが十分に透明でなかったことから生まれています。あれは、誰かが彼に対して透明ではなかった。私はかなりそう思っています。その不透明さが、偏見や不公平感を根づかせ、膨らませる余地を与えてしまった。
でも、透明性にはものすごい価値があります。あの、「言う価値があるか、ないか」という問い。つまり、「自分はどこまで透明であるべきか」「どこまで率直に、正面から、正直に話すべきか」と自分に聞いているのと同じです。
透明性には本当にたくさんの価値があります。誤情報を防ぐ。あいまいさを減らす。この「あいまいさ」こそが、人を不安にし、自分の立ち位置をわからなくさせる大きな要因です。それが、「これは偏見なのか、それとも私の問題なのか」という問いにつながってしまう。そして透明性は、心理的安全性も育てます。
ここで、みなさんに1つ紹介したい言葉があります。ご存じの方も多いかもしれません。マネジメント研究で使われる「プロセスの公正さ」です。これは、「意思決定や行動に使われる方法が、一貫していて、かつ透明である」と受け止められている状態を指します。
私がこの研究で好きなのは、「プロセスが公正だったと感じられると、人はその結果をより受け入れやすくなる」という点です。
とても興味深い研究の1つが、リストラについてのものです。普通なら、解雇された人がその結果に納得するはずがない、と思いますよね。もちろん、納得なんてしないだろう、と。まあ、今ちょうど解雇されたいと思っている友人も1人いますが、それはまた別の話です。解雇されたい人の相談に乗るのは、なかなかおもしろいですよ。今日はその話ではありませんが。
ともあれ、リストラの場面でわかっているのは、「誰がなぜ解雇されるのか」について、公正な基準があり、その判断をする側がその理由を透明に説明していたと人々が感じた場合、その結果に対する受け止め方がずいぶん違う、ということです。
もちろん、喜ぶわけではありません。でも研究によれば、結果をより受け入れやすくなる。だから私たちは、自分たちの意思決定、その理由、そしてその結果について、もっと透明である必要があります。
特に、昇進、昇給、担当アサインのような判断をする時には、その透明性のダイヤルを上げるべきです。そうすれば、相手は自分の身に何が起きているのかを理解しやすくなり、結果もより受け止めやすくなります。
自分が思う以上に、相手には背景が伝わっていない
ギャロ:ただし、ここで大事なのは、「自分が思っている以上に、自分は透明ではない」と前提することです。これを示す研究は本当にたくさんあります。私が特に好きなのは、「聞き手」と「叩く人」に分ける研究です。
叩く人は、誰もが知っている有名な曲のリズムを机などで叩くように言われます。たいていは『ハッピーバースデー』ですね。そして聞き手は、そのリズムだけを聞いて、何の曲か当てなければなりません。
叩く人に、「聞き手はどれくらいの確率で当てられると思う?」と尋ねると、「まあ、リズムをたたいてるだけだし、50パーセントくらいかな」と答えるんです。でも考えてみてください。叩いている本人の頭の中では『ハッピーバースデー』が鳴っているんです。そのメロディーを心の中で歌いながら、叩いている。
では、聞き手が正しく曲名を当てられたのは、何回だったと思いますか? 誰か予想したい人はいます?
会場:1回。
ギャロ:100回に1回。つまり1パーセント。それくらい少ない。実際には2.5パーセントでした。でも、とにかくすごく低い。なぜかというと、聞いている側には、「トン、トン、トン、トン」としか聞こえないからです。それだけでは、まったく意味がわからない。背景情報がないんです。
でも、叩いてる側の頭の中では『ハッピーバースデー』が丸ごと鳴っている。だから、誰かに難しいことを説明する時、難しい会話をする時には、自分の頭の中で『ハッピーバースデー』が流れているのだと思ってください。
つまり、自分には背景が全部見えている。必要な情報を全部知っている。友人相手に練習した時、自分がどう言ったかも覚えている。この会話に至るまでの8回のやり取りも知っている。でも相手は何も知らない。相手に聞こえているのは、「トン、トン、トン」だけかもしれないんです。
だから、自分はどうすればもっと明確になれるのか。どうすれば「わかりやすさ」を最優先にできるのか。どうすれば、相手がこちらの意味を推測しなくて済むようにできるのか。難しい会話をする時には、ぜひそう自分に問いかけてください。